時間がマーチャンダイジングの評価基準に?
10/30の日経MJに、マーチャンダイジングを考える上で、興味深い記事が掲載された。見出しは、「ページ滞在時間など分析、携帯通販向け推奨サービス」、「CSKシステムズ、PC向けを改良、月額10万円から」というものであり、携帯通販向けの売上支援サービスである。従来から、この分野は、商品分析において、リアルの小売業、食品スーパーマーケットなどと比べても、一歩進んでいた感があるが、今回のサービスは、さらに、先をゆくものといえよう。特に、商品分析に時間が組み込まれることが、新たなマーチャンダイジングの改善につながる可能性が高く、興味深い内容である。
では、食品スーパーマーケット等の実際の小売業と携帯通販ではどのように商品分析手法が違うかであるが、最大の違いは、携帯通販はそもそも顧客1人1人のIDを把握できるために、はじめからID分析が可能であることである。ここ最近、食品スーパーマーケットでもポイントカードを活用し、ID分析が可能となりつつあるが、携帯通販は、スタート時点からID分析が可能であり、分析内容が1次元先をいっていたといえよう。
いくつか例をあげれば、食品スーパーマーケットでは購入金額、購入数量、レシーと枚数という、原則、この3つの情報が基本であり、この情報の組み合わせが、商品分析そのものである。そして、ここから、マーチャンダイジング改善の仮説を作ってゆくというのが一般的である。一方、携帯通販では、この3つの基本情報に加え、誰がというIDが加わる。さらに、ネット特有の商品購入以前の情報として、商品説明、商品購入のための各コンテンツの様々なIDの履歴が把握できる。たとえば、ページビュー、離脱率、閲覧コンテンツ数、検索キーワードなどである。いわば、食品スーパーマーケットにおいて、来店して、商品を選び、レジで精算するまでの、購買行動をコンテツを通じて数値で把握できる点が大きく違うといえよう。
さらに、ここに、この世界では、行動分析として、どれくらいマウスを動かしたか、どれくらい画面をスクロールしたか、どのページに遷移したかなどが把握でき、今回の携帯版では、これに、時間という、これまでマーチャンダイジング上ではほとんど数値化されなかったデータを取り込むことができるという。したがって、食品スーパーマーケットの2歩先をゆくことになろう。1歩目のIDを把握するところまでは、ここ最近、追いつきつつあるが、この2歩目の時間をマーチャンダイジングに組み込むことは、当面、食品スーパーマーケットでは難しいものがあり、実現するまで、少し時間を要すると思われる。ただ、今回の携帯を、たとえば、アイフォンなどの機能を駆使すれば、組み合わせて、意外に早く実現する可能性はあるといえよう。
では、今回の携帯通販では、時間までもマーチャンダイジング分析に組み込み、何をやろうとし、どのようなメリットが期待できるかであるが、キーワードは、リコメンドという概念である。直訳すれば、お薦めということになろうが、大きく2つにわかれ、コンテンツ上にリコメンドを入れ込むことと、もうひとつは、直接、IDにリコメンドメールを送ることである。このリコメンドをする上において、IDの履歴分析、行動分析が活用されるということであり、ここが、食品スーパーマーケットのID分析との最大の違いといっても良い。
仮に、食品スーパーマーケットでこれができたとなると、どのようなことが想定できるかであるが、まずPOPにリコメンド数値が入り、棚割がリコメンドを組み込んだものとなり、レイアウトがリコメンドを反映した動線になると思われる。さらに、各IDに、購入履歴、行動履歴に応じたリコメンドメールが入店の瞬間に届き、さらに、購入直後に届き、さらに、来店後、数日、数週間、数ケ月、数年後に届くということになろう。結果、何が変わるかであるが、来店頻度が飛躍的にあがり、欲しい商品、今後購入予定の商品が店内ですぐに見つかり、比較購買ができ、滞在時間も延び、購入点数、平均単価の引き上げにつながることになろう。また、未購入の商品についても、リコメンドPOPにより、買いやすくなろう。要は、客数、客単価の向上につながるということであり、これに、粗利、キャッシュフローの情報も当然組み込むことが可能となろう。
今回のCSKの仕組みは、アメリカのベイノート社が開発したUseRankという指標にもとづいて、いまはやりのクラウドコンピューティングのSaaS型で提供されるシステムの日本版ということである。ただ、本来、商売の歴史は日本の方がはるかに古く、リコメンド機能も、要は体面販売の復活、お得意様へのサービスであり、これは、日本の商売の伝統をいかし、日本で開発すべきもののように思う。今回の仕組み自体は最先端のITを駆使しているが、基本概念、基本方程式、そして、リコメンドのサービスの内容ははるかに日本の方がきめ細かく、ある意味、先をいっているといえる。ただ、ITにのらず、人の中に、ノウハウ、秘伝として、組み込まれたところに課題があったといえる。少なくとも、食品スーパーマーケットにおいては、この仕組みを上回るものを、日本で先行して開発し、作り上げてゆくべきであろう。
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