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January 18, 2010

マックスバリュ東海、急成長、財務バランスを崩す!

   企業が急成長を遂げる時、それに伴い、財務の健全性も同時に保たれれば、企業経営は安泰であるが、往々にして、急成長と財務とはバランスがとれず、財務の健全性が崩れることが多い。1/7、マックスバリュ東海が、2010年2月期、第3四半期決算を公表したが、まさに、急成長と財務の健全性がアンバランスとなり、大幅な増収とはなったが、これまでの健全な財務状況のバランスが崩れ、減益、自己資本比率も大きくダウンと厳しい決算となった。

   実際の第3四半期の決算数字であるが、売上高1,044.27億円(114.60%)、営業利益20.81億円(63.38%:売上対比1.99%)、経常利益20.84億円(62.58%:売上対比1.99%)、当期純利益8.51億円(73.48%:売上対比0.81%)となった。また、自己資本比率は60.4%(昨年69.5%)と、大幅に下がっている。純資産は360.37億円(昨対100.53%)と、わずかに上昇しているが、それ以上に、総資産が596.23億円(昨対115.58%)と大きく上昇しており、財務のバランスが崩れた要因は急激な資産の増加にあるといえる。

   実際、キャッシュフローの状況を見ると、投資キャッシュフローが-98.19億円(昨年-55.48億円)と、約40億円強増加しており、多額の投資をしている。その中身であるが、-81.69億円が有形固定資産の取得による支出であり、まさに、新店、M&Aでの店舗への投資である。マックスバリュ東海の店舗数は、2008年2月期61店舗、2009年2月期74店舗、そして、2010年2月期第3四半期88店舗と、急激に店舗数を増加しており、この増加した店舗数が資産として膨れあがっており、その分をカバーするだけの純資産の増加、すなわち、営業キャッシュフローが確保できなかったため、財務のバランスを崩したといえよう。

   その営業キャッシュフローであるが、33.91億円(昨年57.16億円)と、約20億円強減少している。その要因を見ると、当期純利益が16.20億円(昨年25.34億円)と、約10億円弱減少しており、これが最大の要因である。したがって、差し引き、フリーキャッシュフローは-64.28億円(昨年1.68億円)と、昨年の順流から一転、逆流、しかも大幅なマイナスとなり、キャッシュ不足となった。

   したがって、このマイナス分を財務キャッシュフローか、現金を取り崩して補うことになるが、財務キャッシュフローを見ると、3.19億円と、わずかなプラスであり、しかも、10.00億円の有利子負債を増加させている。前期決算は無借金経営であったので、ここで、10.00億円であるが、有利子負債が発生したことになる。したがって、フリーキャッシュフロー-61.28億円を財務キャッシュフローでカバーできず、結果、現金を取り崩すことになり、-61.08億円の現金が取り崩されている。これまで、マックスバリュ東海の現金は前期決算時123.19億円、昨年の第3四半期決算時は152.21億円であり、今期は55.11億円となり、大幅に現金が減ったことになる。

   マックスバリュ東海は、前期決算時は食品スーパーマーケット業界の中でも、極めて健全な財務状況であり、決算公開企業約50社の中では、自己資本比率はヨークベニマル79.0%、オオゼキ77.3%についで、3位、現金も100億円を優に超え、総資産比率でもベスト5に入り、無借金経営であった。それが、今期の第3四半期決算では、先にキャッシュフローで見たようにバランスを崩し、依然として、決算公開企業約50社の中では平均以上ではあるが、大幅にランキングを下げており、気になるところである。

   今後、マックスバリュ東海が、財務を改善してゆくためには、急激な成長路線を一端見直し、既存店の活性化に経営資源を集中させ、営業キャッシュフローを充実させることが先決であろう。そこで、営業キャッシュフローの源泉といえる商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力を見てみると、原価は74.71%(昨年74.53%)となり、原価がわずかであるが、上昇している。結果、売上総利益は25.29%(昨年25.47%)である。少し気になるのは、今期は、イオンのトップバリュ、ベストプライスを昨年以上に強化しており、売上構成比も9.2%(昨年7.3%)と、順調に伸びているが、原価を押し下げるまでにはいっていない点である。当然、残り90%強を占めるNBに原因があるといえ、今後、PB強化だけでなく、NBの改善も課題といえよう。

   一方、経費の方であるが、25.17%(昨年23.75%)と、1.42ポイント増加している。これは、特に、既存店が94.3%と伸び悩んだことが大きいといえ、結果、相対的に固定費が重くのしかかったものと思われる。したがって、差し引き、マーチャンダイジング力は0.12%(昨年1.72%)と、大きく減少している。原価、経費双方が減少したため、マーチャンダイジング力が厳しい結果となったといえよう。

   このように、マックスバリュ東海は昨年までの健全な財務が急激な成長により、バランスを崩し、キャッシュフローが順流から逆流になり、新たに借入を行い、さらに、現金を大きく取り崩し、結果、自己資本比率を下げる結果となった。また、これまで、順調であったマーチャンダイジング力も消費環境の急激な悪化により既存店の落ち込みが大きく、原価、経費双方が上昇し、大きく減少しており、営業キャッシュフローも減少している。まずは、成長戦略を見直し、マーチャンダイジング力を強化し、既存店の活性化が急務といえよう。この決算結果を受けて、今後、マックスバリュ東海がどのような経営戦略を打ち出すか注目である。

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