ウォルマートの2010年1月期、本決算を見る!
ウォルマートが2/18、2010年1月期の本決算を公表した。結果は売上高4,050.46億ドル(昨対100.98%:約37兆円)、その他営業収入31.68億ドル(96.37%)、合計営業収入4,082.14億ドル(100.94%)となり、わずかではあるが、増収となった。ここで、その他営業収入はサムズクラブの会員収入等である。また、営業利益であるが、239.50億ドル(105.05%)となり、増収増益の決算となった。ただ、増収幅はわずかであり、ウォルマートもこの1年間は厳しい経営環境であったことがわかる。
日本の決算発表では、まず、増収増益かどうかが、はじめに問われるが、ウォルマートの決算発表を見ると、決算の冒頭に来る数字は、The company's full year EPS was $3.72. であり、EPSすなわち、1株当たりの利益が決算書の冒頭に最重要数字として掲げられる。この数字が昨年を超えたかどうかが最初に問われる数字である。これは株主への責任を明確にしたものであり、今期は、上記のように、EPSが3.72ドル/株(111.0%)になったということであり、これがウォルマートが最初に公表する決算の結論である。日本の決算書で、EPSを冒頭にもってくるものは食品スーパーマーケット業界では見たことがない。ただ、本来、株式会社である以上、これが自然なのかもしれないが、改めて、ウォルマートの決算書を見ると、決算は株主に経営責任を果たしたことを報告するためのものであると、再認識させられる。
さて、ウォルマートの売上高であるが、今期、はじめて、海外の売上高が1,000億ドルを超えたという。その内訳であるが、ウォルマートは売上高を大きく3つに分けて集計しているが、1つ目のウォルマート部門(スーパーセンター、ディスカウントストア、食品スーパーマーケット等)は2,582.29億ドル(101.1%)、2つ目が海外部門であり、ここには日本の西友も入るが、1,001.07億ドル(101.3%) 、そして、3つ目がサムズクラブ部門467.10億ドル(-0.4%)という結果である。特に海外部門は、売上構成比も24.71%と、約1/4となった。今期は為替変動の影響でドル高となり、厳しい海外の売上状況であったが、何とか、昨対をクリアーし、しかも、大台の1,000億ドルを超え、今後、ウォルマートにとってますます重要な部門となってゆくものといえよう。
では、営業利益の状況はどうかを原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが、売上高対比で75.21%(昨年75.80%)と、0.59ポイント原価が下がっており、原価の改善が進んでいる。結果、売上総利益、いわゆる粗利は、24.79%(昨年24.20%)となった。一方、経費の方であるが、19.65%(昨年19.32%)と、0.33ポイント上昇している。それにしても、昨年と比べ上昇したとはいえ、年商4,050.46億ドル(約37兆円)を超える規模でありながら、この経費比率であり、すごいマネジメント力である。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は5.14%(昨年4.88%)と、5%を超えており、高い収益力である。これに、その他営業収入が0.78%(昨年0.81%)のり、結果、営業利益は5.92%(昨年5.69%)となった。これを金額で見ると、239.50億ドル(105.05%:約2兆円強)であり、売上高はわずかな伸びであったが、営業利益は堅調な数字であり、増収増益の決算となった。
その結果、ウォルマート自身も、Walmart ended the year with strong free cash flowと強調しているように、キャッシュフローが大きく改善している。その数字を見てみると、営業キャッシュフローが、262.49億ドル(昨年231.47億ドル)と、31.02億ドル増加した。一方、投資キャッシュフローは-116.20億ドル(昨年-107.42億ドル)と増加したが、合計のフリーキャッシュフローは146.29億ドル(昨年124.05億ドル)と、大きく増加している。それにしても、1兆円を優に超えるフリーキャッシュフローであり、すごい資金力である。
そして、財務キャッシュフローであるが、-141.91億ドル(昨年-99.18億ドル)と、今期は目いっぱいフリーキャッシュフローを活用している。その内訳を見ると、約半分の-72.76億ドルを自社株買いし、株主還元に当てており、ついで、配当金に-42.17億ドル当て、これも株主還元であり、フリーキャッシュフローの大半を株主還元へ当てている。冒頭でも述べたが、株主への責任を明確にしているのが鮮明である。そして、残りのキャッシュで、有利子負債への返済を行っている。ちなみに、現在ウォルマートの有利子負債は337.54億ドル(約3兆円)であり、総資産1,707.06億ドルの19.77%である。また、純資産比率は42.72%であり、できれば、もう少し、有利子負債を削減し、純資産比率を引き上げたいところかとも思うが、株主への還元を最優先にしている今期のキャッシュの配分である。
このように、2010年1月期のウォルマートの本決算は増収増益、増収幅はわずかではあったが、堅調な増益となった。特に、原価が下がり、海外の貢献度が安定したことが大きかったといえよう。その結果、キャッシュフローは潤沢となり、経営的には安定した投資、株主への手厚い還元ができたといえる。株価も決算発表後も53ドル強で安定しており、今年前半から中盤にかけての50ドル近辺からは一段高いゾーンであり、投資家の評価も高いといえよう。この堅調な決算結果受け、ウォルマートが2011年度、どのような経営戦略を打ち出すか、注目である。
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