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November 04, 2009

ヤオコー、2010年3月中間、減収増益、実質増収増益!

   ヤオコーが、10/29、2010年3月期の中間決算を公表した。結果は、営業収益1,024.11億円(97.2%)、営業利益45.41億円(111.1%:営業収益比4.43%)、経常利益44.79億円(108.8%:営業収益比4.37%)、当期純利益25.91億円(100.8%:営業収益比2.53%)となり、減収増益となる決算となった。これまで公表された食品スーパーマーケット関係の決算としては、減収増益は珍しいケースであるが、これは、今期からヤオコーの事業構造が大きく変わったためである。

   これまで、ヤオコーは、食品スーパーマーケット、調剤薬局に加え、カルチャー、会員制宅配と4つの事業を経営していたが、この内、カルチャー事業を譲渡、会員制宅配を解散し、今期は2つの事業での経営となった。そのため、その分の売上、利益が差し引かれ、今期は減収増益という結果になった。ちなみに、スーパーマーケット事業の営業収益は101.4%、調剤薬局も107.1%と堅調な数字であり、実質、今期は増収増益の決算といえよう。

   そこで、ヤオコーが増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが、71.38%(昨年71.42%)と、わずかであるが、原価が下がっており、結果、粗利、売上総利益は28.62%(昨年28.58%)と、上昇した。多くの食品スーパーマーケットが激しい価格競争の中、原価の上昇が見られるが、ヤオコーは、逆に原価を引き上げており、価格訴求からは一線を画したマーチャンダイジングを実践したといえよう。ヤオコー自身も、「デリカ部門につきましては、競合が低価格帯商品にシフトしていくなか、基本戦略であります出来たて作りたての美味しい商品、価値ある商品の製造小売りに徹するとともに、新しいMDの開発、商品のグレードアップに取り組んでまいりました。・・」と、コメントしているように、ヤオコーの利益の源泉であるデリカを中心に付加価値の高いマーチャンダイジング戦略を徹底した結果といえよう。

   一方、経費面であるが、28.46%(昨年28.68%)と、経費面においても、削減が進んでおり、原価、経費双方で改善が進んだことが、増益の要因といえよう。結果、差し引き、マーチャンダイジング力であるが、0.16%(昨年-0.10%)と、マイナスからプラスに転じており、マーチャンダイジング力が改善した。

   ヤオコーのマーチャンダイジング構造は、通常の食品スーパーマーケットが経費小、原価大(粗利小)という戦略をとるのに対し、原価小(粗利大)、経費大と、経費よりも、原価に重点を置くマーチャンダイジング戦略をとっているのが特徴である。したがって、経費が少しでも削減されると、利益は大きく改善するマーチャンダイジング構造であり、今期は、その効果が大きかったといえよう。ただ、今後は、ヤオコーも、「お客様の価格意識の強まりおよび競合の低価格政策に対応し、売上高2,000億円達成キャンペーンなど販促を強化し、購買頻度の高い商品を中心に価格対策を実施、・・」とコメントしているように、価格対策もとらざるをえない状況となり、今期以上に経費面の改善が課題となろう。

   そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入4.48%(昨年4.15%)がのり、結果、営業利益は4.64%(昨年4.05%)となり、増益となった。こう見ると、今期ヤオコーは、原価、経費の改善に加え、その他営業収入も改善され、トリプルでの利益の改善がはかれ、結果、増益となっており、この厳しい経営環境の中、理想的な増益の確保といえよう。

   さて、一方、財務、特に、今後の新規出店余力であるが、ヤオコーの自己資本比率は44.8%(昨年43.5%)と、今期の好調な増益を背景に若干改善されている。ただ、出店にかかわる資産である土地、建物、差入れ保証金等の合計は467.89億円と総資産738.00億円の63.39%であり、自己資本比率を大きく超え、差し引き、出店余力は-18.59%と、負債に大きく依存する出店構造となっている。

   また、有利子負債も109.87億円と総資産の14.88%を占めており、この中間でも、財務キャッシュフローを見ると、6.51億円、有利子負債が増加している状況である。しかも、フリーキャッシュフローは-13.97億円のマイナスであり、その要因は有形固定資産の増加、すなわち、新店関連へ58.42億円投資したことによる。結果、トータルのキャッシュフローは-13.83億円となり、内部留保を取り崩している。これは、新規出店関連にキャッシュを厚く配分した結果であり、全体としては、やや厳しいキャッシュフローの流れといえよう。本来であれば、好調な決算をもとに、財務キャッシュフローの改善にまで踏み込み、有利子負債を削減したいところであったと思われるが、投資、特に、出店関連へ配分を重点的に割り当てたため、この中間決算では財務改善にまでは踏み込みこめなかったためと思われる。

   今後、安定的に新規出店を行い、成長路線を進めてゆくには、もう一段、出店余力を高める必要があるといえ、今後、後半に向けて、この好調な決算を受けて、ヤオコーがどのように財務改善に踏み込むかが注目である。

   これを受けて、通期予想であるが、営業収益2,093.00億円(100.5%)、営業利益86.80億円(106.3%:営業収益比4.14%)、経常利益84.80 億円(104.1%:営業収益比4.05%)、当期純利益47.80億円(101.6%:営業収益比2.28%)と、増収増益予想であり、後半は、より厳しい経営環境が予想されるが、この中間決算の好調な収益力をもとに、堅調な決算が期待できそうである。

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