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October 01, 2009

書評、カタリナ流、ターゲット・マーケティングを読む!

   「カタリナ流、ターゲット・マーケティング、「買いたい人」を絞り込み、リピート購買を増やせ!」(カタリナマーケティングジャパン、代表取締役社長、若林学著、ダイヤモンド社)を読んだ。もう10以上前になるが、当時、One to Oneマーケティングを研究していた時、カタリナマーケティングジャパンのレジクーポンを知り、すごい仕組が動いていると、強い感心をもったことを思い出す。当時は、まだ、大手小売業への導入が主で、参加メーカーもそれほどなかったと記憶しているが、今回、「カタリナ流、ターゲット・マーケティング「買いたい人」を絞り込み、リピート購買を増やせ!」を読んで、飛躍的に内容が充実したことに驚いた。

   特に、2008年からは、ID-POSも始まったといい、本書の中でも、随所にID-POS分析にも触れており、今後、レジクーポンもID-POSと連動した仕組みになってゆくのは時間の問題であると思えた。また、本書のエピローグでも触れているが、2009年8月には、米国カタリナマーケティングコーポレーション社と米国ニールセン社との戦略的アライアンスが公表されたとのことで、今後、日本でも、同様の動きが起こるのではないかと思われる。特に、日本ではPOS分析市場から、すでにニールセンが撤退し、インテージが独占に近い状況になっており、今後、カタリナマーケティングジャパンとニールセンとの様々な共同プロジェクトが立ち上がる可能性もあるといえよう。

   カタリナマーケティングジャパンのホームページを見ると、現在、レジクーポンは、日本の主要23チェーンで導入されているとのことである。本書でも解説されているが、イオン、相鉄ローゼン、イズミ、エコス、オークワ、マックスバリュ北海道、マックスバリュ西日本、イオン(マックスバリュ業態)、万代、フジ、ユニー、マックスバリュ九州、イトーヨーカ堂、マルエツ、CFSコーポレーション(SM・コンボ業態)、カスミ、マックスバリュ東北、ヨークベニマル、イオン九州、イオン北海道、マイカル、光洋、マックスバリュ東海である。これら23チェーンで約2,400店舗、POSレジデータは週間4,800万人、月間で2億回以上となるという。そして、このデータをリアルタイムで米国のフロリダ州のタンパに送信し、そこで、データマイニングを行っているという。その写真が本書には掲載されているが、全世界のPOSデータでは、1.3ペタバイト(1,331.2テラバイト)になるといい、それを超並列コンピューティング技術で処理しているとのことある。

   さて、本書の内容であるが、全7章構成であり、前半では第2章の「20億円件のPOSデータが明かす真実」が興味深い内容である。これは、以前、チェーンストアエイジでも連載された内容であるが、P61、図2-3、P65、図表2-4はまさに圧巻である。客単価と客数構成比、客単価と買上店数、買上品目との関係を0円から100円刻みで10,000円まで分析したものであるが、20億件という、膨大なPOSデータであるがゆえに、見えた真実といえよう。

   通常、食品スーパーマーケットで客単価分析をする時は、顧客に焦点を当てず、商品に焦点を当てるため、全体の客単価、部門の客単価、カテゴリの客単価、そして、単品の客単価と掘り下げてゆき、商品1品1品の客単価を引き上げ、全体の客単価アップをはかるのが通常の手法である。ところが、本書では、客単価400円ごとの客数を導き出し、もっとも客数構成比の高い客単価の顧客に注目するという視点を提示しており、興味深いアプローチといえよう。特に、客数のボリュームゾーンは、平均客単価付近ではなく、低客単価のところにあるという事実を浮かび上がらせたところがポイントである。一方、客単価と買上店数、買上品目の分析では、客単価の段差が100円刻みで見ると、2,000円、3,000円、4,000円等にあり、その段差を克服するには、買上点数よりも買上品目に注目した方がベターだと解説しており、これも、従来のPOS分析では明確にならなかった事実であり、興味深い内容である。

   そして、後半では、第6章、第7章が興味深い内容である。第6章は「ターゲット・メディアで店頭消費を動かす1(メーカー事例)」、第7章は「ターゲット・メディアで店頭消費を動かす2(リテーラー事例)」であるが、カタリナ社の仕組みは、これまで、メーカー向けと思っていたが、小売業向けのものも数多く開発されており、特に、ID-POS分析を活用した仕組みなどもあり、今後、さらに、この分野が飛躍的に発展するのではないかかと思った。   

   このように本書は、従来のPOS分析にもとづくレジクーポンの内容だけでなく、新たにID-POS分析の内容も随所に取り入れており、ID-POS分析の本格的な実用までにはもう数年かかるものと思われるが、今後のPOS分析、特にID-POS分析によるマーチャンダイジング、そして、マーケティングを考える上においても、参考になる内容である。最近では、TV朝日の人気番組、サンデープロジェクトにもカタリナマーケティングジャパンのCMが見られ、ますます導入メーカー、小売業が増えるのではないかと思うが、3年後ぐらいに、今度は、ID-POS分析にもとづくレジクーポンの検証結果と全世界の最新情報を交えた第2弾の本を期待したいところである。

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