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August 30, 2009

ワインのPOPを考えてみる!

   日経MJ、8/28の記事に、「ワイン売り場の情報提供」という投稿記事が掲載された。シニアソムリエ、米野真理子氏の記事である。サブタイトルは、「難解な説明コメントは使わない」、「顧客の声を紹介し、親しみやすさを」、「ランキング手法を使うのも手」というものであり、ワインをいかに販売してゆくかのポイントが様々な手法を駆使して取り上げられていた。

   ワインについては、以前、チェーンストアエイジで、POSデータの詳細な分析にもとづくマーチャンダイジング政策を取り上げたことがあるが、今回の日経MJの記事にあるように、ワインはマーチャンダイジングだけでは解けない問題がある。マーチャンダイジングは一般に商品分析にもとづく、商品の売上げを上げるためのあらゆる政策のことであるが、ワインは、これに、顧客分析にもとづく、顧客からの売上げを上げる政策を強く打ち出す必要があるからである。これは、通常のPOS分析ではなく、ID-POS分析、すなわち、CRMの分野であり、この角度からワインはマーチャンダイジング政策を再構築する必要があり、マーチャンダイジングというよりも、マーケティングに近い政策が決め手となる独特な商品であるといえる。

   ワインは現状のPOS分析、家計調査データ等からも、独特な商品である事実がいくつも存在する。たとえば、先のチェーンストアエイジの記事の中で取り上げたPOS分析の時も、全国の食品スーパーマーケット約400店舗のワインの種類は4,000種類(SKU)を優に超え、しかも、客数PI値、すなわち、導入対象店舗の客数の割合が10%を超える商品はほとんどなく、最大でも30%を超えるかどうかである。ほとんどが、数%の世界であり、これは、各食品スーパーマーケットのワインの品揃えがいかにばらついているかを表しているといえる。このような食品スーパーマーケットのカテゴリーは、稀であるといえ、似たカテゴリーを探すと、焼酎、乙類が良く似ているといえよう。そう考えると、ワインと焼酎はマーチャンダイジング政策が良く似ており、単純なマーチャンダイジングでは解けない、マーケティング戦略が必要な独特な商品といえよう。

   また、家計調査データを見ると、ワインは客数PI値が10%を切り、このような客数PI値の低い商品はウィスキーぐらいであり、ワインはごく限られた顧客が嗜む商品であるといえる。ちなみに、この6月度の家計調査データの数字を見ると、8.1%であり、ウィスキーが3.3%であるので、ウィスキーよりは高いが、8.1%は90%以上、月に1回もワインを購入しない家計があるという数字であり、食品スーパーマーケットの取り扱い商品の中では極めて特異な商品であるといえよう。

   したがって、ワインは2つの角度からのマーケティング、マーチャンダイジング政策が必要といえる。ひとつは、食品スーパーマーケットに来店しても、購入しない90%以上の顧客に購入を促す、まさに、マーケティング政策である。そして、もうひとつは、一旦、ワインを購入した顧客に再度、リピート購入を促すマーチャンダイジング政策である。この2つの角度からのマーケティング、マーチャンダイジング政策がバランスよく展開されることが、ワインの売上を押し上げてゆくポイントであるといえよう。

   このような観点から、改めて、日経MJのワインの記事を読んでみると、はじめの方で、「今までワインに興味を持っていなかった方を取り込む仕掛けをつくる方が早道である」ということであり、これはまさにワインのマーケティング政策といえよう。具体的には、手書きPOP、顧客の感想POP、ワインランキングなどであるという。特に、このワインランキングは、まさにCRMの手法であり、通常のPOS分析が全体客数を分母にしたランキングしか示せないが、CRM、ID-POS分析では、様々な顧客を分母にし、ランキングを、それこそ無限に作れるといえ、このノウハウをいかに応用するかがポイントであるといえよう。

   また、記事の後半では、「購買履歴をデータベース化し、ポイントを絞ったDMで4割近いレスポンスを上げた」という内容が紹介されているが、これはまさに、CRMの独壇場ともいえ、これ以外にも、逆に、このデータをマーチャンダイジングに活かし、品揃えの活性化にいかにつなげるかもポイントであろう。ワインは重点商品に絞った途端に売上げが落ち、品揃えの売上げ構成比が50%を超える典型的なカテゴリーであり、いかに、4,000種類を超える品揃えの中から選び抜き、絶えず、品揃えを変化させるかもマーチャンダイジング上の重要な政策であるといえる。

   今回の日経MJの記事は、まさに、この独特なワインの売上げをいかに上げるかについての実践での貴重な事例が紹介されており、これに、CRM分析が加わると、さらに強力なワインのマーケティング、マーチャンダイジング政策ができあがるといえ、今後、ワインは、POS分析の進化とともに、新たなマーケティング、マーチャンダイジング政策が作られ、検証され、市場を拡大してゆくのではないかと思う。いずれ、機会があれば、ワインの詳細なCRM分析を試みたいと思う。

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