ID客数PI値って何?
前回、客数PI値について解説したので、今回は、もう一歩踏み込み、ID客数PI値について考えてみたい。ID客数PI値は客数PI値にIDがついたものであり、ID-POS分析には必須の指標である。ID-客数PI値なくして、ID-POS分析は成り立たないといえる。その意味では、客数PI値よりも、メジャーな指標となる可能性が高く、ID-POS分析が普及すればするほど、ID客数PI値は一般化することになろう。そこで、ここでは、ID客数PI値とは何か、客数PI値とはどう違うのか、ID客数PI値の将来展望を解説してみたい。
まず、ID客数PI値とは何かであるが、これは、客数をIDで割ったものである。一般的に小売業では客数のことをIDとは捉えていない。それは長らく、IDそのものを正確に把握することが技術的にできなかったため、IDを数字で捉えることができなかったからである。したがって、IDの研究は小売業ではまだまだ一般化しておらず、実際の小売業でIDを分析し、その数字を現場に活かし、実績を上げている企業はごくわずかといえ、特に、食品スーパーマーケットではまだまだごく限られた企業のみのといえよう。
では、小売業における客数とは何かであるが、これはレシートのことである。レシート=客数ととらえているのが小売業の客数の実態である。したがって、IRなどで公表されている年間客数はレジ通過の総レシート枚数のことである。これを客数として捉え、1店舗およそ100万人近い客数となり、100店舗で1億人の年間客数となる。セブンイレブンやウォルマートの客数も同様であり、すべて、客数というと、通常はレシート枚数のことである。
もちろん、ポイントカードを導入している小売業はすべて何らかの形でIDを把握しているので、最近ではIDで客数を把握できるようにもなり、ほぼ正確なIDの客数もわかるようになってきた。そこで、登場するのが、ID客数PI値である。ID客数PI値とは、これまでの客数=レシートとIDとを結びつるける根幹指標のことであり、数式ではID客数PI値=客数(レシート)÷IDとなる。このID客数PI値が生まれたことにより、はじめて、これまでの客数(レシート)の世界がIDとつながることになり、ID-POS分析が飛躍的に進むことになったといえる。
なぜなら、これまでのマーチャンダイジング理論の根幹、金額PI値をID客数PI値を通じて、ID金額PI値と結び付けることが可能となったからである。これも本ブログでは何度も取り上げているが、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値であり、まさに、右側は客数(レシート)の世界、左側はIDの世界であり、この2つの世界がID客数PI値を通じて結びつき、様々なID-POS分析が可能となる。しかも、これまでは金額PI値の分析が主なマーチャンダイジング理論を形作っていたが、ID客数PI値を通じて、IDの世界とつながることにより、IDと結び付いたマーチャンダイジング理論の構築が可能となったことである。
この数式が示すように、ID客数PI値は1ID当たりのレシート枚数であるので、これは、ある購入期間におけるIDの購入頻度を表しており、IDの世界では、マーチャンダイジングに頻度という概念が必然的に組み込まれることになり、頻度分析が可能となる。さらに、商品をIDから見ることが可能となり、これまでの特定レシート(商品分類など)のマーチャンダイジングを取り上げるだけでなく、IDの総レシートを分析対象とすることも可能となり、併売分析や、最近の最先端のマーチャンダイジング理論であるファイナンス、特に、キャッシュフロー分析への応用も可能となりつつある。本来、小売業におけるキャッシュフローは商品から見るよりも、実は、顧客から見た方がはるかに実務的であり、キャッシュフローの増大につながるはずである。ただ、これまでは、顧客、すなわち、ID分析ができなかったがために、このようなアプローチができなかったが、今後は、これに限らず、IDの世界から見ることにより、様々な展開が可能となろう。
次に、ID客数PI値と客数PI値の違いであるが、これは、ID客数PI値がIDと客数(レシート)を結びつける指標であるのに対し、客数(レシート)同士を結び付ける指標が客数PI値である。分母、分子双方が客数(レシート)となり、すべて、客数(レシート)の世界だけで活用される指標である。これは、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値の右側の世界である。では、左側の世界、IDに客数PI値はないのかという疑問がわくと思うが、これも当然ある。ID客数PI値IDである。数式はID÷IDとなり、左の世界、すなわち、IDの世界だけで活用される客数PI値である。
このように、客数PI値はID-POS分析の時代となり、3つに分化し、客数(レシート)のみの世界で活用する客数PI値、客数(レシート)とIDの世界を結びつけるID客数PI値、そして、IDの世界のみで活用するID客数PI値IDがある。ID-POS分析とは、この3つの客数PI値を縦横に駆使し、マーチャンダイジングの本質に迫ると同時に、経営の根幹キャッシュフローにも迫ってゆくことになる。その意味で、いずれ、客数PI値はマーチャンダイジング、そして、経営の根幹指標となる日が来るのではないかと思う。
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