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January 04, 2010

クローガー株価急落、2010年、第3四半期、赤字決算!

   全米No.1の食品スーパーマーケット、クローガーの株価が12/8、急落した。この日、クローガーの2010年1月期の第3四半期の決算が公表され、その結果が赤字決算となったため、一斉に株が売られ、急落した。それまでは、23ドル前後で推移していた株価であったが、12/07(22.85ドル)、12/8(20.13ドル)と、約12%株価が下がり、しかも、売買高も通常500万株前後であるが、この日、12/8は7,700万株と、10倍以上の大商いとなった。それにしても、これだけ、決算発表に、株価がドラスチックに反応するのは、日本とは違い、いかに、アメリカにおいては、株主と経営とがダイレクトにつながっているかがわかる。

   そのクローガーの決算結果であるが、赤字になった最大の要因は、クローガー傘下のカルフォルニアのラルフスの営業権の評価損を計上したためである。金額は11.12億ドル(約1,000億円)であり、これが赤字になった最大の要因である。

   アメリカのP/Lは日本とは大分違い、営業利益に至るプロセスがかなり複雑である。この第3四半期のクローガーの営業利益までのプロセスを見ると、まず、売上げが来る。売上高176.69億ドル(約1兆6,000億円)である。ここから様々な費用を引いていくが、はじめに引かれるのが、マーチャンダイジングコストであり、この中には、原価、広告費、物流費等が入る。日本の原価と経費の一部、マーチャンダイジング関連を含んだ費用である。これが、136.66億ドル(売上対比77.3%)である。次に、一般管理費、日本でいう経費が差し引かれる。これが31.39億ドル(売上対比17.7%)である。これをとって、クローガーの経費が17.7%であるとすると、経営の実態を見誤ることになる。先に示したように、この中にはマーチャンダイジングコストが入っていないからである。したがって、日本の食品スーパーマーケットとはかなり違い、一概にP/Lの比較ができないといえよう。

   そして、次に、rent(賃貸)が1.52億ドル(売上対比0.8%)、減価償却費が3.56億ドル(売上対比2.0%)と引かれてゆく。さらに、今回、赤字となった最大の要因である営業権の評価損が11.12億ドル(売上対比6.3%)引かれる。その結果、営業利益が算出され、今回の場合は-7.58億ドル(売上対比-4.3%、約700億円)となる。

   こう見ると、利益、営業利益の計算方法が日本とは大分違い、一概に食品スーパーマーケットだからとって、P/Lをそのまま比較できないといえよう。日本の食品スーパーマーケットのP/Lは単純であり、売上高、原価、経費、営業利益が基本であり、売上高から営業利益に至るには、原則、2つ、原価と経費しかない。これが、クローガーでは、原価という概念がなく、マーチャンダイジングコストとして、原価と経費の一部が加えられ、費用として引かれ、それ以外の経費も、一般管理費、rent(賃貸)、減価償却費が分離されており、さらに、営業権の評価損までが引かれ、営業利益が算出されるという計算方法である。これを複雑と見るか、より、利益構造が分かりやすくなったと見るか、意見がわかれるところであるが、実に興味深いP/Lである。

   ここでクローガーの現状であるが、創業は1883年であり、現在、全米に2,481店舗を展開している食品スーパーマーケットグループである。中核の食品スーパーマーケットはクローガーであるが、クローガー以外にもRalphs、 Fred Meyer、 Food 4 Less、 King Soopers、 Smith’s、 Fry’s、 Fry’s Marketplace、 Dillons、 QFC and City Market等があり、食品スーパーマーケット以外にも、ガソリンスタント781店舗、コンビニ771店舗、宝石店385店舗等の他業態、他業種をも持っている小売業である。昨年の売上高は582.03億ドル(約5兆3,500億円)であり、食品スーパーマーケットとしては、全米No.1である。

   もう少し、この第3四半期決算を見てみると、気になるキャッシュフローであるが、営業キャッシュフローは、営業赤字となったが、23.74億ドル(約2,100億円)であり、昨年が23.55億ドルであるので、ほぼ昨年と同様のキャッシュを確保している。これは、赤字の原因が営業権の評価損であるため、実質、当期純利益のマイナスは1.94億ドルであり、営業権の評価損はキャッシュフロー上ではプラスとなるからである。したがって、今回のP/L上の赤字はキャッシュフロー上では、影響がなく、昨年同様の営業キャッシュフローを確保できた。また、投資キャッシュフローも-17.95億ドル(昨年16.51億ドル)と、昨年以上の投資を行っており、フリーキャッシュフローは5.79億ドル(昨年7.04億ドル)と、プラスである。そして、財務キャッシュフローであるが、-3.24億ドル(昨年-7.31億ドル)であり、結果、トータル2.53億ドル(昨年-0.27億ドル)と、今期はむしろプラスとなっている。

   このように、クローガーの第3四半期決算はP/L上では赤字になり、株価が急落するという厳しい状況になったが、その最大の原因は先に見たように、営業権の評価損であった。したがって、キャッシュフロー上は、大きな影響はなく、ほぼ昨年と同様の営業キャッシュフローを確保し、投資もしっかり行い、財務キャッシュフローも借入に依存することなく、抑えており、結果、キャッシュが増加している状況である。経営的にはキャッシュは回っており、今期のP/Lは厳しい予想となろうが、来期はその反動で大きく回復する可能性も高いといえよう。ただ、ラルフスの営業権の評価損が出るくらい、消費環境は厳しさを増しているといえ、今後、営業利益が十分に確保できるかは未知数である。今期、そして、2月からは来期に入るが、当面、どのような消費環境が続くか、予断を許さない状況といえ、クローガーの今後の経営の推移が気になるところである。


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