売れ筋と死に筋、POS分析はどっち、その1!
POS分析が始まったのは、いまから30年ぐらい前であるといえるが、本格的にマーチャンダイジングに活用され始めたのはセブンイレブンがPOSを導入、単品管理の手法を確立してからといえよう。その後、今日まで、この単品管理が日本におけるPOSをマーチャンダイジングに活用するスタンダードになったといえる。したがって、POS分析=単品管理といえ、単品管理=マーチャンダイジングという図式が成立しており、結果、POS分析=単品管理=マーチャンダイジングとなっているといっても過言ではない。
そこで、POS分析にもとづく単品管理を一歩掘り下げ、ここでは、単品管理が売れ筋を見つけ出すのか、死に筋を見つけ出すのか、どっちが主目的であるのかを考えてみたい。POS分析はいまでもそうだが、原点は売上数量か、売上金額かのどちらかの分析からはじまったといえる。約20年ぐらい前であるが、POS分析は数量で見るか、金額で見るか、どちらが優先かという一大論争となったことがあった。ある大手チェーンでは、当時のコンピュータの性能上、POSから金額データのみ残し、数量データを捨てていたということがあったくらいであり、優先度は金額が圧倒的に高かったといえる。したがって、マーチャンダイジングも金額でしか見ることができない場合があり、当時は十分にPOSを使いこなすことができなかったといえる。
この論争に決着をつけたのが単品管理である。単品管理の原理はABC分析であるが、その中でも、単品管理は、セブンイレブン、コンビニからスタートしたため、限られた売場面積での商売であり、当然、品揃えを限定せざるをえない宿命にあった。したがって、いかに売れない商品をカット、すなわち、死に筋を見つけ、売場からカットし、商品を絞り込み、結果として売れ筋のみにしてゆくという手法が最優先された。
そして、そのためには金額で死に筋を判断するよりも、数量で判断した方が判断しやすいという利点があったといえる。なぜなら、たとえば、週間1個以下の販売数量の商品を死に筋と定義すれば、その商品を売上げ規模の大小にかかわらず、カットできるからである。これが、金額になると、たとえば、週間1,000円以下と、死に筋を定義した場合、週間1個1,000円のものも、週間10個100円のものも、週間100個10円のものもカットすることになり、数量で見た場合の売れ筋をカットしてしまいかねないからである。
したがって、POSデータを数量で判断することがポイントであり、しかも、死に筋を見つけ出すのが容易であるという結論になる。これが初期の頃のPOSを活用してのマーチャンダイジングの決め手となり、マーチャンダイジングはPOSデータから、数量で死に筋をいち早く見つけ出し、カットすることが重要な政策になったといえよう。
ここから、売れ筋も定義できそうであるが、これが数量では中々難しい。たとえば、週100個以上を売れ筋と定義した場合、売上げ規模の大きい店では0個となる場合もあれば、逆に、規模の小さい店では、100個となる場合もあり、店舗の大小共通の定義をつくるのは不可能だからである。もちろん、死に筋も店舗の大小によって、たとえば、週間1個以下の商品の数は違ってくるが、売れ筋よりも、はるかに明確に商品が算出されるのが実態であり、結果、死に筋が売れ筋よりも、POS分析では明確になるからである。
これは理論的に実証できる。その根拠は、商品の売上数量は自然数のように思わるが、実際は、ある期間で見ると小数、分数であり、小数点以下何桁も続くからである。どういうことかというと、たとえば1週間に1個売れる商品は週1個であるが、2週間に1個売れる商品は週間では0.5個となる。これは1を切るために、POSデータでは0個となる。当然3週間に1個売れる商品は0.33・・すなわち、1/3個となるが、これもPOSデータでは0個となる。したがって、1週間に1個以下という商品は、0.・・はすべて入るため、POSデータで分析するとかなりの数になる。ただ、その範囲を1以下、0以下と限定できるため比較的、定義しやすいといえる。
一方、売れ筋は、たとえば、週間100個以上は、店舗の規模の大小を除いたとしても、すべてPOSデータで把握できるため、上限はそれなりに決まるだろうが、死に筋のように小数点の商品はすべて自然数として把握され、段階ごとにかなり商品が発生し、もはや限定が難しくなるからである。死に筋のように狭く限定できれば良いが、売れ筋は、上限が見えないために、狭さがそもそも設定しにくく、定義が死に筋ほど、明確にならないからである。
ここからPOS分析は、数量分析、死に筋の発見、排除がマーチャンダイジングの歴史を作っていったといえ、売れ筋をPOS分析で発見し、強化してゆくことが難しいと思われてきたといえる。いまでも売上金額、売上数量をもとにPOS分析を実施している場合は同様に、数量重視、死に筋発見、排除がマーチャンダイジングの根幹となろう。もちろん、これはこれで十分なPOS分析の成果であり、実践的にも効果を発揮する分析手法であり、マーチャンダイジングの改善にも役立つといえる。
ただ、本当に、POS分析は売れ筋を見つけ出し、その商品を徹底的に管理することが苦手なのかといえば、必ずしもそうではなく、工夫次第では、POS分析も売れ筋を定義し、売れ筋を発見し、強化してゆくマーチャンダイジングも可能である。それが、PI値分析であるが、これについては、稿を改めて解説したい。
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