デジタルサイネージ、本命か、ミルとくチャネル?
最近、デジタルサイネージの動きが加速しており、あちこちで見かけるようになった。本ブログでもセブンイレブンのデジタルサイネージの実証実験について取り上げたが、食品スーパーマーケット業界でも、デジタルサイネージが、すでに実用化していることがわかった。以前から、サミット、カスミ、イオン等で様々な実証実験が行われていたり、ドールがバナナ売場でデジタルサイネージを活用していたりということは知っていたが、いずれも食品スーパーマーケットの売場全体を使ってのデジタルサイネージではなく、部分的な対応であった。ところが、意外なことに、ソニーがいなげやの店舗全体をつかって、30店舗でデジタルサイネージを展開しており、実証実験ではなく、本格稼働であり、広告効果もすでに実証されているという。
その名も、「ミルとくチャネル」であり、現在、小売業界ではオリンピックの22店舗を含め、55店舗で稼働中であるという。オリンピックでは合計151台、いなげやでは254台、デジタルサイネージが設置されており、合計405台が稼働しているという。それぞれ店舗数で割ると、オリンピックは7台弱であり、いなげやは8台強であるので、かなりの数である。ソニーのホームページでは、売場写真も動画も公開されているが、それを見ると、主動線上に沿うように大型ディスプレイが配置され、特に、店頭青果売場では、平台ごとに大型ディスプレイが掲示されている。さらに、レジ前にもやや小型のディスプレイが掲げられており、顧客の動線をしっかり押さえた配置となっている。
食品スーパーマーケットでデジタルサイネージを効果的に活用するには客数PI値がポイントであるといえ、入店顧客の何%が通る動線であるかが効果を決定づける。客数PI値はPI値にほぼ相関する傾向があるので、原則、PI値の高い場所、青果、日配等か、物理上、顧客が通らざるをえない場所、出入り口、すなわち、店頭、レジ前が客数PI値の高い場所となる。ここに効果的にデジタルサイネージを置くことにより、入店顧客へ対しての効果は最大となる。今回のいなげやの設置場所を見ても、主通路とレジの2チャンネルに絞っており、食品スーパーマーケットでデジタルサイネージを展開するのであれば、極めて理にかなったチャネル設定といえよう。
もうひとつ、食品スーパーマーケットでデジタルサイネージを展開する上で、重要なポイントは時間である。食品スーパーマーケットの購買層の大半は食事の材料、素材、加工食品、調味料、惣菜を購入する主婦であり、少しでも早く買い物を済ませ、自宅に帰り、夕食、昼食を作りたいという思いが強い。したがって、平均的な買い物時間は5分から10分であるといえ、このわずかな時間の中で、デジタルサイネージで商品を訴求しなければならない。通常のテレビであれば、30分もの、60分もの、120分もの、長いものでは180分ものの番組があり、その中でCMを流せば良い分けであるが、食品スーパーマーケットの店内の場合は、5分、10分が最大であり、この中に効果的なCMを流すことがポイントとなるので、時間が極めて重要となる。
今回の仕組みでも、その返は十分に考慮されているようで、5分に1回配信するようにし、可能な限り、1人2回はCMを見るように工夫しているようである。チャネルも大きく2つに分かれており、レジチャネルと主通路チャネルであり、CMをどちらに載せるかを選ぶことができ、料金もそれぞれ違うようである。いま、なぜか、いなげやのレジチャネルが特別割引になっているようで、価格設定もバラエティがあるようである。広告対象人数であるが、いなげやの場合が30店舗13.1万人、オリンピックが22店舗で13.3万人であるので、1店舗当たり、いなげやは4,366人、オリンピックは6,045人となる。食品スーパーマーケットで4,000人を超える人数はかなりの客数であり、広告効果から見ると、当然、客数が多ければ多い方が良いので、いなげやでも客数の多い店がピックアップされたといえよう。
そこで、広告効果であるが、デジタルサイネージに流したCMの商品は平均約180%にPI値が跳ね上がるという結果であったという。最も反応が良いのが菓子であり200%を超え、ついで生鮮、加工食品、穀物加工品が平均近い数値であり、調味料、日用品は150%ぐらいであったという。また、視認率は週1回以上来店している顧客は約80%であるというので、かなり高い数字であるといえよう。こう見ると、デジタルサイネージの食品スーパーマーケットでの効果は十分といえ、今後、さらに工夫を重ね、進化し、定着してゆくのではないかと思う。
ただ、ひとつ気になるのは、デジタルサイネージに入った商品は効果が極めて高いということはわかるが、店舗全体の売上げにはどのような影響があるかである。当然、そのためには、デジタルサイネージと店舗全体に影響を与える商品とマッチングさせる必要があり、自然、それは、POSデータとの融合となろう。また、デジタルサイネージは顧客に直接訴えることができるので、いずれ、IDとのマッチングも課題となろう。さらに、これが、顧客の動線検証に活用できれば、レイアウトの改善につながり、店舗の改装に活かすこともできよう。その意味で、食品スーパーマーケットで実用化がはじまったばかりのデジタルサイネージであるが、今後、店舗全体の活性化にもつながってゆき、ひいては来店顧客にとってより買い物しやすくなるような方向に発展していって欲しいと思う。
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