イチローに見る、打数と打率、目標はどっち?
9/14のNHK、スポーツ大陸「イチロー、大記録への闘い」を見ていて、印象深かったシーンがある。記者のインタビューに答えて、イチローが、200安打という打数に強くこだわっていて、打率にはあまりこだわっていないと語ったシーンである。その理由として、イチローは、ヒットの数は減らず、着実に積み重ねてゆくしかないが、打率は、打席から逃げたくなる自分が必ず出てきてしまう、というような趣旨のことを語っていたことである。
このシーンを見ていて、目標をつくる時の重要性を改めて感じた。確かに、打率を目標に置くと、ヒット数÷打席数であるため、打率を高めるためには、ヒット数を高めるか、打席数を減らすか、どちらも、打率は高まるため、目標があいまいになる。特に、分母を小さくする方向に動いた場合は、イチローも言っていたが、打席に入りたくなくなる弱い自分が出てくることになりかねない。ある程度、ヒットを打って打率が上がったら、その打率を落とさないために、さらにヒットを打とうと思うか、それとも、打席数を減らすために、ヒットを狙わず、フォアボール、デットボール等を敢えて狙ったり、極端な場合、途中交代、最悪の場合は、試合を休もうとしたりしかねないといえよう。率にこだわれば、どうしても、プラス発想だけでなく、マイナス発想も入ってしまうことになり、そこが、イチローにとっては、絶対に、納得できない目標設定であるといっていたのだと思う。
確かに、打数、200安打に目標設定をすれば、打率がどうであろうが、ヒットを1本づつ、着実に積み重ねてゆくしかなく、そこに、マイナス発想が入り込む余地はない。プラス発想でどんな手段を使っても、ヒットを打ち、1本1本、積み重ねることでしか、目標を達成できないからである。イチローの強さの秘訣は、この目標設定そのものに答えがあったように感じた。
このイチローのこのシーンを見て、はじめに、感じたのは、ROEである。ROEは当期純利益を株主資本で割った数字であり、株主から見た会社の価値を見るひとつの尺度であるが、この数字にこだわりすぎたことが、リーマンブラーズショックの遠因になったのではいかと思えた。ROEを上げるには、打率同様、分子の当期純利益を引き上げる方向と、逆に、分母の株主資本を下げる方向とがある。昨年のちょうど、この時期、まさに9/15のリーマンブラザーズショックまでは、ROEが強く支持され、当期純利益を引き上げる方向よりも、むしろ、株主資本を相対的に減らす方向に動いたように思う。実際、特に、ヘッジファンド等は、株主資本を増やさず、負債を大幅に増やし、いわゆる、レバレッジをかけ、結果、資産を大きく増やし、当期純利益を結果として増やすという方向に動いていた。
当期純利益を増やすということでは、ある意味、目標は分子の当期純利益であったともいえるが、株主資本よりも、レバレッジをかけ、負債を極端に重視したことは、結果、分母の価値を減らしたことであり、これが、サブプライムローンという莫大な不良資産を抱え、それを株主資本で賄うことができず、極端な資本不足に陥り、金融危機を招く一因になったのではないかと思う。これは、野球でいえば、相対的に株主資本という打席を減らし、打率を上げる方向をとったと同じことであり、結果、多くの企業の経営破綻につながったのではないかと思う。
では、どうすれば良かったのか、打数にこだわるとすれば、当期純利益の絶対数字の目標をまず掲げることであり、そして、もうひとつは、株主資本の価値を下げないために、自己資本比率を下げないという歯止めが必要だったように思う。自己資本比率は株主資本÷総資産であり、レバレッジがかかると、負債が増加し、総資産が増え、結果、この自己資本比率がどんどん小さくなる。ROEだけで見ると、一見、当期純利益が増えているようであるが、自己資本比率は小さくなっており、結果、相対的に、株主資本の価値が下がっているからである。実は、この2つ、ROEと自己資本比率は、かけると、ROA(総資本利益率)となり、ROA=ROE×自己資本比率となる。したがって、当期純利益だけでなく、分母の株主資本の価値を下げない歯止めとして、自己資本比率を少なくとも一定に保つ、できれば、ひき上げ、さらに価値をあげるということが目標設定としては、必要であったように思う。
同様に、もうひとつ思ったのが、マーチャンダイジングの世界である。マーチャンダイジングの世界の金額PI値、ID金額PI値も、イチローの打数にこだわるという点から考えてみると、どちらも、率である。この数字を引き上げることも重要だが、打数にあたる、売上金額、そして、株主資本の価値に当たる、客数、すなわち、レシート枚数、ID数にもこだわり、率だけでなく、むしろ、絶対的な数の目標設定も同時に掲げることが、重要であると改めて感じた。金額PI値、ID金額PI値は指標としては、確かに目標とすべき重要な指標であるが、最終的にはキャッシュにこだわり、1円でもキャッシュを増やすことが経営の神髄であると、イチローが野球を通じて、語っていたように思う。
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