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September 22, 2009

どっちがどっち、このP/L、ユニクロ、ニトリ?

   A:売上高100%、売上原価47.0%、売上総利益53.0%、販売費及び一般管理費35.9%、営業利益17.1%、B:売上高100%、売上原価49.8%、売上総利益50.2%、販売費及び一般管理費32.1%、営業利益18.1%という、最新の決算結果がある。さて、このA、B、どちらがユニクロで、どちらがニトリであるかわかりますか?

   びっくりするほど良く似たP/L構造である。売上高を比較しやすいように、どちらも100%とし、すべての指標を%で統一したが、見れば見ると程、瓜二つであり、数字だけでは、区別がつかないほど良く似ている。そこで、昨対を入れてみると、A:売上高118.7%、営業利益150.9%、経常利益149.1%、当期純利益130.2%、B:売上高117.2%、営業利益128.2%、経常利益122.3%、当期純利益123.9%と、見事な増収増益、しかもどちらも2桁である。どちらが、ユニクロ、どちらがニトリでしょうか?

   売上高はほぼ同じ伸び率、営業利益で差がでたが、最終の当期純利益では、かなり近い数字である。ついでに、両企業が予想している通期予想を見てみたい。A:売上高114.8%、営業利益124.2%、経常利益124.5%、当期純利益115.0%、B:売上高116.3%、営業利益123.4%、経常利益117.9%、当期純利益119.5%、これでわかったでしょうか?ますます、数字が似てきて、ほとんど区別がつかない状況かと思う。

   さて、答えであるが、Aがニトリ、Bがユニクロである。Aはニトリが9/18に公表したばかりの2010年2月期の第2四半期決算であり、Bはユニクロが7/9に公表した2009年8月期の第3四半期決算である。いずれも、現在、最新の決算結果であり、現状の経営状況を反映しているといえる。それにしても、数字だけ見ると、P/L構造が全く同じであり、しかも、昨年対比もほぼ同じ、さらに、通期予想もほぼ同じ伸び率となっている。衣料品と住関連用品と、全く扱い商品が違い、業種が違うにも関わらず、ここまで、経営構造が同じになり、しかも、成長率まで類似してくるのにはびっくりである。

   こう見ると、極論すれば、儲けるためには、商品は何でもよく、儲かるための経営構造、すなわち、ビジネスモデルを作り上げることができるかどうかにあるといえそうである。ユニクロもニトリも売価に対し、どちらも約50%の原価である。まずは、この50%の原価を実現できるかどうかが、最初の難関といえる。もちろん、売価を上げる、極論すれば仕入れ原価の2倍の売価を付けて売れば、原価は50%となるが、それでは当然、同業他社と比べ高くて売れなくなる。少なくとも同業他社なみの価格か、できればそれ以下で原価50%が求められる。ちなみに、食品スーパーマーケット上場企業の原価平均は74.8%であり、No.1がサンエーの70.0%、ついで、イズミヤ70.2%、平和堂70.5%、ヤオコー71.2%、・・となる。

   では、ユニクロ、ニトリはなぜ、売価を競合他者と同等か、下げ、しかも、原価50%が可能なのかであるが、これは、両社が自ら、独自のビジネスモデルを提示しているように、ユニクロはSPA(製造小売業モデル)であり、ニトリは従来型のSPA(製造小売業モデル)を、さらに進化させた製造物流小売モデルと、規定しているところにあるといえよう。利はもとにありという格言があるとおり、原価構造を自らの力で変えないかえない限り、原価率50%はありあえない数字であり、これが両社が流通業界に提示したビジネスモデルといえ、今後、流通業界、特に食品スーパーマーケット業界が学ぶべきモデルのひとつといえよう。

   しかも、原価50%を維持するために、経費を下げて価格を下げる必要がなく、ユニクロ、ニトリの経費比率は32.1%、35.9%であり、食品スーパーマーケットの上場企業平均の25.6%と比べても、約10%高い数字である。ちなみに、イオンの経費比率は36.8%、セブン&アイHは31.0%であるので、GMS業態とかわらない経費比率である。

   通常の小売業は利益を出すために、経費を下げることが戦略的な取り組みだが、ユニクロ、ニトリは経費を下げず、むしろ上げ、逆に、原価を下げるという、着眼点を変えるビジネスモデルを作り上げたところに、結果、異次元の小売業となり、圧倒的な競争優位を勝ちとったといえよう。

   ただ、ユニクロもニトリも気になる数字もある。直近の売上構造を見ると、ユニクロの8月度の売上高は111.2%だが、客数110.1%、客単価101.3%であり、ニトリの8月度の売上高は122.5%だが、客数133.5%、客単価91.8%という数字であり、どちらも、客数に支えられた好調な売上高となっているところだ。売上は客数と客単価のバランスであり、特に客数のみ増えるのは、競合上優位にたっていることにはなるが、必ずしも、需要創造ができているとはいえず、何かの拍子に客離れが起こりうる懸念があるからだ。

   それにしても、ビジネスモデルが確立すると、商品が違っても経営構造が全く区別がつかなくなるくらいまで、似てくることが、今回のユニクロ、ニトリの最新の決算を見るとわかる。衣料、住関連で確立されたこのSPAモデルが、はたして、食品でも成立つのかどうかが、食品スーパーマーケット業界にとっては挑戦課題かと思う。食品スーパーマーケットのユニクロ、食品スーパーマーケットのニトリがいつ登場するか、期待したいところだ。

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