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August 20, 2009

オリンピック出店再開と出店余力の現状!

   8/19の日経MJで、オリンピックの出店再開の記事が掲載された。「オリンピック、出店再開、2年半ぶり、東京・港にDS」、「財務体質の改善一段落」という見出しの記事である。オリンピックはハイパーマーケットを主力業態とし、首都圏に46店舗の食品スーパーマーケットを展開するディスカウントストアであり、他にホームセンターも20店舗近く展開しているが、2年半ぶりの新規出店をこの9月、10月とあいついで、実施するという。一般に食品スーパーマーケットが新規出店を果たすには、財務的な裏付けが必要であるが、記事によれば、財務体質がここ数年のリストラで改善したとのことで、再び、新規出店により、成長軌道に乗せるとのことである。

   そこで、オリンピックの2009年度2月期決算をもとに現状の出店余力から改めて、特に、新規出店という観点からオリンピックの現状を見てみたい。オリンピックの出店余力、すなわち、純資産-土地、建物、敷金・保証金等の合計は-26.2%である。この数字が高いか低いかであるが、上場食品スーパーマーケット約50社の平均が-22.9%であるので、平均よりもやや低い数字であり、ちょうど30番目となる。本ブログでも何回か取り上げているが、トップはヨークベニマルの29.4%、No.2がオオゼキの28.7%であり、この2社は食品スーパーマーケットの限界に近い数値であるが、平均が-22.9%であるので、オリンピックはほぼ平均に近い数字といえよう。

   ただ、オリンピックはハイパーマーケットが主力業態であり、全体としてもディスカウント業態といえる。そのため、通常の食品スーパーマーケットと比べ、在庫が極端に多く、総資産比率を計算すると、15.0%と極端に高い数字となる。食品スーパーマーケットの平均が5%前後であるので、約3倍の数字である。ちなみに、アークランドサカモトが17.0%、PLANTが20.0%であるので、まさに、ホームセンターに近い数値であり、オリンピックの出店余力を見るには、この在庫も加えた方が良いといえよう。

   そこで、在庫を加えた出店余力を改めて計算してみると、オリンピックの純資産比率が41.6%、出店にかかわる資産が67.8%であるので、これに在庫15.0%を加えると、差し引き-41.2%となる。この数字で改めて、出店余力のランキングを見ると、40番前後となる。したがって、現状ではかなり、出店余力が厳しい状況であり、これまで、リストラを再優先し、新規出店に踏み切れなかった要因が、この出店余力の厳しさにあったといえよう。

   また、出店余力のもう一方の純資産比率であるが、41.6%と約60%が負債に依存する財務構造であり、有利子負債は総資産対比で34.5%と、上場食品スーパーマーケットの平均が27.9%であるので、依然として高い水準である。ただ、純資産比率41.6%は上場食品スーパーマーケット平均が40.6%であるので、ほぼ平均である。日経MJの記事では売上高対比で有利子負債の比率を示していたが、実際計算してみると、21.4%であり、記事の内容にあるように、以前の33%と比べると大きく改善して来ている状況である。こう見ると、もう一歩、純資産比率を引き上げたいところではあるが、上場食品スーパーマーケットのほぼ平均まで改善してきているといえ、以前よりも、出店余力が高まってきているといえよう。

   そこで、まさに、今後の新規出店を占うキャッシュフローを見てみたい。新規出店関連は投資キャッシュフローがまさに、その状況を示すが、オリンピックの投資キャッシュフローは7.09億円のプラスであり、これは極めて珍しい数字である。通常は、新規出店関連の投資がなされ、マイナスのキャッシュフローとなるが、プラスになる場合は、資産等を売却しており、財務キャッシュフローの原資を生み出している場合が多い。実際、オリンピックの投資キャッシュフローの中身は、新規出店関連が-10.10億円と投資がなされているが、有形固定資産の売却、差し入れ保証金の回収等があり、プラスとなっている。したがって、営業キャッシュフローの44.84億円を加え、フリーキャッシュフローは51.93億円となり、これが、財務キャッシュフローで有利子負債の返済に大半が充てられている。昨年度は今期以上に有利子負債の削減がなされており、まさに、日経MJの記事で言及されていたようにリストラを最優先に取り組んできたといえよう。

   こう見ると、今後はさらに有利子負債の削減を目指すか、日経MJの記事にあるように、出店再開を目指すか、この数字を見る限り、難しい経営判断であるとえよう。今回、記事を読む限りでは、今後の新店2店舗はいずれも、小型の食品スーパーマーケットであり、出店にかかわる資産が比較的低く、しかも、1店舗は居抜き出店であり、出店にかかわる資産はほとんどかからない状況である。本格的な新規出店、特に、主力業態のハイパーマーケットの新規出店にはもう少し、財務体質の改善が必要と思われるが、今回のような小型食品スーパーマーケットに関しては、十分に可能であり、当面、このタイプの出店が中心となってゆくのではないかと思われる。オリンピックが本格的な新規出店を安定的に実施するにはもうしばらくかかると思われるが、出店余力が着実に改善されつつあり、今後の成長が期待できそうである。

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