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October 16, 2009

アークス、2010年2月、中間、増収減益、守り固める!

   北海道のアークスが10/13、2010年2月期、中間決算を公表した。結果は、売上高1,279.73億円(100.6%)、営業利益40.10億円(86.9%:売上対比3.1%)、経常利益44.01億円(87.6%:売上対比3.4%)、当期純利益23.68億円(81.5%:売上対比1.9%)と、わずかに増収とはなったが、利益はいずれの段階でも減益となり、厳しい決算となった。アークス自身も、「小売業界におきましても、低調な個人消費の動向を受け、低価格訴求を軸にした商品価格の値下げ圧力が一段と強まり、競争環境は一層厳しさを増し、・・」と、コメントしているように、価格競争の厳しさが反映されたものといえよう。

   実際、原価、経費面から、減益の要因を見てみると、原価は77.70%(昨年77.45%)と、昨年よりも0.25ポイント上昇しており、結果、売上総利益は22.30%(昨年22.55%)と、若干下がっており、競争激化により、売価が下がったものと推測される。一方、経費の方であるが、19.16%(昨年18.91%)と、0.25ポイント上昇しており、原価、経費双方で合計0.50ポイント利益を圧迫し、減益となったことがわかる。

   特に、経費減について、アークスは、「前年4月からグループ各社に順次展開していたグループ統一カードが当期においては期初からグループの全店舗に展開されているため、販売費及び一般管理費のうちカードポイント費用が5億47百万円増加し、・・」と、コメントしており、経費増の要因はポイントカード費用であるとしている。実際、5.47億円は今期のアークスの経費金額245.22億円の2.23%にあたり、売上対比でも0.42%に匹敵するので、かなり、経費に重くのしかかっているといえよう。

   このアークスのポイントカードであるが、すでに135万人の会員がおり、アークスのみでポイントが使用できるだけでなく、北海道の様々な企業で活用が可能であり、ハウスカードからリージョナルカードへとなりつつある。この8月にも得タク加盟タクシーと提携し、乗車料金300円で6ポイントが付与されるという。また、自動車学校、ガソリンスタンド、フラワーショップ等とも提携し、今後、「地域のライフラインとして、豊かな暮らしに貢献」する流通企業グループとして、競争が激化する道内流通マーケットの中でお客様に選ばれるために、ポイントサービスを機軸として顧客満足度の向上を目指し、・・」とのことで、まさに、北海道のリージョナルカードを目指したポイントカードである。これは、イオンのWAONに対抗するものといえ、北海道では、店舗間競争だけでなく、ポイントカードを通じたカード競争が激しさを増しつつあるといえよう。

   さて、これを受けてキャッシュフローの流れであるが、営業キャッシュフローは70.06億円(昨年72.51億円)となり、昨年とは大きな変化はなかった。これに対して、投資キャッシュフローであるが、-9.40億円(昨年-22.14億円)と、大幅に減少している。これは、出店関連の投資が-8.10億円(昨年-23.62億円)と、激減していることが大きいといえる。アークスは現在173店舗であり、出店に関する土地、建物、敷金保証金等の合計は781.84億円であり、総資産1,003.26億円の77.9%であり、1店舗当たりに換算すると4.51億円である。したがって、昨年は5.2店舗に当たる出店関連の資産を取得していたが、今期は、1.5店舗であり、新規出店への投資を控えたことが原因といえよう。結果、フリーキャッシュフローは60.66億円(昨年50.37億円)と、潤沢な金額となった。

   そして、財務キャッシュフローであるが、-43.43億円(昨年-25.33億円)と、大きく増加している。したがって、投資を控え、財務改善にキャッシュを振り向けたことになるが、その中身は、-35.49億円の有利子負債への返済である。昨年は-17.87億円の返済であったので、約2倍返済金額を増やしており、キャッシュのウェート、新店を抑制し、返済にかけた形である。結果、有利子負債は76.90億円(2009年決算時112.40億円)と、大きく減少しており、総資産に占める割合は7.66%と10%を切っており、自己資本比率も61.0%(昨年59.8%)と向上している。このまま、返済が続けば、2年で無借金経営が可能となり、自己資本比率も70%近い、より健全な堅固な財務状況となろう。

   こう見ると、アークスは昨年の積極的な新規出店戦略から、一転、財務健全化戦略に切りかえ、投資を抑制し、その余剰キャッシュを有利子負債の返済に振り向け、財務基盤を固めたといえよう。この厳しい消費環境の中、積極的に攻めるのではなく、一歩引いて、戦闘態勢を整えるという経営戦略の転換といえる。

   最後にトータルのキャッシュフローであるが、17.23億円(昨年25.03億円)と、昨年よりは若干下がったが、内部留保も増加しており、現金は83.68億円(昨年90.54億円)となり、有利子負債76.90億円を相殺しており、事実上、この中間決算で無借金となったといえよう。

   このように、アークスの2010年2月期の中間決算は増収減益となる厳しい決算となり、原価、経費双方が上昇し、利益をダブルで圧迫した結果となった。それだけ、北海道の消費環境は厳しさを増し、競争が激化しているものといえよう。このような中、アークスは、ポイントカードを活用し、既存顧客の来店頻度を引き上げる、既存店の活性化策に力を入れる一方、新規出店への投資を抑制し、財務の健全化に大きく舵を切っており、ここは、攻めるのではなく、あえて、一歩退く経営戦略をとっている。今後、アークスがこの健全な財務状況を基盤に、いつ積極策を打ち出すかに注目したい。

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