営業キャッシュフロー、売上対比7%がトップクラス!
財務3表連環表を作成してみて、改めてキャッシュフローの重要性を再認識した。キャッシュフローには、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの3つがあるが、当然、この中で重要なキャッシュフローは、自らの営業活動で生み出す営業キャッシュフローである。営業キャッシュフローがすべてのキャッシュの大本であるといえ、この営業キャッシュフローが潤沢な食品スーパーマーケットが投資余力を生み、十分な配当を出すことができる。そこで、ここでは、営業キャッシュフローに焦点当て、決算公開企業約50社の概況を見てみたい。
まず、潤沢な営業キャッシュフローとはどのくらいなのかを2009年度の本決算の数字をもとに見てみる。営業キャッシュフローを絶対金額で見れば、当然、売上規模の大きな食品スーパーマーケットが多くなる傾向があるので、ここでは、売上対比で比較してみると、No.1はハローズの9.7%である。No.2はサンエーの9.4%であり、No.3はイズミの7.6%である。さらに、もう数社見てみると、スーパーバリュー7.5%、ライフコーポレーション7.5%、タイヨー7.1%となる。したがって、潤沢な営業キャッシュフローとは、売上対比で約7%前後といえよう。決算公開企業約50社では、このハローズとサンエー、そして、イズミの3社を含め、上記数社のみであり、いかに、売上対比約7%前後が高い数字、すなわち、潤沢な営業キャッシュフローであるかがわかる。
ただし、No.1となった今期のハローズは、決算時と金融機関への支払いのタイミングもあり、仕入れ債務が昨年より大きく膨らんでおり、これを考慮し、さらに昨年の営業キャッシュローを参考に、今期を算定しなおすと、約半分強が順等といえ、約5%と見た方が、良さそうである。したがって、約10%近い営業キャッシュフローの食品スーパーマーケットは、今期はサンエーのみといえよう。
ついで、約5%以上の営業キャッシュフローの食品スーパーマーケットを見てみると、ジョイス6.6%、オオゼキ5.9%、マルヨシセンター5.8%、オーケー5.6%、大黒天物産5.6%、アークランドサカモト4.9%、マックスバリュ東海4.9%、平和堂4.8%である。先のトップクラスの企業を含め、全部で14社であり、これを見ても、売上対比で5%以上のキャッシュフローを生み出すのがいかに難しいかがわかる。
では、約50社全体の営業キャッシュフローはどうかであるが、総合計は約3,000億円であり、売上対比では約4%である。したがって、食品スーパーマーケットとしては、少なくとも、売上対比で4%は営業キャッシュフローを確保したいところである。こう見ると、先にあげた、7%前後の食品スーパーマーケットがいかに高い数字かがわかる。
ところで、営業キャッシュフローの中身は何かであるが、90%以上、たった2つの要素で説明できる。ひとつは当期純利益であり、そして、もうひとつは減価償却費である。営業キャッシュフローは、この2つが原資といえるが、その割合はどうかを見ると、決算公開企業約50社では、当期純利益が約1,500億円で、比率にして、約50%となる。減価償却費は約1,200億円であり、比率にして約40%である。意外に、減価償却費の割合が高く、その減価償却費の大半は出店にかかわる資産から生じており、つきつめると、出店戦略が営業キャッシュフローを支えているともいえる。
こう見ると、営業キャッシュフローは、食品スーパーマーケットの経営にとって、最も重要なマーチャンダイジング戦略と出店戦略とに深く関係しているといえ、まさに、財務3表は、この2つの要素を通じて相互に連環しているといえよう。
ちなみに、営業キャッシュフローNo.1のハローズの割合であるが、先ほども説明したように、仕入れ債務が大きな割合を占めており、当期純利益は約35%、減価償却費は約15%、合計約50%である。No.2のサンエーは、当期純利益が約70%、減価償却費が約20%で、合計約90%である。No.3のイズミは当期純利益が約45%、減価償却費が約40%、合計約85%である。全体を見ると、興味深いことに、下位にゆくほど、減価償却費の割合が高くなる傾向があり、結果、差し引き、当期純利益の割合が低くなる。
営業キャッシュフローは全体として見れば、当期純利益と減価償却費の割合が約50%対約40%であるが、営業キャッシュフローのトップクラスの食品スーパーマーケットは当期純利益が高めであり、50%超える企業が多いが、下位クラスは、逆に、減価償却費の割合が50%を超える企業が多いのが実態である。したがって、営業キャッシュフローを強化するには、まずは、マーチャンダイジング力をいかに高めるかが、最優先課題といえよう。ついで、安定した新規出店を行い、減価償却費を高め、営業キャッシュフローを高めるかが課題となる。
このように、営業キャッシュフローは経営の要ともいえ、この数字をいかに高めるかが強固な経営を築くためのポイントといえる。そして、そのためには、マーチャンダイジング力を強化し、当期純利益の極大化をはかり、ついで、安定した新規出店を行い、減価償却費を高めてゆくことが課題といえよう。改めて、食品スーパーマーケットにとって、営業キャッシュフロー、そして、それを支えるマーチャンダイジング戦略と出店戦略がいかに重要な要素であるかがわかる。
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