未来店舗研究フォーラム2010を受講、何が未来か?
1/22、学習院大学で開催された産学共同プロジェクト、「未来店舗研究フォーラム2010」を受講する機会があった。主催は学習院マネジメント・スクール、共催は生活協同組合コープさっぽろ、株式会社成城石井、日本スーパーマーケット協会、株式会社菱食、株式会社ダイヤモンド・フリードマン社である。朝10:00から18:00まで、調査研究発表、各講師の講演、そして、パネルディスカッションと、未来店舗についての可能性を多角度から探る内容であった。
前半は未来店舗のキーワードとして、「L.V.C.S」(Life Value Creative Station)という概念を学習院大学の上田隆穂教授が提案し、その基本的な考え方と可能性をレクチャーした。その後、その可能性を店長・パートへのインタビュー、深層心理解読、WEB調査で検証するという内容であった。L.V.C.Sとは、生活者は希望を求めて、生活価値(Life Value)そのものの創造(Create)をアシストする存在を求めており、そのアシストを行う場、その駅(Station)に小売業がなるべきであり、それが、小売業の未来店舗の姿であるという意味である。
そして、後半は、この未来店舗の可能性を産業界から、どう捉えることができるかを、小売業から見た未来店舗、中間流通から見た未来店舗、メーカーから見た未来店舗、そして、パネルディスカッションを通じて、探るという内容であった。特に、小売業からは、生活協同組合コープさっぽろ理事長、大見英明氏、中間流通からは株式会社菱食、代表取締役社長、中野勘治氏、メーカーからは、社団法人中央酪農会議、事務局長、前田浩史氏が講演した。また、パネルディスカッションは、上田教授を司会に、生活協同組合コープさっぽろ理事長、大見英明氏、株式会社成城石井、代表取締役社長、大久保恒夫氏、日本スーパーマーケット協会専務理事、大塚明氏の3氏が参加した。
未来店舗というと、以前、注目を浴びたハイテクの塊のような店舗、フューチャーストアを思い起こすが、今回のフォーラム全体を貫いていたテーマは生活者に基点をおいたコミュニティとしての店舗である。特に、店舗側はいかに顧客とコミュニケーションを密接にし、店舗のファンをつくってゆけるか、そして、そのためにも、小売業の人の教育、成長が最も重要であるという、最後は結論であったといえる。やや意外な結論でもあるが、今日の閉塞的な小売業の現状を見ると、小売業の原点、「店は客のためにある」の格言を、再度思い起こし、いまこそ、これを真に実現することが、小売業の未来なのかもしれないと思った。
今回、後半の講演、そして、パネルディスカッションを聞いて、特に、印象深かったのは、コープさっぽろの大見理事長の話である。北海道という閉鎖商圏の中で、イオングループ、アークスグループとの事実上、3グループの三つ巴の激しい競争の中で、知恵と勇気を振り絞り、生協がもてる経営資源をマックスに活用している様子である。結果、今回のテーマ、L.V.C.Sに自然、近づいているといえ、地域のまさにコミュニティの中核となりつつある姿である。また、コープさっぽろは、いち早くPOSデータをメーカーに解放し、MD研究会を開始したが、これも、寡占化した北海道市場では、各カテゴリーベスト3以下のメーカーは生き残るのが厳しい状況にあるという。したがって、コープさっぽろ側としても、No.1メーカーとしっかりとした関係をいち早く築くことが切実な経営課題であるという背景もあったようであり、北海道という商圏の厳しさが、コープさっぽろを強くしていると感じた。
また、成城石井の大久保社長の話で、以前から気になっていたが、あいさつ、会話が重要であり、これが固定客の拡大につながるとのことであった。これについては、今回の一連のフォーラムの中でファンづくりが未来店舗のひとつのキーワードであるとの視点が提示されたが、まさに、あいさつ、会話は自然、ロイヤルカスターと店舗との関係が増し、売上げ、特に、利益に貢献することになる。これは、見方を変えれば、ロイヤルカスタマーづくりが重要であるということであり、理にかなっていると思った。そして、日本スーパーマーケット協会、大塚専務理事の話であるが、大塚専務理事はヤオコー出身であり、現在ヤオコーにも籍を置いているという。ヤオコーは、未来店舗への取り組みのひとつともいえるクッキングサポートという小さなコミュニティーをいち早くスタートさせ、軌道にのせつつあるといえる。これ以外にも、ヤオコーの様々な取り組みについて話があり、興味深かかった。
このように、産学協同プロジェクト、未来店舗研究フォーラム2010で、どんな未来店舗が議論されるのかと思って研究成果、各講師の講演、パネルディスカッションを聞いていた。ところが、講演や議論が進む中で、未来という直線的な考え方、そのものに答えはなく、小売業の原点は永遠に顧客、生活者であり、その顧客へのフォーカスをより深めたところに未来があり、そこに可能性があるという結論であったように思う。ひとつ残念だったのは、今回は、ID-POSの話は全くなかったことである。実は、このID-POSが未来店舗のキーテクノロジーではないかと、一連の議論を通じて改めて感じた。いずれ、これについては、本ブログで取り上げてみたい。
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