関西スーパーマーケット、2010年3月期決算、増収減益!
関西スーパーマーケットが11/5、2010年3月期の中間決算を公表した。結果は、営業収益554.07億円(102.6%)、営業利益3.68億円(44.0%:営業収益比0.66%)、経常利益4.95億円(49.6%:営業収益比0.89%)、当期純利益-0.20億円と、増収減益、特に当期純利益は赤字となる厳しい決算となった。当期純利益が赤字となったのは、店舗閉鎖損失引当金繰入額を4.27億円計上したためである。ただ、この特別損失を除いても、すべての段階で利益は大幅減となり、関西スーパーマーケット自身も、「消費者の節約志向や生活防衛意識の高まりに加え、今夏の天候不順も重なり非常に厳しい経営環境となり、・・」とコメントしているように、経営環境がここへ来て、急激に悪化していることがうかがわれる。
そこで、関西スーパーマーケットの利益が大幅な減益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが76.51%(昨年76.20%)と、0.31ポイント上昇している。これは、消費環境が厳しい中、価格競争が激化していることに加え、今期は、関西スーパーマーケットが創業50周年に当たるため、「感謝の気持ちをこめて当期1年間をとおして、「めちゃ安特価」「50%引きセール」「たすかる値」「記念ロゴマーク入り商品」の記念セールを実施して、・・」等の強力な価格訴求を実施しているためのであると思われる。
実際、既存店の客数、客単価、PI値、平均単価を見ると、客数3,247人(99.9%)、客単価1,626円(98.1%)と、客数、客単価双方下がっており、既存店の売上は97.5%と、昨対を割っている。また、客単価の中身であるが、PI値99.2%(100.7%)と、PI値は上昇したが、平均単価は162.24円(97.0%)と、下がっており、PI値、すなわち、顧客1人当たりの買上点数は伸びているが、価格が下がっており、結果、客単価を下げるという状況であり、これが原価の上昇につながったものと思われる。
結果、売上総利益は23.49%(昨年23.80%)と、粗利が下がった。一方、経費の方であるが、24.85%(昨年24.08%)と、0.77ポイント上昇しており、既存店の売上げが下がったことにより、相対的に固定費が上昇したものといえよう。結果、差し引き、マーチャンダイジング力であるが、-1.35%(昨年-0.28%)と、昨年もマイナスであったが、マイナス幅が大きく開き、利益の確保が厳しい状況であった。原価、経費双方、ダブルで利益圧迫が見られ、厳しい収益構造である。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収益が2.04%(昨年1.86%)加わり、結果、営業利益は0.69%(昨年1.58%)と、減益となった。この営業利益0.69%は、前期決算時の決算公開企業約50社の食品スーパーマーケットの平均が2.57%であるので、かなり、厳しい数字である。
一方、財務面であるが、自己資本比率は48.1%(昨年49.0%)と若干下がっているが、決算公開企業約50社の前期本決算の平均は40.7%であるので、ちょうど20番目前後となり、上位の数字である。結果、負債が50%を超えるが、その要因は有利子負債が94.00億円(前期決算時98.50億円)と、総資産514.82億円の18.25%が大きいが、これも決算公開企業約50社の前期決算の平均が27.7%であるので、ほぼ20番目ぐらいとなり、上位の数字である。したがって、負債が財務を圧迫している状況ではないが、もう一段と財務の強化をはかりたいところかと思う。
ここから、出店余力を算出してみると、関西スーパーマーケットの出店に関する資産である土地、建物、敷金保証金は309.46億円となり、総資産の60.1%であるので、自己資本比率から差し引いた出店余力は-12.0%であり、やや、負債に負う出店構造である。これは、決算公開企業約50社の前期本決算の平均が-22.78%であるので、これも、ほぼ20番前後となる。こう見ると、関西スーパーマーケットの出店余力はやや負債への依存が重いといえ、今後、安定的に新規出店を果たしてゆくには、もう一段の財務の強化が必要といえよう。
これを受けて、今後の出店戦略であるが、営業キャッシュフローは当期純利益が赤字になったが、これは引当金による結果であるので、キャッシュフロー上は当期純利益も昨年同様の数字が確保され、さらに、昨年は厚生年金基金脱退損失引当金が-11.91億円発生したので、今期は16.73億円(昨年3.65億円)と大幅に改善した。結果、投資キャッシュフローは-4.25億円(昨年16.30億円)と、昨年のように有価証券を売却してプラスにすることなく、営業キャッシュフローの範囲内で投資を行うことができた。ただ、出店関連は-8.82億円(昨年-18.65億円)と半減しており、これは、店舗数に直すと2店舗弱となる。したがって、今後は出店を抑制し、赤字店舗を整理、既存店の活性化に経営戦略をシフトする方向といえよう。そして、財務キャッシュフローは-7.68億円(昨年-7.88億円)となり、結果、トータルは4.79億円(昨年12.07億円)と、ほぼ店舗損失の引き当て金額分を内部留保したことになる。
このように、関西スーパーマーケットの中間決算は、利益面が厳しい状況となり、当期純利益が赤字となった。ただ、財務面は比較的安定しているので、今後、どう経営戦略を立て直すか、重要な段階にあるといえよう。関西スーパーマーケットも赤字店舗を閉鎖し、出店を抑制し、既存店の活性化に経営の重点を移す方向であり、今後、既存店がどこまで活性化し、収益が回復できるか、その動向に注目である。
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