キャッシュフローから経営者心理を読み解く、その1!
一般に財務諸表はP/L(損益計算書)、B/S(貸借対照表)、そして、CF(キャッシュフロー)の3表から成り立ているが、この中で、最も新しい財務諸表がCFである。CFは現金の流れを素直に表にしたものであるが、その実態をつかむことは意外に難しい。ただ、その流れがつかめると、このCFから経営者の微妙な揺れ動く経営心理をつかむことができる。その意味で、CFは財務3表の中では最も、企業の経営方針、経営者の決断、その経営決断にいたった経営者の心理状況が垣間見えて、興味深いものである。
CF(キャッシュフロー)がなぜ、わかりにくいかというと、キャッシュ(お金)の流れが直線ではなく、逆流する場合もあり、そこを読み解くのが意外に難しいからである。CFの分類は大きく、3つに分かれ、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローとなるが、この3つが順番に直線でつながらないところに理解しづらい原因があるといえよう。
通常、CFを分析する時には、この3つがプラス、マイナスの場合があるので、2の3乗の8パターンで分析することが多い。8パターンとは、営業キャッシュフローがプラスの場合、マイナスの場合、投資キャッシュフローがプラスの場合、マイナスの場合、そして、財務キャッシュフローがプラスの場合、マイナスの場合であり、プラス、プラス、プラスからマイナス、マイナス、マイナスまでの8パターンが存在する。ただ、この8パターンに序列、すなわち、良い、悪いをつけることはあまり意味がなく、その中身を精査しないと問題がつかめないのが実態である。
なぜか、それは、お金が直線的に流れない場合があり、逆流する場合があるからである。逆にいえば、この3つの分類はそれぞれが、順番に直線でつながっているのではなく、逆流する場合もあり、それが、順番に直線的に表現されているところにわかりにくさがあるといえる。
CFの中で、企業の最も重要な判断は投資キャッシュフローであるといえよう。なぜなら、投資が企業の成長を決定づけるからである。特に、食品スーパーマーケットの場合は新規出店が投資にあたり、新規出店ができなくなった食品スーパーマーケットは成長がとまり、やがては、衰退してしまうからである。
この投資キャッシュフローはCFの中では、営業キャッシュフローの次にあり、その次が財務キャッシュフローである。したがって、このCFの表を見る限り、キャッシュの流れは営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローへと直線的に流れているように思える。事実、フリーキャッシュフローを計算する時には、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを足し、その合計をフリーキャッシュフローとし、財務キャッシュフローへとつなげるのが一般的であり、これを見る限り、キャッシュは直線で流れているように思える。
ところが、実際のCFを分析すると、投資キャッシュフローを営業キャッシュフローで賄えない場合が多々存在する。この場合、投資キャッシュフローのマイナス分を営業キャッシュフローで賄えないので、足りない分を財務キャッシュフローで賄うこととなる。すると、キャッシュの流れに逆流が加わり、財務キャッシュフローから投資キャッシュフローへというキャッシュの流れが生じる。これが逆流のキャッシュフローである。主な財源は、金融機関から借り入れを起こす場合が多いが、そのキャッシュを投資キャッシュフローの不足分に充てることになる。したがって、投資キャッシュフローへのキャッシュの流れが、営業キャッシュフローからの流れと、財務キャッシュフローからの流れとの2重の流れが生じることになる。
さらに、このような逆流のキャッシュフローが起こった場合、財務キャッシュフローの中身も、本来であれば、株主への配当、資産への現金の計上を、順流の流れであれば、営業キャッシュフローの範囲内で賄えるのであるが、逆流となると、借入金で配当を行い、借入金から投資を引いた残りを資産へ現金計上する場合もある。一見すると、配当を出し、現金も増加し、健全な経営のように見えるが、CFの中身は、借入に依存した財務構造となり、結果、純資産の減少、負債に大きく依存した経営を余儀なくされ、経営の選択肢が狭まることになり、窮屈な経営となる。
このように、CF(キャッシュフロー)は、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、そして、財務キャッシュフローと直線的にキャッシュの流れが順流で説明できる場合は、極めてわかりやすい財務諸表のひとつであるが、逆流が生じた場合は、一転、理解が難しくなる。特に、投資が多額に及び、営業キャッシュフローで賄えない場合や、営業キャッシュフローが減益決算となり、厳しい場合には、金融機関から借入を起こし、財務キャッシュフローで投資キャッシュフローを賄う、逆流のキャッシュの流れが生じる。しかも、その余力で配当、現金の計上が行われると、CFからだけでは、経営判断が難しくなり、負債、純資産の結果も合わせてみないと実態がつかめないことになる。したがって、この辺の微妙な判断が極めて重要な経営判断でもあり、ここに、経営者の経営心理が強く表れるといえよう。次回、この点をさらに、掘り下げてみたい。
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