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January 29, 2010

西友、KY2(カカクヤスク2乗)、野菜へ!

   1/28、西友のちらしが舞い込んで来た。ほぼ、ちらし全面をつかった大根、白菜、きゅうり、ねぎ、・・の大きな写真入りの広告である。いよいよ、西友のKY(カカクヤスク)も第2段階、KY2(カカクヤスクの2乗)のキャンペーンが本格化し、生鮮、野菜にまで及んできた。通常、野菜を含む青果物は相場のある商品であり、EDLP(EveryDay Low Price)にのりにくい商品であり、定番価格を維持するのが極めて難しい商品である。1日で市場の相場が跳ね上がることもあれば、逆に、暴落することもあり、食品スーパーマーケットでは毎日、価格が変わるといっても過言ではない。食品スーパーマーケットの青果バイヤーの役割はその激しく変動する相場との戦いでもあり、いかに、安く、商品を競り落とし、同時に必要量を確保するかに日々苦心している毎日を送っているといえる。

   その極めて定番化が難しい商品を、この西友のちらしでは、野菜8品+果物(いちご)の9品を定番認定し、圧倒的な安さで、しかも、EDLPで提供しようという宣言である。びっくりである。特に、産地を限定しているので、おそらく、市場外流通、産直が大半を占めるであろうと思われるが、それでもEDLPで売り続けるのは、野菜では相当困難な試みであり、通常の食品スーパーマーケットでは、まず、簡単には、実現が不可能といえよう。

   もともとEDLPはグロサリーがメインであり、大量仕入れ、大量販売を前提に生産から販売までのすべての流通プロセスの改革が前提である。時には原料調達、生産段階にまで踏み込み、あらゆるコストを削減して、はじめて価格を引き下げることができる価格戦略である。これを生鮮食品に応用しようとすると、生鮮食品は価格は原則、市場、すなわち、卸売市場での相場、すなわち、需要と供給のバランスで決定され、日々、価格が大きく変動する商品である。したがって、小売業で売価を一定にした場合、相場が上がれば利益がでるが、相場が下がれば、利益が吹っ飛んでしまい、株式相場同様、仕入れ価格が変動し、販売価格を一定にすることが極めて難しい商品である。

   西友は、今回、この極めて難しい生鮮、特に、野菜に踏み込んだわけであり、これが今後ともEDLPとして維持できるのかどうか、まさに、西友のカカクヤスクの進化、そして、真価が問われるところであろう。ちなみに、野菜は、通常、食品スーパーマーケットでは100から150SKUあるので、今回は野菜8品が定番として認定され、EDLPの戦略商品として選ばれたので、全体の売上構成比は5から10%と思われ、仮に、この8品が利益0で走っても、残り90%で利益を確保できれば、相乗積から、それなりの利益を確保できるので、野菜全体への利益減の影響は少ないと思われる。しかも、先にもふれたように、おそらく、市場外流通、産直の商品が大半を占めるのではないかと思われるので、相場が暴騰しても、大損害にはいたらないと思われる。

   ここで、少し、相乗積のシミュレーションをしてみる。今回の8品の売上構成比が10%、粗利率が0%、その他90%の野菜の粗利率が20%であった場合には、10%×0%+90%×20%=0%+18%で18%の粗利率となる。これが何らかの事情により、8品の粗利が-10%になった場合は、10%×-10%+90%×20%=-1%+18%=17%となる。-20%の場合は、同様に10%×-20%+90%×20%=-2%+18%で16%となる。したがって、仮に、この8品の粗利率が-20%になっても、その他で20%の粗利率が確保できていれば、16%で治まり、-10%で17%、0%で18%となり、この8品で実施している限り、青果全体に与える利益の影響は相当のマイナス粗利がない限り、競争力が逆に増すメリットの方が大きいように思う。

   その競争力であるが、問題は、この8品が顧客から絶大な支持を得られる商品であるかがポイントとなる。ちらしでは、選定根拠をインターネット調査から得られた300人の主婦であるとしており、西友、すなわち、店舗側ではなく、顧客の声にもとづいて選定したとこのことである。その実際の定番認定野菜であるが、大根1本89円、きゅうり1本39円、キャベツ1個99円、白菜1/4 49円、エリンギ1パック79円、ほうれん草1束95円、レタス1個125円、長ねぎ2本1束99円である。この8品の野菜に加え、いま旬の果物いちご1パック299円が加わっており、これが、現在の西友が提供するEDLP野菜である。PI値から見ても、高い商品が選定されており、競争力は高いといえよう。

   それにしても、EDLPとしては、最も難しい生鮮、その中でも、野菜にまで西友が今回、1歩、踏み込んだことは、今後、食品スーパーマーケット業界としても、いよいよ、新たな価格競争がはじまったといえよう。相場変動に連動したハイロー戦略中心に取り組んできた食品スーパーマーケットの進化、そして、真価が問われることになったといえよう。西友がこの8品でEDLPが限定されるのか、それとも、さらに、次の野菜、そして、果物へと対象を広げてゆくのか、また、青果だけでなく、鮮魚、精肉、惣菜へもEDLP戦略を広げてゆくのか、次の1手に注目したい。

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