ヤオコー、2010年3月期、第1四半期決算、減収増益!
食品スーパーマーケットの2010年3月期、第1四半期の決算の発表がほぼ終了した。食品スーパーマーケットの上場企業約50社の内、3月期決算は9社であり、2月期の33社と比べると圧倒的に少ないが、これで、1月期3社を含め、合計45社と約90%強となり、ほぼ食品スーパーマーケット全体の第1四半期決算の数字が判明したことになる。そこで、ここでは、この7/30に2010年3月期の第1四半期の決算を公表したヤオコーについて取り上げてみたい。
まず、概要であるが、営業収益508.48億円(-2.4%)、営業利益22.91億円(7.8%)、経常利益22.52億円(5.1%)、当期純利益13.27億円(14.8%)と減収増益となるやや厳しい決算となった。この四半期は新店がなかったために、既存店のみの数字であり、既存店が伸び悩んだことが原因といえる。一方、利益の方は、すべての段階で大きく増加しており、増益となった。そこで、増益となった要因を原価、経費面からみてみたい。
ヤオコーのこの第1四半期の原価であるが、347.72億円となり、売上対比71.5%である。昨年が71.4%であるので、0.1ポイント上昇がみられる。結果、売上総利益、いわゆる粗利は28.5%となり、昨年が28.6%であるので、0.1ポイント下がった。すなわち、原価が若干上昇し、粗利は下がっており、これが増益をもたらした要因ではないといえる。
そこで、経費面を見てみると、今期は137.84億円となり、売上対比では28.3%である。昨年が28.4%であるので、0.1ポイント減少している。原価とは対照的な動きであり、経費がやや減少したことがわかる。したがって、差し引き、マーチャンダイジング力は0.2%となり、昨年も差し引き0.2%であるので、この時点では、差がないといえよう。したがって、原価、経費面から見る限り、結果の差はなく、マーチャンダイジング力は昨年同様の数字となった。
では、増益の要因はどこにあるかであるが、当然、原価、経費外、すなわち、マーチャンダイジング力以外のところにあり、それが、不動産収入、物流収入等のその他営業収益であるといえる。そこで、その他営業収益を見ると、21.99億円となり、売上対比で何と4.5%にもなる。昨年が4.1%であるので、0.4ポイント、率にして109.7%伸びており、これが、この第1四半期、ヤオコーが増益となった最大の要因である。
この結果を見る限り、恐らく、ヤオコーの経営幹部は納得していないのではないかと思う。本来、食品スーパーマーケットの経営としては、マーチャンダイジング力で勝負したいところであり、原価、経費の改善、すなわち、原価と経費を同時に引き下げ、マーチャンダイジング力を強めたいところであろう。そして、さらに、物流収入、不動産収入等を上乗せし、高い営業利益を勝ち取りたいところであろう。ところが、今期、第1四半期のヤオコーの結果は、経費は若干下げたが、原価が上昇し、差し引き、マーチャンダイジング力は改善せず、その他営業収入のプラスで増益を確保しており、恐らく本意ではないと思われる。次の中間決算までに、どれだけ、マーチャンダイジング力を改善できるか、その中間決算に期待したいところである。
ただ、結果、営業利益は増益となったので、営業キャッシュフローは昨年よりは改善し、昨年が-2.71億円とマイナスであった数字が、5.69億円とプラスに転じた。とはいっても、その金額はわずかであり、特に、この第1四半期は法人税の支払いも重くのしかかり、営業キャッシュフローは可能な限り、増強しておきたいところであろう。しかも、ヤオコーは出店意欲が高く、今期も、投資キャッシュフローで出店関連の投資を22.33億円行っており、この営業キャッシュフローでは全く足りない金額となる。すなわち、キャッシュフローが逆流となり、結果、財務キャッシュフローで補わざるをえなくなり、借入金が増加し、さらに、足りない分を資産の現金を取り崩すことになる。
実際、財務キャッシュフローでは借り入れが若干増加し、トータルキャッシュフローはマイナス、現金を取り崩す結果となった。第1四半期特有の結果ともいえるが、前期の本決算もヤオコーのフリーキャッシュフローはマイナスであり、そのマイナス分を財務キャッシュフローと、現金で補っており、順流のキャッシュフローに変えたいところであろう。そして、そのためにも、キャッシュの大本、マーチャンダイジング力をいかにプラスにするかが問われるところである。
ただ、純資産比率は45.8%と上場食品スーパーマーケット平均の40.6%を超えており、有利子負債も金額では111.67億円と100億円を超えてはいるが、総資本比率では15.4%と平均の27.9%よりは低く、財務的には比較的安定しており、健全な財務状況といえよう。したがって、ストックよりも、フローの問題といえ、ここが、今後、ヤオコーの経営改善の当面の課題といえよう。
このように、この2010年3月期の第1四半期のヤオコーの決算は減収増益となり、やや厳しい結果となった。また、増益となった利益もその要因を見ると、原価、経費が改善し、マーチャンダイジング力が上昇したのではなく、その他営業収入によるところが大きく、気になる結果である。また、増益となったにも関わらず、キャッシュフローが依然として逆流しており、財務、資産の現金に頼らざるをえない投資キャッシュフローとなっていることも気になるところである。ヤオコーが、次の中間、第3四半期、そして、本決算に向けて、どのように経営改善をはかってゆくかに注目したい。
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