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August 19, 2009

ウォルマートCEO、マイクデゥーク氏の経営者心理を探る!

   前回のブログで、ウォルマートの第2四半期決算について取り上げた。特に、P/L面からの分析を主に解説した。そこで、今回は、CF、キャッシュフローに焦点を当て、ウォルマートのCEO、マイクデゥーク氏の経営者心理を探ってみたい。どこまで真相に迫れるかわからないが、無味乾燥な数字の羅列のような決算書から、可能な限り、実際の数字にもとづいて、経営者心理に迫ってみたい。

   まず、経営者が気になるキャッシュフローの最初は、営業キャッシュフローである。この数字が経営のすべてを決めるといえ、ここから、投資、財務キャッシュフローがどのくらい可能かの大枠が決まるので、大事な数字である。今期、第2四半期累計のキャッシュフローは、98.95億ドル(約9,400億円)である。日本円にして、約1兆円であり、すごい金額である。売上げではなく、営業キャッシュフローであるので、この約1兆円をどう投資に振り向け、配当に回すかなど、想像もつかない世界である。ただ、デゥーク氏は恐らく、この金額に満足していないと思われる。昨年が101.64億ドルと100億ドルを上回っていたので、若干であるが、減少しているからだ。

   特に、営業キャッシュフローの70%近くを占める当期純利益が昨年の67.23億ドルから66.88億ドルと減少しており、これは、まさに、マーチャンダイジング力にかかわる数字であり、四半期では、微増であったが、四半期累計は微減となっている。しかも、コスト増が鮮明であり、これが営業キャッシュフローの減少の大きな要因となっているからである。特に、経費比率は長年ウォルマートがこだわってきたマネジメント指標であり、デゥーク氏としては、ここだけは死守したかったのではないかと思う。営業キャッシュフローが増加していれば、まだしも、減少しているので、かなり心理的なインパクトがあるのではと想像される。ついで、減価償却費であるが、34.57億ドル(約3,200億円)であり、これは昨年の3,366億円よりも増加しており、ひと安心というところであろう。この減価償却費を含めると、営業キャッシュフローの大半を占め、あとはここから、その他のマイナスを引けば、結果、98.95億円の営業キャッシュフローとなる。

   次に、投資キャッシュフローであるが、今期は57.48億ドルを投資しており、この金額は昨年の45.27億ドルよりもかなり多く、積極的な投資である。その中身を見ると、出店にかかわる資産への投資が57.44億ドルと、ほぼすべてといえ、昨年が50.74億ドルであるので、113.2%と積極的な投資を行っている。これは営業キャッシュフローの58.0%であり、昨年の49.9%と比べてもかなり多めであり、デゥーク氏が積極策に打って出たといえよう。

   昨年は結果論かも知れないが、出店関連への投資は営業キャッシュフローの50%以内と決めていたのではないかと思われる49.9%という数字であり、絶妙な配分金額である。一般に、営業キャッシュフローの50%を超えた場合はかなり、積極的な投資を行っているといえ、デゥーク氏はここで、積極策に打って出、減収を増収に変えようという心理が強く働いたのではないかと思われる。

   結果、財務キャッシュフローへ回せるフリーキャッシュフローは41.9%となり、昨年の55.4%と比べ、かなりの配分の違いである。金額でも41.47億ドルと56.37億ドルの違いがあり、約15億ドル、1,500億円弱の金額の差となる。当然、財務キャッシュフロー上で何かを圧縮せざるをえなくなり、ここは、悩むところであろう。

   そこで、キャッシュフローの核心ともいうべき、財務キャッシュフローを見てみると、最も重要な配当は21.29億ドル(約2,000億円)と昨年の18.78億ドルと増やしており、しかも、自社株買いも27.92億ドル、昨年の21.84億ドルと増やしている。フリーキャッシュフローが減少したにも関わらず、増やしており、びっくりである。配分を見ると、営業キャッシュフロ-の21.5%であり、自社株買いも入れると、株主へは49.7%と約半分である。ちなみに昨年は39.9%であるので、積極的な株主への配分である。

   何でこんなことが可能となったかであるが、答えは、長期借入を29.56億ドル(約2,800億円)行い、返済をほとんどしなかったためである。昨年は46.48億ドルの長期借入を行い、40.61億ドルの返済をし、差し引き、若干の借入だったが、今期は大きく借入を増加し、結果、配当などの株主対策に充てることができたことになる。デゥーク氏の苦渋の決断といえよう。ウォルマートは現在416.60億ドルと約4兆円近い有利子負債があり、総資産の24.6%にも及ぶ。できれば、負債を削減したいところであろうが、逆に増やしている。そうまでしても、投資家への配分を優先したといえるデゥーク氏の経営決断といえ、改めて、株主重視が最優先となった今期のキャッシュフローであるといえよう。

   今回のウォルマートの第2四半期決算の冒頭が0.88ドルとEPS(一株当たりの利益)からはじまり、昨年の0.86ドルを上回ったことを強調しているのは、このキャッシュフローを見ると、デゥーク氏のまさに、叫びともいえ、経営者の心理が強く表れた結果といえよう。ただ、これほどまでに、株主を重視せざるをえないのかと、あらためて、経営者の心理、デゥーク氏の心痛が偲ばれる。

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