大黒天物産、2010年5月中間決算、大幅増収増益!
ディスカウント食品スーパーマーケット、大黒天物産が好調に売上げを伸ばしている。1/13、2010年5月期、中間決算の結果を公表した。結果は、売上高384.07億円(110.4%)、営業利益20.52億円(118.8%:売上対比5.34%)、経常利益20.52億円(120.8%:売上対比5.34%)、当期純利益10.77億円(120.2%:売上対比2.80%)と、増収増益、特に、利益は約120%となる好決算となった。各社が売上、利益ともに伸び悩む中、絶好調といえ、改めて、デフレ期におけるディスカウント戦略の強さが際だった結果となった。
これについて、大黒天物産自身は、「当社グループでは食品製造小売業(S.P.F)としてお客様に満足いただける商品を「安く」提供するため、商品開発に注力、・・」とコメントしており、安さ、まさにディスカントが顧客に受け入れたれたと分析している。ちなみに、このS.P.Fは、通常はS.P.Aと略称されるが、S.P.AはSpeciality store retailer of Private label Apparelの略であり、通常、アパレル(衣料品)分野、特に、GAP、ユニクロ等で使用される用語であるので、このApparelをFoodに置き換え、S.P.Fとしたものといえよう。今後、食品スーパーマーケットの新たな戦略として、注目されよう。
そこで、まず、大黒天物産のディスカウント戦略の実態を原価、経費面から見てみたい。原価であるが、77.18%(昨年76.88%)と、原価に関しては、0.30ポイント上昇が見られる。結果、売上総利益は22.82%(昨年23.12%)と、やや下がっており、ディスカウント戦略をとる大黒天物産でも、デフレ環境による価格競争の厳しさの影響を受けたものと思われる。一方、経費の方であるが、17.47%(昨年18.14%)と、0.67%と大幅に下がっており、この中間決算では、原価よりも経費の削減が進んでいる。この17.47%の経費比率は、前期決算の公開企業約50社の数字で見ると、オーケーストア14.9%、トライアルカンパニー16.3%、アオキスーパー16.8%に次ぐ4番目に低い経費比率であり、5番目以降は18%台となるので、この4社が図抜けた経費比率である。
ここからもわかるように、日本の食品スーパーマーケットのディスカウント戦略を支えているポイントは、原価をいかに下げるかということもあるが、それ以上に経費をいかに下げられるかにあるといえ、大黒天物産のこの中間でも、好決算の要因は経費の削減が進んだことにあるといえよう。これについて、大黒天物産自身は、「コスト面におきましては、本社管理部門コストの一層の見直しと店舗作業効率の改善を推し進め販売費及び一般管理費の圧縮を図る、・・」と、コメントしており、本部、店舗、双方のコストの削減が進んだ結果であるという。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は5.35%(昨年4.98%)と、5.00%を超え、極めて高い数字となった。
ちなみに、大黒天物産は、日本の食品スーパーマーケットの中でも出店コストが低い仕組みをもっており、これが経費比率を低く抑えられる要因のひとつといえる。この中間決算でも、出店にかかわる資産である土地、建物、差入れ保証金、建設協力金等の合計は95.74億円であり、現在52店舗であるので、1店舗当たり1.84億円となる。この1.84億円は決算公開企業約50社ではベスト5に入る低さである。その背景には居抜き物件が多いことに加え、あらゆるコストの削減が進んでおり、他の食品スーパーマーケットと比べて、出店が容易な状況にあるといえる。結果、総資産218.06億円の43.9%となり、現在自己資本比率が53.9%(昨年49.7%)であるので、差し引き、出店余力は10.00%とプラス、自己資本の範囲内で十分に新規出店が可能な財務状況である。
また、負債約50%弱の中身であるが、有利子負債は22.00億円であり、総資産の10.08%であり、これ以外では、大部分が支払い手形及び買掛金であり、その金額は47.70億円、総資産の21.87%である。したがって、まだまだ、好調な決算をもとに自己資本比率の向上は可能といえ、今後、ますます、出店が可能な安定した財務状況になろう。
ただ、気になるのは、この中間期には1店舗も新規出店がなかったことである。そこで、キャッシュフローを見てみると、投資キャッシュフローの中の新規出店関連への投資を見ると、1.98億円であり、これは先にも計算したとおり、1店舗当たりの出店にかかわる資産が1.84億円であるので、1店舗への投資である。出店余力は十分であるにも関わらず、出店を控えた投資キャッシュフローといえよう。
恐らく、これは、この3月に大黒天物産の新規エリア、九州地区への新規出店へ全力をあげて取り組んでいるためであるとおもわれる。この新規出店の成功を待って一気に九州地区で店舗数を増やすのではないかと思われる。大黒天物産の営業キャッシュフローは前期決算時は約40億円あり、これを仮にすべて新規出店に当てれば年間20店舗以上の新規出店が営業キャッシュフローの範囲内で可能であり、九州地区への新規出店の成否が今後の出店戦略の方向性を決めるものといえよう。
このように、大黒天物産の2010年5月期の中間決算は大幅な増収増益となり、好決算となった。ディスカウント路線、特に、経費の削減に磨きがかかっているといえ、マーチャンダイジング力が強化されている状況である。また、出店余力も十分であり、自己資本比率も改善し、今後、さらに、成長路線を推し進める財務基盤も固まりつつあるといえる。ただ、ここ数ケ月は、新規エリア、九州地区への準備に備えた体制づくりに専念していると見え、新たな出店を控え、嵐の前の静けさが漂うが、この九州地区での出店が成功した場合には、新たなドミナントエリアとして、一気に出店が加速するのではと思われる。今後、M&Aも含め、大黒天物産が高収益、強固な財務基盤をもとにどのような成長戦略を打ち出すか注目である。
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