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December 19, 2009

日経MJ新製品週間ランキング、金額PI扱店か総店か?

    日経MJ新製品週間ランキングが12/18、公表された。ここ最近、メーカーの講演をする機会が増えているが、そこでいつも話題にするのが、このランキングである。さすがに、メーカーの方は、このランキングには関心が高く、毎週しっかり見ている。ただ、興味深いことに、このランキングの根拠を正確に認識している方は少なく、意外に、これを単純な売れ筋と理解していることが多いのが実態である。

    このランキングは売れ筋の定義にもよるが、単純な売れ筋のランキングではない。正確には将来的に売れ筋となる可能性の高い新製品のランキングである。売れ筋であれば、現在、絶対的な売上金額の高いものが上位にくるが、このランキングはそうではなく、カバー率が示されているように、そのカバー率の限定された店舗において、金額PI値(来店客千人当たり金額(円))が高いものが上位にランクされているのが実態であり、これは、売上金額の大小とは連動しない数字である。売上金額、メーカーでいえば、出荷数が多くとも、取り扱い店舗の客数で割った金額PI値が低ければランキングにはのってこない。逆に、売上金額が低く、メーカーでいえば、出荷数が少なくとも、その限られた取り扱い店舗の客数で割った金額PI値が高ければ、ランクは上位になる。

    したがって、ランキングをとっている店舗が分かれば、その少数の店舗のみにメーカーが集中出荷をすれば、一時的にこのランキングをトップレベルにもってゆくことも理論的には可能である。ただ、カバー率が上昇してくれば、その商品の本来の顧客の支持が明確になるので、あくまでも一時的なものでしかないが、不可能なことではないといえよう。

    そこで、改めて、日経MJの新製品週間ランキングの金額PI値について考えてみたい。金額PI値は大きく2つ存在する。理論的には、金額PI値は無限に存在するが、流通業界で主に実践活用されている金額PI値は大きく2つである。ひとつは、全体の客数で割った金額PI値、そして、もうひとつは、販売実績のある店舗のみの客数で割った金額PI値である。前者を金額PI総店、後者を金額PI扱店として、「総」と「扱」で区別するが、初期の頃は、この区別があいまいで、どちらか一方を使い、その意味が正しく理解されていないことがあった。そして、この2つは、客数PI値で結ばれ、無関係なものではなく、密接な関係がある。

    数式にすれば、金額PI総店=客数PI値×金額PI扱店となり、客数PI値=扱い店の客数÷総客数なので、左右がイコールになる。この2つの金額PI値に混乱が生じたのは、メーカーが金額PI値を活用する際、客数PI値を使わずに、カバー率を使ったためといえる。カバー率は客数PI値と良く似ているが、扱い店舗÷総店舗であるので、客数が全店同じ数字の時はどちらも変わらないが、実際の食品スーパーマーケットの店舗の客数は3倍から5倍の開きがあり、イコールになることはありえない数字であり、本来、両方を使い、理論的には客数PI値を活用していれば、今日の混乱はなかったといえよう。

    実は同様なことはチェーンストア側にも起こっており、チェーンストアにおいても、同様に、全チェーンの総客数で割った金額PI値と、販売実績のある店舗の客数で割った金額PI値とが存在し、客数PI値もそこから算出することができるが、この双方の金額PI値を厳密に算出し、客数PI値まで活用しているチェーンストアは皆無に近いのが実態である。

    したがって、流通業界全体が金額PI値というと、どちらの金額PI値かを区別せずに普通に使っているのが実態であり、特に、日経MJの新製品週間ランキングを単純に売れ筋ランキングと見て、無意識に金額PI総店と思っている方が圧倒的に多いのが実態である。メーカーの営業研修では、日経MJはどちらの金額PI値を使っているかを参加者全員に聞いてみると、8割方、金額PI総店と答えるのが実態である。日経MJの解説を見ても、これについては触れておらず、判別が難しいことも、その一因であると思われる。

   日経MJ、新製品週間ランキングは金額PI扱店、すなわち、カバー率の店舗の客数で割った場合の金額PI値であり、49チェーン、250店舗の対象全チェーンの総客数で割った時の金額PI値、すなわち、金額PI総店ではない。したがって、このランキングは、市場シェアを表しているわけでもなく、単純な売れ筋を表しているわけでもなく、あくまで、カバー率の中での、来店客数1,000人当たりの金額、すなわち、金額PI扱店を表しているといえる。

   したがって、売れ筋ではなく、将来、売れ筋となる可能性、すなわち、カバー率が上がってきた時にもこの金額PI扱店の水準が維持されていれば、本当の売れ筋になる可能性を秘めた、その商品の将来性を示唆している数字であるといえる。それゆえ、カバー率が低い場合は、まだ、顧客の検証に耐えていないといえ、信頼性を見るには、カバー率は少なくとも10%から20%は欲しいところで、30%から50%であれば、十分に将来性のある金額PI値であるといえよう。

   その意味で、日経MJ、新製品週間ランキングは、この金額PI値(来店客千人当たり金額(円))、すなわち、金額PI扱店とカバー率、双方を見ることで、その新製品がどこまで数字を伸ばし、本当に売れ筋になるかどうかを示唆している数字であるといえる。この金額PI扱店は、将来を占う上で重要な数字であるといえ、再度、この観点から、改めて見直してみると、実に興味深い数字であることがわかる。

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