百貨店とヨークベニマルの財務構造の違いを見る!
前回のブログ、「日経MJで西武池袋店、ベニマルに学ぶ、を特集!」で、西武池袋店とヨークベニマル、イトーヨーカ堂のP/L構造を比較してみた。その結果、数字を見る限りでは、西武百貨店のP/L構造が意外に良く、原価(粗利)、経費面でも、ヨークベニマル、イトーヨーカ堂、双方に遜色のない結果であったことがわかった。それでは、B/S面ではどうかを改めて、今度はヨークベニマルと西武百貨店に加え、そうご、三越伊勢丹を含めて比較してみたい。比較数字は、2009年度の本決算数字である。
まず、前回のブログの結論、P/L構造の違いであるが、改めて4社を見てみたい。原価YB75.7%、西武76.7%、そごう76.1%、三越伊勢丹72.1%であり、結果、売上総利益(粗利)は、YB24.3%、西武23.3%、そごう23.9%、三越伊勢丹27.9%である。西武、そごうはほぼ同じ数字であり、ヨークベニマルもやや高いが、西武、そごうに近い数字である。三越伊勢丹はこの3社と比べ、約3.0ポイント高く、比較的、原価が低く、高粗利であるといえよう。食品スーパーマーケット業界でいえば、ちょうど、ヤマザワ、マルエツ、カスミとほぼ同じ原価、粗利構造である。
次に、経費を見てみると、YB24.0%、西武22.3%、そごう22.8%、三越伊勢丹26.5%であり、ここでも、西武、そごうは良く似た数字であり、ヨークベニマルがやや高めであり、三越伊勢丹はそれ以上に経費比率が高く、この4社の中では最も経費比率が高い。結果、差し引き、マーチャンダイジング力であるが、YB0.3%、西武1.0%、そごう1.1%、三越伊勢丹1.4%であり、三越伊勢丹が最も高く、ついで、そごう、西武となり、ヨークベニマルが最も低い数字となった。これに、不動産収入等のその他営業収入がのり、営業利益となるが、その、その他営業収入を見ると、YB3.2%、西武1.5%、そごう1.4%、三越伊勢丹0.0%であるので、結果、営業利益はYB3.5%、西武2.5%、そごう2.5%、三越伊勢丹1.4%となり、ヨークベニマルが最も高く、ついで、西武、そごうが並び、三越伊勢丹が最も低い数字となる。原価(粗利)、経費では、三越伊勢丹の数字が最も良い数字であったが、その他営業収入を足すとヨークベニマルが最も良い数字となった。ただ、原価(粗利)、経費では食品スーパーマーケットも百貨店も極端な差がなく、こと、P/L構造は良く似ているといえよう。
そこで、次にB/S構造を見てみたい。まず、純資産比率であるが、YB79.0%、西武11.1%、そごう21.6%、三越伊勢丹36.2%という状況であり、ここで、ヨークベニマルと百貨店各社との間で決定的な差が出たといえよう。P/L構造ではさほど差がなかったが、B/S、純資産比率では、大きな数字の開きがあり、三越伊勢丹がやや良い数字であるが、それでも、40%を割っており、西武に関しては約10%と厳しい数字である。これを見る限り、百貨店は負債に大きく依存するB/S構造であり、逆に、ヨークベニマルは負債に依存せず、自らの資本で自由に経営活動ができるB/S構造であるといえよう。
では、その負債の状況であるが、有利子負債を総資産対比で見ると、YB0.0%、西武67.8%、そごう55.2%、三越伊勢丹17.2%であり、西武、そごうは極端に有利子負債が多く、経営を圧迫しているといえよう。これに対し、三越伊勢丹はさほど有利子負債は負担にはなっておらず、食品スーパーマーケット上場企業の平均が約30%であるので、食品スーパーマーケット業界よりも軽い有利子負債の比率である。ちなみに、純資産比率であるが、三越伊勢丹の36.2%は、食品スーパーマーケット上場企業の平均が約40%であるので、食品スーパーマーケットの経営構造と良く似ているといえよう。
こう見ると、西武、そごうは有利子負債が経営に重くのしかかり、苦しいB/S構造であるが、三越伊勢丹は食品スーパーマーケット上場企業の平均にほぼ近い数字であり、数字を見る限りでは、全く見分けがつかないくらい、食品スーパーマーケットと良く似たB/S構造といえよう。これに対してヨークベニマルは、この4社の中では突出したB/S構造であり、食品スーパーマーケット上場企業の中でも、トップクラスのB/S構造であり、極めて健全な財務状況である。
では、もう一方の資産面も見てみたい。資産の中でも店舗関連の有形固定資産の総資産に占める割合を見てみると、YB42.6%、西武56.3%、そごう53.8%、三越伊勢丹58.0%であり、百貨店3社は良く似た構造であり、約60%弱となる。これに対して、ヨークベニマルは約40%であり、ここが百貨店と大きな違いといえ、都心部に重装構造の建物で商売している百貨店と郊外で軽装構造の建物で商売している食品スーパーマーケットとの違いがあるといえよう。したがって、三越伊勢丹も含め、百貨店3社は純資産の範囲内では治まっておらず、負債に依存した店舗関連の資産であるといえ、特に、西武、そごうは、このB/S構造を今後、どう改善するかが、経営改革の大きな課題といえよう。
このように、ヨークベニマルと百貨店3社のP/L、B/S構造を比較してみると、P/Lはほとんど大きな差がないが、B/S構造に大きな差があり、特に、西武、そうごは、負債に大きく依存する経営構造となっており、今後、ヨークベニマル等の支援を得て、さらに、収益を引き上げ、B/Sの改善につなげられるかが、課題といえよう。西武百貨店が今後、どのように変わるか、その動向に注目である。
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