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August 22, 2009

オオゼキにつぐ、食品スーパーマーケット業界のMBOは?

   オオゼキのMBOが動き出した。MBOとはマネジメントバイアウトのことであり、経営者自らが自社の株を買い取り、資本と経営を一体化させることである。一般に、MBOが行われる要因としては、敵対的な買収に対しての対抗策とか、思い切ったリストラが必要となり、株主に長期に渡り配当が出せなくなる場合などのケースが多いといえるが、オオゼキの場合はどちらにもあたらず、上場食品スーパーマーケットNo.1の経営指標を誇り、最高の業績ともいえる状況でのMBOといえ、異質なケースといえよう。

   ただ、やや見方を変えれば、敵対的な買収に対しての対抗策ととれないこともない。オオゼキの創業者であった佐藤達雄氏が亡くなって以来、その持ち株が相続により、分散したため、何か、不測の事態が発生した場合は、オオゼキの経営権が一部移動し、さらに、そこからTOBがかかった場合は、オオゼキの買収が可能となってしまうからである。したがって、この不測の事態を避けるためには、TOB対策をはかることも重要ではあるが、根本的にこの問題を解決するには、再度、分散した株式をまとめ、さらに、一般株式まで買い取ってしまえば、TOBの可能性は極めて低くなるからである。

   オオゼキの今回のMBOはこのようなことも考えられるが、実際には、オオゼキがMBOのお知らせで説明しているように、「上場デメリットがメリットを上回った」、特に、株式市場からの資金調達の意義ながなくなったということが大きいように思う。そこで、改めて、現在上場している食品スーパーマーケットで「上場デメリットがメリットを上回った」企業がどのくらいあるのかを見てみたい。場合によっては、その中から、今回のオオゼキに続く、MBOを実施する食品スーパーマーケットがあらわれるかもしれないからである。

   まず、資本市場から資金調達が必要な状況に経営があるとはどういうことであろうか。それは、純資産の範囲内で出店が賄われてないケースをまずあげることができる。なぜなら、食品スーパーマーケットにおいて最重要な経営戦略は出店といってもよく、新規出店が、経営の規模を拡大し、株主の配当を増やす最大の手法だからである。したがって、その出店戦略が純資産の範囲内で賄われていない経営状況の場合は、成長戦略を維持するためには、負債を増加させるか、純資産を増加させるか、どちらかしかなく、できれば、負債に頼ることなく、純資産の範囲内で出店を行いたいところである。そして、そのためには、マーチャンダイジング力を強化し、純利益を増やすか、資本の増強を行い、資本金を増やすことになり、この資本金を増やすことが、まさに、上場メリットといえ、株式の増資による資金調達といえる。

   したがって、MBOの起こる可能性の高い食品スーパーマーケットは資金調達が資本市場から必要のない、純資産の範囲内、さらに、純利益、すなわち、キャッシュフローの範囲内で安定的に新規出店が可能な食品スーパーマーケットであるといえる。このような条件を見たしている食品スーパーマーケットは、出店余力が高く、営業キャッシュフローが高く、さらに、マーチャンダイジング力の強い食品スーパーマーケットであるといえる。そこで、まず、出店余力0%以上の食品スーパーマーケットを見てみてみると、ヨークベニマル29.4%、オオゼキ28.7%、マックスバリュ東海16.6%、東武ストア11.2%、大黒天物産9.8%、サンエー7.9%、アオキスーパー7.8%、いなげや6.8%、九九プラス5.4%となる。

   次に、この中で、上位2社のヨークベニマルとオオゼキを除き、営業キャッシュフローが高い順に見ると、サンエー119.44億円、マックスバリュ東海61.50億円、いなげや47.91億円、大黒天物産40.97億円、東武ストア32.98億円、アオキスーパー28.91億円、九九プラス22.65億円となる。さらに、マーチャンダイジング力を見てみると、大黒天物産4.9%、サンエー3.4%、東武ストア2.6%、マックスバリュ東海1.7%、アオキスーパー-0.2%、いなげや-1.6%、九九プラス-1.8%となる。また、これらの食品スーパーマーケットの有利子負債の比率を見てみると、マックスバリュ東海0.0%、アオキスーパー0.8%、東武ストア3.7%、サンエー4.4%、九九プラス7.0%、いなげや9.7%、大黒天物産11.9%となる。

   こう見ると、アオキスーパー、いなげや、九九プラスは、マーチャンダイジング力がマイナスであり、さらに、九九プラス、いなげやは有利子負債が多く、上場メリットをいかし資本市場から資金調達を行い、経営基盤を強化した方が良いように思える。また、大黒天物産の有利子負債がやや多いのが気になるが、出店余力は高く、マーチャンダイジング力も高く、本来、借り入れに頼ることなく、かなりの新規出店はできる財務余力があるといえる。したがって、マックスバリュ東海、東武ストア、大黒天物産、サンエーは資金調達という観点から見ると上場メリットはオオゼキ同様かなり弱いといえよう。

   今回のオオゼキのMBOは企業経営と資本調達という株式会社の根本を問うている問題といえ、株式市場としては優良な企業の上場を促したいところであるが、逆に優良企業にとっては資金調達を目的とした株式上場はメリットは薄いといえる。そう考えると、今後は優良な企業から株式市場を去ってゆくことも考えられ、まさに、今回のオオゼキはMBOにより、株式市場を卒業したといってもよいといえよう。今後、優良食品スーパーマーケットが株式市場をどう評価するか、まずは、先に上げた資金調達というメリットが弱くなった企業の今後の動向に注目である。

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