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November 15, 2009

在庫と食品スーパーマーケットの関係

  小売業は在庫との戦いであるといわれる。食品スーパーマーケットも同様であり、在庫問題はマーチャンダイジングの大きな課題である。確かに、売場は商品であふれており、通常の食品スーパーマーケットでは約1万品はあり、このそれぞれが、金額面で見ると平均10日分ぐらいの在庫をもっている。また、これを数量で見ると、1日1個であれば、10万品、2日に1個であれば5万品、10日に1個であれば、1万品の在庫となる。ちなみに、ごく一般的な食品スーパーマーケットの部門別在庫日数であるが、金額面で見ると、生鮮は数日、日配は5日ぐらい、グロサリーは3週間ぐらい、合計10日前後となる。

   では、この在庫がどのような経営へのインパクトとなるかを考えてみたい。まず、在庫と経営との関係であるが、大きく2つあるといえよう。ひとつは過少在庫であり、もうひとつは過剰在庫である。過少在庫の場合は、売上げが下がり、結果、利益が下がることが経営へ与えるインパクトであるといえよう。これは結果的に、キャッシュフロー、特に、当期純利益を減らし、投資や返済への原資が少なくなり、結果、純資産が増加せず、財務への圧迫が起こることになろう。

   一方、過剰在庫は、売上げは過少在庫と比べ上昇し、キャッシュフローも増加し、投資や返済への原資が増え、純資産も増加し、財務改善へつながるように見える。ただ、売上げが上がらなければ、在庫が増えることになり、原価が上昇し、粗利が減り、結果、キャッシュフローが減ることになる。要は、過剰在庫が売上げに結びつくかどうかがポイントとなる。また、過剰在庫は、一方で、B/Sの資産の増加につながり、結果、負債が増加することになりかねず、財務を圧迫することになる。したがって、過剰在庫は、売上げに結びつたとしても、資産、負債の増加につながる恐れが高く、この面から見ると、望ましいとはいえない。

   では、実際、食品スーパーマーケットでどのくらい在庫資産があるかであるが、決算公開企業約50社の前期本決算をみると、単純平均では総資産対比8.5%である。ただ、この中には、ホームセンター主体の食品スーパーマーケット、GMS、SC主体の食品スーパーマーケットも入っており、純粋な生鮮主体の食品スーパーマーケットで見ると数%である。実際の数字を見ると、たとえば、ホームセンター主体のトライアルカンパニー26.2%、PLANT20.0%、アークランドサカモト17.0%という状況であり、GMS主体のイオン九州23.5%、Olympic15.0%とい状況である。一方、生鮮主体の食品スーパーマーケットはオオゼキ2.5%、マックスバリュ東海4.0%、丸和4.1%、関西スーパーマーケット4.2%、原信ナルスH4.2%、アオキスーパー4.6%、ハローズ4.9%、ヨークベニマル4.9%、オーケー4.9%という状況である。したがって、食品スーパーマーケットの在庫はおよそ5%前後といえよう。
 
   では、この約5%が経営へのインパクトがあるかどうかであるが、微妙な数字であるといえよう。先に見たトライアルカンパニー、PLANT、アークランドサカモトのように20%前後となると在庫インパクトは大きく、この削減がそのまま負債の削減につながり、純資産比率の引き上げにつながったり、たな卸資産の減少として、キャッシュフローの増加に大きくつながることになる。経営の改善に大きく寄与するといえよう。

   したがって、食品スーパーマーケットにとって、在庫問題は確かに総資産の5%前後であるので、それなりの存在感はあるが、経営にインパクトを与えるまでにはなっておらず、微妙な数字といえよう。通常、何でもそうだが、ものごとにインパクトを与えるには、7%から10%の数字が必要といえ、これが10%を超えれば、大きなインパクトとなり、無視できない数字となる。食品スーパーマーケットで10%以上の影響のある項目は、資産面では、土地、建物、敷金・保証金等であり、負債面では買掛金、有利子負債等である。これらは確かに、10%以上の総資産対比の項目であり、どれも経営へのインパクトは大きい。

   こう見ると、食品スーパーマーケットにとって、最大のインパクトはこの中の、土地、建物、敷金・保証金、すなわち、出店関連であり、しかも、その資金調達が有利子負債であることが大半であり、この2点が最も経営にインパクトがある項目といえよう。在庫問題はこと食品スーパーマーケットにとっては、最大のインパクトである出店関連の次のテーマであるといえ、無視はできないが、横目でしっかりにらみながら見てゆく項目といえよう。

   このように食品スーパーマーケットにおける在庫問題は、こと、生鮮主体の食品スーパーマーケットでは総資産の約5%であり、経営へのインパクトが微妙な数字であるといえる。小売業業界全体では在庫問題は、先に見たホームセンター主体の食品スーパーマーケットのように大きなインパクトがあるが、食品スーパーマーケットはそれ以上に出店関連の問題があまりにもインパクトが大きいといえ、気にしなければならない課題ではあるが、経営改善の優先度は若干低い課題であるといえよう。

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