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November 13, 2009

POS分析、レシートとID分析の違いは?

   ここ最近POS分析が急速に食品スーパーマーケット業界、およびメーカー、卸で注目されつつある。その背景にあるのは、消費環境の厳しさが増す中、小売業側の収益が落ち、その対策のひとつとして、食品スーパーマーケットとメーカー、卸と一体となった取り組みが求められ始めたことがあるといえよう。特に、ここ最近、食品スーパーマーケット側のIT化が進み、webを通じて、POSデータを公開する仕組みがあいついで開発されたことも、この状況に拍車をかけているといえよう。そこで、ここでは、この注目されつつあるPOS分析において、2大潮流となりつつある分析手法、レシート分析とID分析の違いについて考えてみたい。

   POS分析には、大きく分けて2つの分析手法が存在する。ひとつはレシート分析であり、もうひとつはID分析である。では、この2つの分析手法の決定的な違いは何かを考えてみたい。まず、共通点であるが、どちらも、売上げと連動しており、売上げを起点に捉えることができる。レシートの場合は、売上=レシート枚数×レシート1枚当たりの売上げであり、IDの場合は、売上=ID数×1ID当たりの売上げとなる。したがって、ここから売上を起点に両者を関係づけることが可能となる。売上=レシート枚数×レシート1枚当たりの売上げ=ID数×1ID当たりの売上げとなる。そして、これを変形すると、レシートとIDの関係が明らかになる。すなわち、レシート枚数×レシート1枚当たりの売上げ=ID数×1ID当たりの売上げとなり、これをレシートから見ると、レシート1枚当たりの売上げ=1ID当たりの売上げ×(ID数÷レシート枚数)であり、IDから見ると、1ID当たりの売上げ=レシート1枚当たりの売上げ×(レシート枚数÷ID数)である。

   すなわち、レシートとIDの関係は、この数式によって関係づけられ、どちらを起点にしても、売上げを説明でき、売上げを媒介にして、この両者を関係づけることが可能となる。通常は、この2つの数式の内、後者、すなわち、1ID当たりの売上げ=レシート1枚当たりの売上げ×(レシート枚数÷ID数)を活用し、これをさらに整理し、ID金額PI値(1ID当たりの売上げ)=ID客数PI値(レシート枚数÷ID数)×金額PI値(レシート1枚当たりの売上げ)として、活用している。

   したがって、レシートとIDの関係は、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値で関係づけられ、この両者は無関係ではなく、この数式により、売上げを媒介にして、密接な関係にあるといえる。そこで、この数式をもとに、レシートとIDの違いを改めて考えてみたい。

   まず、レシートであるが、決定的な違いは、レシートにはIDがないため、ID客数PI値が存在しないことである。数式の右半分の金額PI値だけの世界での分析となる。したがって、売上げをあげるには、レシート枚数を増やすか、金額PI値(レシート1枚当たりの売上げ)を増やすかということになる。特に、金額PI値の高い商品が重視され、この商品のレシート枚数をいかに増やすかが最重点課題となる。

   これに対して、IDは、数式が示すように、金額PI値にID客数PI値がかかっているため、ID客数PI値、すなわち、頻度が重要なキーワードとなる。したがって、この頻度次第で、金額PI値が高いものでも、ID金額PI値は低くなることもあり、逆に、金額PI値が低いものでも、ID金額PI値は高くなることもある。これは、レシートの世界では想像もつかなかった事実であり、IDを見ることによってはじめて明らかになった事実である。したがって、ID客数PI値、すなわち、頻度分析が可能なことが、決定的な違いのひとつである。

   次に、その延長となるが、頻度分析、すなわち、リピート分析が可能となることである。単純なID客数PI値の頻度だけでなく、売上げの中身が、トライアルIDが多いのか、リピートIDが多いのか、さらには、ヘビーリピートか、ライトリピートかなど、様々な頻度分析が可能となる。また、IDの属性と絡めれば、属性ごとの頻度分析も可能となり、売上げの中身がより深く分析できることがポイントである。

   そして、もう1点、IDで売上げが見えるので、対象商品だけでなく、そのIDが購入している全商品を見ることもできることである。これもレシート分析では逆立ちしても把握できない実態である。これによって、併売分析も可能となり、さらには、そのIDがどれだけ、店舗に貢献しているか、いわゆるロイヤルカスタマー度の判別も可能となる。これは、財務との連動も視野に入る課題であり、特に、キャッシュフローと密接に絡むテーマでもある。

   このように、レシートとIDは密接に関係しており、しかも、その本質は、決定的な違いがあるといえる。さらに、この両者は従属関係にあるともいえ、ID客数PI値を介することによって、金額PI値の世界をID金額PI値の世界に変換することが可能である。金額PI値の世界はすべてID金額PI値で説明することができるが、ID金額PI値の世界は、IDの把握ができない限り、金額PI値では説明できないという関係である。その意味で、POS分析は、その歴史はレシートからIDへという流れであるが、本質を理解するには、IDからレシートへの方が速く、しかも深く理解でき、広がりも大きいといえよう。

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