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January 2010

January 31, 2010

関西スーパー、2010年3月、第3四半期、増収減益!

   関西スーパーマーケットが1/29、2010年3月度の第3四半期決算を公表した。いよいよ、3月期決算の第3四半期決算の公表もはじまり、2010年度の食品スーパーマーケット業界の本決算直前の現状が明らかになりつつある。これまで公表された各食品スーパーマーケットの第3四半期決算を見ると、デフレの影響が色濃く出ており、特に、利益面で厳しい結果となるケースが多いのが特徴である。そこで、関西スーパーマーケットの結果であるが、営業収益844.10億円(102.0%)、営業利益8.77億円(61.7%:営業収益比1.03%)、経常利益10.60億円(64.6%:営業収益比1.25%)、当期純利益2.89億円(45.9%:営業収益比0.34%)となり、増収とはなったが、大きく減益となり、厳しい決算となった。

   この結果を見ると、すべての利益段階で利益が半分近くに減少しており、今後、本決算も厳しい結果が予想されよう。そこで、まず、営業利益が61.7%となった要因を原価、経費面から見てみたい。原価は76.41%(昨年76.17%)と、0.24ポイント上昇している。結果、売上総利益は23.59%(昨年23.83%)となった。特に、今期は、関西スーパーマーケット創業50周年とのことで、「今日までご愛顧いただいたお客様への感謝の気持ちをこめて「めちゃ安特価」「50%引きセール」「たすかる値」「記念ロゴマーク入り商品」などの特別企画を実施しております。」と、強力な価格訴求をかけたことも大きかったといえよう。

   一方、経費の方であるが、24.53%(昨年23.95%)と、0.58ポイント上昇しており、経費の上昇もみられる。結果、差し引き、商品売買の利益から得られる利益、マーチャンダイジング力は-0.94%(昨年-0.12%)と、大きく上昇し、マイナス幅が広がった。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が2.01%(昨年1.87%)と、0.14ポイントプラスとなり、結果、1.07%(昨年1.75%)と、営業利益は大幅な減益となった。

   それにしても、原価、経費双方の上昇が見られ、結果、差し引き、マーチャンダイジング力が-0.94%とマイナスになり、そのマイナス分をその他営業収入で補わざるをえない状況にあるといえ、今後、原価、経費、双方の削減を同時に進める必要があり、厳しい収益構造にあるといえよう。

   ここで、前期決算時の食品スーパーマーケット業界の決算公開企業約50社のマーチャンダイジング力の状況を見てみると、全体の単純平均は-0.38%と若干のマイナスである。原価は74.8%、結果、売上総利益は25.2%であり、関西スーパーマーケットの第3四半期決算は平均をやや下回る状況である。これに対して、経費は25.6%であり、経費面では関西スーパーマーケットは平均よりも1ポイント近く低く抑えているといえる。したがって、関西スーパーマーケットは決算公開企業約50社の平均と比べると、粗利が低く、経費も低いという状況であり、どちらかとうと、経費面よりも、粗利面の低さがマーチャンダイジング力をマイナスにしている要因といえよう。ちなみに、決算公開企業約50社の中ではマーチャンダイジング力がプラスになる食品スーパーマーケットは26社あり、トップクラスは3%以上であり、今後、いかに、原価、経費の改善を通じてマーチャンダイジング力をプラスにもってゆけるかが収益改善の課題といえよう。

   ただ、このような厳しい決算にもかかわらず、キャッシュフローの流れは順流であり、結果、キャッシュを増加させている。少し、詳しく見てみると、営業キャッシュフローであるが、68.75億円(昨年40.98億円)と、約30億円近く改善している。昨年の厚生年金基金脱退損失引当金の減額-11.91億円がなくなったことが大きく、さらに、売上債権が大きく減少したことも大きい。ただ、金融機関の休日との関係で、仕入れ債務の増加が昨年も同様であるが、42.59億円(昨年42.26億円)あり、これを考慮すると、けっして安定した営業キャッシュフローとはいえない。

   これに対して、投資キャッシュフローであるが、-5.58億円(11.44億円)と若干のマイナスである。ただ、気になるのは出店関連の投資であり、-15.04億円(昨年-28.68億円)と、新店への投資が大きく削減されていることである。結果、フリーキャッシュフローは53.71億円(昨年12.30億円)と順流である。そして、財務キャッシュフローであるが、-12.09億円(昨年-10.61億円)であり、その中身は長期借入金の返済-6.50億円、リース債務の返済-0.62億円、配当-4.96億円等であり、有利子負債の削減が進んでいる。

   結果、トータル51.07億円(昨年41.82億円)となったが、この大部分は仕入れ債務の支払いとなるので、投資を控えた分、キャッシュを確保したというのが現状といえよう。したがって、一見、キャッシュフローが順流に見えるが、実質、利益の減少により、キャッシュフローの根幹である当期純利益そのものが減少しており、また、今期は投資も控えざるを得ない状況であり、厳しいやりくりといえる。

   今後、関西スーパーマーケットとしては、やはり、マーチャンダイジング力、すなわち、原価、経費双方をいかに引き下げ、その差をいかにプラスにもってゆけるかが最優先課題といえよう。こう見ると、経営を安定させるのは、マーチャンダイジング力にあるといえ、これがキャッシュフローを回し、財務を改善する原動力であるともいえる。関西スーパーマーケットが今後、どこまで、マーチャンダイジング力の改善に向け、どのような政策を打ち出すかに注目したい。

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January 30, 2010

紀ノ國屋、100年目の決断、JR東日本の傘下へ!

   食品スーパーマーケット、紀ノ国屋の創業は何と明治43年(1910年)、今から100年前である。その100年後、2010年1月26日、JR東日本が「東日本旅客鉄道株式会社による株式会社紀ノ國屋グループの株式取得について」という文書を公開した。その内容は、本日(1/26)、東日本旅客鉄道㈱が㈱紀ノ國屋グループの株式を取得することについて合意したという内容であり、JR東日本による紀ノ國屋へのM&Aである。時期は4/1、その方法は、「㈱紀ノ國屋グループを現株主の下で合併した上で、合併新会社の発行済株式の全てを東日本旅客鉄道㈱が主要株主から取得いたします。」とのことで、紀ノ國屋の全株式をJR東日本が取得するという、資本・業務提携ではなく、吸収合併である。

   現在、紀ノ國屋は3つのグループに分かれている。1つ目が中核会社の㈱紀ノ國屋、13店舗の食品スーパーマーケットを展開し、年商138.12億円である。単純計算で1店舗10.62億円となる。2つ目がパンの3店舗を中心に、1工場をもつ㈱紀ノ国屋フードセンター、年商42.76億円、そして、3つ目が1店舗、1工場をもつ、国の文字が1つ目の國と違う㈱紀ノ国屋、年商25.65億円である。合計206.53億円となる。今回のJR東日本のM&Aは、この3つのグループをひとつに合併し、その合併した新会社の全株式をJR東日本が取得し、吸収合併するというもので、結果、パンの店舗を入れ、17店舗、2工場がJR東日本の傘下に入ることになる。

   では、その後、JR東日本はどのような政策を打ち出すのかであるが、今回の紀ノ國屋のM&A後については、大きく2つの目標を掲げている。ひとつは、「駅及びその駅を中心とした開発」、「既存事業の強化・ブラッシュアップを図る」ということであり、既存店の活性化に加え、新たに、駅中への小型店舗での出店といえよう。そして、もうひとつは、「地域活性化に資する新たな事業展開が可能」とのことで、双方の強みを生かした新規事業の展開である。また、その背景には、JR東日本が「2017 年度までに運輸業以外の営業収益を全営業収益の4割程度までに引き上げる」ことを目標としており、その具体的な政策として、「具体的には首都圏を中心にエキナカ、駅ビル等の開発を積極的に進めるとともに、地域の活性化に資する地方エリアにおける事業開発」を掲げていることである。この目標を具現化する上において、紀ノ國屋を吸収合併することが必要と判断したものといえよう。

   JR東日本の発表はここまでであるが、1/29、日経MJに気になる記事が掲載された。「紀ノ国屋誤算重なる、JRの傘下に」、「基幹店の賃料負担重く」という見出しの記事である。この記事を読むと、3つの誤算があったとのことである。ひとつ目は基幹店の重い賃料負担、ふたつ目が不況、そして3つ目が出店戦略の誤算であったという。

   ひとつ目の基幹店の重い賃料であるが、これは、紀ノ国屋インターナショナルが2008年11月に改装オープンしているが、もともととはこの土地約1,650平米は自社のものであったが、有利子負債約75億円の圧縮のために2003年に売却したため、新規オープンは複合商業施設AOビルの地下1階へのテナントとして入店することになったという。この家賃負担が予想以上に固定費として、重くのしかかったという。ふたつ目は、不況、特に、リーマンショック後の消費環境の激変は高級スーパーの価格帯を直撃、他の高級スーパーと比べても高めな価格設定が固定客以外に敬遠されたという。そして、3つ目であるが、基幹店の不振を補うべく立ちあげた小型店舗の出店が思うように進まなかったとのことである。表参道に出店したOMOは約75平米で、1日約180万円売れる店舗とのことで、この業態が今後の紀ノ国屋を担う戦略店舗であったというが、その成長戦略を自力で描くことが難しくなったという。

   日経MJの記事を読む限りでは、小型店以外の通常の店舗面積の食品スーパーマーケットを都心の一等地で家賃を負担しながら営業するのは経営的には極めて厳しいことがわかる。この記事を読む限り、都心の一等地での食品スーパーマーケットは、小型店以外には成り立たないといえよう。しかも、紀ノ国屋のOMOは1日約180万円の売上げであり、これは年間6.5億円となる。したがって、店舗面積が75平米(22.7坪)で計算すると、坪売上げ、年間2,863万円であり、これはオオゼキの約2倍という途方もない数字である。ここまで坪売上が必要かはともかく、かなり高い数字でなければ成立が難しいのが、都心部での食品スーパーマーケット事業といえよう。

   紀ノ国屋インターナショナルが自社物件での営業を継続できていれば、今回JR東日本へ買収されることもなかったかもしれない。ただ、2003年に自社物件の土地を手放さざるをえないほど、負債が膨らみ、この時点で経営バランスが崩れていたともいえ、経営上、ギリギリの判断が必要であっと思われる。

   それにしても、食品スーパーマーケットの経営は土地、建物、敷金保証金等の出店関連の資産の管理が経営の根幹にかかわることであり、紀ノ国屋の今回の件は、まさに、この問題が問われたといえる。この資産と負債、そして、純資産との経営バランスをいかにとるか、すなわち、出店余力が、食品スーパーマーケット経営の根幹ともいえ、今回のJR東日本の紀ノ国屋へのM&Aは、まさに、このバランスが極めて重要であることが改めて浮かび上がったといえよう。

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January 29, 2010

西友、KY2(カカクヤスク2乗)、野菜へ!

   1/28、西友のちらしが舞い込んで来た。ほぼ、ちらし全面をつかった大根、白菜、きゅうり、ねぎ、・・の大きな写真入りの広告である。いよいよ、西友のKY(カカクヤスク)も第2段階、KY2(カカクヤスクの2乗)のキャンペーンが本格化し、生鮮、野菜にまで及んできた。通常、野菜を含む青果物は相場のある商品であり、EDLP(EveryDay Low Price)にのりにくい商品であり、定番価格を維持するのが極めて難しい商品である。1日で市場の相場が跳ね上がることもあれば、逆に、暴落することもあり、食品スーパーマーケットでは毎日、価格が変わるといっても過言ではない。食品スーパーマーケットの青果バイヤーの役割はその激しく変動する相場との戦いでもあり、いかに、安く、商品を競り落とし、同時に必要量を確保するかに日々苦心している毎日を送っているといえる。

   その極めて定番化が難しい商品を、この西友のちらしでは、野菜8品+果物(いちご)の9品を定番認定し、圧倒的な安さで、しかも、EDLPで提供しようという宣言である。びっくりである。特に、産地を限定しているので、おそらく、市場外流通、産直が大半を占めるであろうと思われるが、それでもEDLPで売り続けるのは、野菜では相当困難な試みであり、通常の食品スーパーマーケットでは、まず、簡単には、実現が不可能といえよう。

   もともとEDLPはグロサリーがメインであり、大量仕入れ、大量販売を前提に生産から販売までのすべての流通プロセスの改革が前提である。時には原料調達、生産段階にまで踏み込み、あらゆるコストを削減して、はじめて価格を引き下げることができる価格戦略である。これを生鮮食品に応用しようとすると、生鮮食品は価格は原則、市場、すなわち、卸売市場での相場、すなわち、需要と供給のバランスで決定され、日々、価格が大きく変動する商品である。したがって、小売業で売価を一定にした場合、相場が上がれば利益がでるが、相場が下がれば、利益が吹っ飛んでしまい、株式相場同様、仕入れ価格が変動し、販売価格を一定にすることが極めて難しい商品である。

   西友は、今回、この極めて難しい生鮮、特に、野菜に踏み込んだわけであり、これが今後ともEDLPとして維持できるのかどうか、まさに、西友のカカクヤスクの進化、そして、真価が問われるところであろう。ちなみに、野菜は、通常、食品スーパーマーケットでは100から150SKUあるので、今回は野菜8品が定番として認定され、EDLPの戦略商品として選ばれたので、全体の売上構成比は5から10%と思われ、仮に、この8品が利益0で走っても、残り90%で利益を確保できれば、相乗積から、それなりの利益を確保できるので、野菜全体への利益減の影響は少ないと思われる。しかも、先にもふれたように、おそらく、市場外流通、産直の商品が大半を占めるのではないかと思われるので、相場が暴騰しても、大損害にはいたらないと思われる。

   ここで、少し、相乗積のシミュレーションをしてみる。今回の8品の売上構成比が10%、粗利率が0%、その他90%の野菜の粗利率が20%であった場合には、10%×0%+90%×20%=0%+18%で18%の粗利率となる。これが何らかの事情により、8品の粗利が-10%になった場合は、10%×-10%+90%×20%=-1%+18%=17%となる。-20%の場合は、同様に10%×-20%+90%×20%=-2%+18%で16%となる。したがって、仮に、この8品の粗利率が-20%になっても、その他で20%の粗利率が確保できていれば、16%で治まり、-10%で17%、0%で18%となり、この8品で実施している限り、青果全体に与える利益の影響は相当のマイナス粗利がない限り、競争力が逆に増すメリットの方が大きいように思う。

   その競争力であるが、問題は、この8品が顧客から絶大な支持を得られる商品であるかがポイントとなる。ちらしでは、選定根拠をインターネット調査から得られた300人の主婦であるとしており、西友、すなわち、店舗側ではなく、顧客の声にもとづいて選定したとこのことである。その実際の定番認定野菜であるが、大根1本89円、きゅうり1本39円、キャベツ1個99円、白菜1/4 49円、エリンギ1パック79円、ほうれん草1束95円、レタス1個125円、長ねぎ2本1束99円である。この8品の野菜に加え、いま旬の果物いちご1パック299円が加わっており、これが、現在の西友が提供するEDLP野菜である。PI値から見ても、高い商品が選定されており、競争力は高いといえよう。

   それにしても、EDLPとしては、最も難しい生鮮、その中でも、野菜にまで西友が今回、1歩、踏み込んだことは、今後、食品スーパーマーケット業界としても、いよいよ、新たな価格競争がはじまったといえよう。相場変動に連動したハイロー戦略中心に取り組んできた食品スーパーマーケットの進化、そして、真価が問われることになったといえよう。西友がこの8品でEDLPが限定されるのか、それとも、さらに、次の野菜、そして、果物へと対象を広げてゆくのか、また、青果だけでなく、鮮魚、精肉、惣菜へもEDLP戦略を広げてゆくのか、次の1手に注目したい。

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January 28, 2010

バナナ協奏曲が終わった!

   昨年1年間、ほぼ毎月昨対の売上げを大きくクリアーし続けた商品がある。バナナである。そのバナナの数字がやっと落ち着いた、というよりも、その反動で今度は昨対を大きく割り込みはじめており、まさに、バナナ協奏曲の終焉を迎えたといえよう。ただ、一昨年の数字と比べると、まだ数字は高いといえ、その意味で、バナナは次のステージに入ったともいえる。今後、バナナの売上げがどのように推移するか気になるところである。そこで、ここでは、そのバナナ協奏曲のはじまりと、終焉を、その1年半に渡る軌跡を実際の消費データをもとに振り返ってみたい。

   バナナ協奏曲のはじまりはいつからか、まずは、家計調査データをさかもどり、バナナが伸び始めた時点を特定してみたい。そもそも、バナナが注目されたのは、テレビ報道のバナナダイエットがきっかけといえる。当時、日テレの「みのもんたのおもいっきりイイテレビ」、2008年6月5日、ここがバナナ協奏曲のはじめといえよう。家計調査データでは日別の数字も確認できるが、6/5は17.02円と前日6/4の14.86円、翌日6/6の15.85円と比べても跳ね上がっており、その影響が確認できる。6月の月間のバナナの消費金額は15.40円であるので、明らかに、17.02円は異常値であり、6月の30日間の中でも17.00円を超える日はわずか6日間であるので、高い数字であり、「みのもんた効果」といえよう。

   では、実際、6月の数字15.40円は、昨年と比べどうであったかであるが、114.9%と、2桁の伸びである。そこで、その前の5月、4月、そして、翌月7月の数字はどうであったかを見てみたい。5月は14.10円(103.3%)、4月は13.23円(102.3%)であり、明らかに、6月の数字が跳ね上がっていることがわかる。そして、7月であるが、13.55円(116.7%)であり、まさに、6月が転機、この月、6/5からバナナ協奏曲がスタートしたといえよう。

   そこで、この6月、バナナの売上げが伸びた要因をさらに掘り下げてみたい。家計調査データは家計の平均的なバナナの1ケ月当たりの消費金額を示す数字であり、この中にはバナナの購入世帯も、バナナを買わなかった世帯も入った総世帯の平均的なバナナの消費金額を示している。では、バナナを購入した世帯のみのバナナの購入金額はどのくらいだろうか。そして、その割合は全世帯のどのくらいだろうか。これを家計調査データから掘り下げ、その伸び率を昨年と比較することで、この6月度のバナナの消費金額114.9%の伸びた要因がわかる。すなわち、バナナの購入世帯のバナナの購入金額が増加したのか、バナナの未購入世帯がバナナを購入するようになったのか、それとも、双方がバランスよく伸びたのかである。

   実際どうであったかを6月の数字で見てみると、バナナ15.40円(114.9%)、購入世帯のみ21.06円(109.0%)、購入世帯の割合73.1%(105.4%)となる。どちらも伸びているが、どちらかというと、バナナの購入世帯がよりバナナの購入を増やしたことの方が強いといえよう。ただ、新たに、バナナの購入世帯も5%強増加しており、これが、まさに、「みのもんた効果」といえよう。

   これを皮切りにバナナダイエットの放送が、「みのもんたのおもいっきりイイテレビ」でも第2弾、第3弾、そして、他局へも波及してゆき、バナナ協奏曲は絶頂をむかえることになる。実際、その後の数字を追ってみると、7月13.55円(116.7%)、19.53円(111.6%)、69.4%(104.5%)、8月12.42円(129.6%)、18.94円(119.8%)、65.6%(108.2%)、9月15.06円(151.1%)、21.19円(134.6%)、71.1%(112.3%)、10月18.23円(170.7%)、26.13円(161.8%)、69.7%(105.5%)、と10月は何と170%を超える数字となり、まさに絶頂をむかえる。

   そして、11月15.67円(164.9%)、22.37円(146.6%)、70.0%(112.5%)、12月14.00円(166.9%)、20.12円(141.6%)、69.6%(117.9%)、2009年1月13.68円(163.1%)、19.87円(141.0%)、68.8%(115.6%)、2月15.57円(156.8%)、21.56円(136.3%)、72.2%(115.0%)、3月16.13円(140.8%)、21.18円(125.3%)、76.2%(112.4%)、4月18.07円(136.5%)、23.04円(122.8%)、78.4%(111.1%)、5月18.48円 (131.1%)、23.94円(123.6%)、77.2%(106.1%)と、これでちょうど1年である。

   協奏曲はまだ終わらない、6月 18.23円(118.4%)、23.61円(112.1%)、77.2%(105.6%)、7月15.48円(114.3%)、21.33円(109.2%)、72.6%(104.7%)、8月13.29円(107.0%)、19.09円(100.8%)、69.6%(106.2%)と、ピークは過ぎたが、1年たってもまだ余韻が続く。

   そして、9月13.23円(85.0%)、18.86円(86.1%)、70.2%(98.7%)と、とうとう、昨対を割り、協奏曲は終わった。その後であるが、10月12.48円(68.5%)、17.73円(67.8%)、70.4%(101.0%)、11月11.30円(72.1%)、16.48円(73.7%)、68.6%(97.9%)、・・と、まさに、バナナ協奏曲の終焉である。

   このように一昨年、2008年6月からはじまったバナナ協奏曲は10月にピークを迎え、その後も昨対150%前後で推移していたが、2009年3月頃から徐々に数字が伸び悩み始めた。ただ、その余韻は1年後の6月を超えても続き、9月に、1年半ぶりに昨対を割り、バナナ協奏曲は終わりを告げた。それにしてもまさにバナナ協奏曲というにふさわしい嵐のような1年半であったといえる。興味深いのは、バナナの購入世帯は約70%前後で比較的安定しているが、その70%のバナナの購入世帯が激しくバナナを買い求めた時、バナナ全体が熱狂の渦に包まれたということであり、売上げが伸びるということはどういうことなのかということを改めてバナナが教えてくれたように思う。

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January 27, 2010

売上速報、食品スーパーマーケット200912、100.1%!

   食品スーパーマーケット上場企業、23社の2009年12月度の売上速報を集計した。食品スーパーマーケット業界は約50社強が上場しているが、月別の売上速報を公開しているのは約半分であり、一部、まだ昨年12月度の売上げが公開されていない企業もあるが、現時点ではこの23社となる。なお、ここには、GMS、イオン、イトーヨーカ堂、ダイエー等は入っていない。GMSは食品の売上げよりも、衣料品等に大きく依存するため、食品スーパーマーケットとは一線を画した方が良いからだ。ただ、スーパーセンター業態、スーパーバリュー、PLANT、アークランドサカモト、Olympic等は食品の売上構成比も高いので、参考に加えてある。したがって、この売上速報は、食品スーパーマーケット業界の動向をより正確に表しているといえよう。ちなみに、店舗数であるが、約1,500店舗強、99プラスを入れると約2,500店舗となる。

   さて、その結果であるが、全体が100.1%(既存店95.5%)となり、わずかに全体は100%を超えたが、厳しい状況である。また、既存店も95%台であり、厳しい経営環境が続いているといえよう。それでも、その差が約5%あり、このような厳しい状況の中でも、新規出店により、売上を底上げしており、出店意欲は堅調であるといえる。一般に、食品スーパーマーケットの売上構造は既存店が100%前後、これに、5%から10%の新店が加わり、全体が105%から110%となるのが安定した経営を確保することになるが、ここ最近は、既存店の落ち込みが、95%前後まで落ち込んでおり、新店でカバーできない厳しい状況にある。

   その要因であるが、この23社の内、客数、客単価までは約半分、その内、PI値、平均単価まで公開している食品スーパーマーケットが数社あるが、これらの数字を見ると、単純平均であるが、客数97.2%、客単価97.7%と、客数、客単価双方が下がっているのが実態である。また、客単価の中身であるが、PI値101.0%、平均単価96.9%という状況であり、PI値よりも、平均単価ダウンが大きいといえよう。したがって、ここから現状の食品スーパーマーケット業界を取り巻く経営環境を推測すると、デフレ環境が鮮明になり、各社の価格競争が激化した結果、価格が下がったにも関わらず、数量(PI値)が伸び悩み、結果、客単価がダウンし、客数(来店頻度)も減少し、既存店の売上げを大きく下げているという状況といえる。

   ここには表れていないが、当然、価格のダウンは、原価ダウンにつながり、粗利ダウンとなる。しかも、既存店の売上げも伸び悩んでいることから、全体の人件費、減価償却費等の固定費が相対的に上昇し、利益を圧迫する。さらに、客数が下がっていることから、チラシ、イベント等の販売促進費用も増加し、経費をさらに上昇させる要因となる。したがって、原価、経費双方からの圧力がかかり、差し引き、マーチャンダイジング力のダウン、そして、営業利益ダウンへと、悪循環となり、利益を確保することが厳しい状況となる。

   食品スーパーマーケット業界も、ここへ来て、きわめて厳しい局面に入ったといえ、今後、売上よりも、利益面での格差がより拡大するものといえよう。特に、経費比率の高い食品スーパーマーケットは今期決算、来期の利益確保が極めて厳しい状況となろう。

   このような背景をもとに、この12月度の状況を見てみると、売上げが110%以上の食品スーパーマーケットが2社ある。マックスバリュ東海111.7%(既存店90.6%)、スーパーバリュー111.1%(98.9%)である。どちらもほぼ同じ数字であるが、中身が違う。マックスバリュ東海はM&Aを主体に売上げを伸ばし、スーパーバリューは新規出店をもとに売上げを伸ばしている点である。気になるのは、マックスバリュ東海の既存店90.6%であり、今回の集計食品スーパーマーケット23社の中でも最も既存店の伸率が低いことである。今後、既存店の活性化が最優先課題といえよう。

   ついで、105%以上の食品スーパーマーケットであるが、ダイイチ105.7%(96.8%)、ユニバース105.3%(97.8%)、マックスバリュ西日本105.3%(93.0%)の3社である。ここまでが105%以上の食品スーパーマーケットであり、合計5社となる。全体の23社の21.7%であり、残り約80%は105%以下であるので、いかに、この12月度の食品スーパー
マーケット業界の数字が厳しいかが類推される。

   その厳しい状況であるが、この23社の中で、95%を下回った食品スーパーマーケットをみると、アークランドサカモト94.6%(97.8%)、マックスバリュ北海道93.7%(92.7%)、Olympic92.8%(91.7%)、エコス91.8%(94.2%)、いなげや91.5%(89.0%)である。ちなみに、このような厳しい状況の中で、23社中1社が既存店100%をクリアーしている。オオゼキ103.9%(100.7%)である。100.7%とわずかではあるが、既存店が100%を超えており、他の食品スーパーマーケットはすべて、既存店は昨対割れとなった。

   このように、先月、2009年11月度から特に、この売上速報の数字の落ち込みが鮮明になったが、今回の12月度においても、同様の傾向が続いており、明らかに、潮目が変わったといえよう。今後、ますます、消費環境はデフレ傾向が強まり、価格競争は一層激しさを増し、平均単価のダウンが予想されるが、食品スーパーマーケット業界としては、PI値を上げることだけではなく、平均単価アップに貢献する商品の見直し、そして、このような状況であるからこそ、顧客、特に、ロイヤルカスターへの手扱い還元、要望を取り入れ、客数(来店頻度)を引きあげることが重要な政策となろう。

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January 26, 2010

日経MJ、新製品売れ筋ランキング2009確定!

   1/25、日経MJで2009年、新製品売れ筋ランキングが公表された。これは、通常は、日経MJが毎週金曜日に前週の新製品売れ筋ランキングを公表しているが、その年間版であり、昨年1年間、2009年度の新製品の売れ筋ランキングである。週間版とは若干違い、酒が新たに追加され、化粧品が家庭用品から分離され、冷凍食品が省かれての公表である。また、指標も週間版とは違い、カバー率が年間版であるので省かれ、新たに数量PI値が付け加えられている。さらに、週間版では、ベスト20であるが、年間版ではベスト10となっていることである。

   さて、2009年度、No.1の金額PI値を獲得した新製品であるが、その他食品部門の森永乳業、まきばの空1000mlである。2009年3月登場であり、金額PI値1,705円、平均単価160円、そして、PI値10.68個である。日経MJのPI値は1,000人当たりであり、しかも、扱い店舗のみであるので、ほぼ、実際に店舗に導入した時に期待できる数字に近いといえる。PI値にはこの扱い店舗のみの場合と、対象店舗全体の総店の場合とがあるが、総店になると、扱い店舗が多い場合は問題ないが、扱い店舗が少ない場合は、実態とはズレるので、多店舗のPI値を算出する場合には、扱い店舗を重視した方が実態に即した数字となる。

   この金額PI値1,705円、PI値10.68個が高いか低いかであるが、極めて高い数字である。一般に金額PI値500円を超えたらAランクといえ、300円でBランク、200円でCランクといってよい。したがって、1,000円を超えたら、超Aランクといえる。また、実際の食品スーパーマーケットでは、売れ行きがどのくらいの感じかというと、通常、食品スーパーマーケットの客数は1日2,000人前後であるが、このまきばの空の場合、金額PI値1.705円、PI値10.68個であるので、1日21.36個平均で売れ、売上金額3,410円となる。食品スーパーマーケットには、商品が1万ぐらいあるが、この水準以上の商品はおそらく200品にも満たないと思うので、超売れ筋といえる。今回は新製品の中で2009年度No.1であったが、全商品の中でも200番以内には入るのではないかと思う。

   たまたま、同じ日経MJ、1/25に、「牛乳の需要、二極化鮮明」、「成分調整、健康志向が追い風」、「無調整、値上げで生産縮小」という見出しの記事が載っていた。これを見ると、成分無調整は値上げもあり、今年10.9%の減少予想であり、成分調整は昨年11月度が昨対160.7%となったという。何かバランスがとれない比較だが、記事にはそう書かれている。このように、完全に明暗が分かれているが、このまきばの空は、まさに、その成分調整牛乳であり、価格も160円と成分無調整の牛乳と比べてもお得感があり、まさに、昨年は追い風にのった商品であるといえよう。

   ついで、No.2であるが、これもその他食品部門、明治乳業、ブルガリアヨーグルトLB81プレーン450g、金額PI値1,519円である。PI値10.66個、平均単価142円であり、ほぼ、まきばの空に近い数字である。この2品が突出しており、No.3は化粧品部門のマックスファクター、SK-Ⅱフェイシャルトリートメントエッセンス215mlである。金額PI値771円、PI値0.05個、平均単価14,288円である。平均単価が異常に高いが、金額PI値=PI値×平均単価であるので、No.1、No.2のように、PI値が極端に高い商品、No.3のように平均単価が極端に高い商品、双方の金額PI値が高くなるので、このような結果となる。

   このベスト3についで、ベスト10までを、高い順に見て見ると、No.4がマックスファクター、SK-Ⅱ、スキンシグネチャー80g、金額PI値755円(PI値0.05個、平均単価14,288円)、No.5日本ミルクコミュニケティ、メグミルク牛乳1000ml、金額PI値726円(3.79個、191円)、No.6明治乳業、プロビオヨーグルトLG21 112g、金額PI値660円(5.55個、119円)、No.7森永乳業、ビヒダスプレーンヨーグルトBB536 450g、金額PI値610円(4.58、133円)、No.8日本コカコーラ、爽健美茶PET2L、金額PI値608円(3.95個、154円)、No.9資生堂、HAKUメラノフォーカスEX45g、金額PI値602円(0.08、7,306円)、そして、No.10味の素冷凍食品、ギョーザ12個252g、金額PI値563円(2.88、195円)となる。

   また、ベスト10には入らなかったが、酒部門ではNo.1アサヒビール、オフ350ml×6缶、金額PI値484円(0.75、646円)、No.2キリンビール、フリー350ml、金額PI値475円(3.60、132円)がトップ争いを繰り広げた。アサヒは6缶パック、キリンはバラと熾烈な争いである。菓子部門では、No.1は明治製菓、ミルクチョコレート58g、金額PI値342円(4.07、84円)、No.2カルビー、ポテトチップスうすしお味60g、金額PI値294円(3.24、91円)である。そして、家庭用品部門では、No.1となったのはP&G、アリエールイオンパワージェル詰め替え900g、金額PI値349円(1.32、265円)であった。

   このように、2009年度の新製品週間ランキングの年間版が公表されたが、このブログでも週間版については、時々取り上げてきたが、新製品の基準値は金額PI値500円を超えたらA、300円はB、200円はCが正解といえ、金額PI値500円以上の商品は年間10品強であることからも、いかに高い数字であるかがわかる。まずは、200円、そして、300円以上の商品を毎週見つけ出し、自店の品揃えに加えてゆくこがポイントであろう。そして、500円を超えるものがあれば、無条件で導入を検討しても良いパワーのある商品であるといえよう。今年、2010年度もどのような新製品が登場するか楽しみである。

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January 25, 2010

大黒天物産、2010年5月中間決算、大幅増収増益!

   ディスカウント食品スーパーマーケット、大黒天物産が好調に売上げを伸ばしている。1/13、2010年5月期、中間決算の結果を公表した。結果は、売上高384.07億円(110.4%)、営業利益20.52億円(118.8%:売上対比5.34%)、経常利益20.52億円(120.8%:売上対比5.34%)、当期純利益10.77億円(120.2%:売上対比2.80%)と、増収増益、特に、利益は約120%となる好決算となった。各社が売上、利益ともに伸び悩む中、絶好調といえ、改めて、デフレ期におけるディスカウント戦略の強さが際だった結果となった。

   これについて、大黒天物産自身は、「当社グループでは食品製造小売業(S.P.F)としてお客様に満足いただける商品を「安く」提供するため、商品開発に注力、・・」とコメントしており、安さ、まさにディスカントが顧客に受け入れたれたと分析している。ちなみに、このS.P.Fは、通常はS.P.Aと略称されるが、S.P.AはSpeciality store retailer of Private label Apparelの略であり、通常、アパレル(衣料品)分野、特に、GAP、ユニクロ等で使用される用語であるので、このApparelをFoodに置き換え、S.P.Fとしたものといえよう。今後、食品スーパーマーケットの新たな戦略として、注目されよう。

   そこで、まず、大黒天物産のディスカウント戦略の実態を原価、経費面から見てみたい。原価であるが、77.18%(昨年76.88%)と、原価に関しては、0.30ポイント上昇が見られる。結果、売上総利益は22.82%(昨年23.12%)と、やや下がっており、ディスカウント戦略をとる大黒天物産でも、デフレ環境による価格競争の厳しさの影響を受けたものと思われる。一方、経費の方であるが、17.47%(昨年18.14%)と、0.67%と大幅に下がっており、この中間決算では、原価よりも経費の削減が進んでいる。この17.47%の経費比率は、前期決算の公開企業約50社の数字で見ると、オーケーストア14.9%、トライアルカンパニー16.3%、アオキスーパー16.8%に次ぐ4番目に低い経費比率であり、5番目以降は18%台となるので、この4社が図抜けた経費比率である。

   ここからもわかるように、日本の食品スーパーマーケットのディスカウント戦略を支えているポイントは、原価をいかに下げるかということもあるが、それ以上に経費をいかに下げられるかにあるといえ、大黒天物産のこの中間でも、好決算の要因は経費の削減が進んだことにあるといえよう。これについて、大黒天物産自身は、「コスト面におきましては、本社管理部門コストの一層の見直しと店舗作業効率の改善を推し進め販売費及び一般管理費の圧縮を図る、・・」と、コメントしており、本部、店舗、双方のコストの削減が進んだ結果であるという。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は5.35%(昨年4.98%)と、5.00%を超え、極めて高い数字となった。

   ちなみに、大黒天物産は、日本の食品スーパーマーケットの中でも出店コストが低い仕組みをもっており、これが経費比率を低く抑えられる要因のひとつといえる。この中間決算でも、出店にかかわる資産である土地、建物、差入れ保証金、建設協力金等の合計は95.74億円であり、現在52店舗であるので、1店舗当たり1.84億円となる。この1.84億円は決算公開企業約50社ではベスト5に入る低さである。その背景には居抜き物件が多いことに加え、あらゆるコストの削減が進んでおり、他の食品スーパーマーケットと比べて、出店が容易な状況にあるといえる。結果、総資産218.06億円の43.9%となり、現在自己資本比率が53.9%(昨年49.7%)であるので、差し引き、出店余力は10.00%とプラス、自己資本の範囲内で十分に新規出店が可能な財務状況である。

   また、負債約50%弱の中身であるが、有利子負債は22.00億円であり、総資産の10.08%であり、これ以外では、大部分が支払い手形及び買掛金であり、その金額は47.70億円、総資産の21.87%である。したがって、まだまだ、好調な決算をもとに自己資本比率の向上は可能といえ、今後、ますます、出店が可能な安定した財務状況になろう。

   ただ、気になるのは、この中間期には1店舗も新規出店がなかったことである。そこで、キャッシュフローを見てみると、投資キャッシュフローの中の新規出店関連への投資を見ると、1.98億円であり、これは先にも計算したとおり、1店舗当たりの出店にかかわる資産が1.84億円であるので、1店舗への投資である。出店余力は十分であるにも関わらず、出店を控えた投資キャッシュフローといえよう。

   恐らく、これは、この3月に大黒天物産の新規エリア、九州地区への新規出店へ全力をあげて取り組んでいるためであるとおもわれる。この新規出店の成功を待って一気に九州地区で店舗数を増やすのではないかと思われる。大黒天物産の営業キャッシュフローは前期決算時は約40億円あり、これを仮にすべて新規出店に当てれば年間20店舗以上の新規出店が営業キャッシュフローの範囲内で可能であり、九州地区への新規出店の成否が今後の出店戦略の方向性を決めるものといえよう。

   このように、大黒天物産の2010年5月期の中間決算は大幅な増収増益となり、好決算となった。ディスカウント路線、特に、経費の削減に磨きがかかっているといえ、マーチャンダイジング力が強化されている状況である。また、出店余力も十分であり、自己資本比率も改善し、今後、さらに、成長路線を推し進める財務基盤も固まりつつあるといえる。ただ、ここ数ケ月は、新規エリア、九州地区への準備に備えた体制づくりに専念していると見え、新たな出店を控え、嵐の前の静けさが漂うが、この九州地区での出店が成功した場合には、新たなドミナントエリアとして、一気に出店が加速するのではと思われる。今後、M&Aも含め、大黒天物産が高収益、強固な財務基盤をもとにどのような成長戦略を打ち出すか注目である。

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January 24, 2010

家計消費、食品1日1,986.87円、全体9,491.33円!

   現在の日本の1世帯平均の消費金額はどのくらいであり、その内、食品にはいくらぐらい費やしているのかを調べてみた。数字の根拠は、総務省統計局が毎月公表している家計調査データである。そろそろ、2009年12月度の数字が公表されると思われるが、現在の最新データは2009年11月であり、この数字から家計消費の実態に迫ってみたい。その結果であるが、全体の消費額は1日当たり、9,491.33円であり、この内、食品のみは、1,986.87円である。家計調査データでは食品を食料とし、外食を含めているが、ここでは、食品とし、外食を抜いた数字で再計算した。また、家計調査データでは月間サマリーの数字であるが、ここでは1日当たりに換算した。この方が直観的にわかりやすいからである。

   ここから外食を抜いた場合のエンゲル係数が算出できる。1,986.87円÷9,491.33円であるので、20.9%となり、日本では、現在、およそ、消費の2割が食品関連に費やされ、8割が食品以外となる。したがって、全体の消費を増やす、すなわち、内需拡大には食品よりも、食品以外の消費が鍵を握っているといえよう。今後の日本は人口が減り、少子高齢化が急激に進むと予想されているので、全体の消費は人口減による下げ圧力が加わり、消費水準を維持するには、この消費額を増加させる以外にないが、その鍵を握るのが、食品以外の消費項目であるといえよう。

   ちなみに、通常のエンゲル係数は外食も含む食料で計算されるので、上記数字に外食の437.17円が加わり、食料は合計2,424.04円となり、これでエンゲル係数を算出すると25.5%となる。約1/4が食料への支出となる。この数字が高いか低いかであるが、第2次世界大戦後10年ぐらいは50%前後で推移していたので、その当時と比べると約半分である。また、1980年頃は30%前後であるので、日本のエンゲル係数は、右下がりに推移していることがわかる。

   さて、今後の消費拡大が可能かどうかの鍵を握る食品以外であるが、大項目で見て、消費額の高い順に並べてみると、その他の消費支出1,819.10円(19.2%)、交通・通信1,236.67円(13.0%)、教養娯楽1,095.0円(11.5%)、光熱・水道641.70円(6.8%)、住居597.80円(6.3%)、保健医療482.00円(5.1%)、被服及び履物480.10円(5.1%)、家具・家事用品365.80円(3.9%)、教育349.10円(3.7%)となり、これに外食437.17円(4.6%)が加わる。この中で、その他消費支出が全体の19.2%と高い数字を占めるが、その中身をもう少し細かく見てみると、理美容、たばこ、冠婚葬祭などの諸雑費805.33円(8.5%)、交際費450.67円(4.7%)、こづかい(使途不明)396.00円(4.2%)、仕送り金167.10円(1.8%)となる。

   さらに、もう一歩分析をすすめ、これは2009年11月度の数字であるが、伸び率を参考に見てみたい。伸び率の高い順に、昨対100%を超えたもののみを見てみると、教育114.5%、住居105.2%、保健医療104.8%、教養娯楽104.1%、家具・家事用品103.1%、その他の消費支出100.0%となる。逆に、昨対を割り込んでいるものを、低い順に見てみると、被服及び履物93.6%、光熱・水道94.7%、交通・通信97.2%、そして、外食93.1%という状況である。

   GMS、百貨店の主力部門といえる被服及び履物480.10円(5.1%)であり、その伸び率が93.6%と伸び悩んでおり、厳しい数字であることがわかる。また、食品が全体の20.9%という数字が、過去と比べると大きく構成比が落ち込んではいるが、いかに巨大な数字であるかもわかる。さらに、この11月の数字ではあるが、伸びている項目を見ると、大きく3つに分かれ、教育、娯楽関連、保険医療関連、住居、家具・家事用品関連であり、その構成比は30.5%となる。極論すれば、教育、医療、住居に、現在、家計は消費を増やしているという状況であり、ここが消費環境の厳しい状況の中でも消費拡大が見込める可能性の高い領域といえよう。確かに、この3つ、教育、医療、住居は人口が減少しても、より高い教育、より健康になる医療、そして、リフォームを含め、住居関連、住処(すみか)には消費を振り向ける可能性は高く、逆に、食品、外食、衣料、光熱・水道、交通・通信等は消費を節約する傾向が強いともいえよう。

   現在は未曽有の消費環境の悪化により、小売業界は価格競争の激化が増し、平均単価を大きく落とし、数量(PI値)が伸び悩み、客単価(金額PI値)を落とし、さらに、客数の伸び悩みが加わり、2重の売上げダウンの圧力がかかり、厳しい数字があいついでいる。ただ、今後、10年、20年、そして、50年、100年先を見た場合、日本の人口減少、少子高齢化はほぼ既定の事実、確定的な未来となりつつある。今回、2009年11月度という限定された期間での数字であるが、この数字の中にも、今後、小売業、そして、食品スーパーマーケットの取り組むべき方向性が垣間見えるように思う。

   小売業界としても、そして、食品スーパーマーケットとしても、目の前の商品、いま取り扱っている商品の数字を上げるだけでなく、その商品の購入顧客にとって、どのような生活のサポートができるか、特に、先にあげた3つの項目、教育、健康、住居に貢献できるかどうかが、今後、顧客からの支持を得る上で重要なキーワードのように思う。

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January 23, 2010

未来店舗研究フォーラム2010を受講、何が未来か?

   1/22、学習院大学で開催された産学共同プロジェクト、「未来店舗研究フォーラム2010」を受講する機会があった。主催は学習院マネジメント・スクール、共催は生活協同組合コープさっぽろ、株式会社成城石井、日本スーパーマーケット協会、株式会社菱食、株式会社ダイヤモンド・フリードマン社である。朝10:00から18:00まで、調査研究発表、各講師の講演、そして、パネルディスカッションと、未来店舗についての可能性を多角度から探る内容であった。

   前半は未来店舗のキーワードとして、「L.V.C.S」(Life Value Creative Station)という概念を学習院大学の上田隆穂教授が提案し、その基本的な考え方と可能性をレクチャーした。その後、その可能性を店長・パートへのインタビュー、深層心理解読、WEB調査で検証するという内容であった。L.V.C.Sとは、生活者は希望を求めて、生活価値(Life Value)そのものの創造(Create)をアシストする存在を求めており、そのアシストを行う場、その駅(Station)に小売業がなるべきであり、それが、小売業の未来店舗の姿であるという意味である。

   そして、後半は、この未来店舗の可能性を産業界から、どう捉えることができるかを、小売業から見た未来店舗、中間流通から見た未来店舗、メーカーから見た未来店舗、そして、パネルディスカッションを通じて、探るという内容であった。特に、小売業からは、生活協同組合コープさっぽろ理事長、大見英明氏、中間流通からは株式会社菱食、代表取締役社長、中野勘治氏、メーカーからは、社団法人中央酪農会議、事務局長、前田浩史氏が講演した。また、パネルディスカッションは、上田教授を司会に、生活協同組合コープさっぽろ理事長、大見英明氏、株式会社成城石井、代表取締役社長、大久保恒夫氏、日本スーパーマーケット協会専務理事、大塚明氏の3氏が参加した。

   未来店舗というと、以前、注目を浴びたハイテクの塊のような店舗、フューチャーストアを思い起こすが、今回のフォーラム全体を貫いていたテーマは生活者に基点をおいたコミュニティとしての店舗である。特に、店舗側はいかに顧客とコミュニケーションを密接にし、店舗のファンをつくってゆけるか、そして、そのためにも、小売業の人の教育、成長が最も重要であるという、最後は結論であったといえる。やや意外な結論でもあるが、今日の閉塞的な小売業の現状を見ると、小売業の原点、「店は客のためにある」の格言を、再度思い起こし、いまこそ、これを真に実現することが、小売業の未来なのかもしれないと思った。

   今回、後半の講演、そして、パネルディスカッションを聞いて、特に、印象深かったのは、コープさっぽろの大見理事長の話である。北海道という閉鎖商圏の中で、イオングループ、アークスグループとの事実上、3グループの三つ巴の激しい競争の中で、知恵と勇気を振り絞り、生協がもてる経営資源をマックスに活用している様子である。結果、今回のテーマ、L.V.C.Sに自然、近づいているといえ、地域のまさにコミュニティの中核となりつつある姿である。また、コープさっぽろは、いち早くPOSデータをメーカーに解放し、MD研究会を開始したが、これも、寡占化した北海道市場では、各カテゴリーベスト3以下のメーカーは生き残るのが厳しい状況にあるという。したがって、コープさっぽろ側としても、No.1メーカーとしっかりとした関係をいち早く築くことが切実な経営課題であるという背景もあったようであり、北海道という商圏の厳しさが、コープさっぽろを強くしていると感じた。

   また、成城石井の大久保社長の話で、以前から気になっていたが、あいさつ、会話が重要であり、これが固定客の拡大につながるとのことであった。これについては、今回の一連のフォーラムの中でファンづくりが未来店舗のひとつのキーワードであるとの視点が提示されたが、まさに、あいさつ、会話は自然、ロイヤルカスターと店舗との関係が増し、売上げ、特に、利益に貢献することになる。これは、見方を変えれば、ロイヤルカスタマーづくりが重要であるということであり、理にかなっていると思った。そして、日本スーパーマーケット協会、大塚専務理事の話であるが、大塚専務理事はヤオコー出身であり、現在ヤオコーにも籍を置いているという。ヤオコーは、未来店舗への取り組みのひとつともいえるクッキングサポートという小さなコミュニティーをいち早くスタートさせ、軌道にのせつつあるといえる。これ以外にも、ヤオコーの様々な取り組みについて話があり、興味深かかった。

   このように、産学協同プロジェクト、未来店舗研究フォーラム2010で、どんな未来店舗が議論されるのかと思って研究成果、各講師の講演、パネルディスカッションを聞いていた。ところが、講演や議論が進む中で、未来という直線的な考え方、そのものに答えはなく、小売業の原点は永遠に顧客、生活者であり、その顧客へのフォーカスをより深めたところに未来があり、そこに可能性があるという結論であったように思う。ひとつ残念だったのは、今回は、ID-POSの話は全くなかったことである。実は、このID-POSが未来店舗のキーテクノロジーではないかと、一連の議論を通じて改めて感じた。いずれ、これについては、本ブログで取り上げてみたい。

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January 22, 2010

コンビニ売上速報、2009年12月度、既存店-5.5%!

   コンビニの2009年12月度の売上速報が、1/20、(社)日本フランチャイズチェーン協会から公表された。結果は、全体が-3.0%、既存店は-5.5%となる厳しい数字となった。協会自身は、「景気低迷による消費マインドの低下とtaspo の反動が大きく影響を与え、・・」とコメントしているように、予想されていたtaspo効果の反動だけでなく、消費マインドの低下も大きいとのことで、2重のコンビニへの売上ダウンの影響があるとの見方である。ちなみに、この集計結果は、全国の大手コンビニを網羅しており、コンビニ業界の現状をほぼ正確に反映しているといえよう。そのコンビニであるが、エーエム・ピーエム・ジャパン、ココストア、サークルK サンクス、スリーエフ、セイコーマート、セブン-イレブン・ジャパン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、ローソンの11社である。

   この数字をどう見るか、すなわち、厳しい数字と見るか、健闘していると見るかは、簡単には判断できないものがある。それは、昨年のtaspo効果のプラス効果があまりに大きかったため、単純に昨年と比べて良いかどうかが難しいからだ。実際、昨年よりも数字が下がっているが、一昨年と比べてみると、堅調な伸びを示しており、taspo効果により、上昇した売上げがチャラになっているわけでなはなく、下げ止まっているとも見えるからだ。

   そこで、taspo効果がどのような影響をコンビニに与えたかを見てみたい。既存店の数字をさかもどって見ると、taspo効果を検証することができる。昨年の1月から、既存店の伸び率を見てみると、1月(-1.6%)、2月(1.2%)、3月(-0.6%)、4月(-0.2%)、5月(3.7%)、6月(4.2%)、7月(11.7%)、8月(5.3%)、9月(6.6%)、10月(8.1%)、11月(7.4%)、12月(6.1%)という推移である。5月くらいから、既存店の売上げが伸び始めており、平均して、7.0%前後であることがわかる。7月は11.7%と異常値になっているが、これは、猛暑の影響で、売上げをさらに押し上げたからである。

   それにしても、7.0%前後の伸びは、既存店としてはすさまじい数字である。通常、小売業の既存店は大きな環境の変化が起きない限り、既存店は横ばいか、若干の伸びにとどまるのが通常であり、7.0%前後伸びることはまずない。しかも、1チェーンではなく、11チェーンの平均値であり、コンビニ全体の既存店が伸びたのだから、いかに、taspoは劇的な環境変化を引き起こしたかがわかる。さらに、この数字を客数と客単価(金額PI値)に分解すると、客単価はマイナスであり、客数のみが伸びての売上げアップであり、taspo効果は客単価を押し上げたのではなく、既存店の客数を力強く押し上げたのが原因であるといえる。
   
   そして、2009年に入っても、既存店の売上げは伸びが続いており、1月(7.0 %)、2月(2.0%)、3月(4.2%)、4月(4.3%)、5月(1.0%)、6月(-2.3%)となり、4月まで続いており、ほぼ、ぴったり、まるまる1年間、taspo効果が続いたことがわかる。その後、この12月までの推移であるが、7月(-7.5%)、8月(-5.5%)、9月(-5.6%)、10月(-5.5%)、11月(-6.3%)、12月(-5.5%)であり、6月からマイナスに転じている。
   
   そこで、このマイナス幅であるが、単純にプラスマイナスをとってみると、6月(1.9 %)、7月(4.2%)、8月(-0.2%)、9月(1.0%)、10月(2.6%)、11月(1.1%)、12月(0.6%)という状況であり、8月は-0.2%とわずかに下がったが、それ以外は、2.0%前後で堅調な数字であり、一昨年よりは上回っている数字であり、大きく落ち込んでいるわけではないといえよう。

   したがって、単純に昨対で見れば6月から7ケ月連続、数字が大きく下がっているが、一昨年と比べると堅調な伸びを示しているともとれ、taspoによる異常な売上げ押し上げ効果の余韻、残像が残っているともいえよう。すなわち、taspoにより大きく売上げを押し上げ、コンビニ業界全体の底上げがなされ、taspo効果が薄れた後にも、全体へはプラスの効果が引き続き残ったといえ、この3年間で見れば、徐々に、わずかではあるが、既存店を成長に導いたともとれよう。

   ただ、この12月度を見て、気になることもある。それは、taspo効果ではもともと客数はアップするが、客単価はアップしなかったという結果が出ているが、その客単価の部門別の状況を見ると、日配食品、加工食品の落ち込みが、2009年度平均が-2.9%、-2.7%と大きいことである。特に、日配食品はコンビニの中核、ファストフードが含まれる部門であり、ここの落ち込みは、コンビニ全体に波及するものといえ、今後の推移が気になるところである。

   このように、2009年12月度のコンビニの売上げは全体が-3.0%、既存店が-5.5%と大きく落ち込み、特に、既存店は7ケ月連続であり、taspo効果が明らかにはがれたといえよう。ただ、その余韻はまだ続いており、一昨年と比べると、依然としてプラスであり、堅調な動きともとれる。少し気になるのは、ファストフードを含む、日配食品の客単価が落ちていることであり、これは、taspo効果が切れた影響ではなく、現在のコンビニを取り巻く消費環境によるところが大きいと推測される。今後、消費環境はさらに厳しさを増すものといえ、コンビニの来月、そして、その後の数字が懸念されよう。

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January 21, 2010

電卓でPI値を計算し、売れ筋(重点商品)を見つけ出せ!

   PI値の実践的な活用方法は、POSデータと電卓をもって売場にゆき、目の前の商品のPI値を実際に電卓で計算し、売れ筋(重点商品)を見つけ出し、その商品を絶対に欠品させないようにすることである。これがPI値の最初に取り組むべき実践論である。PI値を勉強したら、これだけで良い。まず、これをすぐに売場で実践することである。PI値の最大の特徴は、売れ筋(重点商品)を見つけ出すことにあり、しかも、誰でも、POSデータと電卓さえあれば、売れ筋(重点商品)を自ら、しかも、簡単に見つけ出すことができるからである。

   たまたま、1/20の日経MJに書籍取次のトーハンの記事がのっていたが、まさに、書籍のPI値の実践論である。記事の見出しは、「POSデータ、追加配本に活用」、「売れ筋の品切れ防ぐ」というものであり、サービス名は、「MVPサプライ」、この夏から書店で本格稼働するという。仕組みは極めてシンプルで、まさに売れ筋(重点商品)に絞ったPOSデータの活用である。PI値という表現はないが、やろうとしていることはまさに、PI値の実践ともいえる内容であり、恐らく、成功するのではないかと思われる。筋がいいからだ。

   記事の中身と、概念図を見ると、まずは、書店から、過去のPOSデータをもらう。これは、事前診断といえよう。ここから、初回の配本部数を提案するという。すなわち、仮説の構築である。記事によれば、出版、書店、取次業界ではここまでは、トーハン以外でも、同様のサービスを実施しているという。今回の「MVPサプライ」はここからが、真骨頂であり、初回配本後のPOSデータを書店からもらい、検証を行う。そして、再度、売れ筋(重点商品)を見つけ出し、トーハンの専用センターから、売れ筋(重点商品)の追加配本を行うというものである。

   この再度POSデータを分析し、追加配本を行うところが味噌であり、従来は、ここの部分は、書店の店員にゆだねられており、店員は日常の業務に追われ、適切な発注=売れ筋(重点商品)を把握し、欠品をさせない追加発注、これができなかったり、逆に、余分に発注をしてしまい、売れ残りが出て、返本につがるケースも多かったという。 

   実際、トーハンでは、昨年1,300店の書店で9,000タイトルの漫画本で同様なサービスを実施した結果、通常の店舗と比べて、売上高の減少率が9ポイント小さく、返品が10ポイント低くなったという。少し、分かりにくい表現であるが、要は在庫が減り、売上げ減少の歯止めがかかったということであろう。今後、トーハンでは、効果があったと見て、順次、文庫本、一般書籍へと、この仕組みを広げてゆくという。

   実にシンプルな仕組みであり、売れ筋(重点商品)に焦点を絞ったPOSデータの活用であり、しかも、追加配本を重視しており、出版、書店、取次業界では、これまで踏み込めなかった領域であるという。  

   話をもとにもどす。実は、このような仕組みは、本来、食品スーパーマーケットでこそ、はじめに作るしくみであり、しかも、本部ではなく、店舗、現場で実践すべきものであると思う。特に、食品スーパーマーケットの商品群の主力部門、生鮮、惣菜、日配は書籍と違い、圧倒的に売れ筋(重点商品)の構成比が高く、ここの品切れをなくすことができれば、極論すれば、それだけで、既存店の売上を押し上げることができる潜在的なパワーがあるからである。グロサリー(食品、菓子)、雑貨は書籍に似ており、今回は、書籍でも効果が確認されたということでもあるので、グロサリー、雑貨でも十分に効果が期待できよう。 

   では、どうすれば売れ筋(重点商品)が把握できるか、それがPOSデータと電卓である。通常のPOSデータをただ眺めていただけでは、売れ筋(重点商品)はわかりにくい。売上げは時間ごとに変化し、日々変化し、店舗ごとに全く違うからである。1日1,000人の店舗では、1,000円以上の売上げの商品が売れ筋(重点商品)といえるが、1日3,000人の店舗では1,000円の売上げは死に筋になってしまう。3,000円を超えてはじめて売れ筋(重点商品)といえよう。せっかくのPOSデータもこれでは十分に活かすことができない。

   そこで、電卓の登場である。売上げを客数(レシート枚数)で割って見るのである。1,000円÷1,000人=1.00円、1,000円÷3,000人=0.33円、3,000円÷3,000人=1.00円、この瞬間に1.00円を超えたものが売れ筋(重点商品)である。したがって、1,000人の客数の場合は、1,000円以上、3,000人の客数の場合は3,000円以上が売れ筋であり、1,000円は売れ筋ではないとなる。さらに、応用問題であるが、販売数量を客数で割る、粗利を客数で割る、在庫を客数で割ると、次々に電卓で計算してゆけば、その商品の本質が見えてくる。また、単品だけでなく、カテゴリー、部門を客数で割れば、単品との関係も見えてくる。

   このように、応用問題はともかくとして、まずは、単純に売上げを客数で割って、PI値、この場合は金額PI値(客単価)を計算し、1円を超えたら売れ筋(重点商品)と決めるところからスタートすれば、まずは、一歩踏み出したといえよう。そして、その商品を最優先で管理、すなわち、フェイス、発注、販促、在庫管理をしてゆけば、それだけで、売場の活性化がはじまる。慣れてきたら、気になる店舗にでかけてゆき、自分の店と比較すると、新たな世界が開かれると思う。まずは、売れ筋(重点商品)を見つけるところから始めて欲しい。

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January 20, 2010

ベルク、2010年2月、第3四半期、増収増益!

   ベルクが2010年2月期、第3四半期決算を12/29公表した。これまで公開された、食品スーパーマーケット業界の2010年度の第3四半期決算を見ると、減益が多い中、ベルクは増収増益と好調な決算となった。その結果であるが、売上高763.00億円(102.47%)、営業利益30.44億円(103.64%:対売上高3.98%)、経常利益32.31億円(105.51%:対売上高4.23%)、当期純利益17.55億円(102.51%:対売上高2.30%)である。売上高、各段階での利益ともに堅調な伸び率となり、増収増益の好決算となった。

   特に、対売上高の営業利益率が3.98%と、食品スーパーマーケット業界の中でも高い数字であり、決算公開企業約50社の前期決算の平均が2.6%であるので、ベルクの数字はトップクラスである。そこで、ベルクの営業利益の構造を見てみると、原価は74.73%(昨年74.91%)と、原価を下げており、消費環境が厳しい中、原価の改善が進んだ。ベルク自身も、「「Low Price & Better Quality」を掲げ、購買頻度の高い商品群の価格強化並びに売場づくりの活性化を推進、・・」、「イオングループのプライベートブランド商品である「トップバリュ」、納得品質・低価格でご提供する「ベストプライスbyトップバリュ」の積極的な拡販を推進、・・」と、コメントしているように、価格訴求を強く推しすすめているが、原価の上昇を抑え、粗利を改善している。結果、売上総利益は、25.27%(昨年25.09%)と0.18ポイント上昇した。

   一方、経費の方であるが、25.39%(昨年24.99%)と、0.40ポイント経費の上昇がみられ、原価は改善できたが、経費は残念ながら、若干上昇している。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は-0.12%(昨年0.10%)と、昨年のプラスから一転、0.12%であるが、マイナスとなった。この-0.12%のマーチャンダイジング力は前期決算公開企業約50社の平均が-0.38%であるので、平均よりは高いが、トップクラスは3.0%以上であり、今後、経費をいかに引き下げられるかが課題といえよう。

   これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が4.12%(昨年3.85%)のり、営業利益4.00%(昨年3.95%)と、増益となり、これに売上高の伸びがあいまって昨対103.64%の営業利益の改善が図れた。ただ、原価は改善されたが、経費の上昇が見られ、結果、依然として、マーチャンダイジング力が伸び悩んでおり、気になるところである。これをその他営業収入でカバーした形であり、今後、さらに、安定的な増益を続けてゆくには、経費の見直し、特に、既存店の活性化、及び、坪売上げの引き上げによる相対的に固定費を引き下げることが課題となろう。

   これに対し、ベルクが増収となった要因を見てみたい。今期、ベルクは、川口差間店(埼玉県川口市、2009年3月)、ベスタ大泉店(群馬県邑楽郡大泉町、7月)、東所沢店(埼玉県所沢市、9月)、さいたま宮原店(埼玉県さいたま市、11月)と4店舗を新規出店しており、合計、62店舗となった。これに加え、既存店3店舗を改装しており、これらの施策が増収に寄与したといえよう。

   そこで、ベルクの財務構造を見てみると、まず、自己資本比率であるが、52.8%(昨年53.1%)と若干であるが下がっている。ただ、決算公開企業約50社の前期決算の平均は40.7%であるので、ベルクはベスト15前後に入るトップクラスの数字である。その中身であるが、負債面を見ると、その主要項目である有利子負債は120.88億円(前期決算時114.56億円)と、若干増加しており、総資産540.87億円の22.34%と、やや財務を圧迫している状況である。

   これに対して、資産面を見ると、出店にかかわる資産、土地、建物、差入れ保証金等の合計は414.40億円であり、総資産の76.61%となった。したがって、自己資本比率から差し引いた出店余力は-23.81%であり、出店構造は負債、特に、有利子負債に大きく依存する状況であり、今後、安定、継続的な新規出店を行ってゆくには、もう一段と有利子負債の削減が経営課題といえよう。

   そこで、今期のキャッシュフローを見てみると、投資キャッシュフローは-34.77億円であり、この中でも、新規出店関連の有形固定資産の取得による支出、差入れ保証金の差入れによる支出の合計は-42.26億円と、ほぼすべてであり、積極的な投資がなされている。これは、現在、62店舗であるので、1店舗当たりの出店にかかわる資産は逆算すると6.68億円であるので、単純に店舗数に換算すると6.3店舗であり、ほぼ、10%の店舗数の増加を目指しているといえよう。問題は、この原資が営業キャッシュフローで賄われているかであるが、営業キャッシュフローは38.37億円であり、結果、フリーキャッシュフローは3.6億円のプラスとはなったが、財務キャッシュフローを見ると、新たに有利子負債を6.32億円増やしており、わずかではあるが有利子負債の増加が見られる。

   このように、ベルクの2010年2月期の第3四半期決算は増収増益の好決算とはなったが、やや気になるのは、経費増が見られ、増益の要因はその他営業収入に負うところが大きいところである。また、出店構造も、依然として有利子負債に依存する構造となっており、今後、安定、継続的に新規出店を果たしてゆくには、もう一歩、財務改善を行い、出店余力を高めたいところであろう。そのためにも、営業キャッシュフロー、特に、マーチャンダイジング力の改善が当面の最優先課題といえよう。ベルクが今後、どのようにマーチャンダイジング力を改善してゆくかに注目したい。

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January 19, 2010

アークス、200店舗体制へ、成長戦略にシフト!

   北海道のアークスが2010年2月期、第3四半期決算を1/14に公表した。決算結果は、売上高1,933.38億円(102.19%)、営業利益61.02 億円(100.82%:売上対比3.15%)、経常利益66.10億円(99.13%:売上対比3.41%)、当期純利益35.00億円(91.62%:売上対比1.81%)となり、営業段階では増収増益となったが、経常、当期純利益はわずかに減益となる決算となった。今回の第3四半期決算は、2009年3月1日から、11月30日までの9ケ月間であり、10/30付けで、吸収合併した東急ストア(現、東光ストア)28店舗の売上げは約1ケ月分のみであるので、B/Sには反映されているが、P/Lにはほとんど反映されていないので、売上高へのプラスの影響が十分に表れていないといえる。したがって、売上高102.19%という数字であるが、店舗数は174店舗から202店舗(116.09%)と、一気に200店舗を超え、北海道では最大規模の食品スーパーマーケット、そして、流通グループとなった。

   今後、1年間は売上高は大きく伸びることが予想され、アークスは成長軌道に乗り始めたといえよう。また、今期はこのM&A以外にも、フクハラ別海店(2009年3月)、スーパーアークス長都店(4月)、スーパーアークス伊達店(11月)の3店舗の新規出店しており、新規出店も堅調であり、今後、M&Aと新規出店とのバランスの良い成長戦略がはかられてゆくものと予想される。そこで、通期予想であるが、売上高2,750.00億円(108.3%)、営業利益90.50億円(105.5%:売上対比3.29%)、経常利益98.00 億円(104.5%:売上対比3.56%)、当期純利益53.00億円(106.6%:売上対比1.92%)と、増収増益の予想であり、この第3四半期を大きく上回る好決算の予想である。

   さて、ここで、この第3四半期のアークスの営業状況を原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが、77.37%(昨年77.47%)と、昨年よりも原価の改善が進んでいる。アークス自身は、「ビッグハウスを中心に低価格業態に更なる磨きをかけるとともに、グループ統一カードの外部企業との連携拡大によるカード機能の拡充を図るなど、「革命的な価格」にチャレンジする取り組みと顧客サービスの充実を図ってまいりました。・・」とコメントしているように、カード戦略と価格政策を全面に押し出している。それにもかかわらず、今期、原価も改善したことにより、価格政策と原価改善と相反する課題を解決しており、よりマーチャンダイジングが強化されたといえよう。結果、売上総利益は22.63%(昨年22.53%)となり、0.10ポイント粗利が改善した。

   一方、経費の方であるが、19.46%(昨年19.32%)と、0.14ポイント上昇しており、経費の方はわずかではあるが、上昇がみられる。結果、差し引き、マーチャンダイジング力であるが、3.17%(昨年3.21%)と、0.04ポイントとわずかに減少したが、ほぼ昨年と同じ数字であるといえよう。アークスの場合はその他営業収入が0計上であるので、これに、売上の伸びが加わり、結果、営業利益は増益となった。原価は改善できたが、経費がやや上昇し、マーチャンダイジング力が若干下がったが、この厳しい消費環境の中で原価が改善できたことは大きいといえよう。

   一方、財務面であるが、この第3四半期決算は先に述べたように、東急ストア28店舗が吸収合併されたために、資産、負債が増加し、自己資本比率を下げる結果となった。今期の自己資本比率は50.6%(昨年59.8%)と、約10%弱下げているが、これが、M&Aの影響といえよう。その中身を見てみると、純資産は615.74億円(昨年594.54億円)と若干の伸びであったが、総資産が1,216.93億円(昨年993.470億円)と大きく増加し、結果、負債が増えたことが大きい。その大部分は、東急ストア28店舗のM&Aによる資産、負債の増加に負うところが大きいといえ、このM&Aによる純資産、すなわち、当期純利益の効果がでるまでには、もう少し、時間がかかるといえ、当面、財務面ではM&Aの圧迫が続くといえよう。ただ、アークスのノウハウが導入され、収益を生み出すようになれば、利益は改善し、自己資本比率も大きく改善することになろう。

   一般的に、M&Aの場合は今回のアークスのように、P/Lへの効果は比較的即効性があるが、B/Sへの効果は一時的に資産、負債が膨れ、財務が悪化することが多い。アークスも、もうしばらく、財務の動向を見極める必要があろう。実際、今期の資産に関しては、有形固定資産が約100億円、負債面では有利子負債が同様に約100億円増加しており、これ以外にも、様々な資産、負債の増加が見られ、自己資本比率が下がっている。

   このように、今期のアークスは東急ストア28店舗をM&Aしたことにより、北海道で最大規模の食品スーパーマーケットとなり、一気に成長路線にのったといえよう。今後、約1年に渡って、昨対でみると高い成長を達成し続けることになろう。ただ、一方で、財務面が厳しい状況になっているが、これも、時間とともに、買収した店舗にアークスのノウハウが移植され、収益を生み出すようになると、財務面の安定化も徐々に図られて行くことになろう。今後、北海道最大規模の食品スーパーマーケットとなったアークスが来期、どのような経営戦略を打ち出すか、注目である。

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January 18, 2010

マックスバリュ東海、急成長、財務バランスを崩す!

   企業が急成長を遂げる時、それに伴い、財務の健全性も同時に保たれれば、企業経営は安泰であるが、往々にして、急成長と財務とはバランスがとれず、財務の健全性が崩れることが多い。1/7、マックスバリュ東海が、2010年2月期、第3四半期決算を公表したが、まさに、急成長と財務の健全性がアンバランスとなり、大幅な増収とはなったが、これまでの健全な財務状況のバランスが崩れ、減益、自己資本比率も大きくダウンと厳しい決算となった。

   実際の第3四半期の決算数字であるが、売上高1,044.27億円(114.60%)、営業利益20.81億円(63.38%:売上対比1.99%)、経常利益20.84億円(62.58%:売上対比1.99%)、当期純利益8.51億円(73.48%:売上対比0.81%)となった。また、自己資本比率は60.4%(昨年69.5%)と、大幅に下がっている。純資産は360.37億円(昨対100.53%)と、わずかに上昇しているが、それ以上に、総資産が596.23億円(昨対115.58%)と大きく上昇しており、財務のバランスが崩れた要因は急激な資産の増加にあるといえる。

   実際、キャッシュフローの状況を見ると、投資キャッシュフローが-98.19億円(昨年-55.48億円)と、約40億円強増加しており、多額の投資をしている。その中身であるが、-81.69億円が有形固定資産の取得による支出であり、まさに、新店、M&Aでの店舗への投資である。マックスバリュ東海の店舗数は、2008年2月期61店舗、2009年2月期74店舗、そして、2010年2月期第3四半期88店舗と、急激に店舗数を増加しており、この増加した店舗数が資産として膨れあがっており、その分をカバーするだけの純資産の増加、すなわち、営業キャッシュフローが確保できなかったため、財務のバランスを崩したといえよう。

   その営業キャッシュフローであるが、33.91億円(昨年57.16億円)と、約20億円強減少している。その要因を見ると、当期純利益が16.20億円(昨年25.34億円)と、約10億円弱減少しており、これが最大の要因である。したがって、差し引き、フリーキャッシュフローは-64.28億円(昨年1.68億円)と、昨年の順流から一転、逆流、しかも大幅なマイナスとなり、キャッシュ不足となった。

   したがって、このマイナス分を財務キャッシュフローか、現金を取り崩して補うことになるが、財務キャッシュフローを見ると、3.19億円と、わずかなプラスであり、しかも、10.00億円の有利子負債を増加させている。前期決算は無借金経営であったので、ここで、10.00億円であるが、有利子負債が発生したことになる。したがって、フリーキャッシュフロー-61.28億円を財務キャッシュフローでカバーできず、結果、現金を取り崩すことになり、-61.08億円の現金が取り崩されている。これまで、マックスバリュ東海の現金は前期決算時123.19億円、昨年の第3四半期決算時は152.21億円であり、今期は55.11億円となり、大幅に現金が減ったことになる。

   マックスバリュ東海は、前期決算時は食品スーパーマーケット業界の中でも、極めて健全な財務状況であり、決算公開企業約50社の中では、自己資本比率はヨークベニマル79.0%、オオゼキ77.3%についで、3位、現金も100億円を優に超え、総資産比率でもベスト5に入り、無借金経営であった。それが、今期の第3四半期決算では、先にキャッシュフローで見たようにバランスを崩し、依然として、決算公開企業約50社の中では平均以上ではあるが、大幅にランキングを下げており、気になるところである。

   今後、マックスバリュ東海が、財務を改善してゆくためには、急激な成長路線を一端見直し、既存店の活性化に経営資源を集中させ、営業キャッシュフローを充実させることが先決であろう。そこで、営業キャッシュフローの源泉といえる商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力を見てみると、原価は74.71%(昨年74.53%)となり、原価がわずかであるが、上昇している。結果、売上総利益は25.29%(昨年25.47%)である。少し気になるのは、今期は、イオンのトップバリュ、ベストプライスを昨年以上に強化しており、売上構成比も9.2%(昨年7.3%)と、順調に伸びているが、原価を押し下げるまでにはいっていない点である。当然、残り90%強を占めるNBに原因があるといえ、今後、PB強化だけでなく、NBの改善も課題といえよう。

   一方、経費の方であるが、25.17%(昨年23.75%)と、1.42ポイント増加している。これは、特に、既存店が94.3%と伸び悩んだことが大きいといえ、結果、相対的に固定費が重くのしかかったものと思われる。したがって、差し引き、マーチャンダイジング力は0.12%(昨年1.72%)と、大きく減少している。原価、経費双方が減少したため、マーチャンダイジング力が厳しい結果となったといえよう。

   このように、マックスバリュ東海は昨年までの健全な財務が急激な成長により、バランスを崩し、キャッシュフローが順流から逆流になり、新たに借入を行い、さらに、現金を大きく取り崩し、結果、自己資本比率を下げる結果となった。また、これまで、順調であったマーチャンダイジング力も消費環境の急激な悪化により既存店の落ち込みが大きく、原価、経費双方が上昇し、大きく減少しており、営業キャッシュフローも減少している。まずは、成長戦略を見直し、マーチャンダイジング力を強化し、既存店の活性化が急務といえよう。この決算結果を受けて、今後、マックスバリュ東海がどのような経営戦略を打ち出すか注目である。

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January 17, 2010

ポイントカードって何だ、その本質は還元!

   ポイントカードの歴史は古く、食品スーパーマーケット業界では少なくとも20年前には主要食品スーパーマーケットでは導入が検討され、その後、急速に広がっていった。ただ、当時は、ポイントカードよりも、スタンプの方が中小食品スーパーマーケットでは主流であったといえる。その後、長らく、ポイントカードとスタンプとが拮抗していたが、この10年ぐらいで、スタンプとポイントカードが融合するなど、ポイントカードの優位性が増し、現在では、ポイントカードが食品スーパーマーケットの販促手段の有力な手法としての地位を確立したといえよう。また、ポイントカードは航空会社のマイレージ、家電量販店の破格のポイント還元、ICカードの普及等とあいまって、最近では、さらに政府までがエコポイントを発行するなど、日本のあらゆる生活シーンに普及、定着しており、ポイントカードは日本人の生活の一部となったといえよう。

   では、いったいポイントカードって何だろうか。現象面から見ると、ポイントカードは極めて単純であり、ポイントカードを通じて何かを買えば、その何%かが、購入者個人にポイントで還元されるというものである。ここでのキーワードは還元とポイントである。通常、食品スーパーマーケットでは、還元という概念はない。あるのは、値引きである。ディスカウントである。ある商品に対して、通常価格よりも、何%か値引きをし、価格をディスカウントすることが値引きである。商品に対して、値引きがされるのであり、顧客に対して値引きがされるわけではない。ある特定商品は値引きがされるが、それ以外の商品は値引きがされない。したがって、顧客が購入する商品は値引きがされる商品と値引きがされない商品とが混在し、値引きのメリットを享受できる顧客もいれば、享受できない顧客もいる。

   これに対して、還元は根本的に違う。商品に対して値引きされるのではなく、顧客に対しての値引き、すなわち、還元である。売上げの一部を顧客にもどすことが根幹にある。したがって、ポイントカードで買い物をすれば、買上金額の一部がその顧客個人に還元されることになる。これは、会計的に考えても、同様な違いがあり、値引きは商品売上げにかかわる問題であり、P/L上で処理すべきものであるが、還元は、P/L上ではなく、B/S上の問題であり、ポイントは顧客への負債として処理すべきものであるといえる。本来顧客に還元すべきポイント分の金額をポイントが使用されるまで、企業が債務として持ち、使われた時点で顧客にその金額を無利子で返済するというものであり、値引きと還元は全く違う性質のものであるといえよう。

   このような観点でポイントカードを見ると、ポイントカードの食品スーパーマーケット側からの戦略の違いが明確になる。すなわち、顧客への還元をどのように企業として位置付けるかにより、ポイントカードに対する企業の姿勢が鮮明になるということである。通常、ポイントカードに付随する現象面の違いは、ポイント還元率、ポイント交換率、ポイント交換額、ポイント交換期間、ポイント交換条件等がある。それぞれ見てみると、ポイント還元率は購入金額の何%であるかである。食品スーパーマーケットでは、0.5%から1.0%ぐらいの差がある。ポイント交換率は1ポイント何円で交換するかという、交換レートである。これも食品スーパーマーケットでは1ポイント0.5円から1.0円ぐらいの差がある。ポイント交換額であるが、これは、いくらたまったら交換可能であるかであるが、これも食品スーパーマーケットでは500円、1,000円、10,000円、まちまちである。ポイント交換期間であるが、これも、1年から無期限までさまざまである。そして、ポイント交換条件であるが、これは、キャッシュか商品、あるいは商品券かなどである。これ以外にもいろいろあるが、主にこの5つが、食品スーパーマーケットにより、千差万別であるのが実態である。

   では、なぜ、このような違いが生じるかであるが、それがポイントカードを食品スーパーマーケット側がどう企業戦略に位置づけているかの違いといえる。顧客へどのくらい還元できるか、その経営判断の違いにあるといえよう。特に、これはポイント還元率、ポイント交換率に強く表れるといえ、食品スーパーマーケットでも0.5%から1.0%と2倍も違ってくるが、通常、1.0%の場合は経費比率が高い食品スーパーマーケットでは不可能な数字であり、この1.0%を実現するには、あらゆる経費を削り、還元に経営資源を振り向けられる戦略的な取り組みが必要といえる。同様に、ポイント交換率も1ポイント1円か1ポイント0.5円で大きく違い、1.0%、1.0円から0.5%、0.5円まであるが、その差4倍となり、1.0%、1.0円を実現するには、経費の削減だけでなく、B/S、負債面を整理する必要がある。負債比率の高い食品スーパーマーケット、すなわち、自己資本比率の低い食品スーパーマーケットでは不可能な戦略といえる。同様に、その他の政策にも順次波及してくるが、これらを考慮すると、還元を経営戦略の優先課題と位置付けないかぎり、小手先の手法では顧客にとって満足のできるポイントカードを実現することは不可能である。

   さらに、最近では、還元そのものをどう深めるかも、ポイントカードとして大きな違いになりつつある。これは、還元を企業の根幹に位置付けた場合、自然、顧客一律の還元から、顧客個人個人への個別還元の方がより、還元の本質に迫るものであるといえ、この部分に踏み込もうとする動きである。これが、いわゆるID-POSへとつながってゆくが、これを実現するには、さらに、企業経営そのものを根本的に見直さないと難しいといえる。恐らく、ここまで考えつくされ、企業経営を見直した後のポイントカードは最強のポイントカードとなろう。

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January 16, 2010

流通の覇王、小説「スーパー」戦争を読む!

   久しぶりに、経済小説を読んだ。ひょんなきっかけで、流通の覇王、小説「スーパー」戦争(大下英治著、光文社文庫)を知り、読んでみた。小説といっても、流通業界の実話をベースにしており、主人公も明らかにダイエーの創業者、中内功氏がモデルである。また、当時の中内功氏と覇を競ったイトーヨーカ堂の伊藤雅俊氏、西武百貨店の堤清二氏と思しき人物も登場し、ダイエーが破竹の勢いで、成長していた当時の流通業界の激しい競争の時代が背景となっている。特に、本書の中でも再三登場する言葉であるが、「Cut Throat Competition:カット・スロート・コンペティション(喉をかっきるような激烈な競争)」がぴったりの、スーパー戦争を題材にした小説である。

   余談だが、後半の部分の一節であるが、「「トーキョー堂」の加東義郎にも誠一という長男がいる。誠一は、奇しくも、鳴門と長男賢と慶応大学商学部の有名ゼミである、村西ゼミの卒業生である。」というところがあり、明らかに、私も教えを請うたゼミ、村田ゼミのことであり、この小説の中の鳴門賢氏も、加東誠一氏も顔が浮かび、ドキリとした。小説とはいえ、あまりにリアルであり、登場する人物、社名、地名、年代、すべて特定できる内容であり、ここまで、活字にしても良いのかと思った。

   さて、小説の内容であるが、6章構成となっている。第1章が敵地へ乗り込め、第2章が新しきライバルとの対決、第3章がデパート界への進出、第4章が関西への殴り込み、第5章が銀座デパート戦争、第6章が新たな挑戦へ、である。全体を通じて、レインボー(ダイエー)、南部ストア(西友)、トーキョー堂(イトーヨーカ堂)の3つ巴の日本全国での覇権争い、特に、所沢、藤沢、津田沼、札幌、三国、堺、そして、銀座でのCut Throat Competitionに焦点が当てられており、当時の状況を知る上で、貴重な参考文献のひとつといえよう。

   この小説は、1984年6月に徳間書店より刊行された作品を、著者、大下英治氏が加筆修正し、新たに書き下ろし部分を付け加え、初版が1995年に、光文社より発行されている。したがって、ベースは約30年前の流通業界ではあるが、最後の章、「第6章、新たな挑戦」では、ウォークランド(リクルート)の買収の話が入っており、これは、1992年のことであるので、この返までの中内功氏の時代がカバーされた内容であるといえよう。したがって、その後、2000年前後からはじまるダイエーの衰退、2005年9月の中内功氏が亡くなる時の内容は入っておらず、創業からダイエーのピークまでの中内功氏の生きざまをモデルにした流通小説といえ、まさに、流通の覇王というタイトルに相応しい、躍動感あふれる小説である。

   この小説の中でも特に、「第1章、敵地へ乗り込め」、は流通の覇王の全体を象徴している章といえる。冒頭の部分が、埼玉県所沢市へダイエーが関西からのりこむ内容であるが、この所沢はまさに西武王国の本丸であり、当時、東の雄、西友と、西の雄、ダイエーが真っ向からぶつかることになる。その場面をダイエー側からの描写と西友、そして、西武グループからの描写と、双方から描いており、心理戦、いやがらせ、強引な突破あり、当時、このような大戦争が繰り広げられていたかと思うと、小説とはいえ、びっくりである。実際のダイエー、所沢店は1981年11月にオープンしているので、ちょうど、この当時、いまから、約30年前のことであるが、改めて、現在の所沢の状況を見ると、感慨深いものがある。本書では、ダイエー所沢店のオープンの描写は、「第4章、関西への殴り込み」の章の中で取り上げられるが、これを見ても、ダイエー所沢店はまさに、ダイエーの関東への参入の象徴的な出来事であったことがわかる。

   また、第1章では、この所沢以外でも、むしろ、メインに取り上げられているのがトーキョー堂(イトーヨーカ堂)との、富士見市戦争(藤沢)である。ここでは、ほぼ、オープン日が重なったため、オープン日の探り合いからはじまり、ちらし対策、当日の特売合戦、オープン日に調査部隊を送り込んでの1円を競う激しい価格競争、虚々実々の駆け引き、心理戦が双方から描かれていて、迫力がある展開である。

   これ以外にも、全国各地で繰り広げられてゆくレインボー(ダイエー)の覇権をめぐっての戦いが余すところなく描いてゆく。特に、後半の部分では、ボヌール・ジャポン銀座(プランタン)の銀在デパート戦争の詳細も細かに描かれ、小説とはいえ、当時の流通戦争の実態が浮かび上がり、いまでは考えられない、まさに、Cut Throat Competitionであったといえる。

   このように、本書、「流通の覇王」は、ダイエーの創業から、ピーク時までの、中内功氏をモデルにした流通戦争、Cut Throat Competitionをテーマにした小説であるといえる。当時の状況、まさに、日本の流通業界の歴史と実態を知る上で、小説ではあるが、貴重な文献のひとつといえよう。すでに、当時のダイエーは生まれ変わり、再生途上であり、中内功氏もすでに亡くなっているが、その上に、今日の日本の流通業があると思うと、感慨深いものがある。ただ、現在の覇王を探すとするといったい誰なのか、また、今後の覇王は誰になるのか、流通業界もまさに未知の世界に突入したといえよう。

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January 15, 2010

NHK、クローズアップ現代、1/13、消費者つかむ新戦略!

   NHKのクローズアップ現代、1/13で、「激安に異変?消費者つかむ新戦略」と題し、食品スーパーマーケットを真正面から取り上げた。サブタイトルでは、「デフレに陥り、消費不況に直面している小売業界。今、商品の種類を豊富にするなど価格以外の特徴を出し、客の心を掴むスーパーが注目を集めている。その最前線に迫る。」というものであり、ハローディ、オギノ、オオゼキについて取り上げていた。それぞれ、テーマが絞られており、ハローディは品揃え、オギノはID-POS、オオゼキは人間力であるが、その本質は、優良顧客(ロイヤルカスター)へのきめ細かな対応により、顧客の心をつかむことが、デフレ克服の決め手であるという結論であったように思う。

   番組冒頭のナレーションで、NHKの国谷キャスターが、「安売りではない、次の一手を打ち出したスーパーに客が集中している、・・」と解説し、さらに、「従来のビジネスモデルにこだわらないスーパー、・・」、「ものが売れない時代に消費者の心をつかむ戦略、・・」等、重要なキーワードが語られ、番組がスタートする。特に、国谷キャスターが消費者物価指数のグラフを示し、デフレの中で、売上げをのばしているスーパーがあると紹介し、冒頭にあげた3社が紹介されてゆき、合間合間で国谷キャスターからゲストの中央大学ビジネススクール教授の中村博氏へのインタビューが入るという番組構成である。

   はじめに登場したのが、ハローディであり、テーマは圧倒的な品揃えである。事例として紹介されたが、味噌500種類、しょうゆ500種類であり、その映像が流れるが、確かに圧倒される品揃えである。ハローディでは、客が欲しいという商品をすべてそろえるという。毎月、500商品の要望が寄せられ、通常1週間以内に入荷されるという。番組では、バイヤーが通常、店では売られていない宅配の商品を顧客が欲しいと要望を出し、それにこたえるシーンもあり、いかにハローディが、顧客の声に耳を傾けるかを追っていたが、確かに、徹底しているといえよう。

   番組は切り替わり、次に、登場するのが、オギノであるが、テーマは、客層ごとに店舗の品揃えを変えるというものである。オギノは以前からポイントカードを導入していたが、番組では、客が大幅に減り、特に、買上点数が減ったという。そこで、ポイントカード戦略を転換、ついで買いを増やすために、ポイントカードの購入履歴を調べ、顧客の好みに応じた品揃えを店ごとにしてゆくという対応をはじめたという。その結果、番組の中では、すぐ食べられる商品をよく買う顧客が多い店舗では、惣菜が良く売れるが、そのようなタイプの店で思い切っておでんを大量陳列してみたという。その結果、おでんが良く売れるようになり、これまでの30個平均から150個も売れるようになったという。惣菜のついでにおでんを買ってもらうという、ついで買いの新戦略であるという。

   ここで、番組はスタジオにもどり、国谷キャスターから、中央大学ビジネススクール教授、中村博氏へのインタビューがはじまる。その中で、中村教授が語っていたハローディに関して、なぜ、品揃えが大事かという点について、店に要望を出す顧客は優良顧客(ロイヤルカスタマー)であり、通常、小売業では3割の顧客が7割の売上げをつくるというが、その3割の顧客の要望すべてに答えているのがハローディの強さだという。一見、在庫が増え、利益がでないように思えるが、優良顧客をつなぎとめる最良の戦略のひとつというような趣旨のコメントであったと思うが、ズバリだと思う。

   実際、ID-POS分析を行うと、優良顧客と売れ筋は一致しないケースの方が多く、むしろ死に筋に優良顧客の支持の高い商品が見つかることが頻繁であり、ハローディの品揃え戦略は、中村教授が指摘するように、まさに、優良顧客へ焦点を当てた品揃え戦略であるといえよう。だから客数が増え、同時に客単価、金額PI値もアップするといえよう。

   3つ目の事例がオオゼキであったが、オオゼキのケースは人間力に焦点が当てられていた。少しわかりにくかったのが、1平方メートル当たり、通常のスーパーの5倍の売上げがあるとはじめに紹介されるが、それと人間力との関係がいまひとつわかりにくかった。オオゼキの坪売上げが高いのは、都心部の人口密集地に通常の食品スーパーマーケットの1/3の小型店舗を展開していることが最大の理由である。仮に店舗面積が通常の食品スーパーマーケット並みとなった場合は、いくら正社員を増やしても、店独自の仕入れをしても、坪売上はあがらないからである。坪売上げは原則店舗面積に反比例し、オオゼキはまさに、あの品揃えとあの客数ではありあえない限界に近い小さな店舗面積であり、結果、異常な坪効率となるのが実態といえよう。

   むしろ、オオゼキを取材するのであれば、オギノとはまた違ったポイントカードの活用がはじまっており、そこに焦点をあててもよかったように思う。オオゼキは、ハローディに通じる優良顧客への対応を会社をあげて取り組みはじめており、最近では、ポイントカードの購買履歴から、独自に定義した優良顧客の大切さを実証している。そして、そのための戦略商品がPI値No.1の青果であり、そこに、店別仕入れを採用し、社員の力を存分に引き出している点を強調したらもっと本質に迫れたように思う。それにしても、入社8年目で、青果部門No.2になった近藤さんのがんばりにはびっくりである。

   今回の番組の共通点はいずれも優良顧客(ロイヤルカスタマー)であり、3社とも、ここに焦点を当てた取り組みに、結果として、経営資源を最大限に投入し、様々な対応をしているといえる。改めて、これまでの商品戦略最優先の時代が、顧客に立脚した、優良顧客を大切にする新たな仕組みづくりの時代に入り始め、デフレがそれを押し上げているように感じる。ID-POSの時代が予想よりも早く動きはじめたようだ。

Special thanks to Fukaisan!

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January 14, 2010

サンエー、2010年2月期、第3四半期決算、増収増益!

   沖縄のサンエーが1/7、2010年2月期の第3四半期決算を公表した。サンエーは、2009年2月現在、沖縄商圏で食品スーパーマーケット60店舗、外食レストラン16店舗、ホテルペンション2店舗を展開し、特に、食品スーパーマーケットは、SC、NSC、SM、小型SMと多業態を展開している流通業である。業種別売上高は、同じく、2009年2月期現在、食品689億円(売上構成比55.67%)、衣料品150億円(12.12%)、住居関連用品342億円(27.63%)、外食55億円(4.44%)、ホテル1.5億円(0.12%)である。その第3四半期決算の結果であるが、営業収益1,012.80億円(104.41%)、営業利益65.57億円(102.95%:営業収益比6.47%)、経常利益66.69億円(101.70%:営業収益比6.58%)、当期純利益36.59億円(94.64%:営業収益比3.61%)と、当期純利益は減益となったが、営業利益、経常利益段階では増収増益となる好決算となった。

   サンエーはこの営業収益比で見ても6.58%というオオゼキにつぎ決算公開企業約50社の中ではNo.2の高収益な食品スーパーマーケットである。これを営業利益の状況、原価、経費面から見てみると、原価は69.61%(昨年69.84%)であり、売上総利益は30.38%(昨年30.16%)と、何と30%を超え、決算公開企業約50社ではNo.1、食品スーパーマーケット業界では限界に近い粗利である。これだけ、高い粗利がとれる背景には、以前、サンエーが公開した数字をもとに計算してみると、先に見たように、食品(推定粗利28%弱)だけではなく、食品を超える粗利の高い商品群を事業展開していることが大きい。たとえば、衣料品は推定粗利35%(相乗積約4.2%)、外食、ホテルは何と推定粗利65%(相乗積約3.0%)となり、この2部門の粗利構成比(相乗積)は、極めて高いことがわかる。

   一方、経費であるが、26.80%(昨年26.33%)となり、今期は経費が0.47ポイント上昇している。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は3.58%(昨年3.83%)と0.25ポイント下がっており、商品売買から得られる利益は厳しい状況である。原価は改善できたが、経費が上昇しており、利益を圧迫したといえよう。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が3.08%(昨年2.93%)のり、結果、営業利益は6.66%(昨年6.76%)と、この段階、すなわち、率ではわずかに減益である。ただ、売上高が104.26%伸びたので、営業利益高では、増益となった。

   こう見ると、サンエーの高収益の背景には、その他営業収入と粗利構成比の高い衣料品、ホテル、外食の貢献度が極めて高く、これらの利益が主力の比較的粗利の低い食品の利益を押し上げており、高収益を達成していることがわかる。同時に、これらの利益が食品、住関連用品の価格競争の原資ともなっているといえ、企業全体としての競争力を増しているといえよう。

   これに対して、財務面であるが、今期の自己資本比率は69.7%(昨年64.8%)と、さらに上昇し、極めて高い数字である。決算公開企業約50社の2009年度決算の数字を見ても、自己資本比率(純資産比率)69.7%以上の食品スーパーマーケットはヨークベニマル79.0%、オオゼキ77.3%のみであり、いかに高い数字であるかがわかる。ちなみに、平均値は40.7%である。その要因であるが、負債約30%の中で、有利子負債は、わずか31.19億円であり、これは総資産792.55億円の3.93%と、いつでも、無借金経営が可能な状況であり、極めて健全な財務状況である。

   したがって、出店戦略も自己資本の範囲内で可能であり、出店にかかわる資産、土地、建物、敷金・保証金等の合計は493.58億円と、総資産の62.27%となり、自己資本比率から差し引いた、出店余力は7.43%とプラスとなり、負債に負うことなく、新規出店が可能な状況である。ちなみに、サンエーの1店舗当たりの出店にかかわる資産を単純に計算すると、6.32億円であり、SC、ホテル等がある分やや重い数字であるが、出店余力は高い。

   そこで、今期の投資キャッシュフローで、出店関連の数字を見てみると、投資キャッシュフローは-14.93億円、内、出店にかかわる資産へは-15.53億円投資しており、これは単純計算で2.4店舗の出店となり、堅実な新規出店戦略であるといえよう。少し気になるのは、営業キャッシュフローであり、今期は10.01億円(昨年109.03億円)と大きく減少していることである。これは、当期純利益、減価償却費は合計85.34億円(昨年82.89億円)と増加したが、金融機関と決算日との関係もあり、仕入れ債務が昨年の62.88億円から今期は一転-30.48億円と、その差93.36億円と巨額な金額が発生したためである。四半期決算では、金融期間との関係で、仕入れ債務は大きく動くが、まさに、この四半期は巨額な金額が入れ替わった形である。

   結果、フリーキャッシュフローは-4.92億円となり、財務キャッシュフローの-10.89億円と合わせ、キャッシュは-15.81億円の減少となった。結果、現金は142.42億円となり、決算時の158.23億円よりもわずかに減ったが、食品スーパーマーケット決算公開企業約50社の中ではオーケーにつぐ現金保有高であり、総資産対比20%近い数字であり、潤沢な現金を確保している。

   このように、サンエーの決算は増収増益とはなったが、昨年と比べ、やや経費の上昇が気になるところであるが、売上げの増加もあいまって、営業、経常段階では増益となり、好決算となった。また、財務面では、金融機関と決算日との関係で営業キャッシュフローが大きく減少したが、トータルの現金はわずかな減少にとどまり、現金は依然として潤沢な状況であり、自己資本比率も向上し、財務の安定が図れたといえる。出店余力も十分であり、今後、サンエーが、この安定した財務基盤を背景に、どのような経営戦略を打ち出すか注目である。

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January 13, 2010

マルエツ、2010年2月期、第3四半期、減収減益!

   マルエツが1/8、2010年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は、営業収益2,543.54億円(99.33%)、営業利益56.17億円(90.21%:営業収益比2.20%)、経常利益54.28億円(82.53%:営業収益比2.13%)、当期純利益40.59億円(69.69%:営業収益比1.59%)と、減収減益の厳しい決算となった。特に、既存店がここへ来て、厳しい状況になったことが大きかったといえよう。ここ数ケ月のマルエツの既存店の推移を見ると、11月93.4%、10月97.6%、9月97.3%、8月97.2%、7月95.8%であり、この第3四半期の最終月11月度は95%を割り込む厳しい数字となった。

   これに対し、今期の新店であるが、マルエツナリア武蔵浦和店(埼玉県)、ポロロッカ千石店(東京都)、マルエツ金町店(東京都)、マルエツ朝霞溝沼店(埼玉県)の4店舗に加え、都心型のスーパーコンビニ、プチマルエツを3店舗、合計7店舗を出店し、現在249店舗となった。ただ、増収をはかるには、105%で12店舗、110%で24店舗は必要といえ、今後、どのような新規出店戦略を打ち出すかが課題といえよう。

   そこで、マルエツの出店にかかわるB/S、CFを見てみたい。まず、B/Sであるが、マルエツの出店にかかわる資産、土地、建物、敷金・保証金等の合計は921.91億円であり、これは総資産が1,319.95億円であるので、69.84%である。ちなみに、マルエツは現在249店舗であるので、1店舗当たり3.70億円となる。決算公開企業約50社の平均が5.00億円であるので、都心部での出店が多い割には低い数字である。これは、今期もプチマルエツと超小型店舗を3店舗出店したが、249店舗の内、小型店舗がかなりの割合を占めるためであると思われる。

   一方、マルエツの自己資本比率であるが、42.4%(昨年42.2%)と、昨年よりもわずかに上昇したが、決算公開企業約50社の平均40.7%に近い数字であり、トップクラスの70%前後と比べると、低い数字である。したがって、約60%を負債に負う財務構造となっており、差し引き、出店余力は-27.44%である。そこで、負債の状況を見てみると、有利子負債が329.80億円となり、総資産の24.98%となり、ほぼ、出店余力のマイナス分がそっくり有利子負債で賄われている状況である。したがって、今後、いかに有利子負債を削減し、出店余力を引き上げられるかが、出店戦略の鍵を握っているといえよう。

   では、今期のCF、キャッシュフローにおける出店関連の状況はどうかを見てみたい。まず、投資キャッシュフローであるが、-83.10億円(昨年-33.52億円)と、大きく増加している。その中身であるが、出店関連の固定資産の取得と差入れ保証金の合計を見ると、88.73億円(47.86億円)と、積極的な出店関連への投資を行っている。これは、先に見たように、1店舗当たりの出店にかかわる資産が3.70億円であるので、約24店舗となるので、ちょうど110%の店舗数となる。実際にはスクラップもあるので、純増はもう少し低いと思われるが、意欲的な新規出店への投資といえよう。

   問題は、この投資を営業キャッシュフローで賄えているかどうかであるが、営業キャッシュフローは85.92億円であり、差し引き、フリーキャッシュフローは2.82億円とわずかにプラスとなった。ただ、財務キャッシュフロー分が厳しい状況であり、その数字を見ると、15.82億円とプラスになっている。その中身であるが、有利子負債が26.82億円増加しており、これに、配当が-10.89億円、自己株式の取得が-0.10億円となったためである。したがって、実質、有利子負債で投資の一部を賄った形であり、安定的な新規出店を果たしてゆくには、もう一段と財務改善、特に、有利子負債の削減が課題といえよう。

   そこで、その原資となるマーチャンダイジング力をP/Lから見てみえると、原価は
71.69%(昨年72.20%)と下がっており、原価改善が進んでいる。これだけ厳しい価格競争の中、原価の改善が進み、結果、売上総利益は28.31%(昨年27.80%)と0.51ポイント改善した。一方、経費の方であるが、27.95%(昨年27.23%)と、上昇した。これは、先に見たように、既存店が厳しい状況であり、相対的に固定費の上昇が見られたためと思われる。

   結果、差し引き、マーチャンダイジング力であるが、0.36%(昨年0.57%)と、プラスにはなったが、昨年よりも0.21ポイント下がる結果となった。経費の上昇を原価の改善で賄えなかった状況である。これに、その他営業収入が1.89%(昨年1.91%)加わり、営業利益は2.25%(昨年2.48%)と、減益となった。こう見ると、まだ、経費が重くのしかかっており、マーチャンダイジング力がわずかなプラスであり、財務の改善を推し進めてゆくには、マーチャンダイジング力、特に、経費の削減、既存店の活性化が最重要課題といえよう。

   このように、2010年2月期第3四半期のマルエツの決算は減収減益となり、原価は改善できたが、既存店の伸び悩みにより経費増となり、マーチャンダイジング力が下がり、財務改善への原資が十分に確保できず、有利子負債を増加させる結果となった。ただ、出店意欲は旺盛であり、新規出店は堅調に進むものと思われるが、既存店の活性化が課題といえよう。今期も残された期間はわずかであるが、マルエツが、既存店の活性化をどのように進めてゆくか注目である。

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January 12, 2010

レシート(客数)とIDの売上げを考えてみる!

   売上は客数と客単価の掛け算であるが、ID-POS分析に取り組むようになり、売上にはもうひとつ別の世界が存在することが明らかになった。同じ客数、客単価であるが、IDとIDの客単価である。客単価は金額PI値のことでもあるので、数式でいえば、売上=客数×金額PI値であり、もうひとつの世界が売上=ID×ID金額PI値である。ここから、客数も、金額PI値(客単価)も、2つ存在することがわかり、この2つの世界は交わることがなく、パラレルで存在しているのが実態である。なお、IDに対して、従来の客数は、中身はレシートのことであり、すなわち、2つの世界とはIDとレシートの世界のことであるといえる。

   通常のPOS分析では、IDの世界を見ることができないので、もっぱら、レシート(客数)の世界のみの分析となる。どこが違うかであるが、ひとつ例を示すと、バナナの売上げが1,000円であった場合、この時、客数、すなわち、レシートが10枚であった場合、売上=レシート(客数)×金額PI値であるので、1,000円=10枚×(1,000円÷10枚)=10枚×100円となる。これは、1,000円のバナナの売上げはレシート(客数)1枚当たり100円の売上があり、そのレシート(客数)が10枚あるということである。

   この1,000円の売上をIDでみたらどうなるであろうか。ここで、IDを5人とした場合、IDの世界では、売上=ID×ID金額PI値であるので1,000円=5人×(1,000円÷5人)=5人×200円となる。これは何を意味しているかであるが、同じバナナの売上げのIDから見た中身は、5人のIDが平均200円分バナナを購入し、結果、1,000円の売上げになったということである。

   全く、同じバナナ1,000円の売上げであるが、2つの見方が存在するということである。ひとつはレシート(客数)から見たバナナの売上げであり、もうひとつはIDから見たバナナの売上げである。この2つは同時に存在しており、どちらも正しいバナナ1,000円の売上げの分解である。バナナの売上げをレシート(客数)で見るか、IDで見るかの違いである。

   そこで、もう一歩進め、レシートと、IDの関係を作ってみたい。売上=レシート(客数)×金額PI値=ID×ID金額PI値であるので、ここから、ID金額PI値を求めてみると、ID金額PI値=(レシート÷ID)×金額PI値となる。この( )、レシート÷ID=ID客数PI値とすると、この数式は、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値となり、IDとレシートの関係が生まれる。これまで並行して走っていたレシートとIDが交わった瞬間である。これにより、レシートとIDの関係が導かれ、ID金額PI値は金額PI値にID客数PI値を掛けて結ばれることがわかり、ID客数PI値が2つの世界を媒介していることがわかる。このID客数PI値はレシート÷IDであるので、これは、ID当たりのレシート枚数、すなわち、頻度を表しているともいえる。

   これで、さらにレシートとIDの関係がはっきりしたといえる。すなわち、ID金額PI値は金額PI値に頻度を掛けたものであり、レシートの中から同じIDのレシートを集め、集計したものであることがわかる。わかりやすくするために、先のバナナの事例で考えてみる。バナナの売上げは1,000円であった。この時、レシート枚数は10枚、IDは5人であった。したがって、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値であるので、ID金額PI値(1,000円÷5人)=ID客数PI値(10枚÷5ID)×金額PI値(1,000円÷10枚)となり、200円=2枚/ID×100円となり、この数式が成り立っていることがわかる。これは、何を意味しているかであるが、バナナのID当たりの売上げ200円は、バナナの100円のレシートが2枚/IDとなり、結果、1ID当たり200円の売上げとなっているということである。

   すなわち、バナナ1,000円の売上げが上がった場合、今回の事例でいえば、顧客が5人(ID)いて、その顧客が平均2枚のバナナのレシートをもっており、その金額がレシート当たり100円であるということである。したがって、バナナの売上げ1,000円はレシートのみで見た場合、IDのみで見た場合、そして、レシートとIDを融合して見た場合の3つの見方が存在するということである。実際に計算するかどうかは別として、すべての商品において、売上げが1円でもあがった場合は、必ず、レシートから見た売上げ、IDから見た売上、双方を融合させた場合のキー指標、ID客数PI値から見た売上げと3つに分解することができるということである。

   そして、売上げをそれぞれの指標に分解し、それぞれの角度から見ることによって、売上を引き上げるヒントがつかめ、新たな仮説づくりにつながってゆくことになる。同時に、売上げはこの3つの角度から、検証することができ、レシートに問題があるのか、IDに問題があるのか、ID客数PI値に問題があるのかがつかめ、次の一手につながってゆくことになる。

   バナナに戻れば、バナナ1,000円の中身は、ID(5人)、ID金額PI値(200円)、レシート(客数)(10枚)、金額PI値(100円)、そして、ID客数PI値(2枚/ID)の3つの角度、5つの指標が基本であり、これらを数字で検証するかどうかは別として、バナナのマーチャンダイジング改善の仮説を考える上には、思い浮かべて欲しいイメージである。バナナの売上げに変化があった時には、必ず、この5つの指標のいずれかが変化しているはずであり、どの指標改善を強く打ち出すかがマーチャンダイジング戦略そのものといえる。

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January 11, 2010

セブン&アイH、2010年2月期、第3四半期、減収減益!

   セブン&アイHが1/7、2010年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は、営業収益3兆8,161.81億円(88.22%)、営業利益1,706.53億円(78.18%:営業収益比4.47%)、経常利益1,704.46億円(78.59%:営業収益比4.46%)、当期純利益693.48億円(68.21%:営業収益比1.81%)と、減収減益の厳しい決算となった。これに対し、セブン&アイHは、「営業収益は、主に北米におけるガソリン単価の大幅な下落と円高による減収の影響が約3,460 億円あったことにより、・・」とコメントしており、全体の約30%弱の構成比となるアメリカのセブンイレブンの影響が大きかったという。また、営業利益については、「金融関連事業は増益となったものの、主に国内における小売事業が総じて厳しく推移したことにより、・・」とのことで、GMS、百貨店等が特に厳しい状況であったという。

   実際、円高の要因は大きく、昨年が1ドル105.84円に対し、今期は1ドル94.96円であるので、10%以上の円高といえ、コンビニエンスストア事業を直撃している状況である。今期のコンビニエンスストア事業は営業収益が1兆4,924.03億円であるが、北米の営業収益が1兆814.35億円であるので、単純計算で70%以上が北米に依存しており、国内セブンイレブンの営業収益の貢献度はわずか30%弱であるので、円高はセブン&アイHを直撃、特に、コンビニエンスストア事業には大きな影響がでることになる。ちなみに、日本のセブンイレブンの営業収益はフランチャイズからの売上高ではなく、加盟店収入が計上されるので、セブン&アイHのコンビニエンスストア事業は北米の影響が圧倒的に高い営業構造となっている。

   結果、営業収益については、各事業ごとに見ると、コンビニエンスストア事業81.8%(構成比39.10%)、スーパーストア事業94.7%(39.32%)、百貨店事業91.6%(17.55%)、フードサービス事業83.6%(1.72%)、金融関連事業89.4%(2.20%)となった。全事業が厳しい状況にあり、特に、コンビニエンスストア事業が厳しかったといえよう。

   一方、営業利益に関してであるが、まずは、全体を原価、経費面から見てみたい。原価であるが、73.52%(昨年74.69%)と、原価は下がっている。結果、売上総利益は26.48%(昨年25.31%)となり、粗利が改善している。これに対して、経費であるが、33.94%(昨年30.48%)となり、大幅に増加している。今期は、原価の改善は進んだが、経費が大きく上昇し、結果、差し引き、マーチャンダイジング力は-7.46%(昨年-5.17%)と、マイナス幅が拡大した。ちなみに、イオンの今期のマーチャンダイジング力は、-9.72%(昨年-9.15%)であるので、約2%弱マイナスが小さいが、厳しい状況である。これに、不動産収入、物流収入等その他営業収入が12.50%(昨年10.77%)のり、営業利益は5.04%(昨年5.60%)となり、減益となった。それにしても、今期のその他営業収入が12.50%と、食品スーパーマーケット業界では考えられない高い数字であり、改めて、GMS主体の小売業の利益構造の違いがわかる。

   そこで、さらに、事業ごとに、営業利益の状況を見てみると、コンビニエンスストア事業87.9%(構成比86.20%)、スーパーストア事業17.0%(2.30%)、百貨店事業-22.43億円、フードサービス事業-20.46億円、金融関連事業112.66%(13.92%)という状況である。コンビニエンスストア事業に90%近い営業利益を依存する構造になっており、1本足打法となっている収益構造といえる。そのコンビニエンスストア事業が今期は円高の影響を強く受けているので、さらに、厳しい決算となったといえよう。

   これを受けて、キャッシュフローの状況であるが、営業キャッシュフローは2,103.22億円(昨年2,086.69億円)と昨年以上のキャッシュを確保している。投資キャッシュフローであるが、-987.46億円(昨年-727.15億円)と昨年以上の投資を実行している。これは、出店関連への投資が増加したのではなく、有価証券関連の投資の収入が減少したためである。結果、差し引き、フリーキャッシュフローは1,115.76億円(昨年1,359.54億円)と、減少しているが、1,000億円を超えており、順流のキャッシュフローである。ちなみに、イオンのフリーキャッシュフローは-2,156.35億円と、逆流であるので、明暗が分かれた。

   そして、財務キャッシュフローであるが、-1,288.12億円(-1,469.10億円)となり、昨年よりも減少した。その中身であるが、有利子負債の返済-733.89億円、配当-511.12億円等であり、財務の改善へ配分している。結果、有利子負債は7,244.16億円(昨年8,282.33億円)と、減少しており、自己資本比率も48.1%(昨年47.9%)と改善した。結果、トータルのキャッシュフローは-154.95億円(昨年-134.04億円)と、減少したが、現金は6,474.27億円と潤沢な状況である。

   このように、セブン&アイHの2010年2月期、第3四半期の決算が公表されたが、結果は減収減益となる厳しい状況になったが、その主因は営業収益の約40%、営業利益の約90%を占めるコンビニエンスストア事業の北米事業の円高に負うところが大きいといえる。ただ、それ以外の事業も、特に、営業収益の約40%を占めるスーパーストア事業も不振、営業利益にいたっては、百貨店事業、フードサービス事業が赤字という結果であり、全体的にも厳しい決算であったといえよう。消費環境はますます厳しさを増しており、今期、そして、来期へ向けて、今後どのような経営戦略を打ち出すか注目したい。

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January 10, 2010

日経MJ、新製品週間ランキング、クリスマスの結果!

   日経MJの新製品週間ランキングが1/8公表された。今回は、期間が12/20から12/26までの1週間であり、ちょうど12/25のクリスマス期間の結果であり、新製品がクリスマスという一大イベントの中でどのような結果となったかが興味深いところである。実際、各部門のトップクラスの新製品を見ると、クリスマス特有の新製品が上がってきており、今回は、イベントの新製品への影響を見る上で参考になるといえよう。

  まず、あげるべきは、今週、全新製品No.1の金額PI値となった飲料部門、トンボ飲料、ポケットモンスターダイヤモンド&パールシャンメリー360mlであろう。金額PI値795円と、Aランク500円を優に超え、先週比621円アップと、まさに、クリスマスのために投入された新製品といえる。10/26に初登場であり、カバー率も81.2%と、今週の飲料部門トップの数字である。これ以外にも、トンボ飲料は、シャンメリーの新製品が2品入っており、No.3にハローキティシャンメリー360ml、金額PI値198円、No.10にミッキー&フレンズシャンメリー360ml、金額PI値87円である。それにしても、ポケモンの強さが改めて実証されたといえよう。

   このシャンメリー自体がシャンパン+メリークリスマスの造語であり、戦後、進駐軍時代に商品開発されたという歴史があり、まさに、クリスマスの定番となった日本独特の商品であるという。はからずも、それが、このクリスマス期間中の全新製品のNo.1になったわけであり、イベントと商品企画力の勝利といえよう。

   このシャンメリーについては、飲料No.2も齋藤飲料、フレッシュプリキュア!シャンメリー360ml、金額PI値352円であり、ベスト3すべてがシャンメリーとなった。また、No.4もカルピス、ウェルチホワイトグレープスパークリング450ml、金額PI値148円、No.5も日本コカ・コーラ、ファンタワールドニューヨークアップル500mlペットボトル、金額PI値116円であり、いずれも、シャンメリーに近い商品ともいえ、これもクリスマス効果といってよさそうである。したがって、飲料部門のトップ商品は、すべて、クリスマス関連といえ、改めて、クリスマスというイベントが新製品に与える影響が数字で検証されたといえよう。

   これと同様に、クリスマスといえばブーツであるが、菓子部門を見てみると、No.1にイズミクリエーション、カラーブーツ(レッド)お菓子5個入り、金額PI値519円が入った。先週比325円であり、急激な伸びである。全新製品の中でも、2位であり、しかも、Aランクの500円を超えており、高い数字である。ただ、カバー率が23.6%、全国レベルでの導入にはいたっていないといえよう。菓子部門では、No.2、No.3もブーツであり、No.2には明治製菓、ポケモンクリスマスブーツ1個、金額PI値360円、No.3にはハート、フレッシュプリキュア!ブーツ(L)8個、金額PI値330円が入った。特に、明治製菓のブーツはカバー率が82.4%という高い数字であり、ブランド力の力が大きいといえよう。菓子部門では、このベスト3以外にも、ベスト20品の中にブーツが5品入っており、全部で8品と、まさに、菓子部門はクリスマス一色といえる新製品である。

   これ以外の部門でも、クリスマス関連の新製品が目白押しである。その他食品部門では、No.2に山崎パン、クリスマスショートケーキ詰合せ8個が金額PI値243円となった。平均単価2,620円と、まさにケーキである。山崎パンは、No.15にもクリスマス苺サンド5号1個、金額PI値102円、平均単価2,416円が入り、クリスマスにおけるケーキの強さが改めて実証されたといえよう。これ以外にも、No.9にモンテール、手巻きのロールケーキ・いちご1本、金額PI値145円、No.10に第一屋製パン、メリークリスマス!ポケモンシールホルダーセットうずまきデニッシュ2個+シールホルダー1冊+シール1枚が金額PI値144円で入った。

   さらに、バンダイのクリスマス向けキャラクター商品が3品、No.3にキャラデコクリスマス侍戦隊シンケンジャー1台、金額PI値213円、No.7にキャラデコクリスマスフレッシュプリキュア!1台、金額PI値171円、そして、No.8にキャラデコクリスマスポケットモンスターD・P1台、金額PI値166円が入った。その他食品に関しても、クリスマス関連の新製品のオンパレードとなった。

   また、冷凍食品でも、No.1はハーゲンダッツジャパン、ミニカップ・マルチパック6個入り(ビターキャラメル・カスタードプディング・クッキー&チョコレート)75ml+6、金額PI値356円、平均単価668円が入った。先週比金額PI値が198円アップであり、まさに、このアイスクリームはクリスマスにぴったり合った新製品として数字が跳ね上がったといえよう。

   このように、今週の日経MJ新製品週間ランキングはクリスマスの12/25を挟んだPOS分析となったため、クリスマスのイベント効果に強く影響を受けた新製品がトップクラスのランクを占める結果となった。クリスマスケーキ、クリスマス用のアイスクリームを囲み、ブーツを片手に、シャンメリーで乾杯をしている姿が目に浮かぶようである。いかにイベントと新製品の相性が良いかが改めて実証されたといえよう。

   さて、来週は年末年始を挟む1週間である。次回も、どのような新製品がトップクラスを占めるか興味津津である。
 
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January 09, 2010

イオン、2010年2月期、第3四半期、減収減益、その2!

   前回のその1に続き、今回はその2である。イオンの2010年2月期、第3四半期決算、キャッシュフローに焦点を当ててみたい。まず、今回のイオンの第3四半期の決算結果であるが、キャッシュフローにかかわってくる部分は大きく2つ、当期純利益と減価償却費である。これ以外にも、在庫、債権等もあるが、P/Lと直接かかわるのは、この2点がすべてといっても良いくらい重要なキャッシュの源泉である。

   ちなみに、この第3四半期のイオンの営業キャッシュフローは利息、法人税等を抜いた小計で1,315.44億円であるが、当期純利益255.22億円、減価償却費1,082.21億円となり、合計1,337.43億円と、ほぼ小計と一致する。在庫、債権を含め、その他の営業キャッシュフローの項目は相殺され、プラスマイス0に近い数字となっており、実質、当期純利益と減価償却費が営業キャッシュフローの源泉といえる。

   ここで、P/L上では、イオンの第3四半期決算は赤字となっているが、これは、キャッシュフローを計算する時は、純粋な現金の流れを明確にするため、法人税等は込みで見ることに加え、会計制度特有の減価償却費を差し引いて当期純利益を計算するからである。減価償却費はP/L上では費用だが、キャッシュフロー上では、現金が発生しておらず、P/Lの当期純利益の中には、その派生していない減価償却費が費用として差し引かれて計算されるため、キャッシュフロー上の当期純利益ではこれを差し引き、そのマイナス分を新たに、減価償却費として加え、実際のキャッシュの流れを明確にしている。したがって、営業キャッシュフローではP/Lと違い、必ず、新たに計算し直された当期純利益と減価償却費が別途計上され、この2つが、特に食品スーパーマーケット、小売業では重要な営業キャッシュフローの源泉となる。

   さて、イオンの営業キャッシュフローであるが、先に見たように、当期純利益は法人税込み、減価償却費別途となり、+255.22億円であり、別途、減価償却費は1,082.21億円である。小計は1,337.43億円であるが、ここから法人税等を差し引き、トータルの営業キャッシュフローは744.98億円となった。昨年が871.84億円であるので、120億円強、キャッシュが減少しており、今期は昨年以上に苦しいキャッシュといえる。逆に言うと、P/Lでは本当のキャッシュの実態は分からないということであり、今回のようにP/Lでは当期純利益が赤字になったとしても、キャッシュがショートしたとはいえず、キャッシュの動きはすべて、このキャッシュフローにあらわれるということである。

   この営業キャッシュフローを原資に投資がなされるが、その投資キャッシュフローは、-2,901.33億円(昨年-2,071.01億円)と、昨年よりも、さらに投資が増加している。しかも、営業キャッシュフローの約4倍という多額の投資であり、営業段階では大きくキャッシュ不足となっている。その要因は、-2,588.58億円を有形固定資産、すなわち、新規出店関連へ投資したためである。昨年が-2,485.77億円であるので、昨年以上に投資しており、すごい、経営決断、積極的な攻め、強気である。

   当然、営業段階ではキャッシュ不足となるので、その分の資金調達が必要となる。このような資金不足が発生した場合に、一般的には、資本金を増やすか、有利子負債を調達するか、内部留保を取り崩すかということになるが、イオンの場合は、現在、有利子負債が多額に上り、限界に近い金額に膨らんでおり、厳しい状況である。そこで、実際、イオンがどのような決断をしたかであるが、財務キャッシュフローを見ると、2,362.17億円を調達し、内部留保を取り崩すことなく、キャッシュを獲得している。その中身であるが、有利子負債を1,368.95億円返済する一方、長期借入金2,131.63億円、新株予約権付き社債を1,000.00億円発行し、さらに、その他を含め、有利子負債を3,967.59億円調達し、差し引き、2,598.64億円のキャッシュを生み出している。

   結果、現在、有利子負債は1兆4,690.54億円となり、前期決算時が1兆1,946.11億円であるので、さらに、増加している。今期の多額の投資をすべて有利子負債で賄った形である。イオンの現在の総資産が3兆8,932.01億円であるので、有利子負債は37.73%と大きく財務を圧迫しており、結果、自己資本比率は20.5%、昨年の21.9%から、さらに下がり、負債、特に有利子負債が経営に重くのしかかっている状況である。それにしても、財務を大きく圧迫してでも、積極的な新規出店へ大きく舵を切らざるを得ない状況にあるといえ、厳しい経営環境の中、イオンの積極的な成長戦略が強く打ち出された経営決断であるといえよう。

   このように、キャッシュフローでこの第3四半期のイオンの決算を見ると、マーチャンダイジング力が大きくマイナスになり、P/L上では当期純利益が赤字になる中、営業キャッシュフローも昨年よりも減少し、キャッシュが厳しい状況にある。その厳しい状況の中で、敢えて、多額の新規出店への投資を、重く経営にのしかかっている有利子負債を増加させ、財務を圧迫してまでも実施しており、ここは、攻めの経営を貫くという経営決断をしたといえよう。この積極策が、残された後半、そして、来期、イオンの業績を好転させ、経営が安定に向かうのか、予断を許さない状況が続くと思われるが、次の本決算がどのような結果になるか注目である。

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January 08, 2010

イオン、2010年2月期、第3四半期、減収減益、その1!

   イオンが1/7、2010年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は、営業収益3兆7,278.22億円(96.13%)、営業利益560.13億円(84.96%、営業収益比1.50%)、経常利益 541.04億円(79.71%、営業収益比1.45%)、当期純利益-99.26億円となり、減収減益、当期純利益は赤字となる厳しい決算となった。また、自己資本比率も20.5%(昨年21.9%)と、さらに下がり、財務面でも厳しい結果となった。

   イオンは事業を大きく4つに分けて管理している。GMS、SM、戦略的小売業を合わせた総合小売事業、専門店事業、ディベロッパー事業、そしてサービス事業である。そこで、それぞれの営業収益と営業利益を見てみると、総合小売業の中のSMは増収とはなったが、中核のイオンリテールの既存店が93.8%(衣料90.9%、食品95.6%、住居余暇92.3%)と伸び悩み、さらに、マイカル、イオン九州等も減収となった。また、戦略的小売業はマイバスケットは店舗数が大きく増加し、増収となったが、ミニストップ、オリジン東秀は減収となった。結果、合計すると、総合小売業は減収となり、さらに利益は赤字となる厳しい状況である。

   専門店事業も総合小売事業と同様に減収減益、特に営業利益は赤字となった。営業利益が赤字となったのは、総合小売事業と専門店事業であり、それぞれ、-21.53億円、-35.08億円となり、この2部門、しかも、イオンの中核部門が厳しい結果となった。なお、専門店に関しては、懸案のタルボット社が2月末までに、株式を売却し、イオングループから離れることになるので、今後は、減収とはなるが、利益の方は大きく改善されるものと予想される。次に、ディベロッパー事業であるが、増収増益となった。ただ、営業収益の全体の割合は数%であり、貢献度は低い。一方、営業利益に関しては、総合小売業と専門店がともに赤字になったため、全体の営業利益の約50%を占め、営業利益への貢献度は高い。そして、サービス事業であるが、増収減益となった。

   こう見ると、イオングループの中核事業、総合小売業、専門店事業双方が減収減益、営業利益はともに赤字となったことにより、利益を支えたのは、ディベロッパー事業とサービス事業となり、今後、本業そのものをいかに再構築するか、待ったなしの状況に追い込まれたといえよう。特に、総合小売業はイオン全体の営業収益の約80%を占めており、改革は急務といえる。消費環境はますます厳しさを増しており、中長期的に総合小売業、特にGMS事業の改革が最優先課題といえよう。

   そこで、これらの状況を踏まえて、イオングループ全体の営業利益が減益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが、72.19%(昨年71.74%)と、0.45ポイント上昇している。今期はトップバリュをグループを上げて積極的に拡販し、結果、売上高3,243 億円、対前年同期比123.0%となり、単純計算で営業収益の8.7%となった。当然、トップバリュは原価を改善する役割を担っているが、残念ながら、結果は全体の原価が上昇した。これは、PBの改善効果以上に、営業収益の約90%を占めるNBの価格が下がり、原価を押し上げたものと推測される。したがって、今後、原価を下げるためには、さらにトップバリュを強化するだけでなく、NBの原価の改善も急務であろう。結果、売上総利益は27.81%(昨年28.26%)となった。

   一方、経費の方であるが、37.53%(昨年37.41%)となり、経費も0.12ポイント上昇している。したがって、原価、経費双方が上昇し、差し引き、マーチャンダイジング力は-9.72%(昨年-9.15%)と、原価、経費、ダブルで圧迫され、10%近いマイナスとなった。食品スーパーマーケット業界では考えられないマイナスのマーチャンダイジング力であるが、GMS業態が主体となる小売業の場合は、イオンに限らず、マーチャンダイジング力が大きくマイナスとなる場合がほとんどである。これは、店舗への投資が大きく、様々な固定費がかかることに加え、広域から集客をはかるために、販促費等も大きいためである。したがって、イオンをはじめ、GMS業態が主体の小売業はこれに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入の貢献が極めて重要な役割を担っており、今期のイオンの場合は、11.40%(昨年11.04%)と、何と10%を優に超える数字となり、結果、営業利益は1.68%(昨年1.89%)となった。

   それにしても、マーチャンダイジング力がこれだけマイナス幅が大きいと、利益を生み出すにはかなり厳しい営業構造であるといえ、今期もそうであったが、商品売買以外の収入、その他営業収入にますます頼らざるを得なくなる状況である。本来、小売業はマーチャンダイジング力が命であり、この数字をいかに引き上げるかがポイントであるが、イオンのこの数字を見る限り、マーチャンダイジング力がさらに下がっているといえ、ここをいかに、プラスに近付けるかが当面の最優先の経営課題といえよう。

   結果、このマーチャンダイジング力のマイナスが、最終的には当期純利益に響き、さらに、小売業の経営にとって最も重要なキャッシュフローにダイレクトに影響するといえる。そこで、そのキャッシュフローであるが、これについては、稿を改めて、次回のブログで取り上げたい。

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January 07, 2010

書評、スーパーマーケットほど素敵な商売はない!

   「スーパーマーケットほど素敵な商売はない」(安土敏、ダイヤモンド社)、「100年たってもお客様から支持される企業の原則」を年末年始に読んだ。安土敏氏は元サミットの社長の荒井伸也氏のペンネームであり、現在は、オール日本スーパーマーケット協会会長である。代表作は、伊丹十三監督の「スーパーの女」の参考文献となった「小説スーパーマーケット」であり、業界関係者はもちろん、現代日本文学としても定評のある作品である。その安土敏氏の最新刊が本書である。

   この本は、オール日本スーパーマーケット協会発行のNetwork誌連載の巻頭言を再構成し、加筆修正したものであるという。全部で6章構成となっており、著者がスーパーマーケット業界で働く人たちのために書いたというように、サミットでの現場経験をふんだんに盛り込み、成功事例、失敗事例も可能な限り公開し、スーパーマーケットの魅力と可能性、そして、荒井氏の熱い思いをまとめあげた内容である。

   それぞれの章のテーマであるが、第1章は、「スーパーマーケットを正しく理解することから始めよう」であり、これは、長年、著者がこだわってきたテーマであり、GMSとスーパーマーケットの違いを、様々な事例でわかりやすく解説した章である。一般の理解はGMSを大手、スーパーマーケットを中堅と呼び、同じ業態として、規模の違いで区別しているが、著者は、スーパーマーケットはGMSとは全く違う業態であり、独立して認識し、事業としても取り組むべきであると主張し続けており、その理由を、この章では、特に、ワインを例にとってわかりやすく解説している。

   実際、著者が主張するように、GMSと食品スーパーマーケットは別業態として見るべきであると思う。私が食品スーパーマーケット最新情報のブログを立ち上げたのも、食品スーパーマーケットは独自の技術とノウハウをもった小売業であり、GMSをはじめ、他の食品小売業と区別して捉えるべきであると考えたこともひとつの理由である。これはPI値を研究すると、より鮮明にその違いがわかる。食品スーパーマーケットでは原則PI値の高い商品しか品揃えできないが、GMSはPI値が限りなく低い商品まで品揃えでき、ここから、品揃え、価格政策、商品管理、レイアウト、棚割、販売促進、サービス等、すべての戦略、戦術が違い、もはや同一の業態としてくくるには、無理があるからである。この点は著者の主張に全面的に賛成である。

   第2章では、「強い店作りと負けない出店」と題し、スーパーマーケット独特の出店戦略が語られる。特にサミットの1号店から12号店までのスクラップビルドの実態は圧巻であり、サミット創業の原点を知る上でも貴重な記述である。それ以上に、日本のスーパーマーケットの初期の頃の苦労が、この12店舗に集約されているともいえよう。この章では、特に、スーパーマーケットが商圏を守り抜くことの大切さを説いている。

   第3章は、「スーパーマーケット経営の考え方」であり、ここでは、スーパーマーケットのマネジメントを取り上げている。特に、DCLM(decision-making、communication、leadership、motivation)の大切さを説き、著者の代名詞ともいうべき、「作」と「演」という言葉がはじめて登場する章でもある。第4章は、「スーパーマーケットの商品」であり、ここでは特に、PBとNBについて、それぞれの重要性と、共存共栄が強い店づくりにつながることを解説している。

   第5章は、「スーパーマーケットの販売促進と接客」であり、ここでは特に著者独特のセルフサービスの意義についての解説が入る。セルフサービスは人手を省くためではなく、客の買い物の便利性のためであるという内容である。スーパーマーケットでは、1日2,000人から3,000人のお客様が来店され、約5,000品目の中から1人平均10点近い買い物をされる。このような状況で顧客1人1人が最も買いやすい店づくりをすると、必然的にセルフサービスが合理的であるとの結論である。販促も接客もこの原理を前提に考えるべきであると説いた章である。そして、最後の第6章、「スーパーマーケットの人事・教育」であるが、ここでは、ラインによる人事管理こそが人事管理の基本であり、直属の上司だけが正しい人事考課ができると説き、スーパーマーケットでは、躾を含め、店長の役割が極めて大きいと解説した章である。

   このように本書は、著者のサミットでの約30年強の経営経験を踏まえ、これから、そして、現在スーパーマーケットに携わっている方への遺言ともいうべき著作であるといえる。スーパーマーケットとGMSとの違い、その店づくり、経営戦略、マーチャンダイジング、販売促進と接客、人事・教育について、著者が一貫して主張してきたスーパーマーケット独自の哲学、技術、ノウハウを分かりやすくまとめたスーパーマーケットのバイブルともいえよう。著者は1937年生まれであるので、70歳を超えているが、今後、これに続く、スーパーマーケット独自の哲学を踏まえた著作を強く期待したいところである。

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January 06, 2010

まぐまぐマーケット、オープン!

   今年の仕事はじめは、まぐまぐマーケットから始めた。すでに、食品スーパーマーケット最新情報のブログの左上にリンク、「PI研コンテンツ販売!まぐまぐマーケット、スタート! New」を張っているが、ここから、まぐまぐマーケットに入ることができる。これは、まぐまぐの新しいサービスであり、誰でも、自由にコンテンツを作り、自由に価格を付け、販売することができる仕組みである。そこで、このサービスを活用して、様々なコンテツづくりに挑戦してみたいと思い、今年は、このコンテンツづくりから、仕事をスタートさせた。

   第1号のコンテンツは、「CF(キャッシュフロー)、経営者心理って何だ?」である。これは、昨年発売した財務3表連環表、2009、vol.4の無料解説書、「MD力って何だ」、「出店余力って何だ!」につぐ第3弾である。第1弾、第2弾までは無料版であったので、この第3弾からは、まぐまぐマーケットに載せ、有料版、500円で販売してみることにした。キャッシュフローは経営の根幹であり、財務3表連環分析でいえば、P/Lのマーチャンダイジング力、B/Sの出店余力を統合する位置にあり、実際のキャッシュの配分を戦略的な観点から見ることができ、まさに、経営の根幹といえるものである。

   キャッシュフローをつぶさに読み込むと、経営者の心理を垣間見ることができ、その苦悩、今後の経営戦略を伺うことができる。財務3表の中では、最も経営者の意思、考え方、経営戦略が表れているといえ、しかも、P/L、B/Sとの連環もうかがえ、現状、そして、将来の経営状況を把握する上で重要な財務諸表といえる。

   第2号以降は、現在申請中で、審査待ちであるが、順次、コンテンツをアップしてゆく予定である。現在、考えているコンテンツとしては、まずは、この財務3表シリーズに準じて、個別食品スーパーマーケット、特に、財務3表連環表、2009、Vol.4の中で際だった決算結果となった食品スーパーマーケットを取り上げてゆきたい。P/L、特にマーチャンダイジング力において、ずば抜けている食品スーパーマーケット、B/S、特に出店余力において、抜きんでた安定感の食品スーパーマーケット、そして、CF、将来への投資、株主への配慮を重点的に配分している食品スーパーマーケットなどである。

   次に、1/1の食品スーパーマーケット最新情報でも取り上げた、マーチャンダイジングについて深く掘り下げたいと思う。特に、これまで、研究してきたPI値については、基礎から、最新のIDを活用したPI値まで、できるだけわかりやすく、具体的な数字を使い、すぐに実践できる内容で、様々なコンテンツを作ってみたいと思う。PI値ひとつとっても、食品スーパーマーケット業界では単純な指標止まりで、その活用が止まっている企業もあれば、金額PI値=PI値×平均単価の基本公式まで踏み込み、システム的な対応を含め、実践活用している企業もあり、様々である。

   これは食品スーパーマーケットと同様に、最近、小売業側からPOSデータの公開がはじまり、メーカーでもPI値の活用が本格化しつつあるが、同じように、PI値の指標止まりで留まっている企業もあれば、もう一歩踏み込み、金額PI値まで活用が進み始めた企業もあり、まちまちである。そこで、PI値については、基礎から応用、そして、実践まで、様々なコンテンツが必要といえ、それらのコンテンツを順次作ってゆきたいと思う。また、金額PI値で終わっては、PI値の活用はもったいなく、最新の研究成果であるIDの世界のPI値、ID-PI値についてもコンテンツを加えたいと思う。実は、IDのPI値を理解した方が、通常のPI値の理解が速いともいえるので、先に、IDのPI値から入るのも手かと思う。順番はともかく、これら一連のPI値について、様々なコンテンツをつくってゆきたいと思う。

   そして、これに加え、現在、ブログの本数が1,500本を超え、有料版まぐまぐプレミアムも100回に近い本数となった。そこで、これらのコンテツの中から、珠玉のコンテンツを選び、加筆修正を加え、さらに、必要に応じて、資料も添付し、より、内容を充実させたコンテツをつくってみたいと思う。ブログは原則約2,000字でまとめており、テーマの趣旨は十分に盛り込めていると思うが、十分な解説ができない場合や、舌足らずの場合もある。また、数字的な資料はほとんど盛り込めておらず、文章のみとなっていることが多い。そこで、これらの課題を補い、より、詳しく、可能な限り、数字的な資料も入れ、コンテンツを再構築したいと思う。

   当面、この3つの基本方針のもとに、新たにスタートした、まぐまぐマーケットのコンテンツの充実をはかってゆきたいと思う。このコンテンツは、これまでのBtoB的な企業へ対してのコンサルティングではなく、食品スーパーマーケット、そして、メーカー、卸等の1人1人の現場の方を対象にしたコンサルティングといえ、私にとっても、新たなコンサルティング領域への挑戦でもある。価格も500円からはじめ、高いものでも、5,000円ぐらいまでにとどめ、個人がクレジットカードで簡単に買えるようにしたいと思う。今後、3ケ月ぐらいで可能な限りのコンテンツの充実をはかり、6ケ月ぐらいをめどに、体制を固めたいと思う。まぐまぐマーケット、よろしくお願いします。

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January 05, 2010

マックスバリュ東北、2010年、第3四半期、減収減益!

   マックスバリュ東北が、12/28、2010年2月期の第3四半期決算を公表した。結果は、営業収益674.62億円(96.6%)、営業利益0億円(昨年-6.21億円)、経常利益-0.20億円(昨年-6.33億円)、当期純利益-0.97億円(昨年-20.64億円)と、昨年よりは赤字幅は縮小したが、減収減益、赤字となる厳しい決算となった。自己資本比率も6.7%(7.1%)と、厳しい状況であり、財務的にも厳しい状況が続いている。

   そこで、まず、原価、経費面から利益構造を見てみたい。原価であるが、76.70%(昨年77.39%)と、原価は下がっており、この厳しい消費環境の中、原価の削減が進んでいる。マックスバリュ東北自身も、「前年下期から実施したスーパーバイザー制度の強化による地域商品の仕入力向上と商品管理力の向上に努めたことや、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」の売上拡大などにより、・・」とコメントしており、主に3つの原価改善が進み、効果が出たとのことである。結果、売上総利益は23.30%(昨年22.61%)となった。一方、経費の方であるが、25.87%(昨年25.90%)と、こちらも、昨年に比べ若干改善した。これについても、マックスバリュ東北は、「フレキシブルな働き方の推進などによる人件費の抑制や設備費の見直しなどによりほぼ計画どおりに進捗し、・・」とコメントしており、経費削減が進んだといえよう。

   その結果、差し引き、マーチャンダイジング力は-2.57%(昨年-3.29%)と、0.72ポイント改善されたが、依然として、マイナスであり、経費が商品売買から得られる粗利を上回っている状況である。これに、不動産収入、物流収入等が、2.58%(昨年2.38%)のり、営業利益は0.01%(昨年-0.91%)と、プラスに転じ、昨年の赤字決算からわずかではあるが、黒字決算へと転じた。原価、経費、その他営業収入とトリプルでの改善が効果を発揮したといえよう。ただ、依然として、マーチャンダイジング力はマイナスであり、さらに、収益力を高めるには、経費削減、特に、既存店の売上アップが最優先課題といえよう。

   その既存店の状況であるが、2009年12月度96.5%、11月度94.4%、10月度97.6%、9月度96.8%、8月度95.8%、7月度96.9%と95%前後で推移している。結果、恐らく、固定費が相対的に上昇気味で推移していると思われる。したがって、いかに、今後、既存店を活性化し、固定費を相対的に引き下げるかが経費削減の最重要課題といえよう。

   一方、キャッシュフローの状況であるが、営業キャッシュフローは10.35億円となった。当期純利益は-0.31億円と若干マイナスになったが、減価償却費が11.16億円とプラスであり、これがそのまま営業キャッシュフローとなった構図である。ついで、投資キャッシュフローであるが、-29.16億円と大きく投資が増加している。これは、この厳しい財務構造の中でも新規出店にかかわる資産、特に、有形固定資産の取得を積極的にしているためである。その金額は-32.46億円となり、営業キャッシュフローを大きく上回り、結果、差し引き、フリーキャッシュフローは-18.81億円と、マイナスとなった。

   フリーキャッシュフローがマイナスとなった場合は、その資金を財務キャッシュフローか、内部留保から取り崩すことになるが、マックスバリュ東北の財務キャッシュフローは、19.04億円のプラスとなった。その中身であるが、有利子負債が19.05億円増加しており、投資を有利子負債で賄っており、厳しい財務状況がより厳しさを増しているといえよう。実際、有利子負債を見てみると、139.38億円(昨年決算時120.33億円)と、増加しており、総資産294.05億円の47.40%となり、経営に重くのしかかっている状況である。

   結果、トータルは0.23億円のプラスとなり、内部留保を取り崩すことはなかったが、現在、現金は8.71億円であるので、内部留保の原資がほとんどない状況であり、今期の投資キャッシュフローは借入を増加せざるをえない財務状況にあったといえる。ちなみに、投資キャッシュフローの中の新規出店関連関係の-32.46億円は、マックスバリュ東北の1店舗当たりの出店にかかわる資産が2.18億円であるので、単純に店舗数に換算すると約15店舗となり、この厳しい財務状況の中でも極めて積極的な新店投資であるといえよう。ただ、この第3四半期までの新店は4/10の山形県にオープンしたマックスバリュあつみ店のみであり、新店開発がなかなか進まない状況である。むしろ、既存店をディスカウント業態、ザビックに3店舗を転換するなど、既存店の業態転換に力を入れているのが現状といえる。

   このように、マックスバリュ東北が2010年2月期の第3四半期決算を公表したが、昨年の大幅な赤字決算からは改善したとはいえ、依然、赤字が続いており、厳しい状況である。また、その厳しい中でも、新規出店への投資は、財務状況を敢えて悪化させても、積極的であり、逆張りの経営戦略に打って出ているように思える。結果、自己資本比率は6.7%と、決算公開企業約50社の中では最も低い数字となり、資本の増強が急務といえる状況にある。今後、マックスバリュ東北がこの積極的な投資戦略をどう収益につなげ、財務の安定をはかってゆくのか、その経営戦略に注目である。

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January 04, 2010

クローガー株価急落、2010年、第3四半期、赤字決算!

   全米No.1の食品スーパーマーケット、クローガーの株価が12/8、急落した。この日、クローガーの2010年1月期の第3四半期の決算が公表され、その結果が赤字決算となったため、一斉に株が売られ、急落した。それまでは、23ドル前後で推移していた株価であったが、12/07(22.85ドル)、12/8(20.13ドル)と、約12%株価が下がり、しかも、売買高も通常500万株前後であるが、この日、12/8は7,700万株と、10倍以上の大商いとなった。それにしても、これだけ、決算発表に、株価がドラスチックに反応するのは、日本とは違い、いかに、アメリカにおいては、株主と経営とがダイレクトにつながっているかがわかる。

   そのクローガーの決算結果であるが、赤字になった最大の要因は、クローガー傘下のカルフォルニアのラルフスの営業権の評価損を計上したためである。金額は11.12億ドル(約1,000億円)であり、これが赤字になった最大の要因である。

   アメリカのP/Lは日本とは大分違い、営業利益に至るプロセスがかなり複雑である。この第3四半期のクローガーの営業利益までのプロセスを見ると、まず、売上げが来る。売上高176.69億ドル(約1兆6,000億円)である。ここから様々な費用を引いていくが、はじめに引かれるのが、マーチャンダイジングコストであり、この中には、原価、広告費、物流費等が入る。日本の原価と経費の一部、マーチャンダイジング関連を含んだ費用である。これが、136.66億ドル(売上対比77.3%)である。次に、一般管理費、日本でいう経費が差し引かれる。これが31.39億ドル(売上対比17.7%)である。これをとって、クローガーの経費が17.7%であるとすると、経営の実態を見誤ることになる。先に示したように、この中にはマーチャンダイジングコストが入っていないからである。したがって、日本の食品スーパーマーケットとはかなり違い、一概にP/Lの比較ができないといえよう。

   そして、次に、rent(賃貸)が1.52億ドル(売上対比0.8%)、減価償却費が3.56億ドル(売上対比2.0%)と引かれてゆく。さらに、今回、赤字となった最大の要因である営業権の評価損が11.12億ドル(売上対比6.3%)引かれる。その結果、営業利益が算出され、今回の場合は-7.58億ドル(売上対比-4.3%、約700億円)となる。

   こう見ると、利益、営業利益の計算方法が日本とは大分違い、一概に食品スーパーマーケットだからとって、P/Lをそのまま比較できないといえよう。日本の食品スーパーマーケットのP/Lは単純であり、売上高、原価、経費、営業利益が基本であり、売上高から営業利益に至るには、原則、2つ、原価と経費しかない。これが、クローガーでは、原価という概念がなく、マーチャンダイジングコストとして、原価と経費の一部が加えられ、費用として引かれ、それ以外の経費も、一般管理費、rent(賃貸)、減価償却費が分離されており、さらに、営業権の評価損までが引かれ、営業利益が算出されるという計算方法である。これを複雑と見るか、より、利益構造が分かりやすくなったと見るか、意見がわかれるところであるが、実に興味深いP/Lである。

   ここでクローガーの現状であるが、創業は1883年であり、現在、全米に2,481店舗を展開している食品スーパーマーケットグループである。中核の食品スーパーマーケットはクローガーであるが、クローガー以外にもRalphs、 Fred Meyer、 Food 4 Less、 King Soopers、 Smith’s、 Fry’s、 Fry’s Marketplace、 Dillons、 QFC and City Market等があり、食品スーパーマーケット以外にも、ガソリンスタント781店舗、コンビニ771店舗、宝石店385店舗等の他業態、他業種をも持っている小売業である。昨年の売上高は582.03億ドル(約5兆3,500億円)であり、食品スーパーマーケットとしては、全米No.1である。

   もう少し、この第3四半期決算を見てみると、気になるキャッシュフローであるが、営業キャッシュフローは、営業赤字となったが、23.74億ドル(約2,100億円)であり、昨年が23.55億ドルであるので、ほぼ昨年と同様のキャッシュを確保している。これは、赤字の原因が営業権の評価損であるため、実質、当期純利益のマイナスは1.94億ドルであり、営業権の評価損はキャッシュフロー上ではプラスとなるからである。したがって、今回のP/L上の赤字はキャッシュフロー上では、影響がなく、昨年同様の営業キャッシュフローを確保できた。また、投資キャッシュフローも-17.95億ドル(昨年16.51億ドル)と、昨年以上の投資を行っており、フリーキャッシュフローは5.79億ドル(昨年7.04億ドル)と、プラスである。そして、財務キャッシュフローであるが、-3.24億ドル(昨年-7.31億ドル)であり、結果、トータル2.53億ドル(昨年-0.27億ドル)と、今期はむしろプラスとなっている。

   このように、クローガーの第3四半期決算はP/L上では赤字になり、株価が急落するという厳しい状況になったが、その最大の原因は先に見たように、営業権の評価損であった。したがって、キャッシュフロー上は、大きな影響はなく、ほぼ昨年と同様の営業キャッシュフローを確保し、投資もしっかり行い、財務キャッシュフローも借入に依存することなく、抑えており、結果、キャッシュが増加している状況である。経営的にはキャッシュは回っており、今期のP/Lは厳しい予想となろうが、来期はその反動で大きく回復する可能性も高いといえよう。ただ、ラルフスの営業権の評価損が出るくらい、消費環境は厳しさを増しているといえ、今後、営業利益が十分に確保できるかは未知数である。今期、そして、2月からは来期に入るが、当面、どのような消費環境が続くか、予断を許さない状況といえ、クローガーの今後の経営の推移が気になるところである。


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January 03, 2010

マックスバリュ西日本、2010年、第3四半期、積極新店!

   マックスバリュ西日本が12/28、2010年2月期、第3四半期の決算を公表した。結果は営業収益1,641.60億円(102.7%)、営業利益39.95億円(78.7%、営業収益比2.43%)、経常利益42.78億円(80.7%、営業収益比2.60%)、当期純利益20.75億円(74.6%、営業収益比1.26%)と、増収とはなったが、いずれの利益も減収となる厳しい決算となった。これまで公表された食品スーパーマーケットの第3四半期決算を見ると、増収減益、ないしは、減収減益が多く、ここへ来て、消費環境は急激に悪化しており、厳しい決算が続いているが、マックスバリュ西日本も、同様に増収減益となった。

   ただ、マックスバリュ西日本はここ最近、積極的な新規出店をはかっており、この第3四半期も広東店、イオンタウン太子店、宮田町店、ザ・ビッグ平島店、平田店、多度津店、フォレオ広島東店、ザ・ビッグ北島店、神河店、高瀬店と、合計10店舗をオープンしている。現在、店舗数が156店舗となり、食品スーパーマーケット業界の中でも、トップクラスの規模となった。しかも、マックスバリュ西日本は多様な業態開発、広域への新規出店を積極化しており、成長戦略重視の経営戦略をとっているのが特徴である。

   エリアと業態とのマトリックスを見ると、7つのエリア、4つの業態となるので、合計28のパターンとなる。その中で重点エリア、重点業態のパターンを見ると、地元、兵庫県エリア、SSM(スーパースーパーマーケット)が45店舗(店舗数構成比28.8%)であり、ここが最重点パターンとなっている。ついで、同じく、兵庫県エリア、SM(スーパーマーケット)が30店舗(19.2%)となる。そして、山口県エリア、SSMが23店舗(14.7%)であり、この3つのパターンで62.7%であり、残りの25パターンが10店舗以下となる。

   また、エリアで見ると、兵庫県エリアが80店舗(SSM45店舗、SM30店舗、CSM(コンビニタイプ)5店舗、BIC 0店舗)と、全体の51.2%を占めており、業態で見ると、SSMが93店舗(兵庫県エリア45店舗、山口県エリア23店舗、広島県エリア10店舗、岡山県エリア8店舗、香川県エリア4店舗、愛媛県エリア3店舗)と、全体の59.6%を占めている。ここ最近ではエリアでは、四国の香川県エリア5店舗、愛媛県エリア3店舗、徳島県エリア2店舗が増えているのが特徴である。業態ではBICが19店舗と増えつつあり、広島県エリア8店舗、山口県エリア7店舗と、この2地域で活発な出店が続いている。

   このように、マックスバリュ西日本は、7エリア、4業態の28パターンでの新規出店戦略を繰り広げており、積極的な成長戦略を、敢えて、この厳しい消費環境の中で実施しており、これが、この第3四半期、増収をもたらした最大の要因である。

   一方、利益の方であるが、約20%の減益となったが、その要因を原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが、75.51%(昨年75.48%)と、若干ではあるが、上昇している。ただ、これだけ、価格競争が厳しく、消費環境が悪化している中では、昨年とほぼ変わらず、健闘しているといえよう。結果、売上総利益は24.49%(昨年24.52%)となった。一方、経費の方であるが、24.20%(昨年23.35%)と、経費が0.85ポイント上昇しており、これが減益となった要因といえよう。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は0.29%(昨年1.17%)と、大きく減少している。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が2.21%(昨年2.08%)のり、営業利益は2.50%(昨年3.25%)となった。売上は増加したが、残念ながら、経費増が響き、利益をカバーできず、減益となった構図である。

   一般的に、積極的な新店開発は一時的には経費増になり、経費を圧迫することになる。これを相殺するには、既存店の売上を引きあげ、固定費を相対的に引き下げることが必要となるが、ここ最近のマックスバリュの既存店の売上は11月度93.4%、10月度94.4%、9月度95.8%と厳しい状況にあり、経費がむしろ上昇気味になっているといえ、利益面では新店の経費増を相殺できず、厳しい状況にあるといえよう。

   これを踏まえ、今後の状況であるが、キャッシュフローの投資キャッシュフローを見ると101.35億円(昨年66.24億円)と、積極的な投資を行っており、しかも、103.82億円が新店関連への投資である。マックスバリュ西日本の1店舗当たりの出店にかかわる資産は平均2.65億円であるので、39.1店舗となる。この数字を見る限り、さらに、積極的な新店開発が進んでゆくものと思われる。

   このように、マックスバリュ西日本の2010年2月期、第3四半期決算は増収とはなったが、利益が伸び悩み、減収となった。その要因は積極的な新店開発の経費がかさんだ上に、既存店が伸び悩み、相対的に経費が上昇したことが原因といえよう。ただ、このような厳しい経営環境の中でも、敢えて、マックスバリュ西日本は積極的な成長戦略に大きく舵を切り、7エリア、4業態での新店開発を加速させている。ここは利益よりも、市場シェアを重視した経営戦略に打って出たといえ、今後、マックスバリュ西日本がどこまで、この瀬戸内海商圏でシェアを伸ばすか、注目である。

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January 02, 2010

JALの決算書、2010年3月期、中間、気になる!

   ここへ来て、JALの経営再建をめぐる動きが激しい。12/31の毎日新聞によれば、「企業再生支援機構による支援が決まるまでの資金繰りをつけるため、政投銀のつなぎ融資(現在は最大1,000億円)を増額することで合意。日航が資金繰りに窮する事態は、当面避けられる見通しとなった。一方、融資がこげついた際、政府が代わりに返す「政府保証」をどう付けるかの議論は先送りされ、日航支援をめぐる政府の姿勢のふらつきぶりをうかがわせた。」とのことで、いま、まさに、JALは、資金ショートが起こる寸前までいっている状況が浮き彫りになったといえよう。そこで、JALの最新の決算数字、2010年3月期中間決算をもとに、現在、JALの経営がどのような状況に置かれているかを見てみたい。

   まず、いま、問題になっている資金、すなわち、キャッシュフローの状況であるが、営業キャッシュフローは-398.32億円(昨年905.65億円)と、昨年と一転、マイナスの営業キャッシュフローとなった。営業キャッシュフローがマイナスとなった要因であるが、当期純利益が-1,255.79億円(昨年466.82億円)となったことが大きい。これは、異常事態といえ、これひとつをとっても、政投銀のつなぎ融資、年末の12/30に政府が対策を話しあわなければならない緊迫状況にあることがわかる。

   この中間決算時、JALの当期純利益が大きくマイナスになった営業状況であるが、売上高7,639.53億円(71.2%)、営業利益-957.93億円、経常利益-1,144.49億円、そして、当期純利益-1,312.17億円と約1,000億円の営業赤字となっており、当期純利益段階では1,000億円を優に超える赤字となっている。これは、消費低迷に、円高も加わり、売上高が約30%下がったことが大きいといえ、その中身は国際旅行(売上構成比33.7%)が57.2%、国内旅行(売上構成比46.5%)が88.1%へと激減したことによる。

   したがって、原価、経費の状況を見てみると、JALの場合は原価ではなく、事業費であるが、95.4%(昨年78.7%)と、大きく上昇しており、結果、営業総利益は4.6%(昨年21.3%)と、原価が限りなく営業収入に接近し、損益分岐点ぎりぎりの状況となった。売上高が約30%下がったことが大きく、結果、固定費が相対的に大幅な上昇となったといえよう。一方、経費の方であるが、17.1%(昨年15.6%)と、上昇しており、結果、原価、経費双方が上昇し、赤字幅がひろがっている。ただ、経費は絶対額では昨年の1.679.71億円から1,306.86億円と下がっており、経費削減は人件費、燃料費等の重点項目で大きく進んでいるが、売上高が約30%下がったことにより、カバーできない状況である。

   こう見ると、営業キャッシュフローの当期純利益-1,255.79億円は売上高が大幅に改善しないと極めて厳しい状況にあるといえる。ないしは、思い切って、事業規模そのものを、キャッシュフローが回る範囲まで圧縮せざるをえないといえよう。

   次に、投資キャッシュフローを見ると、-619.59億円(昨年-2,210.03億円)と、大きく投資を抑えたが、固定資産の取得-740.06億円(昨年-1,108.08)を行い、結果、フリーキャッシュフローは-1,017.91億円(昨年-1,304.40億円)と、昨年同様、1,000億円を超えるマイナスとなり、資金繰りを大きく圧迫している状況である。この投資であるが、貸借対照表の資産の項目を見ると、JALの固定資産の投資は航空機7,493.12億円が大きな比重を占めており、総資産1兆6,827.19億円の44.5%を占めている状況である。しかも、JALの自己資本比率はわずか8.2%(昨年10.0%)であり、その大半を負債に負っている状況であり、極めて厳しい財務状況にあるといえる。その負債であるが、有利子負債が8,428.58億円となり、総資産の50.0%を占め、財務を大きく圧迫している状況である。

   したがって、フリーキャッシュフロー、-1,017.91億円を財務キャッシュフローだけで賄うには無理があるが、現金も期首残高が1,617.51億円という状況であり、多額の有利子負債の金額を考慮すると厳しい状況である。実際、この中間期、どのような財務キャッシュフローであったかであるが、351.56億円(昨年-450.99億円)と、さらに有利子負債を増加させ、プラスにもっていったが、-1,017.91億円を相殺できず、-673.23億円を、内部留保から取り崩しており、現金の期末残高は946.79億円(昨年1,749.28億円)と、ほぼ半減しており、極めて厳しいキャッシュの遣り繰りとなっている。先に見たように、現在、JALは12/30につなぎ融資の議論をせざるをえない状況にあるといえ、キャッシュフローは、この中間期よりも、さらに、厳しい状況にあると推測される。

   こう見ると、JALの経営が厳しくなった要因は、航空機という極めて大きな資産への投資キャッシュフローを、営業キャッシュフローではなく、財務キャッシュフローで賄ってきたために、有利子負債が大きく増加し、自己資本比率を極端に下げ、負債に大きく依存する経営構造になったことが大きいといえよう。しかも、この経営構造を改善するためには、営業キャッシュフローをプラスにもってゆくしかないが、この中間決算を見る限りでは、売上高が約30%減少するという極めて厳しい状況にある。今後も当面は消費環境は回復する見込みが薄く、デフレ基調、円高基調が引き続き続く見込みであり、ダブルでの影響が大きいといえよう。今回のつなぎ融資で当面の資金繰りを乗り切ることはできると思うが、その後、企業再生支援機構が、どのような思い切った支援策を打ち出すかに注目である。

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January 01, 2010

MD力、今年は、さらに、掘り下げます!

   昨年8/17にはじめて「MD力って何だ!」をQ&A形式でリリースしてから、たくさんの方からお申込みをいただきました。その後、第2弾、「出店余力って何だ!」も、リリースし、多くの方からお申込みをいただいています。改めて感謝申し上げます。今年は、さらに、CF(キャッシュフロー)についても、「経営者心理って何だ!」と題して、有料版となりますが、近々にリリースの予定です。これで、食品スーパーマーケットのための財務3表連環表、P/L、B/S、CFすべての基本解説書が揃うことになります。

   財務3表連環表は、食品スーパーマーケット決算公開企業約50社の2009年度決算をもとに、P/L、B/S、CFを、食品スーパーマーケットの経営にとって、最重要課題であるMD力(マーチャンダイジング)、出店余力、経営者心理の観点から主要指標をそれぞれの連環度合いを考慮しながら、一覧表にまとめたものです。現在、改定を重ねVol.4となっており、より見やすく、使いやすく、そして、Excelですので、加工しやすく工夫を重ねています。今期決算は、食品スーパーマーケット業界は1月から始まりますが、ほぼすべてが出揃うのは6月前後となりますので、2010年度版のリリースは2010年6月前後を予定しています。2009年度版との比較も含め、内容の充実をはかりたいと思います。

   さて、今回、「MD力って何だ!」をリリースしてから、様々なご意見を頂戴しました。その中で特に強く感じたことは、MD(マーチャンダイジング)への関心の高さです。今回解説したMD力は、食品スーパーマーケットのP/Lから導くことができる商品売買を通じて得られる利益のことを指しています。実は利益には様々な利益があり、P/Lにも営業利益、経常利益、当期純利益があります。また、食品スーパーマーケットでは、粗利のことを利益と呼ぶ場合もあります。したがって、利益が何を指すかを明確に定義しないと混乱が生じることになり、特に食品スーパーマーケットでは、MDが経営の根幹であることから、MDから得られる利益をどう定義するかが重要な課題となっています。

   そこで、今回、P/Lから導くことができるMDから得られる利益として、通常のP/Lでは算出されていない新たな計算式を導入し、MD力を新たに定義し、改めて食品スーパーマーケット、決算公開企業約50社のMD力を浮き彫りにしたのが、財務3表連環表といえます。詳しい内容は、計算式、解説は、無料版ですので、「MD力って何だ!」をお読みいただくとして、ここでは、MD力によって、何が明確になるかを考えてみたいと思います。

   MD力はごく単純化すれば、粗利(売上総利益)-経費のことです。ここには不動産収入、物流収入等は入っていません。したがって、営業利益とMD力は、その点で利益の中身が違います。より、商品売買から得られる利益を正確に反映しているといえます。ここから、食品スーパーマーケットのMD戦略は4つのタイプに分かれます。ひとつは、経費最小、粗利最小というディスカウントタイプです。2つ目は経費最小、粗利最大という、高収益タイプです。3つ目は経費最大、粗利最大という、付加価値タイプです。そして、4つ目は経費最大、粗利最小というGMSタイプです。MD力から見ると、すべての食品スーパーマーケットはこの4つのどれかに分類されます。食品スーパーマーケットのMDが、この4つのタイプになることを明らかにしたのが、MD力の真骨頂ともいえます。

   ここまでが、昨年1年間の財務3表連環分析、MD力編の成果でした。無料解説版をお読みいただいた方は、ここまではご理解いただけたと思います。そして、新たな興味(疑問?)も同時に感じられたのではないかと思います。それは、この4つのタイプと食品スーパーマーケットの商品との関係です。なぜ、食品スーパーマーケットのMD(マーチャンダイジング)はこの4つに分類され、その商品政策、MDの結果ではなく、中身はどうなっているのかということです。

   そこで、今年は、この点について、深く掘り下げてみたいと思います。すなわち、MD力を高めるマーチャンダイジングとは何かについてです。マーチャンダイジングは食品スーパーマーケットの根幹の経営戦略ですが、食品スーパーマーケットの経営をトータルで見た場合、どの商品をどのように強化すれば、MD力を高めることができるかです。また、その戦略商品はどのようなカテゴリーで、その商品構成はどのように展開すれば良いか、さらには、最新のPI値の研究成果、ID-POSから見た場合、どのような商品戦略、顧客対応が考えられるかなどです。

   今年は、この食品スーパーマーケット最新情報のブログの中身をさらに充実させるだけでなく、ここに上げたような新たな課題、特に、MD力を掘り下げ、マーチャンダイジングの中身を商品1品1品、顧客1人1人にまで掘り下げてみたいと思います。本ブログ以外にも、様々な形で、情報発信をしてゆきたいと思います。

  改めて、あけましておめでとうございます。今年も、食品スーパーマーケット最新情報をよろしくお願いします。


食品スーパーマーケットのための決算分析、財務3表連環法Vol.4、詳細はこちら!
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週間!食品スーパーマーケット最新情報、まぐまぐ 資料集
Mixi(ミクシィ)版にMD力って何?のトピックをつくりました!

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