政権交代、民主党とCRM?
8/30の衆議院選挙で民主党が308議席(過半数240議席)を獲得し、自民党から民主党への政権交代が実現した。第2党となった自民党の獲得議席は119議席であるので、その差、約3倍と、圧倒的な大差がついた。これは、小選挙区制度という選挙の仕組みが、これだけの大差を生んだ要因もあるが、それ以上に、もっと大きな要因は、政治、そのものの仕組み、システムの違いが、民主党と自民党にあったように思う。
では、民主党と自民党の政治の仕組み、システムは、どこが決定的に違ったのかを考えてみたい。まず、決定的な違いは、政党名から連想されるイメージの違いである。民主党は国民が主体であるという理念がそのまま感じられ、そこには、特定の集団を意識せず、国民一人一人につながっているイメージがある。スローガンの「国民の生活が第一」も、民主という名前を具現化しており、違和感がない。
これに対して、自民党は自由民主党の略であり、民主という言葉も含まれているが、それ以上に自由という言葉が強く打ち出されている名前である。その自由は、そもそも、その出発点は共産主義に対する自由主義、すなわち、資本主義を堅持するというイデオロギーがその根底にあり、極めて、政治的な言葉である。したがって、自然、共産主義を意識し、その対立軸があってこそ、価値のある言葉である。ところが、その共産主義そのものが、もはや、自由主義に対立する力がなくなり、自由主義が圧倒的に優位になったにもかかわらず、自由を全面に押し出した名前そのものが時代にそぐわない面があるといえよう。本来であれば、自由より、民主をむしろ全面に押し出したいところであろうが、民主党がある以上、民主を強く押し出すわけにもいかず、自由を全面に出さざるをえないところに問題があるように思う。
今回の選挙結果を見ていると、いわゆる無党派層の動向が大きな決め手になっていることがわかる。たまたま、私の出身地、埼玉県の比例の得票数を見てみると、前回2005年の小泉郵政選挙の時と、今回の選挙の民主党と自民党の合計得票数は約250万票でほとんど差がない。ところが、前回は自民党が約140万票、民主党が約110万票と自民党が圧勝したのに対し、今回は、民主党が約160万票、自民党が約90万票と民主党が圧勝している。特に、今回は出口調査などの状況を見ると、埼玉県は自民党支持者の20%ぐらいが民主党に投票していたこともあり、これを考慮すると、双方、基礎票は100万票ぐらいであり、これを差し引いた無党派層が約50万票ぐらいあると推測される。
したがって、各政党のコアの支持者を固めることは、この結果からも重要であるが、それ以上に、もっと重要なのは、無党派層の約50万票に対する、まさに、個に対するアプローチであるといえる。特に、小選挙区制度では、その差が決定的なものになるといえよう。ちなみに、公明党は約45万票、日本共産党は約30万票と前回、今回とほとんど変化がなく、無党派層はこの2党にはほとんど影響を与えていないといえる。
この無党派層への民主党、自民党どちらが強くアピールでき、その心をつかめるかが政権そのものを左右する時代になったということであろう。これは、食品スーパーマーケットでいえば、まさに、CRM戦略そのものともいえる。顧客全体(マス)の欲しい商品をつかみ、その商品を強化すれば、売上げが上がった時代から、顧客個々の購買履歴を分析し、顧客個々への極め細かい対応が、まさに、CRMが、売上げ、そして、利益を左右する時代になったのに似ている。
その象徴的な民主党のCRM戦略が子供手当てであり、農業の個別所得補償であるといえよう。どちらも個別に重点をおいた政策であり、前者は明らかに無党派層に焦点を当てており、後者はどちらかというと自民党のコアな層に焦点を当てるという、対極的なCRMの応用である。これまでの自民党の政治手法では、国民一人一人に焦点を当てる政策はメインではなく、全面に押し出しにくかった政策でもある。このような、まさにCRM的な発想での政策を立案し、実行する政治の仕組み、システムが、特に、無党派層をつかむには必須となってきたということであり、これに、いち早く、対応しようとしている民主党と対応できていない自民党との差が、決定的な段階にまでなってしまったのではないかと思う。
このようにCRMは票の獲得に対しても効果があるが、もう一方で、財源の確保に対しても効果があり、むしろ、CRMのスタートは、どの顧客からの売上げ多いかを分析し、その顧客を優遇することで売上げを最大にしようという政策立案から始まっている。
民主党も今回財源はどこからという問題がさかんに指摘されたが、予算の組み替えも重要な財源確保の手法であるといえるが、食品スーパーマーケットでも最も利益を出している企業は経費を削減して利益を出している企業ではない。むしろ、客数を増やして、坪売上げを引き上げ、売上げ効率を高めている企業が、結果的に経費比率を落とし、利益を出しているのが実態である。票の獲得だけでなく、財源の部分にも個別アプローチ、すなわち、CRMの発想を入れ、経済を活性化し、税収を増やす政策も打ち出して欲しいところである。逆に、この部分は自民党が強い領域でもあり、自民党が再生するためにも、CRMの発想で、自民党の強みを生かし、経済の活性化を政策立案に活かしてはどうかと思う。
いずれにせよ、今回の選挙は政治の仕組み、システムが大きく変わった、そして、変わりつつあることを示しており、民主党はいち早くその変化をつかみ、自民党はその変化をつかみ切れず、ネーミングから来るイメージを含め、依然として、新たな政治の仕組み、システム構築への取り組みができない状況にあり、その差が、無党派層をつかみきれず、小選挙区制度の中で、決定的な議席数の差になってあらわれたように思う。
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