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August 28, 2009

ユニバース、2010年度、第1四半期決算、増収減益!

   ユニバースが8/21、2010年4月度、第1四半期決算を公表した。結果は、売上高242.35億円(104.5%)、営業利益6.65億円(-14.6%:売上対比2.74%)、経常利益7.02億円(-14.8%:売上対比2.89%)、当期純利益4.16億円(-14.5%:売上対比1.71%)となり、増収減益、しかも、利益はいずれの段階でも2桁減となる厳しい結果となった。ただ、この減益は、急激な消費環境の悪化を受け、前倒しでの新規出店等の積極的な投資を行ったためであり、攻めの減益といえよう。

   実際、ユニバースの通期予想を見ると、売上高1,026.53億円(107.4%)、営業利益35.06億円(103.5%:売上対比3.41%)、経常利益35.80億円(102.9%:売上対比3.48%)、当期純利益19.44億円(103.6%:売上対比1.89%)と増収増益予想であり、しかも、売上げも第1四半期の104.5%を超え、107.4%と増加予想、後半ドライブ型であり、前半は我慢の経営であるといえよう。ただ、消費環境はより厳しさを増しており、予想通り、増収増益を確保できるかどうか、今後の動向を見守る必要があろう。

   そこで、ユニバースのキャッシュフローを見ると、まず、投資キャッシュフローであるが、-8.5億円であり、昨年も-8.5億円であるので、投資キャッシュフローの総額は同じである。ただ、その中身は、出店にかかわる資産への投資、有形固定資産の取得による投資が7.3億円と昨年の3.2億円の2倍以上に増加しており、前倒しでの新規出店への投資がなされていることがわかる。一方、営業キャッシュフローは、当期純利益が減益となったため減少しているが、法人税等の支払額が昨年より減少したため、トータルでは5.3億円と、昨年の2.1億円よりも、増加している。ただ、投資キャッシュフローをカバーできてはおらず、結果、合計のフリーキャッシュフローは-3.1億円のマイナスとなり、逆流のキャッシュフローとなった。
   
   したがって、財務キャッシュフローでカバーするか、現金を取り崩すしかないが、財務キャッシュフローも-4.4億円のマイナスであり、トータル-7.5億円のマイナスと、現金を取り崩すこととなった。特に、財務キャッシュフローの中身を見ると、長期借入金の返済と配当を行っており、借入を増やしての投資という選択をとらず、現金を-7.5億円取り崩す選択を敢えてしているといえよう。

   このキャッシュフローの遣り繰りを見ると、この第1四半期は、いくつもの厳しい経営決断に迫られたことがわかる。投資キャッシュフローが営業キャッシュフローの範囲内で抑えられれば、フリーキャッシュフローがプラスとなり、その余力で財務キャッシュフローを補うこともできたと思われる。ただ、この第1四半期は予想以上に消費環境が悪化しており、前倒しでの新規出店への投資をせざるをえず、投資キャッシュフローが膨らんでしまい、結果、営業キャッシュフローでカバーできなくなってしまったといえよう。その営業キャッシュフローも、減益となったことにより、昨年よりも減少したことも、大きかったといえよう。

   そこで、そのマイナスをカバーするために、借り入れを起こすか、現金を取り崩すか、これも厳しい経営決断であったと思われる。実際は、現金を取り崩したわけであるが、その背景には、負債の有利子負債と資産の現金のバランスを見比べ、さらに、金融情勢、自己資本比率の改善による経営の安定度合いなど、様々な要素を勘案しながらの経営判断がなされたものと思われる。

   実際、ユニバースの現金を見てみると、この第1四半期決算直前、本決算時では58.76億円と総資産の16.1%である。この数字は食品スーパーマーケット上場企業の中では、その平均が7.7%であるので、トップクラスである。ちなみに、No.1は34.4%のアオキスーパー、No.2は32.0%の大黒天物産であり、No.3は、29.6%のオーケーである。ユニバースはちょうど10番目であり、現金はトップクラスである。一方、有利子負債であるが、ユニバースは、32.71億円で総資産の8.9%である。8.9%は食品スーパーマーケット上場企業の平均が27.9%であり、これもトップクラスである。ちなみに、オオゼキ、マックスバリュ東海、ヨークベニマルが0.0%である。結果、ユニバースは有利子負債の2倍の現金を保有しており、実質、無借金と同じといえ、しかも、食品スーパーマーケット上場企業の中ではトップクラスである。

   したがって、営業キャッシュフローで投資キャッシュフローを賄うことができなかったが、その分を借り入れで賄うことは必要ない財務状況といえ、現金を取り崩すという経営決断を行ったものと思われる。結果、自己資本比率は昨年の60.6%から61.5%へとわずかであるが改善しており、厳しい消費環境に対応すべく、前倒しで投資を行い、減益という厳しい決算結果となったにもかかわらず、財務バランスを崩すことなく、キャッシュをうまく循環させ、経営の安定をはかったといえよう。

   仮に、財務状況が脆弱であれば、このような前倒しの投資はできず、敢えて投資を強行すれば、財務バランスを崩し、経営が悪化することになる。その意味で、ユニバースのこの第1四半期は自社の強固な財務体質を前提とした積極的な経営決断であったといえ、財務バランスを崩すことなく、攻めの経営に打ってでたといえよう。今後、ユニバースが後半に向けて、さらにどのような経営決断を行うか、注目である。

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