日経新聞、8/21、8/22、会社研究でイオン特集!
日経新聞8/21、8/22の会社研究コーナーでイオンが取り上げられた。2回に渡って取り上げられた記事であるが、(上)の見出しは、「業績低迷、我慢の投資抑制」、「現金流出、5年で4,900億円」であり、(下)の見出しは、「低価格PBでテコ入れ」、「グループ戦略見直しも」である。また、記事の小見出しは、(上)が、「中国事業拡大見直し」、「銀行の黒字化遅れる」であり、(下)が「値下げ品目を拡大」、「PB比率15%目指す」、「国内最多の17上場子会社」である。
そもそも、この特集が組まれた背景には、7/7に公表されたイオンの2010年2月期決算の第1四半期が、前期の本決算に続き最終赤字となったことにより、イオンの経営改革の方向性が拡大路線から既存店のテコ入れにカジを切りなおしたことへの検証があるという。実際、(上)では、見出し、小見出しのように、拡大路線の見直し、投資の抑制が取り上げられ、(下)では既存店活性化として、PB戦略が取り上げられており、最終的には、この秋に公表されるイオンの中期経営計画で、どれだけ、抜本的な経営改革に踏み込めるかが課題であるとまとめられている。
記事の中では有利子負債の過去10年間の推移と、同様にフリーキャッシュフローの過去10年間の推移が連動して示されている。このグラフを見ると、2005年がイオンの転機となっており、ここを境に、フリーキャッシュフローはマイナスに転じ、これと軌を一にするように、負債が急激に増加し、一気に1兆円を突破しているのがわかる。しかも、記事では、2006年以降の大型投資案件が掲載されており、ダルボット600億円、オリジン東秀525億円、ダイヤモンドシティ688億円、マルエツ257億円、ダイエー514億円、CFC22億円と、これだけでも2,500億円を超えており、記事では、この5年間に4,900億円のキャッシュの流出があったという。
企業経営において投資は将来を見据えた重要な経営戦略であるが、それがキャッシュフローの範囲内で行われていれば問題がないが、イオンの場合は主に有利子負債で賄ってきたことに問題があるといえる。しかも、これらの投資案件からの投資回収が遅れており、タルボットに関しては、債務超過となり、さらに500億円の貸し付けが生じているという。実際、2009年2月期の財務キャッシュフローを見ると、有利子負債の返済が-2,005.15億円、借り入れが3,954.46億円であり、差し引き、1,949.31億円の増加となっており、さらに有利子負債が増加しており、フリーキャッシュフローのマイナスを有利子負債で補っている状況である。
財務的にはかなり厳しい状況になりつつあり、この苦境から脱却するには、営業キャッシュフローを確保し、投資キャッシュフローを抑制し、フリーキャッシュフローをプラスにもってゆくしかないといえ、まさに、この日経の記事が言及している通りであるといえる。ただ、小売業においては、投資=出店ともいえるくらい、新規出店が大きなウェートを占めており、イオンの2009年2月期の投資キャッシュフローを見ても出店関連が-3,671.44億円と、投資キャッシュフローの大半を占めており、ここを抑制することは、将来の成長が確保できないことを意味し、小売業にとっては致命的な問題をかかえることになる。
一方、営業キャッシュフローを増やすには、当期純利益を増やすこことであり、そのためには、マーチャンダイジング力をいかに強化するかが課題となる。マーチャンダイジング力は売上高-原価-経費であり、イオンはこれに対し、日経の記事の(下)では、低価格PBでテコ入れすることを最優先課題としているという解説である。PBとは、マーチャンダイジング力の原価に当たるところであり、いわゆる粗利を見直す最大のマーチャンダイジング戦略ともいえる。
ただ、イオンのマーチャンダイジング力の問題は、この2009年2月度のP/Lを見ると、マーチャンダイジング力は-8.5%であり、原価は71.7%、結果、売上総利益、粗利は28.3%である。一方、経費は36.8%であり、粗利よりも経費に構造的な問題があるといえ、これは、セブン&アイHの経費比率が31.0%であることを見ても明らかである。この経費構造をいかに見なすかが、マーチャンダイジング力を改善する最優先課題であるといえよう。もちろん、PB強化により、粗利を改善することもマーチャンダイジング力を高め、結果、営業キャッシュフローを増加させることにもなるが、同時に、経費構造の改善も避けて通れない課題といえよう。
残念ながら、今回の日経の記事の中では、営業キャッシュフローの改善に関してはPBのみしか、言及されていなかったように思うが、イオンが根本的に解決しなければならない優先課題は、投資キャッシュフローを抑制し、営業キャッシュフローを増加し、フリーキャッシュフローをプラスにもってゆき、財務キャッシュフロー、特に、有利子負債の削減にあり、そのためにも、大本のマーチャンダイジング力の改善、特に、経費構造の抜本的な改革が最優先課題ではないかと思う。この秋に公表されるというイオンの中期経営計画に、経費構造の改革がどのように組み込まれるか、注目したい。
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