JALの決算書、2010年3月期、中間、気になる!
ここへ来て、JALの経営再建をめぐる動きが激しい。12/31の毎日新聞によれば、「企業再生支援機構による支援が決まるまでの資金繰りをつけるため、政投銀のつなぎ融資(現在は最大1,000億円)を増額することで合意。日航が資金繰りに窮する事態は、当面避けられる見通しとなった。一方、融資がこげついた際、政府が代わりに返す「政府保証」をどう付けるかの議論は先送りされ、日航支援をめぐる政府の姿勢のふらつきぶりをうかがわせた。」とのことで、いま、まさに、JALは、資金ショートが起こる寸前までいっている状況が浮き彫りになったといえよう。そこで、JALの最新の決算数字、2010年3月期中間決算をもとに、現在、JALの経営がどのような状況に置かれているかを見てみたい。
まず、いま、問題になっている資金、すなわち、キャッシュフローの状況であるが、営業キャッシュフローは-398.32億円(昨年905.65億円)と、昨年と一転、マイナスの営業キャッシュフローとなった。営業キャッシュフローがマイナスとなった要因であるが、当期純利益が-1,255.79億円(昨年466.82億円)となったことが大きい。これは、異常事態といえ、これひとつをとっても、政投銀のつなぎ融資、年末の12/30に政府が対策を話しあわなければならない緊迫状況にあることがわかる。
この中間決算時、JALの当期純利益が大きくマイナスになった営業状況であるが、売上高7,639.53億円(71.2%)、営業利益-957.93億円、経常利益-1,144.49億円、そして、当期純利益-1,312.17億円と約1,000億円の営業赤字となっており、当期純利益段階では1,000億円を優に超える赤字となっている。これは、消費低迷に、円高も加わり、売上高が約30%下がったことが大きいといえ、その中身は国際旅行(売上構成比33.7%)が57.2%、国内旅行(売上構成比46.5%)が88.1%へと激減したことによる。
したがって、原価、経費の状況を見てみると、JALの場合は原価ではなく、事業費であるが、95.4%(昨年78.7%)と、大きく上昇しており、結果、営業総利益は4.6%(昨年21.3%)と、原価が限りなく営業収入に接近し、損益分岐点ぎりぎりの状況となった。売上高が約30%下がったことが大きく、結果、固定費が相対的に大幅な上昇となったといえよう。一方、経費の方であるが、17.1%(昨年15.6%)と、上昇しており、結果、原価、経費双方が上昇し、赤字幅がひろがっている。ただ、経費は絶対額では昨年の1.679.71億円から1,306.86億円と下がっており、経費削減は人件費、燃料費等の重点項目で大きく進んでいるが、売上高が約30%下がったことにより、カバーできない状況である。
こう見ると、営業キャッシュフローの当期純利益-1,255.79億円は売上高が大幅に改善しないと極めて厳しい状況にあるといえる。ないしは、思い切って、事業規模そのものを、キャッシュフローが回る範囲まで圧縮せざるをえないといえよう。
次に、投資キャッシュフローを見ると、-619.59億円(昨年-2,210.03億円)と、大きく投資を抑えたが、固定資産の取得-740.06億円(昨年-1,108.08)を行い、結果、フリーキャッシュフローは-1,017.91億円(昨年-1,304.40億円)と、昨年同様、1,000億円を超えるマイナスとなり、資金繰りを大きく圧迫している状況である。この投資であるが、貸借対照表の資産の項目を見ると、JALの固定資産の投資は航空機7,493.12億円が大きな比重を占めており、総資産1兆6,827.19億円の44.5%を占めている状況である。しかも、JALの自己資本比率はわずか8.2%(昨年10.0%)であり、その大半を負債に負っている状況であり、極めて厳しい財務状況にあるといえる。その負債であるが、有利子負債が8,428.58億円となり、総資産の50.0%を占め、財務を大きく圧迫している状況である。
したがって、フリーキャッシュフロー、-1,017.91億円を財務キャッシュフローだけで賄うには無理があるが、現金も期首残高が1,617.51億円という状況であり、多額の有利子負債の金額を考慮すると厳しい状況である。実際、この中間期、どのような財務キャッシュフローであったかであるが、351.56億円(昨年-450.99億円)と、さらに有利子負債を増加させ、プラスにもっていったが、-1,017.91億円を相殺できず、-673.23億円を、内部留保から取り崩しており、現金の期末残高は946.79億円(昨年1,749.28億円)と、ほぼ半減しており、極めて厳しいキャッシュの遣り繰りとなっている。先に見たように、現在、JALは12/30につなぎ融資の議論をせざるをえない状況にあるといえ、キャッシュフローは、この中間期よりも、さらに、厳しい状況にあると推測される。
こう見ると、JALの経営が厳しくなった要因は、航空機という極めて大きな資産への投資キャッシュフローを、営業キャッシュフローではなく、財務キャッシュフローで賄ってきたために、有利子負債が大きく増加し、自己資本比率を極端に下げ、負債に大きく依存する経営構造になったことが大きいといえよう。しかも、この経営構造を改善するためには、営業キャッシュフローをプラスにもってゆくしかないが、この中間決算を見る限りでは、売上高が約30%減少するという極めて厳しい状況にある。今後も当面は消費環境は回復する見込みが薄く、デフレ基調、円高基調が引き続き続く見込みであり、ダブルでの影響が大きいといえよう。今回のつなぎ融資で当面の資金繰りを乗り切ることはできると思うが、その後、企業再生支援機構が、どのような思い切った支援策を打ち出すかに注目である。
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