オオゼキ、MBOはじまる、卒業!
オオゼキが、8/14、「MBO の実施及び応募の推奨に関するお知らせ」を公開した。公開買い付け価格は3,750円であるが、8/14からの株価の推移は、8/14(3,010円)、8/18(3,710円)、8/19(3,710円)と、翌日には、買い付け価格3,750円の手前まで跳ね上がっており、売買高も、8/14(5,000株)、8/18(166,700株)、8/19(347,800株)と、急激に増加している状況である。公開買い付け期間は、平成21年8月18日(火曜日)から平成21年10月1日(木曜日)まで(30営業日)であり、このまま、順調に買い付けが進めば、オオゼキは上場廃止となる。
今回のMBOはオオゼキの全株式を対象としており、11,704,080株であり、上限は設けておらず、下限が8,332,190株(71.1%)である。仮に、全株取得となると、その金額は438.903億円となる。オオゼキはこのMBOにあたって、代表取締役会長兼社長の石原坂寿美江氏が7/17付けで、ひまわり株式会社を設立しており、ここがMBOの受け皿になるという。金融機関からも、最大450億円の融資を受けることが決まっており、オオゼキが連帯保証人となり、さらに、オオゼキの一定の資産等を担保に供することもあるという。まさに、オオゼキと一体となったMBOのための会社である。
ちなみに、MBOの下限となった8,332,190株の根拠であるが、まず、自己株式(946,920 株)、次に大株主の石原坂寿美江氏が保有する株式(3,000,000 株)、石原坂多聞氏が保有する株式(155,500株)、佐藤由美氏が保有する株式(1,804,800 株)を控除した株式数(6,743,780 株)の2分の1に相当する株式数(3,371,890 株)に、石原坂寿美江氏が保有する株式(3,000,000株)、石原坂多聞氏が保有する株式(155,500 株)、佐藤由美氏が保有する株式(1,804,800 株)を加えた株式数が8,332,190 株となるとのことで、これを下限としたという。結果、71.1%となり、2/3を超える株式数となる。また、MBO後には、上記、大株主は、合計、約163 億円を公開買付者に出資する予定であるという。
以上が、オオゼキのMBOの概要であるが、では、オオゼキがなぜこの時期にMBOに踏みきったのかであるが、最大の理由は、「今後も継続して株式を上場することにより得られるデメリットがメリットを上回るものと考え、この点からも、マネジメント・バイアウトの手法が当社の中長期的な企業価値の向上にとって最善の手段であると考えるに至りました。・・」とのことであり、上場デメリットがメリットを上回ると判断したことにあるという。
では、そのデメリットは何かであるが、「企業の内部統制(J-SOX)や四半期決算への対応など、近年の度重なる法制度の改正等により、資本市場に対する規制も強化されており、株式の上場を維持するために必要なコスト(株主総会の運営や株主名簿管理人への事務委託に要する費用、金融商品取引法上の有価証券報告書等の継続的な情報開示に要する費用等)は、今後、益々増大することが見込まれる」とのことである。
これに対して、メリットであるが、「エクイティ・ファイナンスによる資本市場からの資金調達、知名度の向上による優れた人材の確保、取引先に対する社会的な信用力の向上等、上場企業として様々なメリットを享受してまいりました。・・」とのことであり、その最大のメリットが資金調達にあったといえよう。ところが、オオゼキも、「現在の当社の財務状況等からは、当面はエクイティ・ファイナンスによる資金調達は見込まれず、・・」と説明しているように、上場の最大のメリットの資金調達が必要なくなったことが大きかったようである。
したがって、MBOによって、「公開買付者が全ての当社普通株式を取得し、実質的に資本と経営を一体とする、・・」ことができれば、上場メリットよりも、デメリットが大きく上回り、上場している意義がないと判断したものといえよう。
実際、オオゼキの現在の純資産比率は77.3%であり、有利子負債は0円、無借金経営であり、しかも、以前、ブログでも解説したが、出店余力は28.7%、上場食品スーパーマーケットNo.1である。さらに、営業キャッシュフローの範囲内で最大7店舗は新規出店が可能な財務状況であり、エクィティファイナスによる資金調達は全く必要なく、むしろ、逆に、資金を融通できる状況でもあるといえる。であれば、MBOにより、資本と経営を一体化させたいという強いニーズが発生してもおかしくないし、事実上、資本の意義が薄れていた状況といえよう。また、営業キャッシュフローの大本となる、マーチャンダイジング力もオオゼキは上場食品スーパーマーケットNo.1の6.7%であり、当期純利益は売上対比4.7%で、これも上場食品スーパーマーケットNo.1である。要は、キャッシュを生み出す力が上場食品スーパーマーケットNo.1であり、まさに、財務の連環が最高の早さで、最大の効率で回っているということであり、そこに、外部からの資金の入る余地、スキがない状況にあったといえる。
その意味で、今回のオオゼキのMBOは極めて前向きのMBOといえ、資本主義制度の最大のメリット、株式を発行し、広く投資家から資金を集め、会社を設立し、事業を行い、株主にその利益を還元するという株式会社の仕組み、そのものからの卒業ともいえよう。今後、オオゼキの経営が非公開となるので、その実態がベールに包まれることになるが、オオゼキが株式公開後残した経営データは、あらゆる数値が上場食品スーパーマーケットNo.1を示しており、食品スーパーマーケット業界としては、最良の企業として、学ぶべき貴重な経営の成果を残してくれたといえよう。オオゼキが非上場になっても、この貴重な成果は生きており、今後、このオオゼキの数値を上回る食品スーパーマーケットの出現を期待したいところである。
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