キャッシュフローから経営者心理を読み解く、その2!
前回は、CF(キャッシュフロー)における3つの分類、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、そして、財務キャッシュフローの実態を理解するのが意外に難しいことを解説した。その理由は、この3つが必ずしも順番に繋がっているわけではなく、時として、逆流が起き、キャッシュの流れが読みにくくなり、CFの判断が簡単にできない場合があるからである。特に、投資キャッシュフローが営業キャッシュフローを超えた場合が、まさにこれに当たり、営業キャッシュフローの不足分を財務キャッシュフローで補い、しかも、その原資が借入に頼った場合が要注意となることを解説した。
そこで、今回は、いよいよ、本題に入り、このキャッシュフローの流れから経営者心理を読み解いてみたい。経営とはつきつめれば、入ったお金をどう配分するかにあるといえ、入りも大事な経営の要素であるが、それ以上に、配分はさらに重要な経営の要素といえる。なぜなら、お金の配分ひとつで、企業の将来が決まるし、それ以上に資本主義の根幹をなしている資本家、すなわち、株主の満足度が決まるからである。資本主義の最大の特徴は、企業経営が株主からの出資でスタートすることであり、株式会社である限り、株主からの資本は永遠に残り、株主に対しては最大限の利益還元が必要といえる。株主への利益還元ができないのであれば、それは企業経営の根幹にかかわることでもあり、株主から委託された経営陣がその責任を問われても仕方ないといえよう。
したがって、株式会社である以上、株主への配当は経営の最優先課題といえ、この配当がどのくらい配分できるかが、事業の専門家である経営者の株主から委託された最大の使命ともいえよう。そして、配当を含め、詳細なキャッシュの配分を表したものが、キャッシュフローといえ、この配分をみることによって、株主から経営を委託された経営者の経営哲学、さらには、現状、何を優先して経営に取り組んでいるか、株主のことをどうのように配慮しているかなど、経営者の心理の機微までが推測できるといえる。
では、どのように、CF(キャッシュフロー)から、経営者心理を読み解けば良いかを掘り下げてみたい。まず、キャッシュフローの出発点は営業キャッシュフローである。この営業キャッシュフローの最大の項目が純利益である。これ以外にも減価償却費など、様々な項目があるが、最重要な営業キャッシュフローの項目は純利益といえよう。したがって、この純利益が順調にP/Lから上がってくるかが、まず、経営者のはじめの心理に重要な影響を与える。
純利益が十分にP/Lから上がってこないと、その時点で、次の投資キャッシュフローへの不安が生じることになる。投資は企業経営にとって最重点課題といえ、特に、食品スーパーマーケットでは投資=新規出店といってもよく、新規出店が止まれば、成長がとまり、この状況が長く続くと、やがて、企業経営に支障をきたすからである。そこで、このような場合、経営者心理としては、何としても成長を優先させたいという動機が強く働き、営業キャッシュフローで足りない分を財務キャッシュフローで補おうとしたくなる。これが逆流のキャッシュフローを生むことになる。特に財務キャッシュフローの中でも、借入に頼ることとなり、この借入を加え、投資を完結させようという心理が働くことになるが、この時、横目でみるのが、B/Sの負債の状況である。これをにらみながらの借入となり、このバランスをどのようにとっているかが経営者の心理そのものを表しているといえよう。
そして、何とか投資ができた場合、最終的に配当をどのくらい財務キャッシュフローから行うか、その配分にまさに、経営者の心理が凝縮されるといっても過言ではない。できれば高い配当を出したいところだが、財務キャッシュフローの中では、借入の返済も必要である。また、将来の不確定要素、あるいは、今後の着実な投資のためにも現金の蓄積も必要である。これらを考慮すると、いったい配当はどのくらい可能なのか、ここが実に難しい経営判断となる。
この配当に関しては、営業キャッシュフローが順調な場合も、同様に困ることになる。キャッシュフローは順流となり、投資も順調に配分でき、財務キャッシュフローが、借り入れなしで潤沢になった場合である。いったい、配当をどのくらいにすべきか、経営者心理としては、悩むに悩むところであろう。
このように、CF(キャッシュフロー)には、まさに経営者の悩みに悩んだ経営心理が凝縮されているといえ、特に、各項目の配分をみることによって、経営者が投資をどのように考えているか、負債をどうらえているか、そして、何よりも重要な株式会社の原点ともいえる投資家、株主への配慮がわかるといえる。まさに、CFは経営者の揺れ動く心理を表しているといえ、ここに、経営のすべての結晶があるともいえよう。今後、決算書、特に、CFを見たら、ぜひ、そこから、経営者の経営哲学、その心理状態にまで踏み込んで欲しいと思う。そうすることによって、P/L、B/Sもさらに理解が進むことになると思う。
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