NHK、クローズアップ現代、企業の農業参入を特集!
12/15、19:30からのNHKの番組、クローズアップ現代で、企業の農業参入の現状を取り上げた。はじめの事例が、イオンの農業参入事例であり、いよいよ、本格的に小売業界が農業に参入する時代がはじまったといえよう。いまから10年以上前に青果のマーチャンダイジングでも盛んにヴァーチカルマーチャンダイジングという言葉が用いられ、市場を通さず、産地からの直接買い付けがはやった時代があった。今回の動きは、これとは一線を画し、まさに農業そのものに小売業が直接参入し、生産、流通、販売、まさにヴァーチカル(垂直)なマーチャンダイジングの実現を目指したものといえる。
このような小売業の農業への本格参入が可能になったのは、農地法の改正が大きい。その経緯であるが、農水省が農地改革プランの考えを盛り込んだ「農地法等の一部を改正する法律案」を、当時、自民党内閣が閣議決定し、2009年2月24日に国会へ提出し、貸借に関する要件が追加された修正案が5月8日に衆議院を通過、そして、6月17日には参議院本会議で可決・成立し、施行は2009年12月と、まさに、この12月からの施行であり、いま、本格参入が始まったといえる。
実際、NHKのクローズアップ現代の初めに取り上げた事例がイオンの茨城県牛久市の農業参入事例であり、牛久市が1,000万円をかけて整備した農地をイオンに貸与し、イオンがそこで、農産物を生産し、自店で販売するというもので、すでに、出荷がはじまっているという。イオンは、まさに、農地法の改正が参議院本会議で通過した6/17の直後、7/10にイオンアグリ創造株式会社をイオン100%出資、5,000万円の資本金で設立しており、この農地法の改正の成立をまっていたかかのような動きである。
そして、イオンアグリ創造株式会社は、7/22には茨城県牛久市と特定法人貸付事業制度に関する協定と、土地の賃貸借に関する契約を締結しており、まさに電光石火のすばやい動きである。今後、この牛久市の農場では、すでに出荷がはじまっている小松菜、水菜、キャベツの他に、来年早々にはとうもろこし、そして、枝豆が生産、出荷される予定であるという。まさに、農産物のイオンのPB化が本格化することになる。
現在は2.6ヘクタールの契約であり、年間300トンの収穫量であるが、今後、3年後には15へクタールに拡大予定であるといい、単純計算でも収穫量は1,730トンになり、飛躍的に農産PBが売場に増えることになろう。しかも、番組では、イオンは今後、全国8ケ所で、この牛久パターンを展開する予定であるといい、これは、イオンの全国の物流拠点とも一致するので、まさに、イオンの本格的な全国的な青果のヴァーチカルマーチャンダイジングが実現することになる。これまでのグリーンアイ、産直とは次元の違う動きであるといえよう。
実際、現在、農業参入がどのような状況にあるかというと、農林水産省が公表した資料によると、9/1現在、414法人であり、昨年が320法人、一昨年が256法人であるので、急角度で、参入が増えており、恐らく、この12月以降はさらに、小売業、外食の参入が本格化するものといえよう。参入法人の業種であるが、建設業が148、食品会社が79、その他、ここに小売業が含まれるが、178であり、ここ最近では、その他の伸び率が最も高い状況である。
番組ではイオンの農業参入の現状を取り上げつつも、農家側の不安についても取材していた。農家の不安はイオンが野菜の価格を下げ、相場が下落し、農業そのものを破壊してしまうのではないかという懸念である。実際、牛久市の市長と農家との会合の中で、そのようなやり取りが取り上げられていた。農家は、かつて、大型店の出店によって商店街がシャッター通りになったように、今度は農家がシャッター通りのように衰退するのではないかという発言に対し、牛久市長は、市が整備した農地をイオンだけでなく、農家が使えばいいと反論していたのが印象的であった。
番組では、この牛久市の事例以外に、もうひとつ、大分県の事例を取り上げていた。大分県ではすでに、51法人が農業へ参入しており、内、2社が撤退、黒字は0であるという。黒字化するには、3年ぐらいはかかるというが、それでも、自治体主導で、参入が増えているのが実態であるという。自治体自体は農業の担い手が減少、高齢化し、農地が荒れ果てている現状を打開するためには、今回の農地法の改正を機に、自治体自らが農地を整備し、法人を誘致するしか方法がないというのが現状のようである。
今回、番組では牛久市と大分県の2つの自治体の事例のみであったが、この動きは日本中の地方自治体に波及し、全国各地で、農地が整備され、イオンをはじめ、小売業へ農地への参入を積極的に促す動きは加速されることになろう。今回の牛久市もイオンからではなく、牛久市からの働きかけがきっかけであり、同様な動きは、大手小売業はもちろん、地元のチェーンストアへの働きも活発化してくるものと思われる。食品スーパーマーケットもいよいよ、グロサリー、日配のPB化から、世の中でPI値の最も高い農産物、青果のPB化の時代に入ったといえ、今後、この12月を契機に、青果のマーチャンダイジングが大きく変わってゆくことになろう。
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