PI値か平均単価か?
マーチャンダイジングには様々な評価指数がある。通常のPOSデータから得られる評価指標のひとつは、金額PI値=PI値×平均単価であり、いかに、金額PI値を引き上げられるか否かが、マーチャンダイジングの評価そのものといえる。金額PI値を引き上げるには、この数式が示す通り、PI値を引き上げるか、平均単価を引き上げるか、ないしは、双方を引き上げるかがあるが、通常、はじめに着手する方法は、PI値アップが最優先で取り組まれ、PI値をどこまで引きあげ、結果、金額PI値を引き上げるかであることが多い。
ところが、ここ最近、このセオリーに異変が起こりつつある。PI値を必死に引き上げても、それ以上に、平均単価が落ち、結果、金額PI値が下がってしまい、マーチャンダイジングの強化につながらないケースが続出しているのである。特に、PBが重点商品に置き変わり、そのPBを最優先で強化した場合にその傾向が顕著に表れている。本来、顧客の支持を獲得していたNBが、PBに圧迫され、PB最優先の売場となった時などには、この傾向が強い。また、ここ最近の消費環境が節約志向になった影響もあり、これまでの、単純な最重点商品のみの強化だけでは、その商品の強化はできても、その重点商品が属するカテゴリー全体の数字は伸び悩み、結果として、全体の金額PI値が落ちるということが良く起こるのが現状である。
これは、どこに問題があるのかであるが、その答えは、金額PI値アップは、PI値アップが最優先であり、ここにすべての経営資源をかけることが正しいという思い込みが大きいように思う。金額PI値アップは、先に示したように、3択の問題であり、確かにPI値アップでも上がるが、その上がる条件は、PI値のアップ以上に平均単価が落ちないということが前提である。PI値105%、平均単価90%の場合は、金額PI値は95%となる。平均単価が95%となって、初めて金額PI値は100%となるが、この平均単価の歯止めがかからない場合が、現在の消費環境、デフレ傾向の中では往々にして起こっているのが現状である。
では、どうすれば良いか、その一つの大胆な仮説が、PI値に着目するのではなく、平均単価に着目することである。この消費環境から見ると逆行しているように思えるが、金額PI値を引き上げる方向は、PI値アップも平均単価アップも、同等の価値があり、PI値だけを優先することが正しいわけではない。平均単価アップもPI値アップ同様、重要な金額PI値アップの手法であり、仮説としては十分に成り立つ方向である。
簡単な数字のシミュレーションをすれば、平均単価が5%アップした場合、PI値は95%で金額PI値はプラスマイナス0であり、平均単価が10%アップした場合は、PI値は95%で金額PI値は105%、90%でもプラスマイナス0である。しかも、このほとんどの場合、金額PI値では把握できない、粗利は向上する可能性が高いといえる。PI値を上げるために、平均単価を下げれば、当然、粗利が率では下がる。逆に、平均単価が上がれば、確実に粗利率は上がり、金額PI値が落ちなければ、粗利改善が可能となるからである。
どうも、ここ最近のマーチャンダイジング戦略は、この平均単価にどう着目するかが、大きな課題となってきたように思う。これまでは、確かに、PI値を最優先で引き上げ、金額PI値を押し上げようとし、実際、押し上げることができたが、各食品スーパーマーケットが消費環境の変化により、PB強化、NBの価格訴求に本格的に取り組むようになってからは、PI値アップによる金額PI値アップが思うように、成果をあげることができなくなったように思う。
ここは、戦略転換をはかり、平均単価に取り組むべき時がきたのではないかと思う。そこで、平均単価アップであるが、これは、値上げをすることではない。値上げをすれば、当然、平均単価をあげることができるが、それは、返って、PI値を極端に落とし、金額PI値を下げることにつながる。平均単価アップとは、平均単価の高い商品のPI値を引き上げることであり、これまで、見向きもされなかった重点商品以外の商品、特に、付加価値の高い商品や、重点商品につぐ、平均単価の高い商品のPI値を思い切り、ひき上げることである。また、もうひとつの方法として、重点商品よりも、付加価値の高い商品の商品開発を行い、その商品を徹底的に強化することである。
このような平均単価アップ政策を意識的にとることによって、商品全体の活性化がはかれ、結果として、PI値は落ちても、それ以上に平均単価の上昇分でカバーできれば、金額PI値は上がり、マーチャンダイジングの成果が徐々に表れてくる。もちろん、同時に、重点商品のPI値もアップすれば、PI値、平均単価ともにアップし、理想的なマーチャンダイジングの成果が得られるが、どうも、ここ最近の異常なPI値アップ、平均単価ダウン、結果、金額PI値ダウンの状況を多々見ると、ここは、発想を変えて、平均単価アップ、PI値ダウン、それでも、金額PI値を引き上げるという方向を検討し、実践する段階に入ったように思う。これだけ、厳しい消費環境になったからこそ、あえて、平均単価アップの仮説を真剣に考える時が来たように思う。
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