ポイントカードって何だ、その本質は還元!
ポイントカードの歴史は古く、食品スーパーマーケット業界では少なくとも20年前には主要食品スーパーマーケットでは導入が検討され、その後、急速に広がっていった。ただ、当時は、ポイントカードよりも、スタンプの方が中小食品スーパーマーケットでは主流であったといえる。その後、長らく、ポイントカードとスタンプとが拮抗していたが、この10年ぐらいで、スタンプとポイントカードが融合するなど、ポイントカードの優位性が増し、現在では、ポイントカードが食品スーパーマーケットの販促手段の有力な手法としての地位を確立したといえよう。また、ポイントカードは航空会社のマイレージ、家電量販店の破格のポイント還元、ICカードの普及等とあいまって、最近では、さらに政府までがエコポイントを発行するなど、日本のあらゆる生活シーンに普及、定着しており、ポイントカードは日本人の生活の一部となったといえよう。
では、いったいポイントカードって何だろうか。現象面から見ると、ポイントカードは極めて単純であり、ポイントカードを通じて何かを買えば、その何%かが、購入者個人にポイントで還元されるというものである。ここでのキーワードは還元とポイントである。通常、食品スーパーマーケットでは、還元という概念はない。あるのは、値引きである。ディスカウントである。ある商品に対して、通常価格よりも、何%か値引きをし、価格をディスカウントすることが値引きである。商品に対して、値引きがされるのであり、顧客に対して値引きがされるわけではない。ある特定商品は値引きがされるが、それ以外の商品は値引きがされない。したがって、顧客が購入する商品は値引きがされる商品と値引きがされない商品とが混在し、値引きのメリットを享受できる顧客もいれば、享受できない顧客もいる。
これに対して、還元は根本的に違う。商品に対して値引きされるのではなく、顧客に対しての値引き、すなわち、還元である。売上げの一部を顧客にもどすことが根幹にある。したがって、ポイントカードで買い物をすれば、買上金額の一部がその顧客個人に還元されることになる。これは、会計的に考えても、同様な違いがあり、値引きは商品売上げにかかわる問題であり、P/L上で処理すべきものであるが、還元は、P/L上ではなく、B/S上の問題であり、ポイントは顧客への負債として処理すべきものであるといえる。本来顧客に還元すべきポイント分の金額をポイントが使用されるまで、企業が債務として持ち、使われた時点で顧客にその金額を無利子で返済するというものであり、値引きと還元は全く違う性質のものであるといえよう。
このような観点でポイントカードを見ると、ポイントカードの食品スーパーマーケット側からの戦略の違いが明確になる。すなわち、顧客への還元をどのように企業として位置付けるかにより、ポイントカードに対する企業の姿勢が鮮明になるということである。通常、ポイントカードに付随する現象面の違いは、ポイント還元率、ポイント交換率、ポイント交換額、ポイント交換期間、ポイント交換条件等がある。それぞれ見てみると、ポイント還元率は購入金額の何%であるかである。食品スーパーマーケットでは、0.5%から1.0%ぐらいの差がある。ポイント交換率は1ポイント何円で交換するかという、交換レートである。これも食品スーパーマーケットでは1ポイント0.5円から1.0円ぐらいの差がある。ポイント交換額であるが、これは、いくらたまったら交換可能であるかであるが、これも食品スーパーマーケットでは500円、1,000円、10,000円、まちまちである。ポイント交換期間であるが、これも、1年から無期限までさまざまである。そして、ポイント交換条件であるが、これは、キャッシュか商品、あるいは商品券かなどである。これ以外にもいろいろあるが、主にこの5つが、食品スーパーマーケットにより、千差万別であるのが実態である。
では、なぜ、このような違いが生じるかであるが、それがポイントカードを食品スーパーマーケット側がどう企業戦略に位置づけているかの違いといえる。顧客へどのくらい還元できるか、その経営判断の違いにあるといえよう。特に、これはポイント還元率、ポイント交換率に強く表れるといえ、食品スーパーマーケットでも0.5%から1.0%と2倍も違ってくるが、通常、1.0%の場合は経費比率が高い食品スーパーマーケットでは不可能な数字であり、この1.0%を実現するには、あらゆる経費を削り、還元に経営資源を振り向けられる戦略的な取り組みが必要といえる。同様に、ポイント交換率も1ポイント1円か1ポイント0.5円で大きく違い、1.0%、1.0円から0.5%、0.5円まであるが、その差4倍となり、1.0%、1.0円を実現するには、経費の削減だけでなく、B/S、負債面を整理する必要がある。負債比率の高い食品スーパーマーケット、すなわち、自己資本比率の低い食品スーパーマーケットでは不可能な戦略といえる。同様に、その他の政策にも順次波及してくるが、これらを考慮すると、還元を経営戦略の優先課題と位置付けないかぎり、小手先の手法では顧客にとって満足のできるポイントカードを実現することは不可能である。
さらに、最近では、還元そのものをどう深めるかも、ポイントカードとして大きな違いになりつつある。これは、還元を企業の根幹に位置付けた場合、自然、顧客一律の還元から、顧客個人個人への個別還元の方がより、還元の本質に迫るものであるといえ、この部分に踏み込もうとする動きである。これが、いわゆるID-POSへとつながってゆくが、これを実現するには、さらに、企業経営そのものを根本的に見直さないと難しいといえる。恐らく、ここまで考えつくされ、企業経営を見直した後のポイントカードは最強のポイントカードとなろう。
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