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August 16, 2009

続、出店余力って何だ、なぜ、オオゼキがMBO?

   前回は食品スーパーマーケットにとっての最も重要な経営戦略がマーチャンダイジング戦略と並び、出店戦略であることを述べた。そこで、今回は、実際の出店戦略を支える出店余力の実態はどのような数字であるかを、2009年度版、食品スーパーマーケット業界上場約50社の決算の結果を独自にまとめた財務3表連環表をもとに見てみたい。

   まず、結論からいうと、上場食品スーパーマーケットNo.1はオオゼキである。28.7%という数字であり、No.2のマックスバリュ東海が16.6%、また、出店余力がプラスになる食品スーパーマーケットが約50社中8社しかなく、さらに、全体平均が-22.9%であるので、オオゼキの28.9%が断トツであることがわかる。ちなみに、非上場であるが、もう1社、オオゼキを超える食品スーパーマーケットが1社ある。ヨークベニマルである。ヨーベニマルの出店余力は29.4%であり、オオゼキをわずかに上回り、食品スーパーマーケット業界トップである。おそらく、この数字、約30%が食品スーパーマーケット業界の出店余力の極値、最高到達点ではないかと思う。

   皮肉なことに、食品スーパーマーケット業界で恐らく、出店余力、No.1、No.2のヨークベニマル、そして、オオゼキが、ヨークベニマルはすでに、オオゼキは来期からはMBOにより、非上場になるという。これは一体何を意味しているのだろか。偶然ではないように思える。

   出店余力が増すとは、その数式からもわかるように、出店余力=純資産-出店にかかわる資産であるので、どこまで、純資産の範囲内で出店が可能かどうかを表していることになる。出店余力がプラスになると、純資産が出店にかかわる資産を上回り、自己資本の範囲内で新規出店が可能な状況を意味している。逆に、出店余力がマイナスになると、自己資本の範囲内では新規出店ができず、負債に依存する出店を余儀なくされている財務構造であるといえる。当然、このマイナスが大きくなればなるほど、財務状況が悪化し、やがては、出店が止まり、負債の削減のための経営再建の立案を余儀なくされ、経営が逆回転をはじめることになる。

   一方、出店余力が増せば増すほど、負債に頼らずに、自己資本の範囲内で新規出店が可能となり、中長期に渡って、安定的に新規出店を果たすことができるようになる。出店余力、食品スーパーマーケット業界No.1、No.2のヨークベニマル、オオゼキはまさにこの境地に至った食品スーパーマーケットであり、しかも、約30%のプラスと、ずば抜けた数字を達成した。

   したがって、過大な出店をしない限り、今後の安定成長が財務的には保証された環境にあるといえ、負債に一切頼ることなく、自己資本で十分に新規出店が可能となった。しかも、過大出店をせず、純資産の中でも、当期純利益、さらには、CFの営業キャッシュフローの範囲内での出店が可能になれば、そもそも、事業のスタートにあたって調達した資本金、その後、上場等によって、得た追加の資本金に頼ることなく、事業を継続することが可能となる。そうなると、資金を経営活動以外の外部から調達する意義がうすれ、自らのマーチャンダイジング力により生み出される、最終的には当期純利益につながるキャッシュや、減価償却費等を加えた営業キャッシュフローで出店が十分に可能となる。これは株式会社の根本、資本の存在意義そのものを問うような話であり、資本家の出資による事業の継続は必要なく、経営陣自らの経営力によって、事業の継続ができるということであり、まさに、今回のオオゼキのMOBは出店余力が極値に至ったゆえに、必然的に起こった経営陣の経営判断といえよう。
  
   では、実際、オオゼキの財務状況をP/L、B/S、CFのまさに財務3表連環表をもとに見てみたい。オオゼキの出店にかかわる資産は158.94億円(総資産の48.6%)であり、これはオオゼキの店舗数が29店舗であるので、1店舗当たり5.48憶円となる。一方、純資産は252.85億円(総資産の77.3%)であり、ここから出店余力は28.7%となるが、問題は、この中の当期純利益であるが、ここから目をCFに転じて、営業キャッシュフローを見ると、今期は39.27億円である。ちなみに、当期純利益は52.82億円、減価償却費は4.41憶円である。したがって、単純に営業キャッシュフロー39.27億円を全部出店に充てた場合、39.27億円÷5.48億円となり、7.16となり、7店舗の新規出店が通常の営業活動の中で毎年可能ということになり、外部から一切資金調達なしに、通常の経営活動を通じて、安定的な新規出店が可能となる。このような食品スーパーマーケットは日本には、先にあげた出店余力No.1のヨークベニマルぐらいであり、これが今回、オオゼキがMBOに踏み切った財務的な根拠のように思う。
   
   このように、出店余力は高ければ高いほど、負債に頼らず、自己資本の範囲内で出店が可能となるが、今回のように、この数値が30%という極値となると、企業経営の根幹ともいえる資本主義の制度、そのものの存在意義が問われることとなり、あえて、資本家から資金調達を行い事業を継続しなくとも、経営陣のマネジメント力で生み出すマーチャンダイジング力で事業の継続、特に、食品スーパーマーケットでは最も重要な出店戦略が可能となり、MBOが必然的に起こるのではないかと思う。その意味で、今回のオオゼキのMBOは出店余力からから見ると、必然必要な経営決断ともいえよう。

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