続続、出店余力って何だ、食品スーパマーケットの現状!
2回で完結するはずであった出店余力の話が、3回目となってしまった。予想外の食品スーパーマーケットの大事件、オオゼキのMBOの新聞報道がなされたため、その背景を探ってゆくうちに、出店余力との関係が極めて大きな要因であるという結論になったためである。出店余力は単に長期安定的な出店が可能かどうかを判断するだけの指標ではなく、今回のオオゼキのMBOが示すように、食品スーパーマーケットの極値ともいえる30%近くになると、資本主義の根幹、株式制度そのものをも変革してしまう力があるといえる。出店余力はその意味で、食品スーパーマーケットにとっては、経営戦略そのものと直結している根幹指標のひとつであると、今回のオオゼキのMBOを見て、改めて認識した。
さて、ここでは、上場食品スーパーマーケット約50社の出店余力について見てみたい。現在、No.1はオオゼキの28.7%である。非上場ではあるが、もう1社極めて高い出店余力の食品スーパーマーケットがあり、それがヨークベニマルの29.4%であることは前回のブログで解説した。この2社が現在、食品スーパーマーケット業界トップ2であり、次がマックスバリュ東海の16.6%であるので、いかに、オオゼキ、ヨークベニマルの出店余力が高いかがわかる。では、それ以外の食品スーパーマーケットの状況はどうかを見てみたい。
まず、出店余力がプラスの食品スーパーマーケットであるが、東武ストア11.2%、大黒天物産9.8%、サンエー7.9%、アオキスーパー7.8%、いなげや6.8%、九九プラス5.4%のわずか、6社である。したがって、ヨークベニマルを含め、上場食品スーパーマーケット約50社で出店余力がプラスとなったのは、8社にすぎず、いかに、出店余力が重い数字かがわかる。上場食品スーパーマーケット約50社の平均が-22.9%であるので、この数字から見ても、食品スーパーマーケットが出店を自己資本だけで賄うことは至難の業であり、22.9%(負債分)÷63.5%(出店にかかわる資産)=36.06%と、約40%弱を負債に負っている出店構造であるといえ、出店がいかに食品スーパーマーケットの経営にとって重要であり、また、財務に重くのしかかっているかがわかる。
ちなみに、食品スーパーマーケット上場企業約50社の中で、出店余力が-50%以下の企業は、北雄ラッキー-50.3%、天満屋ストア-53.1%、マルヨシセンター-58.6%、マックスバリュ東北-59.7%、丸和-67.9%の5社である。この数字を見る限り、今後、安定的な新規出店を果たしてゆくのはかなり難しい数字であるといえ、出店よりも、負債の削減が優先度の高い経営戦略となるといえよう。
では、出店余力が先のプラスの食品スーパーマーケットを除き、上場食品スーパーマーケット約50社の平均-22.9%以上の企業を見てみたい。マルヤ-1.5%、マルキョウ-1.7%、マルミヤストア-3.0%、ヤマザワ-4.9%、ユニバース-5.1%、カスミ-8.7%、原信ナルスH-10.4%、マックスバリュ西日本-11.3%、関西スーパーマーケット-12.4%、アークス-14.5%、オークワ-14.9%、アークランドサカモト-16.4%、タイヨー-17.2%、オーケー-19.6%、ヤオコー-19.6%、ジョイス-21.6%、ベルク-21.8%、-マックスバリュ北海道-22.8%である。以上が、平均-22.9%以上の食品スーパーマーケットであり、業界平均以上の出店余力である。
出店余力とは、純資産-出店にかかわる資産のことであるので、一見すると、純資産比率が高い方が高いように思えるが、数式からもわかるように、双方の差であるので、純資産比率が低くとも、それ以上に出店にかかわる資産が低ければ、出店余力は高まるといえる。実際、先の出店余力が上位の企業でも、出店余力ベスト20の純資産比率を数字だけで見ると、79.0%、77.3%、69.4%、68.2%、49.7%、64.8%、59.6%、56.1%、41.6%、57.3%、68.4%、49.2%、62.7%、60.6%、47.3%、41.8%、45.0%、49.0%、59.8%、55.9%という状況であり、確かに、ベスト4は高い数値であるが、それ以下は、40%台の食品スーパーマーケットもちらほらあり、逆に、下位にも60%前後の食品スーパーマーケットもあり、必ずしも、出店余力と純資産比率が連動している訳けではないことがわかる。
同様に、出店にかかわる資産、土地、建物、敷金・保証金等の総資産比率を出店余力ベスト20で見てみると、49.5%、48.6%、52.8%、57.0%、40.0%、56.9%、51.8%、49.3%、36.2%、58.8%、70.1%、52.3%、67.7%、65.7%、56.0%、52.2%、56.4%、61.4%、74.4%、70.7%という状況であり、ベスト4は50%前後と低いが、それ以下はかなり、ばらつきが大きく、70%前後の企業もあれば、50%前後の企業もあり、かなり、バラつくことがわかる。出店余力はあくまでも、純資産と出店にかかわる資産、双方のバランスで決まる数字であり、これも企業の経営戦略の大きな課題であるといえよう。
このように、出店余力の話が、上場食品スーパーマーケット約50社のNo.1の出店余力となったオオゼキのMBOの新聞報道がなされ、今回の出店余力をテーマとしたブログが2回で完結を目指し取り組んでいたところが、思いがけず、3回となってしまった。
ただ、逆に、出店余力が企業の経営の根幹にかかわる重要な経営戦略のひとつであることが明確になり、むしろ、出店余力の重要性が浮かびあがったといえよう。食品スーパーマーケットとしては、安定した出店戦略を実施してゆくためのも、出店余力をプラス、できれば10%以上のプラスにもってゆき、余裕をもって、成長を目指したいところである。
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