ウォルマート、第2四半期決算を公表、減収微増益!
ウォルマートが8/13、2010年度の中間決算を公表した。アメリカの決算は日本の決算とはいくつか違う点があるが、そのひとつが四半期の結果重視であり、中間決算の公表の場合もまず四半期の結果を示し、その後、累計を示すという特徴がある。日本の場合は累計を重視し、四半期を最優先で報じる決算書は少なく、いかに、スピード、いまの経営状況を重視しているかがわかる。
また、それ以上に大きく違うのが、結果の評価である。日本では、増収増益、すなわち、P/Lが重視されるが、ウォルマートの今回の中間、すなわち、第2四半期決算で示される冒頭、はじめの数字は0.88ドルという数字である。これは何かというと、1株当たりの利益、すなわち、EPS(earnings per share)である。昨年が0.86ドルだったので、今年は頑張ったと、株主に主張しており、これがトップメッセージであり、びっくりである。日本の食品スーパーマーケットでEPS(1株当たりの利益)をはじめに示す決算書の説明書は皆無といえ、いかに、ウォルマート(アメリカ?)が株主を重視しているかがわかる。そして、その後に、P/Lの結果が示される。
さて、その結果であるが、売上高は1,008.2億ドル(約9兆5,700億円)となり、-1.4%の減益となった。6ケ月間の累計も-1.0%となり、この第2四半期はやや厳しい売上高の伸び率であたった。その要因であるが、国内のウォルマート部門は0.3%(累計2.0%)と、ぎりぎり昨対を超えたが、海外部門が-5.1%(累計-8.0%)と、やや改善傾向は見えるものの、依然として、ドル高による為替の影響が大きく、売上高が伸び悩んでいるためである。
この第2四半期の海外の売上高は2,396.5億ドル(約2兆2,700億円)と、全体の23.9%と約1/4の売上構成比であるため、全体への影響が大きかったといえよう。ウォルマートは、もし、為替の影響がなければ、海外部門は11.5%の成長であったと試算しており、いかに、海外の為替の影響が大きかったかがわかる。また、サムズクラブ部門も-3.2%(累計-2.4%)と、全体の売上構成比は11.9%とそれほど大きくはないが、不振であり、結果、売上高が伸び悩んだ結果となった。ちなみに、アメリカ国内の既存店であるが4.9%(累計3.7%)と堅調な数字となっており、これを見ても、海外部門の為替の影響がいかに大きかったかがわかる。
これに対して、利益の方であるが、営業利益は58.82億ドル(約5,500億円)であり、昨年対比101.2%とわずかではあるが、増益となった。ただ、26週累計では99.7%の減益となり、依然として、厳しい状況であるといえよう。ちなみに、売上げ対比では5.8%と、高い数字を示しており、当期純利益も3.4%(累計3.3%)と堅調な数字である。
ここで、ウォルマートの原価、経費、そして、マーチャンダイジング力を見てみたい。まず、原価であるが、75.09%(昨年75.94%)であるので、原価が下がっており、結果、売上総利益は24.91%(昨年24.06%)と、0.85ポイント改善している。ここへきて、原価の改善に力を入れ、粗利の改善を図っているといえよう。一方、経費、すなわち、販売費及び一般管理費であるが、19.85%(昨年19.11%)と0.74ポイント上昇しており、やや気になる兆候である。
本来、ウォルマートのビジネスモデルは経費比率を極限まで下げ、そのマネジメント力を武器に、粗利を下げ、結果、売価を下げ、地域一番のEDLP戦略で競争に打ち勝ってゆくというものである。ところが、その原点の経費比率が20%弱まで上昇しつつあり、このままでは売価が上昇する可能性が高く、結果、競争力を落としかねない。経費比率19.85%は日本の食品スーパーマーケットでもオーケーの14.9%を見るまでもなく、もはや低いとはいえず、日本の主要食品スーパーマーケットでもウォルマート以下の経費比率は11社ある。今後、ウォルマートとしては、再度、この経費比率の見直しは、重要な経営課題といえよう。
結果、差し引き、マーチャンダイジング力は5.06%(昨年4.95%)と昨年を上回ったが、経費比率の上昇はやはり気になるところである。ちなみに、マーチャンダイジング力5.06%は日本の食品スーパーマーケットでは3番目に入り、オオゼキ6.7%、アークランドサカモト5.3%の次となり、オーケーの5.0%の上となる位置である。そして、これに、その他営業収入が0.82%(昨年0.78%)のり、営業利益は5.8%となり、この第2四半期は微増であるが、増益となった。ただ、いま見たように、その要因は原価とその他営業収入の伸びで、経費比率の上昇をカバーしている構図であり、経営内容としては、また、本来のウォルマートのビジネスモデルからしても、やや気になる状況である。
このように、2010年度、第2四半期のウォルマートの決算状況は、海外部門が経営の撹乱要因となり、ドル高による為替の影響が大きく、減収となる厳しい数字となった。また、利益は増益とはなったが、その幅はわずかであり、しかも、経費増を原価とその他営業収入の改善でカバーしての増益であり、厳しい経営状況である。今後もドル高基調は続くと思われ、当面、ウォルマートにとっては、海外部門の影響による厳しい経営状況が続くと思われ、いかに、国内部門でカバーするかが課題といえよう。次の第3四半期、ウォルマートがどこまで、売上を改善できるか、その動向に注目である。
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