出店余力って何だ、食品スーパーマーケットの現状!
食品スーパーマーケットにとって最も重要な経営戦略は何かと問われた場合、意見がわかれるところであろうが、即座に出てくる答えは、マーチャンダイジング戦略であろう。ただ、マーチャンダイジングは経営の重要な戦略のひとつではあるが、経営という観点から考えた場合は、片手落ちである。経営とは入りと出のバランスをどう維持するかであるといえ、入りの重要な経営戦略がマーチャンダイジング戦略といえるが、出についても重要な経営戦略が当然ある。それが出店戦略である。
食品スーパーマーケットはその両輪の戦略が相まって成長発展してゆくものであり、このバランスがとれていない食品スーパーマーケットはやがて、経営が行き詰まり、衰退してゆく。したがって、はじめの問い、食品スーパーマーケットにとって最も重要な経営戦略は、入りではマーチャンダイジング戦略であり、出では出店戦略といえ、この2つが最も重要な食品スーパーマーケットの経営戦略であり、そのバランスを維持することが、食品スーパーマーケットの経営そのものであるといえよう。
では、食品スーパーマーケットにおける出店戦略とは何かであるが、その答えは、出店にかかわる資産に見合った資金を確保することであり、このバランスを常に保ちながら、5年、10年先まで安定した成長ができる強固な経営体制を築くことであるといえる。
食品スーパーマーケットが出店をしてゆくためには何が必要か。P/L面を除き、B/S面でみると、答えは、4つに限定できる。土地、建物、保証金、そして、在庫である。この4つが食品スーパーマーケットの出店には必須のものであり、しかも、この4つを合計すると総資産の70%を超える。今期決算の上場食品スーパーマーケット約50社で見た場合、土地24.4%、建物27.3%、保証金11.8%、在庫8.6%となり、合計72.1%となる。ただし、この中には、一部GMS、ホームセンターに近い食品スーパーマーケットも入っている。食品スーパーマーケットとこられ小売業との最大の違いは在庫であり、食品スーパーマーケットの在庫を見ると、5%前後であり、これを出店にかかわる資産に入れるかどうかは微妙な数字である。そこで、ここでは、この在庫を抜いて考えてみると、3つの資産、土地、建物、敷金の合計は63.5%となる。
すなわち、食品スーパーマーケットは総資産の60%以上が出店にかかわる資産で占められているといえ、まさに、この資産の確保、そして、それに見合った資金の調達が成長にとっては絶対条件といえ、このバランスが崩れた時、成長が止まり、衰退するといえる。逆に、このバランスを維持し、5年、10年先まで可能な財務余力を持った時、食品スーパーマーケットは力強い成長軌道にのり、将来の成長が約束されるといえよう。
そして、このバランスがまさに食品スーパーマーケットの出店余力といえ、この出店余力を食品スーパーマーケットのB/Sからどう読み取るかが、食品スーパーマーケットの出店戦略を読み解くカギといえる。残念ながら、B/Sでは、この出店余力は指標化されておらず、B/Sから出店関連の資産をピックアップし、合計し、その資金をどのように賄っているかを独自にチェックする必要がある。
ところで、出店にかかわる資産は土地、建物、保証金を合わせて、上場食品スーパーマーケットは63.5%であることはわかったが、では、その資金調達はどうなっているだろうか。それを見るためには、資産から負債+純資産に目を転じることが必要となる。特に、5年、10年先までの安定した出店をはかってゆくためには、可能な限り、負債に依存せず、純資産の範囲内で出店が可能な財務構造が望ましいといえる。そこで、純資産比率(自己資本比率)を見てみると、今期決算の上場食品スーパーマーケットの平均値は、40.6%である。したがって、この瞬間に、出店にかかわる資産を約20%、正確には22.9%のマイナス分を負債に依存している財務構造となっていることがわかる。
その意味で、上場食品スーパーマーケット約50社全体としては、出店余力はやや負債に依存した財務構造といえ、今後、5年、10年先の安定成長を目指す上には、一層の負債からの脱却、可能な限り、純資産の範囲内での出店ができる強固な財務構造をつくる必要があろう。出店戦略はまさに、このバランスをどうとるかにあるといえ、出店にかかわる資産、土地、建物、保証金の合計と純資産とのバランスであるといえよう。
このように、食品スーパーマーケットの最も重要な経営戦略は入りは、マーチャンダイジング戦略であるが、出は、出店戦略にあるといえる。そして、この出店戦略を構築するためには、出店にかかわる資産である、土地、建物、保証金の合計の資産を純資産でどこまで賄えるかのバランス、すなわち、出店余力をどこまで高められるかにあるといえ、できれば、上場食品スーパーマーケットの平均-22.9%は上回りたいところである。目標としては、プラスマイナス0%、超安定を狙うのであれば、10%以上は欲しいところであろう。
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