NHK、クローズアップ現代、1/13、消費者つかむ新戦略!
NHKのクローズアップ現代、1/13で、「激安に異変?消費者つかむ新戦略」と題し、食品スーパーマーケットを真正面から取り上げた。サブタイトルでは、「デフレに陥り、消費不況に直面している小売業界。今、商品の種類を豊富にするなど価格以外の特徴を出し、客の心を掴むスーパーが注目を集めている。その最前線に迫る。」というものであり、ハローディ、オギノ、オオゼキについて取り上げていた。それぞれ、テーマが絞られており、ハローディは品揃え、オギノはID-POS、オオゼキは人間力であるが、その本質は、優良顧客(ロイヤルカスター)へのきめ細かな対応により、顧客の心をつかむことが、デフレ克服の決め手であるという結論であったように思う。
番組冒頭のナレーションで、NHKの国谷キャスターが、「安売りではない、次の一手を打ち出したスーパーに客が集中している、・・」と解説し、さらに、「従来のビジネスモデルにこだわらないスーパー、・・」、「ものが売れない時代に消費者の心をつかむ戦略、・・」等、重要なキーワードが語られ、番組がスタートする。特に、国谷キャスターが消費者物価指数のグラフを示し、デフレの中で、売上げをのばしているスーパーがあると紹介し、冒頭にあげた3社が紹介されてゆき、合間合間で国谷キャスターからゲストの中央大学ビジネススクール教授の中村博氏へのインタビューが入るという番組構成である。
はじめに登場したのが、ハローディであり、テーマは圧倒的な品揃えである。事例として紹介されたが、味噌500種類、しょうゆ500種類であり、その映像が流れるが、確かに圧倒される品揃えである。ハローディでは、客が欲しいという商品をすべてそろえるという。毎月、500商品の要望が寄せられ、通常1週間以内に入荷されるという。番組では、バイヤーが通常、店では売られていない宅配の商品を顧客が欲しいと要望を出し、それにこたえるシーンもあり、いかにハローディが、顧客の声に耳を傾けるかを追っていたが、確かに、徹底しているといえよう。
番組は切り替わり、次に、登場するのが、オギノであるが、テーマは、客層ごとに店舗の品揃えを変えるというものである。オギノは以前からポイントカードを導入していたが、番組では、客が大幅に減り、特に、買上点数が減ったという。そこで、ポイントカード戦略を転換、ついで買いを増やすために、ポイントカードの購入履歴を調べ、顧客の好みに応じた品揃えを店ごとにしてゆくという対応をはじめたという。その結果、番組の中では、すぐ食べられる商品をよく買う顧客が多い店舗では、惣菜が良く売れるが、そのようなタイプの店で思い切っておでんを大量陳列してみたという。その結果、おでんが良く売れるようになり、これまでの30個平均から150個も売れるようになったという。惣菜のついでにおでんを買ってもらうという、ついで買いの新戦略であるという。
ここで、番組はスタジオにもどり、国谷キャスターから、中央大学ビジネススクール教授、中村博氏へのインタビューがはじまる。その中で、中村教授が語っていたハローディに関して、なぜ、品揃えが大事かという点について、店に要望を出す顧客は優良顧客(ロイヤルカスタマー)であり、通常、小売業では3割の顧客が7割の売上げをつくるというが、その3割の顧客の要望すべてに答えているのがハローディの強さだという。一見、在庫が増え、利益がでないように思えるが、優良顧客をつなぎとめる最良の戦略のひとつというような趣旨のコメントであったと思うが、ズバリだと思う。
実際、ID-POS分析を行うと、優良顧客と売れ筋は一致しないケースの方が多く、むしろ死に筋に優良顧客の支持の高い商品が見つかることが頻繁であり、ハローディの品揃え戦略は、中村教授が指摘するように、まさに、優良顧客へ焦点を当てた品揃え戦略であるといえよう。だから客数が増え、同時に客単価、金額PI値もアップするといえよう。
3つ目の事例がオオゼキであったが、オオゼキのケースは人間力に焦点が当てられていた。少しわかりにくかったのが、1平方メートル当たり、通常のスーパーの5倍の売上げがあるとはじめに紹介されるが、それと人間力との関係がいまひとつわかりにくかった。オオゼキの坪売上げが高いのは、都心部の人口密集地に通常の食品スーパーマーケットの1/3の小型店舗を展開していることが最大の理由である。仮に店舗面積が通常の食品スーパーマーケット並みとなった場合は、いくら正社員を増やしても、店独自の仕入れをしても、坪売上はあがらないからである。坪売上げは原則店舗面積に反比例し、オオゼキはまさに、あの品揃えとあの客数ではありあえない限界に近い小さな店舗面積であり、結果、異常な坪効率となるのが実態といえよう。
むしろ、オオゼキを取材するのであれば、オギノとはまた違ったポイントカードの活用がはじまっており、そこに焦点をあててもよかったように思う。オオゼキは、ハローディに通じる優良顧客への対応を会社をあげて取り組みはじめており、最近では、ポイントカードの購買履歴から、独自に定義した優良顧客の大切さを実証している。そして、そのための戦略商品がPI値No.1の青果であり、そこに、店別仕入れを採用し、社員の力を存分に引き出している点を強調したらもっと本質に迫れたように思う。それにしても、入社8年目で、青果部門No.2になった近藤さんのがんばりにはびっくりである。
今回の番組の共通点はいずれも優良顧客(ロイヤルカスタマー)であり、3社とも、ここに焦点を当てた取り組みに、結果として、経営資源を最大限に投入し、様々な対応をしているといえる。改めて、これまでの商品戦略最優先の時代が、顧客に立脚した、優良顧客を大切にする新たな仕組みづくりの時代に入り始め、デフレがそれを押し上げているように感じる。ID-POSの時代が予想よりも早く動きはじめたようだ。
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