減価償却費、食品スーパーマーケットの現状!
食品スーパーマーケットの経営にとって、キャッシュフローは経営の根幹指標ともいえ、極めて重要な数字である。通常、食品スーパーマーケットの利益は、P/Lの営業利益、経常利益、当期純利益を見るが、この利益には、実際には現金の動きがない減価償却費が経費として差し引かれており、食品スーパーマーケットが運用できる現金、すなわち、キャッシュはこの減価償却費分が足されたものであり、これが、営業キャッシュフローである。営業キャッシュフローはまさに、食品スーパーマーケットの使用可能なキャッシュそのものを表しており、P/Lの当期純利益よりも、約3倍ぐらいになるのが実態である。
そこで、食品スーパーマーケットにとって、減価償却費がどのようなインパクトがあるのか、その実態を見てみたい。まず、上場食品スーパーマーケット約50社の2009年度決算の全体像であるが、減価償却費は売上高の1.6%、総資産の3.2%、そして、営業キャッシュフローの何と42.7%となる。売上高、総資産対比もさることながら、営業キャッシュフローの42.7%は極めて巨額な金額であり、この分がP/Lのすべての利益から差し引かれていることを考慮すると、営業キャッシュフローにおける減価償却費のインパクトは極めて大きいといえよう。
実際、当期純利益が赤字になっても、営業キャッシュフローは、減価償却費がその分プラスになるため、ほとんどの場合、プラスになるのが実態である。上場約50社の中で、当期純利益が赤字になった食品スーパーマーケットは7社あるが、この中で、営業キャッシュフローがマイナスになったのは、1社だけであり、残り、すべての食品スーパーマーケットは営業キャッシュフローがプラスとなっており、減価償却費が大きく営業キャッシュフローに貢献していることがわかる。
ちなみに、減価償却費の大本は、投資、特に、食品スーパーマーケットでは新店関連がほとんどであり、これは、投資キャッシュフローにおいて、新店関連に投資したキャッシュの一部が減価償却費として戻ってくることによる。時間差はあるものの、投資キャッシュフロー、資産の増加、減価償却費の発生、営業キャッシュフローの増大という循環になっており、投資キャッシュフローとは裏腹の関係になる。したがって、新店投資が十分でない食品スーパーマーケットは減価償却費も低くなり、結果、営業キャッシュフローが小さくなり、十分な投資もできなくなり、成長が止まることになる。
では、売上げ対比で全体平均は1.6%であるが、減価償却費が高い食品スーパーマーケットを見てみると、アークランドサカモト3.2%、イズミ3.0%、平和堂2.6%、イオン九州2.6%、バロー2.5%、原信ナルスH2.2%、天満屋ストア2.2%、サンエー2.0%の8社が2.0%以上である。見事に、GMSタイプの食品スーパーマーケットが上位に来ており、いかに、投資が大きく、結果、減価償却費が大きくなるかがわかる。
ついで、平均の1.6%以上の食品スーパーマーケットを見てみると、オークワ1.9%、イズミヤ1.9%、PLANT1.9%、ベルク1.8%、ドミー1.8%、ジョイス1.8%、カスミ1.7%、丸和1.7%、マルヨシセンター1.7%、フジ1.7%、マックスバリュ中部1.7%、マックスバリュ西日本1.6%、エコス1.6%、Olympic1.6%、マツヤ1.6%、タイヨー1.6%、マルキョウ1.6%となる。
逆に、売上げ対比で1.0%以下の食品スーパーマーケットを見てみると、アオキスーパー1.0%、マルエツ1.0%、ダイイチ0.9%、アークス0.9%、スーパーバリュー 0.9%、北雄ラッキー0.7%、オオゼキ0.7%、オーケー0.6%であり、経費比率の低い食品スーパーマーケットがほとんどであるといえよう。減価償却費は、経費であるので、当然、経費比率を下げるには、減価償却費を下げることが望ましく、そのためには、出店を抑制すれば良いと思いがちであるが、ここに上がった食品スーパーマーケットは、出店意欲が高く、減価償却費も高い食品スーパーマーケットが多い。ところが、実際は、このように低くなるのは、もうひとつの特徴として、坪売上げが高い傾向にあることである。坪売上げが高まれば、当然、売上げ対比では、減価償却費は下がることになり、ここにあがった食品スーパーマーケットの実際の数字を見ると、1.0%以下にまで下げることができるといえよう。
最後に、営業キャッシュフローの中で、減価償却費が占める割合が低い食品スーパーマーケットを見てみたい。マルヨシセンター29.2%、マックスバリュ東海28.2%、ジョイス26.7%、大黒天物産22.1%、タイヨー22.0%、サンエー21.8%、ライフコーポレーション17.5%、ハローズ13.0%、スーパーバリュー11.6%、オオゼキ11.2%、オーケー11.1%となり、見ごとに高収益の食品スーパーマーケットが集結したといえよう。減価償却費が売上げ対比で高くとも、それ以上に、当期純利益が高ければ、営業キャッシュフローに占める減価償却費の割合は相対的に低くなるので、このような結果となったといえよう。
こう見ると、全体では営業キャッシュフローの42.7%と減価償却費は重要なキャッシュではあるが、食品スーパーマーケットの営業キャッシュフローは当期純利益をいかに高めるかがやはり本質であり、そのためには、マーチャンダイジングを強化し、キャッシュを増やすと同時に、坪当りの売上げを増やし、相対的に費用である減価償却費を引き下げ、結果、利益を引き上げることが、継続的な投資を行い、安定した経営を維持するためには重要な経営戦略であるといえよう。
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