東武ストア、2010年2月期中間、減収減益、戦略転換!
東武ストアが10/13、2010年2月期の中間決算を公表した。結果は、売上高414.47億円(99.6%)、営業利益7.84億円(64.8%:売上対比1.89%)、経常利益9.08億円(68.7%:売上対比2.19%)、当期純利益7.94億円(69.1%:売上対比1.91%)となり、減収減益の厳しい決算となった。東武ストア自身も、「小売業界におきましても、雇用・所得環境の悪化による個人消費の低迷、販売競争の激化等によりデフレ傾向に拍車が掛かり、近年例をみない厳しい状況で推移、・・」と、コメントしているように、経営環境が急激に悪化したことが原因といえよう。
10/25の日経で、東武ストアの記事が掲載されたが、見出しは、「東武ストア、全55店改装、5年で130億円、既存店強化を優先」というものである。これは、1店舗当たりに換算すると2.36億円となり、現在、東武ストアの新店にかかわる資産の1店舗当たりの合計が3.38億円であるので、約70%に当たり、小改装ではなく、大改装といえ、経営戦略の転換といえよう。東武ストアは現在、新中期経営計画、 CHALLENGE 1000 PLANの3年目であるが、この中では、積極的な新規出店戦略がうたわれており、4年間で20店舗を出店する予定であったが、今後は、新店を抑制、その浮いた費用を既存店の改装に回すことになるという。まさに、経営戦略の転換といえ、今後は既存店の活性化が東武ストアにとっては経営の最優先課題となる。
では、この中間決算では、どのようにキャッシュを配分したかを見てみたい。まず、キャッシュの原資であるが、営業キャッシュフローは18.10億円(昨年20.91億円)となり、昨年よりも約3億円減少している。これは、当期純利益が8.50億円(昨年12.03億円)と、大きく減少したことが大きい。減価償却費は6.42億円(昨年6.12億円)と、ほぼ同じであるので、この当期純利益の減少が大きかったといえよう。
そこで、当期純利益の大本、キャッシュの源泉であるマーチャンダイジング力を見てみたい。まず、原価であるが、73.89%(昨年73.95%)となり、原価は若干であるが下がっている。結果、売上総利益は26.11%(昨年26.05%)となり、粗利は若干上昇した。この厳しい価格競争の中、原価の上昇を防いでおり、原価面は維持ができたといえる。一方、経費面であるが、24.20%(昨年23.13%)と、約1.00ポイント上昇しており、経費の増加が見られる。これは、新店開発にともなう経費に加え、この中間では、先の日経新聞の記事によれば、既存店の売上高が3.8%減少しているとのことで、既存店の売上高の減少が、固定費を押し上げたことが要因であると思われる。
結果、原価は何とか昨対ぎりぎりまで抑えることができたが、経費の上昇は厳しく、差し引き、マーチャンダイジング力は1.91%(昨年2.92%)となり、この時点でキャッシュが減少している。東武ストアの場合は不動産収入、物流収入等のその他営業収入が0であり、このマーチャンダイジング力がそのまま、営業利益となる。したがって、営業キャッシュフローの大本、マーチャンダイジング力が経費上昇により、減少したことが、営業キャッシュフローに響いたといえよう。
次に、投資キャッシュフローであるが、-13.12億円(昨年-4.89億円)と、この中間決算時では大きく投資キャッシュフローが増加している。これは、新規出店関連の資産取得が-14.28億円(昨年-4.20億円)と、積極的な新規出店を行ったためである。東武ストアの1店舗当たりの出店にかかる資産は、先にも言及したように3.38億円であるので、この新規出店への投資は4.22店舗(昨年1.24店舗)であるので、この中間決算は積極的な新店への投資であることがわかる。今回の日経新聞の記事では、ここが戦略転換することになるとの内容であり、後半は、この新規出店を控え、浮いた分のキャッシュを既存店の改装に向けることになろう。
結果、フリーキャッシュフローは5.70億円(昨年16.02億円)と、順流にはなったが、金額は大きく減少しており、この中間決算では、投資、新規出店へ厚くキャッシュを配分している。そこで、財務キャッシュフローであるが、-9.33億円(昨年-9.85億円)と、ほぼ同じ配分であり、その中身は、配当-4.90億円(昨年-4.90億円)、有利子負債の返済-4.41億円(昨年-4.91億円)と、ほぼ同じ内容である。有利子負債については、この中間決算時は、7.10億円と総資産304.17億円のわずか2.33%であり、いつでも無借金経営が可能な状況にあり、結果、自己資本比率は70.1%(昨年68.2%)と、食品スーパーマーケット、決算公開企業約50社の中でもベスト5に入る、健全な財務状況である。
そして、トータルのキャッシュフローであるが、-4.35億円(昨年6.16億円)と、マイナスとなり、内部留保を取り崩すこととなったが、自己資本が充実しており、財務的には問題がない金額である。ただ、新規出店への投資へ厚くキャッシュを配分したため、キャッシュフロー全体のバランスをやや崩しているのが気になるところである。
これを受けて、今後に関しては、日経新聞で報じられたように、新規出店から既存店全店の改装を最優先した経営戦略の転換をはかるとのことである。これは、結果として、キャッシュフローの大本、マーチャンダイジング力の強化につながることであり、このような厳しい経済情勢を考慮すると、柔軟な経営決断であるといえよう。今後、東武ストアの各店舗がどのように活性化してゆくのか、注目である。
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