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February 05, 2010

ヤオコー、2010年3月、第3四半期決算、戦略転換!

   ヤオコーが1/29、2010年3月度、第3四半期決算を公表した。結果は営業収益1,561.44億円(98.3%)、営業利益72.79億円(103.2%:営業収益比4.66%)、経常利益71.77億円(100.9%:営業収益比4.59%)、当期純利益41.37億円(98.9%:営業収益比2.64%)と、減収、営業、経常段階では増益、当期純利益はわずかに減益となる、やや厳しい決算となった。ヤオコー自身も、「スーパーマーケット業界におきましては、お客さまの生活防衛意識の高まりにより引き続き低価格志向が進んで価格競争が一層激化しております。・・」とコメントしているように、価格競争の厳しさが、ヤオコーの業績にも影響を与えたようである。

   そこで、増益となった営業利益の中身を原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが、71.27%(昨年71.35%)と、原価は0.08ポイントと、わずかではあるが、下がっており、結果、売上総利益は28.73%(28.65%)と改善した。価格競争の厳しさの中、原価を引き下げ、粗利は改善しており、堅調であった。一方、経費の方であるが、28.31%(昨年28.25%)と、経費の方は0.06ポイント、こちらは、わずかではあるが上昇しており、若干、経費の増加が見られる。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は0.42%(昨年0.40%)となった。これに、物流収入、不動産収入等のその他営業利益が4.46%(昨年4.23%)が加わり、結果、営業利益が売上対比4.88%(昨年4.63%)となり、営業利益は増益となった。

   それにしても、売上総利益が28.73%と、食品スーパーマーケット業界の中では、トップクラスであり、ヤオコーは、粗利が極めて高い食品スーパーマーケットである。前期の本決算時の決算公開企業約50社の数字で見ると、この水準はベスト5に入る高さである。これだけ高い粗利が確保できる背景には、ヤオコーの粗利の高い惣菜の強さに負うところが大きい。前期決算時も惣菜の粗利率は48.51%であり、売上構成比も13.8%、結果、相乗積は6.69%となり、惣菜だけで、全粗利率の20%を優に超える割合となり、粗利率を大きく押し上げているといえる。

   ただ、一方で、経費比率も高く、28.31%であり、これも、前期決算時の決算公開企業約50社で見るとベスト10前後となり、高めである。したがって、ヤオコーのマーチャンダイジングは、高粗利、高経費という食品スーパーマーケットとしては珍しいパターンとなる。通常、食品スーパーマーケットは低粗利、低経費のパターンが圧倒的に多く、ついで、最も利益がでる高粗利、低経費というパターンであり、もうひとつ、わずかではあるが、利益がまずでない、低粗利、高経費というパターンがある。こう見ると、ヤオコーは食品スーパーマーケットとしては、独特なマーチャンダイジングパターンであるといえよう。

   では、今後ともヤオコーは、このパターンを維持し続けるのかというと、今期決算期から戦略転換をはかりつつある。ちょうど、今期はヤオコーの第6次の中期経営計画の初年度に入っているが、食品スーパーマーケット業界を取り巻く事業環境を再認識した上での新たな経営戦略の転換をはかりはじめたといえる。まず、現状の事業環境の再認識であるが、4つの変化を上げている。少子高齢化によるパイ縮小、生活防衛意識による低価格志向、安売競争の激化(ポイントセール、低価格PB)、GMSの業績不振、DSへの業態変更である。そして、この4つの事業環境の変化から、「安売り競争一色の様相」が続くとの認識のもと、ヤオコーの経営戦略の転換をはからざるをえないという結論である。

   すなわち、これまでヤオコーが意識してとらなかった価格訴求を本格的に追及するということである。これまでヤオコーが追求してきた「ミールソリューション」に加え、「価格コンシャス」の同時実現を目指すという。価格コンシャスとは、価格を強く意識するということであり、具体的にはこれまで敢えて下限の価格の品揃えをヤオコーはカットしてきたが、今後は、下限の価格の品揃えも意識して行い、価格の幅を上下に拡大するという。まさに、戦略転換といえよう。しかも、「周囲の状況に迷わされない、迷わない、しかし、変わらなければならないことは変わる」との不退転の決意である。
 
   そして、この戦略を全面的に取り入れた小型店フォーマットの開発にも入るという。小型店といってもヤオコーの小型店は450坪、年商20億円、坪効率450万円であるが、このマーチャンダイジングをつい最近、1/20にオープンした所沢三原店で完成させるという。基本コンセプトは圧倒的な鮮度・価格・安さ感とミールソルーションで他の食品スーパーマーケットと差別化をはかるということである。

   このように、ヤオコーの2010年3月期の第3四半期決算は、減収、営業増益というやや厳しい決算となったが、ヤオコーは、ここへ来て、価格を意識した食品スーパーマーケット、しかも、小型店舗化へと大きく舵を切り始め、戦略転換を図り始めたといえよう。この第3四半期決算にはまだその結果は表れてはいないといえるが、今後、実験店舗でマーチャンダイジングが確立されれば、新店はもちろん、順時、既存店へもノウハウが導入されてゆくといえよう。今後、ヤオコーのマーチャンダイジング、特に、価格政策がどのように変化するか、注目である。

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