ID-POS分析、その本質!
ここ最近、ID-POS分析に取り組む機会が多い。ID-POS分析は従来のPOS分析と比べ質、量ともに格段の違いがあり、これまでできなかった様々な新たな分析が可能となる。そこで、ここでは、何が決定的に違うのかを考えてみたい。
まず、最も大きな違いは購入者の属性が把握できることであろう。これまでは何が買われたかは把握できたが、誰が買ったかは把握できなかった。誰とは、男性、女性、年齢、職業、年収、住所、家族構成など、様々な属性情報である。もちろん、この情報が正確に申告されていればということが前提となるが、少なくとも、これまでのPOS分析よりは一歩進んだことは確かであろう。ここから、商品を購入する顧客像が浮かび上がり、その結果から、新たな仮説をつくることができ、これまでにない仮説にもとづくマーチャンダイジングの改善が可能となる。
ただ、この分析は質の違いというよりも、どちらかという量の違いに近いといえ、商品の分析手法が根本的に変わったというよりも、商品を購入する顧客像が鮮明になったといえ、従来の分析手法を変えるまでにはなっていないといえよう。商品の分析手法は、この段階では、あまり大きく変化しているとはいえず、従来の単純な売上金額、売上数量、もう一歩進んで、金額PI値、PI値、平均単価を使って分析していることが多いのが実態といえよう。
では、質的な違いとは何であるかであるが、それは、新たな指標が生まれ、その結果、新たな分析が可能となることであるといえる。従来のPOS分析では分析することができなかった分析手法が生み出されることであり、その結果、従来の分析では把握できなかった本質が見えることである。先にあげた属性はその意味で、分析手法そのものに質的な変化をもたらすというよりも、従来の分析手法をそのまま使い、ID-POS分析で得られる、属性という新たな切り口を提示しているといえる。したがって、従来の分析よりは一歩進んだといえるが、質的な段階が上がったとはいえない分析といえる。
そこで、質的な違いとは何かを考えてみたい。ID-POS分析が世の中で注目された時、質的な違いで脚光を浴びたのは併買分析であろう。いまでも併買分析はID-POS分析特有の分析手法として様々な場面で活用されており、クロスマーチャンダイジングという形で実践に応用されている。最近では、クロスマーチャンダイジングが進化し、コラボ商品まで登場しており、実践事例は豊富である。
ただ、この併買分析は、従来のPOS分析ではけっしてできないかというと、ある程度までは従来の分析でも可能である。併買とはAという商品とBという商品をどのくらい同時購買するかを指標化したものであるが、これは、レシート分析でも精度は低いがある程度まで把握することは可能である。AとBを同時に購入しているレシートを数え、全レシートで割れば、同時購入率が計算できる。数式では、客数PI値がまさにこれに当たり、併買客数PI値=同時購入レシート枚数÷全レシート枚数として、計算可能である。もちろん、ある特定IDがAとBの商品を同時購入しているかどうかは、IDを把握しないとできないので、ここまで分析するにはID-POS分析にまで踏み込まないと無理であるが、ある程度までは、併買分析も従来のPOS分析で可能といえる。
では、ID-POS分析の決定的な質的な違いは何であろうか。それは、ずばり、頻度である。頻度、これが、従来のPOS分析では、けっして得られない指標であり、ID-POS分析特有の独特な指標であるといえる。従来のPOS分析はつきつめれば、レシート分析であり、レシートを基本単位として分析をしてゆくことになる。ID-POS分析は、このレシート1枚1枚にIDを付けたところが決定的に違うところであり、言い換えれば、IDレシート分析といえよう。したがって、レシートにIDがついたことにより、はじめて分析が可能になる指標がID-POS特有の分析といえる。
そこで頻度の登場である。頻度とは、誰が何回買ったかであり、これが頻度である。レシート分析では何回までは把握できるが、誰が何回、すなわち、頻度を把握することはできない。指標ではID客数PI値であり、ID客数PI値=レシート÷IDとなる。このID客数PI値=頻度がID-POS分析特有の指標であるといえ、この頻度を駆使することがID-POS分析といえる。
おもしろいことに、この頻度、ID客数PI値が加わると、従来の金額PI値(客単価)も、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値という数式で説明できるようになり、レシート分析(金額PI値)がID分析(ID金額PI値)とID客数PI値で結ばれ、双方の分析を融合することが可能となる。したがって、頻度、ID客数PI値を理解し、その本質をつきつめてゆくことがID-POS分析ならではの醍醐味といえ、これが従来のPOS分析と決定的な違い、質的な違いといえよう。
ID-POS分析もようやく、食品スーパーマーケット業界でも活用がはじまりつつあるが、属性、併買分析も重要な分析のひとつではあるが、その本質は頻度、ID客数PI値にあるといえ、ここをしっかり押さえ、マーチャンダイジングの改善につなげて欲しいところだ。
食品スーパーマーケットのための決算分析、財務3表連環法Vol.4、詳細はこちら!
有料版プレミアム、緊急特集、日本の食品スーパーマーケット2009!今週の内容!
週間!食品スーパーマーケット最新情報、まぐまぐ! 資料集
Mixi(ミクシィ)版にMD力って何?のトピックをつくりました!
« 重点商品の管理を徹底するには? | Main | 食品スーパーマーケット、12/11、今週の株価! »
Comments