売れ筋と死に筋、POS分析はどっち、その2!
前回は、POS分析が売上金額と売上数量による限り、売れ筋ではなく、死に筋商品の抽出、排除にあることを示した。そこで、今回は、POS分析においても、売れ筋を選定し、その商品を伸ばしてゆくことが可能であるかを考えてみたい。POS分析において売れ筋が把握しにくい最大の問題は上限が不安定であるためである。売上数量にせよ、売上金額にせよ、下限を決めることは、1以下なり、0以下と限定すれば比較的商品が把握しやすいが、上限を100以上にするか、110以上にするか、思い切って1,000以上にするかは、簡単には決めることができない。売上の上限が売上数量でも、売上金額でもとらえにくいからである。
初期の頃、この問題を解くカギは構成比にあった。全体の何%の売上数量、あるいは、売上金額を占めているかを見れば%で上限、下限を決めやすいからである。ABC分析そのものが、構成比分析であったともいえる。特に、20%、80%の原則が生まれたことが構成比を飛躍的にメジャーにしたといえよう。これは売上数量なり、売上金額なりで上位20%の商品が全体の80%を占めるというものであり、上位20%を売れ筋と見れば、商品を限定できるからである。
これは直感とも合致し、良く売れていると感じる商品は自然、商品を相対化しており、全体の商品の中で目立つ商品を売れていると感じ、それは突き詰めれば、構成比を見ているからである。この時、正確な計算はしていないが、全体の動きと個々の動きを見比べて、突出しているものを売れ筋と判断しており、その背後には、自然、構成比を直感的にとらえているといえるからである。
特に、構成比は食品スーパーマーケットでは極めてメジャーな指標であり、相乗積を計算する場合は必須のツールだったため、初期のPOS分析は構成比が盛んに使われたといえる。余談だが、相乗積はPOSが生まれるはるか以前、恐らく、歴史上、商売がはじまった時から、密かに秘伝として商人に伝えられてきたノウハウといえる。特に、鮮魚、精肉部門では相乗積なくして、粗利を安定させることは不可能ともいえ、相乗積を知らないものにとっては、魔法のように粗利を計算しているように見える。ただ、相乗積もけっして、魔法でも、何でもなく、その実態は粗利構成比であり、構成比の粗利版といえる。
現在、POS分析で構成比があまりつかわれなくなったが、構成比はいまでも、売れ筋を把握する上では重要な指標であるといえる。ただ、ひとつ問題があるのは、構成比を使う場合、全体をどこに求めるかでAランクが次々に変わることである。小分類で構成比を見た場合、中分類で構成比を見た場合、大分類で構成比を見た場合、様々な場合の構成比があり、その都度、売れ筋が変わってゆき、どの構成比かが問われることになる。これは、構成比の分母が一定しないためであり、絶対的な指標がつくりづらいためである。
そこで、ほぼ、同時並行で登場したPOS分析がPI値である。初期の頃のPI値は単品管理に活用されたため、数量PI値、すなわち、売上数量÷客数が使われた。その後、PI値の発展とともに、様々なPI値が開発されてゆくが、1992年10月までは、POS分析にPI値を活用する場合は、ほぼすべて数量PI値が使われていたといえる。今でも、その名残りが残っているPOS分析帳票を見ることがあり、なつかしさを感じることがある。
特に、初期の頃のPI値は分母の客数がレジ通過総客数、すなわち、総レシート枚数のみを使っていたため、構成比のように、分母が変わることはなく、客数1人当たりという相対化している指標にも関わらず、絶対的な指標として活用できることが最大のメリットであったといえる。PI値を使えば、店舗の大小、時間の長短も克服でき、売れ筋を定義することが可能となり、はじめて、POS分析で普遍的に売れ筋を定義できるようになったといえる。PI値はその意味で、生まれた当初から、売れ筋を定義する最良の指標として宿命づけられた指標であったといえよう。
ちなみに、PI値がPOS分析で使われるようになった1990年前後、いまから約20年前にはじめて定義した売れ筋のPI値基準は1%であった。それまで食品スーパーマーケットにおけるPOS分析では死に筋を見つけることが全盛であったが、このPI値1%が売れ筋の絶対基準であることが定義され、POS分析でも売れ筋を明確に把握できるようになったといえよう。いまでも、このPI値1%は生きており、店長が店に赴任してはじめてやるべきことは、店舗の中のPI値1%以上の商品を全部覚え、毎日、チェックし、この商品の欠品を0にし、鮮度を最高に保つことであるといっても過言ではないといえよう。
PI値1%以上を売れ筋と定義すると、興味深いことに、どんな食品スーパーマーケットでもほぼ200品前後となるのが実態であり、0.5%でも500品前後となり、売れ筋の上限を定義することが可能となる。逆に、PI値は下限を定義することの方が不得手で、0.1%、0.01%、0.001%の商品等も存在するため、死に筋の定義を決めることが難しいといえよう。
このように、PI値はその指標が生まれた時から、売れ筋を把握する最良の指標として運命づけられているといえ、その後の金額PI値の時代、そして、現在のID-POSの時代になっても、顧客にとってもっとも必要とされている重点商品は何かを見つけ出し、育ててゆくための最良の指標であるといえよう。
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