数字とイメージ、仮説について
最近、ID-POS分析に携わるようになって、数字とイメージについて考えるようになった。数字は、本来、イメージ(現実)の世界を数値化し、その数値の差異をもとに、仮説をつくり、その仮説に基づいて現実を変革してゆくためのものであるといえよう。実際、ID-POS分析に取り組む前は、そのように、仮説をつくってきた。ところが、ここ最近、ID-POSに取り組むようになってからは、逆に、数字の世界をイメージ化し、そのイメージをもとに仮説をつくり、現実を変革していった方が、実績が出やすいのではないかと思うようになった。
もう少しわかりやすく、具体例を交えて説明すると、従来、バナナのマーチャンダイジングの改善仮説をつくるには、バナナの販売データを数値化し、その数値をもとに、いかにその数値を引き上げるかの仮説をつくってきたといえる。
実際の数値をもとに見ると、たとえば、バナナの売上金額が1ケ月間で10,000円、販売数量が100個、客数(総レシート枚数)が1,000人であった場合を考えてみる。ここで総レシート枚数とは、バナナの購入レシートだけではなく、未購入レシートも含めた総レジ通過レシート枚数(来店購入回数)のことである。通常のPOSデータは原則、この3つの数値が算出され、この3つの数値をもとに、マーチャンダイジングの分析を行う。具体的には、金額PI値(10円:10,000円÷1,000人)=PI値(10%:100個÷1,000人)×平均単価(100円:10,000円÷100個)となり、まとめると、金額PI値(10円)=PI値(10%)×平均単価(100円)となる。
ここから、マーチャンダイジングの改善の仮説をつくるには、金額PI値10円を11円、12円にすることであり、そのためには、PI値を11%、12%にするか、平均単価を110円、120円にするか、あるいは、PI値、平均単価、双方をバランスよく引き上げ、金額PI値を改善してゆくことになる。すなわち、これは数字のシミュレーションであり、そこには、この時点では現実は考慮されず、純粋に抽象的な数字の計算となる。そして、その計算結果に現実性があるかどうかを、過去のデータ(時間)や他の店舗のデータ(空間)と比較し、妥当性があれば、はじめて、その数値を確定し、そこから、具体的な仮説づくりに入ることになる。そして、そのためには、PI値を引き上げた成功事例、平均単価を引き上げた成功事例等を収集し、そこから仮説を構築することになる。
この成功事例、場合によっては、失敗事例をたくさんもつ(経験)することにより、より精度の高い仮説が即座にできるようになる。これが通常のPOS分析における仮説づくりといえよう。すなわち、数値計画を立て、そこから、その数値目標を達成するための仮説をイメージ化するという流れである。
これに対して、ID-POS分析は何が違うかであるが、現実を数値化するところまでは同じであるが、そこから仮説を立てる上において、現実から数値化された数値をもとに、再度、現実をイメージ化し、そのイメージをもとに仮説をつくり、その仮説を実現するために、数値をどのように変えるかをシミュレーションすることになる。すなわち、数値をもとに数値計画を立てるのではなく、まず、数値からイメージを再構築することが先決となる。
これも先のバナナの事例で考えてみたい。従来のPOS分析では、バナナの1ケ月間の売上金額10,000円、販売点数100個、客数(総レシート枚数)1,000人が限界であった。では、ID-POSでは、これに何が加わるかであるが、まずは、IDが加わる、すなわち、バナナの購入顧客数である。ここでは、10人(ID)とする。また、この時、バナナの購入レシート枚数を20枚とする。したがって、この瞬間に980枚がバナナの未購入レシートとなる。ここから、バナナの購入実態を数値化すると、ID金額PI値(1,000円:10,000円÷10人(ID))=ID客数PI値(2.0枚/ID:20枚÷10ID)×金額PI値(500円:10,000円÷20枚)となり、さらに、金額PI値500円=PI値(5.0個/枚:100個÷20枚)×平均単価(100円:10,000円÷100個)となる。
これは何を意味しているか、すなわち、どうイメージ化するかであるが、バナナの1ケ月間の顧客の購入イメージは、1個100円(平均単価)のバナナを1回につき、5個購入し(PI値)、結果、バナナを500円(金額PI値)購入し、さらに、月に2回(ID客数PI値)来店し、結果、1ケ月に1,000円(ID金額PI値)バナナを購入する顧客が10人(ID)いるということになる。従来の金額PI値=PI値×平均単価だけでは、顧客の購入状況をイメージ化することは不可能であったといえるが、ID-POS分析を行うと、ここまでイメージ化ができる。さらに、その10人の明細までイメージ化することも可能である。また、ここでは、踏み込まなかったが、その10人の顧客がバナナ以外、何をどのように購買しているかまで、購入イメージを具体的に把握することも可能である。
したがって、マーチャンダイジングの仮説の立て方が根本的に変わり、従来の抽象的な数字の改善にもとづく仮説の立案ではなく、具体的な顧客の購入イメージを把握し、その行動パターンのどこをどう改善すれば、マーチャンダイジングの改善につながるかをイメージで再構築し、さらに、その数値化も可能となり、仮説そのものがより、現実に近づくことができるようになる。
まだまだ、始まったばかりであるが、ID-POSはこのように活用するのが、どうも本筋のように思え、ここを今後、さらに、深く掘り下げ、イメージで仮説づくりができるような仕組みにまで高めたいと思う。
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