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December 14, 2009

株主配慮、既存顧客優先!

   12/13の日経新聞の1面トップに、「株主配慮の増資促す」、「新株予約権を無償割り当て、利益目減りを回避」、「東証、上場規制改正へ」という記事が掲載された。一見すると、食品スーパーマーケットの経営、特に非上場企業とは無関係のように思えるが、株式市場が株主優先を明確に打ち出し、しかも、記事によれば、年内にも東証は上場規則を変更する予定であるといい、来年早々から、上場企業では、既存株主配慮の増資が実現する方向であるという。したがって、来年からは、新規株主の獲得から、既存株主の優遇策に企業の財務戦略が転換されることになるということで、企業経営の根本の財務戦略の思想そのものが変わることになる。当然、これは企業経営全体、すなわち、経営戦略の基軸が新規顧客から既存顧客重視を鮮明に打ち出す時代に突入するということになろう。

   したがって、食品スーパーマーケット経営においても、財務戦略、特に、株主還元の考え方、実際の増資にもとづく、自己資本を充実させるための手法が大きく変わることになろう。そして、これは、不特定多数のお客さまから、食品スーパーマーケットの個々の店舗を支えている顧客重視へと政策転換が促されることになり、経営戦略の再構築、転換が来年早々には必須となったといえよう。その結果、来期の食品スーパーマーケットの経営戦略構築にあたっては、自己資本の充実による財務の安定化を新株予約権の無償割り当てにより、既存株主重視を打ち出すことはもちろん、もう一方で、食品スーパーマーケットにとって、さらに重要な顧客、特に、ロイヤルカスタマー重視の経営戦略を明確に打ち出すCRM戦略が重要な柱のひとつになるのではないかと思われる。

   もう少し、日経新聞の記事の内容を見てみると、実は、過去には日本でも株主割当増資を使う企業が多かったという。それが1980年代以降、公募増資が主流となり、ルール上では、株主割当増資は可能であるにもかかわらず、2006年に施行された新会社法の影響で資本を倍に増やす増資しかできなくなったという。このため、東証では、その後、現在まで、新株予約権を使った株主割当増資は1件も実施されていないという。

   ということは、こと株式市場、すなわち、企業経営において、自己資本を充実させるための増資という手法は既存株主をないがしろにし、新規株主を重視し、新規株主の募集に奔走してきたということであり、既存株主はその結果、自らの株式の価値が目減りし、歯がゆい思いでいたということになる。結果、株式市場の低迷にもつながり、企業と投資家の関係がぎくしゃくすることになり、既存投資家が投資先企業への不信を招くことにもなったといえよう。

   では、既存株主の信頼を回復する新たな仕組みとはどのようなものであるのかを見てみたい。日経新聞によれば、今回の仕組みは、この既存投資家への信頼を回復するために、既存株主を最大限に優遇する仕組みであり、新株を発行して増資をする場合、新株予約権を既存株主に無償割り当てできることがポイントである。しかも、新株予約権1つに対し1株を割り当てるという従来の上場規制も撤廃し、1つの新株予約権に0.1株などを割り当てることができるようになり、自由に増資額を決められるようになるという。

   これによって、既存株主は、増資に応じる場合は新株予約権を行使して、キャッシュを払い込み、増資に応じない場合はその権利を他の投資家に売却できるようになるという。その結果、増資により1株当たりの価値が減ることにはなるが、その分の補填が新株予約権を優先的に既存株主が持つことにより、減じることができるようになるという。これまでとは180度政策が転換することになり、新規株主重視から、既存株主優遇へとの財務戦略の転換といえよう。

   そこで、来期の食品スーパーマーケットの経営戦略であるが、財務戦略がこのように東証では、既存株主重視へと根本的に変わることにより、これは、当然、顧客政策への転換にもつながる動きとなろう。これまで食品スーパーマーケットはあらゆる政策が新規顧客重視の政策が中心といえ、既存顧客がそのために本来得られるべき特売等の利益を享受することができず、歯がゆい思いをした既存顧客が多かったといえる。特に、ロイヤルカスタマーはその影響が大きかったといえよう。

   これは、そもそも既存顧客、ロイヤルカスタマーを株主のように明確に把握できていなかったことも大きいが、それ以上に、考え方として既存顧客、ロイヤルカスタマー重視が確立されておらず、そのための政策が明確でなかったことも大きいといえる。したがって、来期の経営戦略の立案においては、まずは、誰が既存顧客か、誰がロイヤルカスタマーかを見極め、ロイヤルカスタマーに対して、新株予約権の優先割り当てが可能なような仕組みを、考え方としても、仕組みとしてもつくりあげることが最大のポイントとなろう。

   ひとつ難しいのが、株式の場合は原則1種類であるが、食品スーパーマーケットの場合は、客は商品にしかつかないという格言があるように、商品=株式=株主と考えれば、10,000種類あることになる。極論すれば、ロイヤルカスタマーも1万通りあるということで、ここが、知恵の使いようであろう。来期、食品スーパーマーケット各社がどのような既存顧客への優遇策を打ち出すか注目である。

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