タイヨー、2010年2月期の中間決算を見る!
本ブログでは、食品スーパーマーケットの決算月には最新情報として、決算情報を積極的に取り上げている。特に、本決算に関しては、ほぼ全決算公開企業約50社を取り上げ、中間決算においても、主要企業はほとんどを取り上げ、その状況を分析している。今回は、その中で、まだ、取り上げていない、今期の中間決算を公開した食品スーパーマーケット、鹿児島のタイヨーを取り上げてみたい。タイヨーは、鹿児島県を中心に、宮崎県をも含め、88店舗を展開する食品スーパーマーケットであり、2009年2月期決算の営業収益は1,271億円、決算公開企業約50社の中では21番目となる規模である。
その最新の決算状況、2010年2月期の中間決算であるが、10/5に公表された。結果は、営業収益が640.84億円(99.9%)、営業利益11.06億円(77.1%:営業収益比1.72%)、経常利益11.47億円(79.3%:営業収益比1.78%)、当期純利益6.01億円(93.5%:営業収益比0.99%)となり、減収減益の厳しい結果となった。タイヨー自身も、「流通を取り巻く環境も急激に悪化が進み、市場全体を取り巻く低価格志向と価格競争はなお一層激しさを増し、客単価の下落に拍車をかけるなど、大変厳しい経営環境が続き、・・」と厳しいコメントを出しており、九州、鹿児島においても、消費環境は厳しさが増しているといえよう。
そこで、タイヨーが減収減益になった要因を見てみたい。まず、営業収益であるが、食品スーパーマーケットの成長戦略は新店開発=成長ともいえ、新規出店が成長を支える原動力といえる。既存店は数年後にはピークを迎え、競合店が近隣に出店すると、その影響が及び、マーチャンダイジングの改善、店舗改装を実施しても、現状を維持することすら難しいのが実態である。したがって、チェーン全体の成長は継続的な新店開発にあるといえ、毎年、確実に一定規模の新店を作ってゆけるかがポイントとなる。
タイヨーの場合は、店舗数が現在88店舗であるので、105%の安定成長を目指すには、少なくとも4から5店舗は毎年新店が必要といえる。この中間では佐土原店(2月)、岩川店(6月)の2店舗を新設しているが、この中間決算時では、実質1店舗強の増加といえ、新店効果が十分に表れておらず、結果、営業収益が99.9%と、わずかであるが、減益となったといえよう。また、今後、105%以上の成長を目指す場合は、さらに、3店舗以上の新店が必要といえる。
そこで、タイヨーの出店余力を見てみると、2009年2月決算時は-17.2%であり、この中間決算時点では純資産比率が59.1%、出店にかかわる資産が総資産の77.5%であるので、差し引き、-18.4%と若干マイナス幅が拡大している。この数字は、決算公開企業約50社の中では、ほぼ真ん中ぐらいではあるが、もう一段、出店余力を引き上げ、成長戦略を強化したいところであると思われる。また、キャッシュフローの投資キャッシュフローを見ると、出店関連の資産の取得は10.64億円であり、タイヨーの場合は1店舗当たりの出店にかかわる資産が約8.07億円とやや高めであることから、この中間では、1店舗強の投資金額といえ、抑制的な投資戦略といえよう。
その背景には、この中間決算時におけるキャッシュフロー戦略が大きく影響しているといえる。特に、今期は、前期の決算時が金融機関の休日と重なり、仕入れ債務の支払いがずれたため、キャッシュフローが大きく変動している。前期は仕入れ債務の増加が83.87億円と大きくプラスになったが、この中間では、大きく減少し、-50.99億円の減少となった。その差、134.86億円であり、異常な数字である。したがって、営業キャッシュフローは-18.86億円となり、投資キャッシュフローに十分な配分ができず、財務キャッシュフローもマイナス、すべてのキャッシュフローがマイナスとなり、結果、内部留保を54.05億円取り崩すこととなった。もちろん、その分、前期は内部留保を増加してあり、遣り繰り上は問題ないが、結果としては、新規出店への投資が十分とはいえず、成長戦略が薄くなったといえ、営業収益の確保ができなかったといえよう。
一方、減益の要因であるが、原価は78.89%(昨年79.08%)と、下がっており、厳しい消費環境の中、粗利は21.11%(昨年20.91%)と、0.20%改善している。これに対し、経費の方であるが、20.45%(昨年19.77%)と、0.68%上昇しており、差し引き、マーチャンダイジング力は0.66%(昨年1.14%)と0.48%減少した。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が1.09%(昨年1.12%)のり、結果、営業利益は1.75%(昨年2.26%)となり、減益となった。原価は改善できたが、経費の上昇に加え、その他営業収入の減少が影響し、営業利益を押し下げたといえよう。
このように、タイヨーの2010年2月期の決算が減収減益という厳しい状況となったが、その要因を見ると、成長戦略の要となる新規出店への投資が十分にできず、新店が展開できなかったことに加え、消費環境の悪化により、経費の上昇が見られ、営業利益が確保できなかったことが要因といえよう。今後、消費環境はデフレ傾向が鮮明であり、より、厳しさを増すもの思われるが、今期、次の後半、タイヨーが、この苦境を打開するため、どのような経営方針を打ち出すか注目である。
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